28 / 99
28.覚悟を決める時
「うーん、今日は特別サービス。わたくしのお膝でご飯を食べる?」
こっくりと頷いたグレッグを横抱きにして椅子に座りました。グレッグ用の料理を側に寄せてもらいスープをひと匙口元に運びます。
「さあ、グレッグのお口はどこかしら? はい、あーん」
ご飯を食べさせてもらった記憶はなさそうですが、わたくしが大きな口を開けるとグレッグの口も開きました。
「美味しい?」
「ん」
漸く小さな声が聞こえました。そのまま少しずつ口に運ぶとゆっくりとですがそれなりの量を食べてくれた気がします。
クロワッサンはかなり気に入ってくれたようです。見たことのない形に首を傾げながら手についた生地に悩み、クンクンと匂いを嗅いで⋯⋯。食べはじめると美味しかったのでしょう、自分でクロワッサンに手を伸ばしていました。
「明日の朝はクロワッサンにハムやチーズを挟んでもらおうかしら。グレッグはどう思う?」
「ハム?」
「ええ、グレッグはハムは好き?」
「わかんない」
「じゃあ試してみなくちゃね」
「うん」
グレッグの顔を拭いているとこっくりこっくりと居眠りをはじめました。チェイスは既に着替えも済ませて夢の中です。
メイサにグレッグを運んでもらいターニャを連れて自室に戻りました。一脚だけある椅子に座って疲れ果てた腕を揉みほぐします。
「様子を見に行かなくて良いんですか?」
「ええ、あれ以上聞く価値もないわ。伯爵夫妻とステファン様の言い訳と罪のなすりつけあいなんてうんざりですもの」
パーティーの片付けを手伝う元気はありませんが寝るのには早過ぎます。ターニャが淹れてくれた紅茶でひと息つきましょう。
ケニス先生用の苦いお茶ではなく美味しいお茶に心もほっこりです。
ターニャの苦いお茶はケニス先生専用⋯⋯ターニャとケニス先生は間違いなく両思いなのですが中々進展しないのです。何か前に進むきっかけがあればいいのですけれど。
「それにしてもグレッグ様達をリリスティア様の実子として届けるなんて頭悪すぎですね」
「あれでバレないと思ったのかしら。偽造した書類が見つからなくても同じ部隊の方達はみんな知っているのに、社交界で会った時になんで言い訳するつもりだったのか」
せめて養子縁組にしてあれば少しはマシだったでしょうにと思わずにいられません。
「あ!」
いい事を思いつきました。
「リリスティア様、またおかしな事を思いついてます?」
「今現在、法律上は2人の子持ちなんだなぁって感動しているところなの」
「⋯⋯そこはへこむとこだと思いますよ」
夜着の支度をしていたターニャが手を止めて大袈裟に溜息をついた。
「ねえ、わたくしの子供なら離婚する時連れて行っても問題ないんじゃないかしら」
「リリスティア様、ポジティブを超えて危険ゾーンに入ってます。偽造だってバレてますから無理です」
「そうなのよね。でもほら、それを逆手にとれば毒親から引き離せそうじゃない?」
伯爵夫妻は平民の子は嫌だと言いステファン様は孤児院に入れる気満々でした。ビビアン様も虐待するくらいですから引き取りたいと言えば文句は出ないかもしれません。
お金を請求されそうですけれど虐待の証拠を出せば⋯⋯。
「至急相談したいことがあるのでお時間を下さいって、フォレスト公爵様に声をかけてきてくれない? マーベル一家には内緒でお会いしたいの」
「いいですけど⋯⋯リリスティア様が無茶をしないと約束してくださるならって条件付きです」
「あら、わたくしは無茶なんてした事ないわよ?」
「最近は⋯⋯ってつけてください」
ターニャが出て行った部屋で今日の出来事を日記を認めます。昨日と今日の情報量の多さに自分でも驚いてしまいました。
いつもよりかなり早い時間にベッドに入りました。フォレスト公爵様とは明日の午後お会いすることになったのでしっかり身体を休めておきたいと思うのですが頭が冴えてしまい中々寝付けずにおりましたが、真夜中を過ぎた頃ドアをノックする音がして飛び起きました。
「誰?」
「ハンナです」
大変! 子供達だわ!!
