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一回目 (過去)
98.ナザエル枢機卿の鼻のムズムズ
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【足、強くする?】
(どっ、どういう事?)
【ナザちゃんみたいにガンガン登るのー】
【無の精霊の加護、身体強化】
《 コンフィーラマ 》
精霊の誘いに乗って少しだけ足に身体強化をしてみたローザリアは坂を登るスピードが少し速くなった気がした。
(これなら夜まで頑張れるかも)
初めて使う魔法は効果が低いが使い続けていればより効果的に使えるようになる。
ローザリアの動きが微妙に変わったことに気づいたナスタリア神父が振り向いて目を眇め、ナザエル枢機卿が肩をすくめたが必死で登るローザリアは全く気づいていなかった。
満天の星空の下、焚き火の枝がパチパチと勢いよく爆ぜている。食事を済ませ寝るだけになったローザリアはチラチラとナスタリア神父を見ている。
「⋯⋯この先も長いですし。ナザエル枢機卿、宜しいですか?」
「ああ、聞かなくても問題ない。無事に登頂するには必要だろう。ジャスパー、お前には聖騎士として誓ってもらう。他言無用だ」
「は!」
理由はわからないがジャスパーにとってナザエル枢機卿の命令は絶対。無条件で右手を胸に当て騎士の礼をした。
「では、あの。みんな一緒に良いですか?」
首を傾げるグレイソンから目を逸らしながらローザリアが回復をかけた。
《 トートゥム、レフェクティオー 》
6人が光に包まれ一日の疲れが取れていく。
目を見張るグレイソンとジャスパー。
「こいつも秘密だからな」
「ローザリア様は水の加護をお持ちですよね! でも、今のは光の加護の回復魔法です。どういう事ですか!?」
「ジャスパー、煩えぞ。とっとと寝ろ!」
「で、てすが。あっ、もう使えるようになられたんですか? でも、全体回復⋯⋯」
「使えるもんは使える。但し公表はできねえ、以上!」
翌日からますます道が悪くなっていった。大きな石を乗り越え小さな崖をよじ登る。以前生えていた苔は石に茶色く枯れて張り付きズルズルと足を滑らせる。
唯一ラッキーなのは虫や蛇に合わないことだろう。
3日目になると坂はどんどん急になりナスタリア神父は自分の腰に巻いたロープをローザリアに括り付けた。
「滑りそうになった時は無理せず身体の力を抜いて下さい。俺が支えますし、ナザエル枢機卿が後ろにいますから」
ナスタリア神父も疲れが出て来たのだろう。言葉が少し崩れてきた。
山に張り付くようにできた足場を登る頃にはローザリアの身体強化もかなり精度が上がってきた。手と足に身体強化をかけて山にしがみつくように登って行けるようになる頃にはグレイソンも舌を巻いていた。
(一回も泣き言言わねえし、スピードも最初の倍くらいになった)
魔法でズルをしていると思っているローザリアはできる限り迷惑にならないようにと無言で登り続けた。
4日目の昼前に滝壺に到達した。
「少し早いが飯にしよう」
グレイソンの合図にローザリアの腰からロープを外したナスタリア神父が薪に使う枝を拾いはじめた。
「薪だけは困らんな」
「乾いてて煙もないんで火も着きやすい」
普段は率先して食事の準備をするローザリアが滝を見上げて険しい顔をしていた。
(なんだろう、すごく嫌な感じがする)
【黒いケムケムだよ】
【浄化しなくちゃ】
様子を見に来たナザエル枢機卿がローザリアと並んで滝を見上げた。
「ナザエル枢機卿、私も滝に登ります」
「⋯⋯はぁ、やっぱりそうなったか」
昔からナザエル枢機卿の『鼻のムズムズ』はよく当たる。
「ここからでも届くかもしれませんが、できる限り近くから浄化したいです」
「浄化か⋯⋯ナスタリア神父を説得してくるか」
「身体強化がかなり上達したので大丈夫です。迷惑かけないように慎重に登りますから」
「まあ、話してみるしかないし。奴があんなに心配症だったのは予想外だったな」
「はあ? ダメに決まってるでしょ。あの崖を見て言ってるなんて信じられん。完全に垂直でしかも想像の何倍も長いじゃないか!」
メンバーの中で体力的に一番疲れているのはローザリアだが、ナスタリア神父の精神的疲労が半端ない。
常にローザリアの足元を気にして歩き岩を登る時は手を引く。水分補給や食事の量に気を配り、きちんと睡眠や休憩ができているか顔色のチェックをしている。
(しょうがねえよなぁ。俺がアイツの立場でもおんなじ事するだろうし⋯⋯ここまでよく我慢してた方だぜ。
ローザリアをもっと休憩させるべきだとかって、騒がなかっただけマシかもな)
ナザエル枢機卿は『さて、どうすっかな』と文句を言いながらローザリアの後ろ姿を見つめた。
(どっ、どういう事?)
