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一回目 (過去)
102.湖の底での攻防戦
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オールを作り舟を水に浮かべた。乗り込んだのはナザエル枢機卿・ナスタリア神父・ローザリア・ニールの4人。
「もう少し左に⋯⋯あと少し進んで⋯⋯この下です!」
潜水の得意なナスタリア神父とニールがロープを片手に湖に飛び込んだ。
ローザリアの結界で息はかなり続くはずだが、波打つ湖面に見えていた2人の姿が小さくなっていくと不安になってきた。
(随分深そう⋯⋯)
「大丈夫か? 無理はするな。子供たちの声に囚われるなよ」
「はい、もう大丈夫です。ご心配をおかけしました」
「半狂乱になってたのはナスタリア神父だな。お陰で少し冷静になれた。いいもんが見れたしな」
湖を覗き込みながらナザエル枢機卿がニヤける。何を見たのか聞こうとした時、ロープが思い切り引かれゴボゴボと大きな泡が上ってきた。
「拙い! 結界が壊れた、トラップの魔道具だ!!」
船が大きく揺れナザエル枢機卿呟きを聞いたローザリアは自分の周りに結界を張り湖に飛び込んだ。
《 オービシェ 》
「くそっ! 舟の番がいねえじゃねえか!」
ナザエル枢機卿が腹立ちまぎれに船縁を叩いた。
泡の先を辿っていくとニールが木の蔓に巻き付かれ暴れているのが見えた。アイテムボックスから出したダガーナイフでニールの腕を拘束している蔓を切ると、ニールが下を指差した。
小さく頷いて下へ向けて潜っていくとナスタリア神父が長櫃を水底の中へ引き摺り込もうとする蔓と戦っていた。
ローザリアを捕まえようと伸びる蔓を凍らせる。
《 ドゥラートゥス 》
蔓の根元に向けて氷魔法を何度も打ち込むと、ナスタリア神父が凍った蔓に剣を突き立て蔓の動きが止まった。
蔓が完全に消えたことを確認したローザリアとナスタリア神父は一度舟に戻り作戦を立て直すことにした。
「くそっ、なんでローザリアが来るんだ! アンタは何やってたんだよ!!」
ゲホゲホと咳き込みながらナザエル枢機卿に八つ当たりするナスタリア神父。
「先を越されちまったんだ。しょうがねえだろ?」
「水の中なので私の方が有利かと思って⋯⋯ごめんなさい」
「いやー、加護が多いのは便利だな。益々秘密にせんとな」
開き直ったようにのほほんと返事をしたナザエル枢機卿だったがナスタリア神父に睨まれて肩をすくめた。
「次は俺が行く。ナスタリア神父が舟の番だ。水と水もイマイチだが力技ならなんとかなんだろ」
ナスタリア神父は火の加護持ち。水の中の戦いは分が悪い。
「私も行きます。また長櫃を引き摺り込もうとするなら地面を固めてしまいます」
ニールとナザエル枢機卿が長櫃に手をかけると先ほどと同じ蔓が伸びてきた。少し離れたところで見ていたローザリアが一気に氷魔法を叩き込み水底を土魔法で固めてしまう。
ロープを十文字にかけた長櫃を見ながらローザリアが上を指差した。
顔を見合わせたナザエル枢機卿とニールが舟に向かった。
トラップを警戒しながら様子を見ているとぐらりと大きく揺れて長櫃が持ち上がった。ゆっくりと上がりはじめた長櫃が少し斜めにかしいた瞬間、吹き出した黒い靄に長櫃が包まれた。
(拙い! 黒い靄を浄化して!)
