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一回目 (過去)
49.ローザリアの空間魔法
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お茶とお茶菓子を運んできたニールがナスタリア神父のスピアーを見て目を輝かせた。
「凄い、ナスタリア神父のですか!?」
「ん? まあ」
素人のローザリアには分からないが彼らには一目で違いがわかるほどの変化らしい。ニールが渡してくれたお茶を飲むとほうっとため息が漏れた。思ったよりも疲れていたのかもしれない。
(ダガーの練習か。学園の授業とはどんどんかけ離れてく気がする)
ナザエル枢機卿が得意満面で帰ってきた頃にはお茶が冷め切っていたが気にもせず一気飲みして語りはじめた。
「こいつはもう国宝級、神話級だな。水の加護を付与する剣なんて聞いたことがねえ。柄のとこに魔石が嵌ってて別の加護まで使えた。加護を付与した剣なんて見た事も聞いた事もない」
「あの魔石はそういう意味でしたか」
ナスタリア神父のスピアーにも魔石が嵌まっていたようだ。
「他の武器を渡す相手はよく考えんと拙いだろうな。味方が持ってりゃ心強いが敵に渡ったらヤバすぎる」
「暫くは誰も手にも渡らないように保管しておきましょう。教会内でもどこまで奴らに侵食されているか分かりませんから」
「なら一番いいのはローザリアの空間魔法だな。長櫃ごと片しておいてくれ」
「確かに。精霊王の事ですから容量無制限とかにしてそうですし。後でこっそりお願いできますか?」
「はい」
のんびりとお茶菓子を齧っていたローザリアはコックリと頷いた。
「ゴホン。あの、私達から頼んでおいて言うのは間違っているのですが⋯⋯」
「はい?」
「空間魔法そのものがありえない物なんです。もう何百年も前に消えてしまった魔法の力なんです」
「はい、昨日教えていただきました。黒は闇の精霊、水色は空間の精霊、白は無の精霊または創造の精霊、黄色は雷の精霊、青は氷の精霊です。それは資料にしか残っていないって」
「その通りです。非常に珍しいので物の収納はアイテムボックスと言うそうですが扱いには気を付けてください。人の目はどこにあるか分かりませんから出し入れを見られたり、持っていないはずのものを持っていることに気づかれたりしないように」
「はい、気をつけます」
「精霊王が言っておられた部屋の改装は禁止です。公爵家の誰かに見られたら取り返しがつきません」
「オカン」
ナザエル枢機卿の呟きが聞こえた気がした。
「はい⋯⋯っと、そうだ! 私専属のメイドは付けないでください。私の部屋はその、とても狭くて不便ですし。その他にもご迷惑をおかけしたり不快な思いをさせてしまうだけなので」
「却下します。不便・不快を予定した状態で送り込みますから。この後は教会に移動しましょう。私の部屋か図書室で少し文字の勉強をして今日はお終いです」
ガラガラと車輪が石を踏む音が聞こえてきたので護衛と馬車が帰ってきたのだろう。祠で過ごした時間は思ったより長かったようで教会に行ってもそれほど長くはいられないかも知れない。
(本を借りて帰ろうかな。ランプか蝋燭を何とかできれば勉強できるし)
戻ってきた護衛達が略式の挨拶をして荷物を積み込みはじめた。ローザリアも敷物や毛布を畳んで馬車に運んだ。
あっという間に片付けが終わりナスタリア神父のエスコートで馬車に乗り込んだ。馬車の窓から名残惜しげに外を見ているとナスタリア神父が声をかけてきた。
「また来ましょう。今度はもっと時間をかけて、釣りをしてみるのも楽しいかもしれません」
釣りと聞いてローザリアの目が輝いた。
(どうやるんだろう。何を使う?)