【ナザちゃんみたいにガンガン登るのー】
【無の精霊の加護、身体強化】
《 コンフィーラマ 》
精霊の誘いに乗って少しだけ足に身体強化をしてみたローザリアは坂を登るスピードが少し速くなった気がした。
(これなら夜まで頑張れるかも)
初めて使う魔法は効果が低いが使い続けていればより効果的に使えるようになる。
ローザリアの動きが微妙に変わったことに気づいたナスタリア神父が振り向いて目を眇め、ナザエル枢機卿が肩をすくめたが必死で登るローザリアは全く気づいていなかった。
満天の星空の下、焚き火の枝がパチパチと勢いよく爆ぜている。食事を済ませ寝るだけになったローザリアはチラチラとナスタリア神父を見ている。
「⋯⋯この先も長いですし。ナザエル枢機卿、宜しいですか?」
「ああ、聞かなくても問題ない。無事に登頂するには必要だろう。ジャスパー、お前には聖騎士として誓ってもらう。他言無用だ」
「は!」
理由はわからないがジャスパーにとってナザエル枢機卿の命令は絶対。無条件で右手を胸に当て騎士の礼をした。
「では、あの。みんな一緒に良いですか?」
首を傾げるグレイソンから目を逸らしながらローザリアが回復をかけた。
《 トートゥム、レフェクティオー 》
6人が光に包まれ一日の疲れが取れていく。
目を見張るグレイソンとジャスパー。
「こいつも秘密だからな」
「ローザリア様は水の加護をお持ちですよね! でも、今のは光の加護の回復魔法です。どういう事ですか!?」
「ジャスパー、煩えぞ。とっとと寝ろ!」
「で、てすが。あっ、もう使えるようになられたんですか? でも、全体回復⋯⋯」
「使えるもんは使える。但し公表はできねえ、以上!」
翌日からますます道が悪くなっていった。大きな石を乗り越え小さな崖をよじ登る。以前生えていた苔は石に茶色く枯れて張り付きズルズルと足を滑らせる。
唯一ラッキーなのは虫や蛇に合わないことだろう。
3日目になると坂はどんどん急になりナスタリア神父は自分の腰に巻いたロープをローザリアに括り付けた。
「滑りそうになった時は無理せず身体の力を抜いて下さい。俺が支えますし、ナザエル枢機卿が後ろにいますから」
ナスタリア神父も疲れが出て来たのだろう。言葉が少し崩れてきた。
山に張り付くようにできた足場を登る頃にはローザリアの身体強化もかなり精度が上がってきた。手と足に身体強化をかけて山にしがみつくように登って行けるようになる頃にはグレイソンも舌を巻いていた。
(一回も泣き言言わねえし、スピードも最初の倍くらいになった)
魔法でズルをしていると思っているローザリアはできる限り迷惑にならないようにと無言で登り続けた。
4日目の昼前に滝壺に到達した。
「少し早いが飯にしよう」
グレイソンの合図にローザリアの腰からロープを外したナスタリア神父が薪に使う枝を拾いはじめた。
「薪だけは困らんな」
「乾いてて煙もないんで火も着きやすい」
普段は率先して食事の準備をするローザリアが滝を見上げて険しい顔をしていた。
(なんだろう、すごく嫌な感じがする)
【黒いケムケムだよ】
【浄化しなくちゃ】
様子を見に来たナザエル枢機卿がローザリアと並んで滝を見上げた。
「ナザエル枢機卿、私も滝に登ります」
「⋯⋯はぁ、やっぱりそうなったか」
昔からナザエル枢機卿の『鼻のムズムズ』はよく当たる。
「ここからでも届くかもしれませんが、できる限り近くから浄化したいです」
「浄化か⋯⋯ナスタリア神父を説得してくるか」
「身体強化がかなり上達したので大丈夫です。迷惑かけないように慎重に登りますから」
「まあ、話してみるしかないし。奴があんなに心配症だったのは予想外だったな」
「はあ? ダメに決まってるでしょ。あの崖を見て言ってるなんて信じられん。完全に垂直でしかも想像の何倍も長いじゃないか!」
メンバーの中で体力的に一番疲れているのはローザリアだが、ナスタリア神父の精神的疲労が半端ない。
常にローザリアの足元を気にして歩き岩を登る時は手を引く。水分補給や食事の量に気を配り、きちんと睡眠や休憩ができているか顔色のチェックをしている。
(しょうがねえよなぁ。俺がアイツの立場でもおんなじ事するだろうし⋯⋯ここまでよく我慢してた方だぜ。
ローザリアをもっと休憩させるべきだとかって、騒がなかっただけマシかもな)
ナザエル枢機卿は『さて、どうすっかな』と文句を言いながらローザリアの後ろ姿を見つめた。
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