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一回目 (過去)

22.いざ出陣?

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《我が国は精霊王との盟約により永遠の平和を約束された選ばれし者達である。精霊はその力を万民の為に行使し災害や疫病から我々を護る。
加護を持つ者は国の為万民の為に精霊の力を行使する役目を持つ》

 精霊教会はその文言に異議を唱えたが今よりも弱い力しか持たなかった為、軍の力で押さえつけられてしまったと言う。

「誤解を招く表現だと当時の教皇が抗議し続けた記録が残っていますが、徐々に精霊は使役するものだと言う考えが浸透してしまったのです」

 単一教会になり王家と同等の力を持った今でも加護を持つ者達を保護し活用している王家には太刀打ちできていない。

「加護さえあれば全て上手くいくなんてあり得ません。それなら私は幸せになっているはずだし、加護を持っていると知られた途端益々状況が悪くなるなんてないはずだもの。
王家と公爵家に利用されそうになって死ねば良かったのにって言われたりしない」

「正にその通りです。精霊の力は私欲で利用するものではありません。もしそれが許されるなら加護を失う者などいないでしょうし加護は全ての人に与えられているはずです。
このままでは精霊がいなくなり加護が消滅してしまいます」

 長年精霊の加護に頼ってきた王国から精霊がいなくなれば国はたちまち崩壊するだろう。今回の旱魃が良い例で領主や王家は精霊師に頼る以外に策を持たず、災害に備えて備蓄すると言う考えもない。

「全て精霊任せで運営していますから今回のように精霊の力をお借りできなかっただけで簡単に瓦解してしまうんです。それなのに精霊に感謝する事もなく不満ばかりです。
その意識を変えたいと試行錯誤しているのですが上手くいかなくて、神職と言いつつ何の役にも立てていないのが現状です」

 肩を落とし自嘲気味に話すナスタリア神父。悔しそうで、それでいて情けない自分を責めているような。

(こんなに悩んでいる方に我儘を言っていいんだろうか)




「長々と愚痴ばかり聞かせてしまい申し訳ありません。ローザリア様の願いをお聞かせ下さいますか?」

「あの、ナスタリア神父様がご存知のように私は神託の儀を受けていません。でも精霊達が教えてくれたことがあって。
⋯⋯えっと、どんな加護が現れたとしても水の加護だけだと公表して欲しいんです」

「理由をお聞かせ頂けますか?」

 オーレアンのことを考えればローザリアは水の加護を戴いていると誰もが考えていた。気になるのはその加護の強さのみ。あれ程の功績を残せるならさぞ強い加護だろうと皆が興味津々になっている。

「加護は1人にひとつだと聞きました」

「⋯⋯は? まさか複数の加護を持つなどそのような方は聞いたことがありません」

「オーレアンで現れた精霊は虹色と金色と緑が見えたと言われました」

 バンっと大きな音を立ててテーブルに手をついたナスタリア神父がガタンと勢いよく椅子を倒しながら立ち上がった。飛び上がったカップがガチャンと音を立てローザリアが「ひっ!」と息を飲み込んだ。

「そう、そうでした! 3種類の光の玉だと仰っておられたのに⋯⋯気付きませんでした。つまりローザリア様は虹色の水の精霊と金色の光の精霊と緑の風の精霊を呼び寄せた」

(本当は他の色もあったけど⋯⋯)


 前屈みになったナスタリア神父の顔がローザリアの顔に触れそうになる程近くなっていく。

「あっ、あの。座って、座ってお話ししてもらえますか?」

「しっ、失礼しました。あまりの驚きで我を忘れてしまい」

 ローザリアに謝りながら椅子を元に戻したナスタリア神父は椅子に腰掛けたが、落ち着かないようでソワソワと足を組みかえながらブツブツとなにか呟いている。


「えっと、他の色の精霊も呼べます」

「はあ?」

 ナスタリア神父はこれ以上ないほど大きく目を見開き口もポカンと開けて硬直した。

「なんでも精霊王の加護? とかで、いろんな種類の精霊達が会いにきてくれるんです」

「⋯⋯」

「さっきナスタリア神父様が明かりをつけたのって火の精霊の加護ですよね。やったことはないんですが多分出来る気がします」

「⋯⋯」

「あ、回復と水を出すのはできました。風もちょっぴりですが出せましたし。黄色の精霊は雷の精霊だよって」

「待って! 待ってくれますか? 頭がついていかない⋯⋯精霊王の加護は伝説です。今、雷って言いましたよね。雷の精霊なんて聞いた事も。いや、そうだ! 資料にはありました。でも確か顕現した事はないと」

「4大精霊と光・闇以外にも色々いるそうです」

「信じられん! いや、ローザリア様が嘘をついていると言っているわけではなくて、その。います、いるのはいます。でもそうではなくて⋯⋯資料に、資料が」

「⋯⋯それで何が出るかどんなふうに出るかちょっと自信がなくて。水の加護だけって言ってもらえたら助かります。
加護がないのが一番良いんですけど流石にそれは無理そうなんで」

 混乱し黙り込んで額を握り拳で叩き続けていた挙動不審なナスタリア神父が「よし!」と気合を入れて立ち上がった。

「やりましょう! 神託の儀です!!」

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