ベッドから飛び出してガウンを着ながら部屋を飛び出しました。
「夜分に申し訳ありません。グレッグ様が泣いて⋯⋯若奥様を呼んでおられて」
「教えてくれてありがとう」
小走りで青の間に向かうとドアの外からでも泣き声が聞こえてきます。これはチェイスのような気がします。
「ハンナはチェイスをお願いね」
ベッドに近付くとグレッグが布団の中で丸くなっています。ぐすぐすと鼻を鳴らす音の合間に『リィ、リィ』と言う声が聞こえてきました。
「呼んでくれてありがとう」
ピタッと動きが止まったお布団団子の上からトントンと軽く叩きながら声をかけました。
チェイスはハンナに抱かれて寝はじめたようですが時折しゃくりあげるような音を立てていました。
「もし良かったらわたくしもお布団に入れてくれるかしら?」
返事はありませんでしたが布団の端が少しだけ持ち上がったのでモゾモゾと中に潜り込み、ホカホカのグレッグをしっかりと抱え込みました。
「グレッグは凄くあったかくて気持ちいいわ。このまま抱っこしていても良い?」
「ん⋯⋯しゅち」
「わたくしもグレッグが大好き。側にいるからもう大丈夫」
明日の予定が決まりました。
こっくりと頷いたグレッグを横抱きにして椅子に座りました。グレッグ用の料理を側に寄せてもらいスープをひと匙口元に運びます。
「さあ、グレッグのお口はどこかしら? はい、あーん」
ご飯を食べさせてもらった記憶はなさそうですが、わたくしが大きな口を開けるとグレッグの口も開きました。
「美味しい?」
「ん」
漸く小さな声が聞こえました。そのまま少しずつ口に運ぶとゆっくりとですがそれなりの量を食べてくれた気がします。
クロワッサンはかなり気に入ってくれたようです。見たことのない形に首を傾げながら手についた生地に悩み、クンクンと匂いを嗅いで⋯⋯。食べはじめると美味しかったのでしょう、自分でクロワッサンに手を伸ばしていました。
「明日の朝はクロワッサンにハムやチーズを挟んでもらおうかしら。グレッグはどう思う?」
「ハム?」
「ええ、グレッグはハムは好き?」
「わかんない」
「じゃあ試してみなくちゃね」
「うん」
グレッグの顔を拭いているとこっくりこっくりと居眠りをはじめました。チェイスは既に着替えも済ませて夢の中です。
メイサにグレッグを運んでもらいターニャを連れて自室に戻りました。一脚だけある椅子に座って疲れ果てた腕を揉みほぐします。
「様子を見に行かなくて良いんですか?」
「ええ、あれ以上聞く価値もないわ。伯爵夫妻とステファン様の言い訳と罪のなすりつけあいなんてうんざりですもの」
パーティーの片付けを手伝う元気はありませんが寝るのには早過ぎます。ターニャが淹れてくれた紅茶でひと息つきましょう。
ケニス先生用の苦いお茶ではなく美味しいお茶に心もほっこりです。
ターニャの苦いお茶はケニス先生専用⋯⋯ターニャとケニス先生は間違いなく両思いなのですが中々進展しないのです。何か前に進むきっかけがあればいいのですけれど。
「それにしてもグレッグ様達をリリスティア様の実子として届けるなんて頭悪すぎですね」
「あれでバレないと思ったのかしら。偽造した書類が見つからなくても同じ部隊の方達はみんな知っているのに、社交界で会った時になんで言い訳するつもりだったのか」
せめて養子縁組にしてあれば少しはマシだったでしょうにと思わずにいられません。
「あ!」
いい事を思いつきました。
「リリスティア様、またおかしな事を思いついてます?」
「今現在、法律上は2人の子持ちなんだなぁって感動しているところなの」
「⋯⋯そこはへこむとこだと思いますよ」
夜着の支度をしていたターニャが手を止めて大袈裟に溜息をついた。
「ねえ、わたくしの子供なら離婚する時連れて行っても問題ないんじゃないかしら」
「リリスティア様、ポジティブを超えて危険ゾーンに入ってます。偽造だってバレてますから無理です」
「そうなのよね。でもほら、それを逆手にとれば毒親から引き離せそうじゃない?」
伯爵夫妻は平民の子は嫌だと言いステファン様は孤児院に入れる気満々でした。ビビアン様も虐待するくらいですから引き取りたいと言えば文句は出ないかもしれません。
お金を請求されそうですけれど虐待の証拠を出せば⋯⋯。
「至急相談したいことがあるのでお時間を下さいって、フォレスト公爵様に声をかけてきてくれない? マーベル一家には内緒でお会いしたいの」
「いいですけど⋯⋯リリスティア様が無茶をしないと約束してくださるならって条件付きです」
「あら、わたくしは無茶なんてした事ないわよ?」
「最近は⋯⋯ってつけてください」
ターニャが出て行った部屋で今日の出来事を日記を認めます。昨日と今日の情報量の多さに自分でも驚いてしまいました。
いつもよりかなり早い時間にベッドに入りました。フォレスト公爵様とは明日の午後お会いすることになったのでしっかり身体を休めておきたいと思うのですが頭が冴えてしまい中々寝付けずにおりましたが、真夜中を過ぎた頃ドアをノックする音がして飛び起きました。
「誰?」
「ハンナです」
大変! 子供達だわ!!