【おっけー】
《 プルガーティオ 》
いつもと同じ緊迫感のない楽しげな声がして眩い浄化の光が溢れた。
「痛いよ⋯⋯苦し⋯⋯加護をちょうだい」
子供達の悲鳴が聞こえてくる。
(一緒には行けないけど、帰ろうね)
長櫃から溢れ続けていた靄が消え湖面の舟が見えてきた。
長櫃は大きすぎて舟に持ち上げられなかったのでロープで牽引して戻ることになった。
舟を岸に着けて全員で長櫃を引き上げた。どっしりした大理石でできた長櫃には大きな鍵が取り付けられていた。蓋には古代文字が書かれ見たことのない紋章が描かれていた。
ローザリアが伸ばした手をナスタリア神父が止めた。
「駄目だ。いつもの石碑とはわけが違う」
「これを読めたら犯人の狙いがわかるかも。多分この子達は加護を得られなかった子達だけど、なぜこんな場所に沈められたのか知らなくちゃいけないと思う」
「ちょっとでも様子がおかしかったらすぐやめさせる」
「わかった」
ローザリアがゆっくりと蓋に手を当てた。
「もう少し左に⋯⋯あと少し進んで⋯⋯この下です!」
潜水の得意なナスタリア神父とニールがロープを片手に湖に飛び込んだ。
ローザリアの結界で息はかなり続くはずだが、波打つ湖面に見えていた2人の姿が小さくなっていくと不安になってきた。
(随分深そう⋯⋯)
「大丈夫か? 無理はするな。子供たちの声に囚われるなよ」
「はい、もう大丈夫です。ご心配をおかけしました」
「半狂乱になってたのはナスタリア神父だな。お陰で少し冷静になれた。いいもんが見れたしな」
湖を覗き込みながらナザエル枢機卿がニヤける。何を見たのか聞こうとした時、ロープが思い切り引かれゴボゴボと大きな泡が上ってきた。
「拙い! 結界が壊れた、トラップの魔道具だ!!」
船が大きく揺れナザエル枢機卿呟きを聞いたローザリアは自分の周りに結界を張り湖に飛び込んだ。
《 オービシェ 》
「くそっ! 舟の番がいねえじゃねえか!」
ナザエル枢機卿が腹立ちまぎれに船縁を叩いた。
泡の先を辿っていくとニールが木の蔓に巻き付かれ暴れているのが見えた。アイテムボックスから出したダガーナイフでニールの腕を拘束している蔓を切ると、ニールが下を指差した。
小さく頷いて下へ向けて潜っていくとナスタリア神父が長櫃を水底の中へ引き摺り込もうとする蔓と戦っていた。
ローザリアを捕まえようと伸びる蔓を凍らせる。
《 ドゥラートゥス 》
蔓の根元に向けて氷魔法を何度も打ち込むと、ナスタリア神父が凍った蔓に剣を突き立て蔓の動きが止まった。
蔓が完全に消えたことを確認したローザリアとナスタリア神父は一度舟に戻り作戦を立て直すことにした。
「くそっ、なんでローザリアが来るんだ! アンタは何やってたんだよ!!」
ゲホゲホと咳き込みながらナザエル枢機卿に八つ当たりするナスタリア神父。
「先を越されちまったんだ。しょうがねえだろ?」
「水の中なので私の方が有利かと思って⋯⋯ごめんなさい」
「いやー、加護が多いのは便利だな。益々秘密にせんとな」
開き直ったようにのほほんと返事をしたナザエル枢機卿だったがナスタリア神父に睨まれて肩をすくめた。
「次は俺が行く。ナスタリア神父が舟の番だ。水と水もイマイチだが力技ならなんとかなんだろ」
ナスタリア神父は火の加護持ち。水の中の戦いは分が悪い。
「私も行きます。また長櫃を引き摺り込もうとするなら地面を固めてしまいます」
ニールとナザエル枢機卿が長櫃に手をかけると先ほどと同じ蔓が伸びてきた。少し離れたところで見ていたローザリアが一気に氷魔法を叩き込み水底を土魔法で固めてしまう。
ロープを十文字にかけた長櫃を見ながらローザリアが上を指差した。
顔を見合わせたナザエル枢機卿とニールが舟に向かった。
トラップを警戒しながら様子を見ているとぐらりと大きく揺れて長櫃が持ち上がった。ゆっくりと上がりはじめた長櫃が少し斜めにかしいた瞬間、吹き出した黒い靄に長櫃が包まれた。
(拙い! 黒い靄を浄化して!)
【おっけー】
《 プルガーティオ 》
いつもと同じ緊迫感のない楽しげな声がして眩い浄化の光が溢れた。
「痛いよ⋯⋯苦し⋯⋯加護をちょうだい」
子供達の悲鳴が聞こえてくる。
(一緒には行けないけど、帰ろうね)
長櫃から溢れ続けていた靄が消え湖面の舟が見えてきた。
長櫃は大きすぎて舟に持ち上げられなかったのでロープで牽引して戻ることになった。
舟を岸に着けて全員で長櫃を引き上げた。どっしりした大理石でできた長櫃には大きな鍵が取り付けられていた。蓋には古代文字が書かれ見たことのない紋章が描かれていた。
ローザリアが伸ばした手をナスタリア神父が止めた。
「駄目だ。いつもの石碑とはわけが違う」
「これを読めたら犯人の狙いがわかるかも。多分この子達は加護を得られなかった子達だけど、なぜこんな場所に沈められたのか知らなくちゃいけないと思う」
「ちょっとでも様子がおかしかったらすぐやめさせる」
「わかった」
ローザリアがゆっくりと蓋に手を当てた。
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