【完結】何度出会ってもやっぱり超絶腹黒聖職者

との

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一回目 (過去)

79.ローザリア、パルフェスへ

 先頭を行くナザエル枢機卿が背負うツーハンドソードと巨大な黒馬。その後ろを教会の旗を掲げた聖騎士が進む。

 馬車3台とずらりと並ぶ聖騎士達の列は一糸乱れず応援する観衆に軽く手を上げて進んで行った。


『派手な出発は結果を霞ませるので地味にします。結果を出した時真価が分かる方が印象に残りますから。
それに我々は困窮する領地を救いに行くのです。派手な演出や無駄なパフォーマンスは不要です』

 教会と教会が信じているローザリアを応戦する者達が手を振っていた。




 王都の南の関所を抜け乾いた道を進んで行く。王都を離れるに従い元気なく葉を落とした木や枯れた下生えが増えてきた。

「王都の中はまだなんとかなっていますが、この辺りで既に木が枯れかけていますね」

「水を出したらどうでしょうか? 少しはマシにならないでしょうか」

「焼石に水にしかならないので、今日の夕方着く町からはじめた方が良いでしょう。パルフェスの町も井戸が半分以下になっているようです」

(なんでこんな酷い旱魃になったんだろう⋯⋯ジンのせい? それとも精霊を蔑ろにしてきたから?)


 パルフェスの町は王都へ入る直前に行商人や旅人が宿泊する、いわゆる宿場町として栄えていたが今は閑古鳥が鳴いているという。宿場町の割には元々井戸が少なく、現在は毎日自警団が井戸を監視して水を分配している。

(国中の大地を潤せるほどの雨を降らせることができれば良いのに)



 パルフェスの町にローザリア達がついた頃には夕闇が迫り、あちこちの家や店からランプの柔らかい灯りが見えていた。

 本当なら人が行き交い宿屋や酒場が騒がしくなる頃だが外にいる人はほとんどいない。ローザリア達の隊列が町の中心を進んでも誰も関心を寄せなかった。

 リリアーナ達の出発に時間をとられ到着が予定より遅くなりはしたが、出迎えが一人もいないのは怪しい。


「町長には今日の夕刻到着予定だと連絡してありますが⋯⋯野営地の場所は確認済みですからそこに着いてから考えましょう」

 西の広場に着き聖騎士達がテキパキとテントを立て食事の準備をはじめた。

「さてと、俺達は出迎えもしなかった町長に挨拶に行こうぜ」

 不機嫌なナザエル枢機卿とナスタリア神父、ローザリアの3人はニール達護衛と共に町長の家に向かった。


 簡単な挨拶の後町長が形ばかりの謝罪をした。

「お着きになられたと気付かず申し訳ありませんでした。ご指示の通りに西の広場は空けておきましたので存分にお使いください。
水不足でなんのおもてなしもできませんが、ご希望があれば酒と夜の供くらいならご準備できます」

「遠慮なく野営の準備をさせて頂いております。広場ではこの村の薪一本使う事はないとお約束致します」

 突き放したような物言いのナスタリア神父。さっさと席を立ち無言で部屋を出るナザエル枢機卿の後をローザリア達も続いた。


「お待ち下さい。この町はギリギリでなんとかやっている状況ですが必要な物があればできる限りのことをいたします。その事をご理解頂きたく⋯⋯」

「勿論、その為に我々は国をまわるのですから」

 冷たい物言いのナスタリア神父の横ではナザエル枢機卿が顔を背けていた。


「そっ、そうですよね。それであの、お聞きしたい事がですね⋯⋯えっと」

 町長がチラリとローザリアを見て申し訳なさそうに話しはじめた。

「精霊師の方も連れておられるのでしょうか? いえ、様がいらっしゃるのは、その、はい。勿論存じてはおりますが噂によると学園にも行かれていないそうですし。
でも、教会の精霊師様がおられるのならば王宮精霊師の方よりも⋯⋯その。
それにあの方達は結局、別の町へ行かれたようですし」

 しどろもどろの町長の話からすると王宮精霊師に頼んで失敗したことがあるのだろう。


「聖騎士はかなりおりますよ。、広場に参りましょう。そろそろ夕餉の準備ができていると思います」

 オロオロするローザリア以外は皆無表情だがかなり腹を立てているようで野営地近くに来るまで誰も口を開かなかった。



「この町は迂回するか通過すれば良かったですね」

「暫くはあんな奴ばかりだろう」

「申し訳ありません。私が不甲斐ないばかりに」

 失礼な物言いではあったが町長の言葉に納得する部分もあったローザリアはナザエル枢機卿達に頭を下げた。

「実績を示すまで不快な態度を取られる事は覚悟していました。夜の供を薦められたことは許せませんが、私が我慢ならなかったのはローザリア様の名前を間違えた事です」

 えっ私の名前? と思ったもののローザリアは別のところも気にかかった。

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