ベッドから飛び出してガウンを着ながら部屋を飛び出しました。
「夜分に申し訳ありません。グレッグ様が泣いて⋯⋯若奥様を呼んでおられて」
「教えてくれてありがとう」
小走りで青の間に向かうとドアの外からでも泣き声が聞こえてきます。これはチェイスのような気がします。
「ハンナはチェイスをお願いね」
ベッドに近付くとグレッグが布団の中で丸くなっています。ぐすぐすと鼻を鳴らす音の合間に『リィ、リィ』と言う声が聞こえてきました。
「呼んでくれてありがとう」
ピタッと動きが止まったお布団団子の上からトントンと軽く叩きながら声をかけました。
チェイスはハンナに抱かれて寝はじめたようですが時折しゃくりあげるような音を立てていました。
「もし良かったらわたくしもお布団に入れてくれるかしら?」
返事はありませんでしたが布団の端が少しだけ持ち上がったのでモゾモゾと中に潜り込み、ホカホカのグレッグをしっかりと抱え込みました。
「グレッグは凄くあったかくて気持ちいいわ。このまま抱っこしていても良い?」
「ん⋯⋯しゅち」
「わたくしもグレッグが大好き。側にいるからもう大丈夫」
明日の予定が決まりました。
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
旦那様から彼女が身籠る間の妻でいて欲しいと言われたのでそうします。
クロユキ
恋愛
「君には悪いけど、彼女が身籠る間の妻でいて欲しい」
平民育ちのセリーヌは母親と二人で住んでいた。
セリーヌは、毎日花売りをしていた…そんなセリーヌの前に毎日花を買う一人の貴族の男性がセリーヌに求婚した。
結婚後の初夜には夫は部屋には来なかった…屋敷内に夫はいるがセリーヌは会えないまま数日が経っていた。
夫から呼び出されたセリーヌは式を上げて久しぶりに夫の顔を見たが隣には知らない女性が一緒にいた。
セリーヌは、この時初めて夫から聞かされた。
夫には愛人がいた。
愛人が身籠ればセリーヌは離婚を言い渡される…
誤字脱字があります。更新が不定期ですが読んで貰えましたら嬉しいです。
よろしくお願いします。
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】私を裏切った不倫夫に「どなたですか?」と微笑むまで 〜没落令嬢の復讐劇〜
恋せよ恋
恋愛
「早くあんな女と別れて、可愛い子と一緒になりたいよ」
不倫中の夫が笑う声を聞き、絶望の中で事故に遭うジェシカ。
結婚五年目に授かったお腹の子を失った彼女は、
「記憶を失ったフリ」で夫と地獄の婚家を捨てることを決意。
元男爵令嬢の薄幸ヒロインは、修道院で静かに時を過ごす。
独り身領主の三歳の男の子に懐かれ、なぜか領主まで登場!
無実の罪をなすりつけ、私を使い潰した報いを受けなさい。
記憶喪失を装った没落令嬢による、「ざまぁ」が幕を開ける!
※本作品には、馬車事故による流産の描写が含まれます。
苦手な方はご注意ください。主人公が絶対に幸せになる
物語ですので、安心してお読みいただければ幸いです。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
ニルラル公爵の令嬢カチュアは、僅か3才の時に大魔境に捨てられた。ニルラル公爵を誑かした悪女、ビエンナの仕業だった。普通なら獣に喰われて死にはずなのだが、カチュアは大陸一の強国ミルバル皇国の次期聖女で、聖獣に護られ生きていた。一方の皇国では、次期聖女を見つけることができず、当代の聖女も役目の負担で病み衰え、次期聖女発見に皇国の存亡がかかっていた。