「是非お願いします」
「はい、ナザエル枢機卿は釣りが苦手なので別の遊びを考えてもらいましょう」
「どうして苦手なんですか?」
「彼はじっとしているのが苦手でして、座ってのんびりというのが我慢できないみたいです」
「釣りは座ってするんですね。それなら確かに苦手そうです」
クスクスと笑うローザリアを見てナスタリア神父はローザリアが釣りのやり方を知らない事に気がついた。
「ローザリア様の知らない事、やってみたい事をどんどんやってみましょう」
「今日、池に行った時に気付いたんです」
「凄い、ナスタリア神父のですか!?」
「ん? まあ」
素人のローザリアには分からないが彼らには一目で違いがわかるほどの変化らしい。ニールが渡してくれたお茶を飲むとほうっとため息が漏れた。思ったよりも疲れていたのかもしれない。
(ダガーの練習か。学園の授業とはどんどんかけ離れてく気がする)
ナザエル枢機卿が得意満面で帰ってきた頃にはお茶が冷め切っていたが気にもせず一気飲みして語りはじめた。
「こいつはもう国宝級、神話級だな。水の加護を付与する剣なんて聞いたことがねえ。柄のとこに魔石が嵌ってて別の加護まで使えた。加護を付与した剣なんて見た事も聞いた事もない」
「あの魔石はそういう意味でしたか」
ナスタリア神父のスピアーにも魔石が嵌まっていたようだ。
「他の武器を渡す相手はよく考えんと拙いだろうな。味方が持ってりゃ心強いが敵に渡ったらヤバすぎる」
「暫くは誰も手にも渡らないように保管しておきましょう。教会内でもどこまで奴らに侵食されているか分かりませんから」
「なら一番いいのはローザリアの空間魔法だな。長櫃ごと片しておいてくれ」
「確かに。精霊王の事ですから容量無制限とかにしてそうですし。後でこっそりお願いできますか?」
「はい」
のんびりとお茶菓子を齧っていたローザリアはコックリと頷いた。
「ゴホン。あの、私達から頼んでおいて言うのは間違っているのですが⋯⋯」
「はい?」
「空間魔法そのものがありえない物なんです。もう何百年も前に消えてしまった魔法の力なんです」
「はい、昨日教えていただきました。黒は闇の精霊、水色は空間の精霊、白は無の精霊または創造の精霊、黄色は雷の精霊、青は氷の精霊です。それは資料にしか残っていないって」
「その通りです。非常に珍しいので物の収納はアイテムボックスと言うそうですが扱いには気を付けてください。人の目はどこにあるか分かりませんから出し入れを見られたり、持っていないはずのものを持っていることに気づかれたりしないように」
「はい、気をつけます」
「精霊王が言っておられた部屋の改装は禁止です。公爵家の誰かに見られたら取り返しがつきません」
「オカン」
ナザエル枢機卿の呟きが聞こえた気がした。
「はい⋯⋯っと、そうだ! 私専属のメイドは付けないでください。私の部屋はその、とても狭くて不便ですし。その他にもご迷惑をおかけしたり不快な思いをさせてしまうだけなので」
「却下します。不便・不快を予定した状態で送り込みますから。この後は教会に移動しましょう。私の部屋か図書室で少し文字の勉強をして今日はお終いです」
ガラガラと車輪が石を踏む音が聞こえてきたので護衛と馬車が帰ってきたのだろう。祠で過ごした時間は思ったより長かったようで教会に行ってもそれほど長くはいられないかも知れない。
(本を借りて帰ろうかな。ランプか蝋燭を何とかできれば勉強できるし)
戻ってきた護衛達が略式の挨拶をして荷物を積み込みはじめた。ローザリアも敷物や毛布を畳んで馬車に運んだ。
あっという間に片付けが終わりナスタリア神父のエスコートで馬車に乗り込んだ。馬車の窓から名残惜しげに外を見ているとナスタリア神父が声をかけてきた。
「また来ましょう。今度はもっと時間をかけて、釣りをしてみるのも楽しいかもしれません」
釣りと聞いてローザリアの目が輝いた。
(どうやるんだろう。何を使う?)
「是非お願いします」
「はい、ナザエル枢機卿は釣りが苦手なので別の遊びを考えてもらいましょう」
「どうして苦手なんですか?」
「彼はじっとしているのが苦手でして、座ってのんびりというのが我慢できないみたいです」
「釣りは座ってするんですね。それなら確かに苦手そうです」
クスクスと笑うローザリアを見てナスタリア神父はローザリアが釣りのやり方を知らない事に気がついた。
「ローザリア様の知らない事、やってみたい事をどんどんやってみましょう」
「今日、池に行った時に気付いたんです」
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