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一回目 (過去)
29.キャベツとコウノトリは役立たず
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しょっぱいエショデや香辛料の入ったフワス、卵と砂糖入りのゴーフルには粉砂糖がかかっていて甘くて美味しい。そして、クリームが入ったダリオル。
持ち帰り用ですと言ってナスタリア神父がテーブルに置いた瓶に入っているのは果物の砂糖煮やコンフィズリーと呼ばれるキャンディやボンボン。
「ショコラトルです。甘くて美味しいですよ」
目移りするほどのお菓子の山の横に置かれたカップには焦げ茶色の不思議な飲み物が入っていた。ふうふうと息を吹きかけながら甘いショコラトルを飲み、しょっぱいエショデを食べる。ナスタリア神父が一口大に切ってくれたゴーフルは粉砂糖の甘さに思わず笑みがこぼれた。
初めて見るお菓子と飲み物に頬を染めるローザリアを見ながらナザエル枢機卿がポツリと呟いた。
「こんな可愛い子を虐待するとか⋯⋯奴等は何を考えてるんだ?」
「何も考えてないんでしょうね。でなければ人を傷つけるなんてできません。しかも15年間も」
「カサンドラ様は私のせいで結婚しなくちゃいけなかったって怒ったことがあります。もっと遊びたかったのに、私のせいで恋人達と別れさせられたって。
公爵様は私の髪と目の色を見て自分の子供じゃないって。
リリアーナ様は⋯⋯よくわかりません。親の真似をしてるだけなのか、私が邪魔なのか」
「ローザリアは家族を様付けて呼んでるのか?」
「もう家族だとは思えなくて」
「7歳で神託の儀を受けてさえいればと悔しくてたまりません。その時だったら王家に横槍なんて入れさせず教会で保護できたのに」
「そこはお前が下手を打ったせいだが、もう終わった事だ。それよりも今後ローザリアが王家の奴等に輪姦されんように対策を練る必要が」
「ナザエル!! 子供の前でなんて言葉を使うんですか! 恥を知りなさい!」
突然怒りはじめたナスタリア神父を見て呆然としたローザリアは全く意味がわかっていない。
「でもよ、本人にどんな危険があるか認識させるのは大切な事だぜ?」
「でっ、ですが」
「15といやあガキを産める。王家のクズはとっくに計画を練ってるだろうよ。だろ?」
「それはまぁ」
「ローザリア、王宮であろうとどこであろうと絶対に王家の関係者と2人っきりになるな。それと何にも口にするな。水もダメだ、出来るな」
真剣な表情で話すナザエル枢機卿の言葉にローザリアは頷いた。
「はい。ただ、理由を教えてもらえますか?」
「まず一つ目。王家は非常に強引な奴等ばかりでな。思い通りに言う事を聞かせようとする時に薬を使いやがる。想像がついたか?」
何度か公爵家で毒を盛られたことのあるローザリアは真っ青になってこくこくと首を縦に振った。
「頭のおかしな奴ってのはいつ何を考えるかわからんから出来れば公爵家でも用心して欲しい」
「あの、何かを口にする前には必ず精霊に聞くことにします。公爵家では聞く前に教えてくれるんですが、必ず確認するようにします」
ローザリアの言葉でここ最近でも公爵家で毒を盛られたことがあると気付いたナスタリア神父とナザエル枢機卿は顔を顰めた。
「二つ目は、奴らが鬼畜だからだ。
王家の奴等は加護が欲しくてしょうがねえんだ。それも、王家は凄いって思わせるためだけにな。とにかく強い加護を欲しがっててその為には犯罪でもなんでもやる最低の奴らなんだ。
加護は偶々授かる事もあるが血で受け継がれることの方が多い。つまり、ローザリアに子供ができりゃ加護を持ってる可能性が高いって事だ。
ローザリアはまだ若いから毎年子供を産めばいつか強力な加護持ちが生まれるかもしれんだろ? ここまでは理解できたか?」
「はい」
「んじゃ、ここで質問だ。子供はどうやって作る?」
「さあ、そう言えば考えたことありません」
「だろうな。ナスタリア神父様に詳しく教えてもらえ。俺から言えるのは2つだけ、キャベツ畑には子供は生えんしコウノトリも赤ん坊を運んでこん」
意味不明の言葉にチラリとナスタリア神父を見ると腕を組んで真っ赤な顔でナザエル枢機卿を睨みつけていた。
「あの、はい。今度聞いてみます」
今ナスタリア神父に声をかけるのはまずいと世間知らずのローザリアにも理解できるほど迫力あるオーラを振り撒いていた。
ナスタリア神父と2人で教会の馬車に乗り込んだ。その他に馬車の前後を聖騎士が護衛している。
「今日はお疲れ様でした」
帰り間際の恐ろしい形相とは打って変わり穏やかな様子のナスタリア神父が話しかけてきた。
「こちらこそ、本当にありがとうございました」
「少しずつ安心して暮らせるようになる為に色々話すつもりでいます。公爵邸に着いたら全て任せてもらえますか?」
「はい、宜しくお願いします」
「ところで今日は精霊は周りにいないんですか?」
持ち帰り用ですと言ってナスタリア神父がテーブルに置いた瓶に入っているのは果物の砂糖煮やコンフィズリーと呼ばれるキャンディやボンボン。
「ショコラトルです。甘くて美味しいですよ」
目移りするほどのお菓子の山の横に置かれたカップには焦げ茶色の不思議な飲み物が入っていた。ふうふうと息を吹きかけながら甘いショコラトルを飲み、しょっぱいエショデを食べる。ナスタリア神父が一口大に切ってくれたゴーフルは粉砂糖の甘さに思わず笑みがこぼれた。
初めて見るお菓子と飲み物に頬を染めるローザリアを見ながらナザエル枢機卿がポツリと呟いた。
「こんな可愛い子を虐待するとか⋯⋯奴等は何を考えてるんだ?」
「何も考えてないんでしょうね。でなければ人を傷つけるなんてできません。しかも15年間も」
「カサンドラ様は私のせいで結婚しなくちゃいけなかったって怒ったことがあります。もっと遊びたかったのに、私のせいで恋人達と別れさせられたって。
公爵様は私の髪と目の色を見て自分の子供じゃないって。
リリアーナ様は⋯⋯よくわかりません。親の真似をしてるだけなのか、私が邪魔なのか」
「ローザリアは家族を様付けて呼んでるのか?」
「もう家族だとは思えなくて」
「7歳で神託の儀を受けてさえいればと悔しくてたまりません。その時だったら王家に横槍なんて入れさせず教会で保護できたのに」
「そこはお前が下手を打ったせいだが、もう終わった事だ。それよりも今後ローザリアが王家の奴等に輪姦されんように対策を練る必要が」
「ナザエル!! 子供の前でなんて言葉を使うんですか! 恥を知りなさい!」
突然怒りはじめたナスタリア神父を見て呆然としたローザリアは全く意味がわかっていない。
「でもよ、本人にどんな危険があるか認識させるのは大切な事だぜ?」
「でっ、ですが」
「15といやあガキを産める。王家のクズはとっくに計画を練ってるだろうよ。だろ?」
「それはまぁ」
「ローザリア、王宮であろうとどこであろうと絶対に王家の関係者と2人っきりになるな。それと何にも口にするな。水もダメだ、出来るな」
真剣な表情で話すナザエル枢機卿の言葉にローザリアは頷いた。
「はい。ただ、理由を教えてもらえますか?」
「まず一つ目。王家は非常に強引な奴等ばかりでな。思い通りに言う事を聞かせようとする時に薬を使いやがる。想像がついたか?」
何度か公爵家で毒を盛られたことのあるローザリアは真っ青になってこくこくと首を縦に振った。
「頭のおかしな奴ってのはいつ何を考えるかわからんから出来れば公爵家でも用心して欲しい」
「あの、何かを口にする前には必ず精霊に聞くことにします。公爵家では聞く前に教えてくれるんですが、必ず確認するようにします」
ローザリアの言葉でここ最近でも公爵家で毒を盛られたことがあると気付いたナスタリア神父とナザエル枢機卿は顔を顰めた。
「二つ目は、奴らが鬼畜だからだ。
王家の奴等は加護が欲しくてしょうがねえんだ。それも、王家は凄いって思わせるためだけにな。とにかく強い加護を欲しがっててその為には犯罪でもなんでもやる最低の奴らなんだ。
加護は偶々授かる事もあるが血で受け継がれることの方が多い。つまり、ローザリアに子供ができりゃ加護を持ってる可能性が高いって事だ。
ローザリアはまだ若いから毎年子供を産めばいつか強力な加護持ちが生まれるかもしれんだろ? ここまでは理解できたか?」
「はい」
「んじゃ、ここで質問だ。子供はどうやって作る?」
「さあ、そう言えば考えたことありません」
「だろうな。ナスタリア神父様に詳しく教えてもらえ。俺から言えるのは2つだけ、キャベツ畑には子供は生えんしコウノトリも赤ん坊を運んでこん」
意味不明の言葉にチラリとナスタリア神父を見ると腕を組んで真っ赤な顔でナザエル枢機卿を睨みつけていた。
「あの、はい。今度聞いてみます」
今ナスタリア神父に声をかけるのはまずいと世間知らずのローザリアにも理解できるほど迫力あるオーラを振り撒いていた。
ナスタリア神父と2人で教会の馬車に乗り込んだ。その他に馬車の前後を聖騎士が護衛している。
「今日はお疲れ様でした」
帰り間際の恐ろしい形相とは打って変わり穏やかな様子のナスタリア神父が話しかけてきた。
「こちらこそ、本当にありがとうございました」
「少しずつ安心して暮らせるようになる為に色々話すつもりでいます。公爵邸に着いたら全て任せてもらえますか?」
「はい、宜しくお願いします」
「ところで今日は精霊は周りにいないんですか?」
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