109 / 191
一回目 (過去)
109.お子ちゃまにお仕置き
しおりを挟む
「しっ執事のネイサンと申します。本日はようこそおいで下さいました?」
「まあいいだろう。ほら、やってみろ。執事に負けてるぞ」
相変わらず首根っこを掴んだままのナザエル枢機卿がハリーを揺さぶった。
「ぐえっ! とっ、当主のハリー・ノールケルト子爵と申します。本日はようこそおいで下さいました!!」
ヤケクソで名前を名乗ったハリーは涙目でナザエル枢機卿を睨んでいるが、ハリーを掴んだままのナザエル枢機卿はご機嫌で挨拶を返した。
「よし、俺は精霊教会枢機卿のナザエル、後ろにいるのはローザリア様。ナスタリア神父と護衛のニール達だ」
「あっ、紹介略した~!」
目を眇めたナザエル枢機卿が片膝をついてハリーをうつ伏せに抱え込んだ。
パン、パン、パン、パン、パン、パン、⋯⋯
「痛え、やめろ! 何するんだよ!!」
「お仕置きにケツを叩いてる。まだ10回もやってないがな。来客に真面な対応もできん奴はお子ちゃまと一緒だろ? 子爵が聞いて呆れる」
ナザエル枢機卿の手から逃げ出し部屋の隅で小さくなって睨むハリーと途方に暮れるネイサン。胡座をかいて座り込んだナザエル枢機卿はパンっとひとつ手を叩いて話しはじめた。
「さて、ようやく話が進めそうだ。何がどうなってるか話を聞きたい。まずは⋯⋯この部屋には何故何もないんだ?」
ハリーとネイサンが顔を見合わせた。
「かっ、金がないから売った」
「酒と女を買う金はあるのにか? まあいいだろう。で、ハリーは何歳でいつ子爵になった?」
ハリー・ノールケルト子爵19歳。前子爵と娼婦の間にできた一人息子で、半年前に父親が亡くなり子爵位を継ぐまでは別の街で暮らしていた。
小銭を稼いでは遊び呆け気楽な日々を送っていた。ネイサンは幼馴染でいつも一緒につるんでいた。
「母ちゃんはとっくに別の男と逃げてるし、領地持ちの貴族なら贅沢できると思ってきたんだ。まあ、ちょうど俺もネイサンもちょっとヤバくてさあ、ねぐらを変えたかったし。
そしたら屋敷はボロボロで借金まみれ。街はあんなだろ? ふざけんなって」
「つまりお前達はヘマをやって逃げ出し、金目当てにここへ転がり込んだ。だが、現状を知って当てが外れ遊び呆けてた」
「え~、そんなふうに言うとさぁなんか俺達悪い奴っぽいじゃん。ネイサンも俺も健気~に生きてきたのにさぁ。
俺達親に逃げられて、こーんなちっこい頃から頑張ってきたんだよ。なぁ、ネイサン」
こーんなと言いながら親指と人差し指を4インチくらい離して見せつける。
領主としての必要な知識がないどころか恐らくは文字も読めず計算もできないのではないだろうか。
「金はねえし街はゴロツキだらけ⋯⋯俺らにどうしろって言うんだよ」
「知ったこっちゃない⋯⋯と言いたいところだが、領地経営する気がないんなら爵位を返上すりゃあいい。お前達は真面目に働き俺達は水不足を何とかして次の目的地に移動する」
簡単な話だと言わんばかりに肩をすくめるナザエル枢機卿。
「簡単に言うよなー。アンタみたいに偉そーに護衛引き連れてロリコン遊びしてる奴に言われてもねえ。
どーせ教会の金で優雅に暮らしてんだろ? よくわかんねえけど枢機卿とかってすっげえ偉そうじゃん」
「ツッコミどころ満載だな。ったく」
はぁ~と気の抜けたような溜め息をついたナザエル枢機卿は頭をガシガシ掻いた。
「あの、ナザエル枢機卿はこの街の水不足解消に来られたんですよね。それやったら少しはマシになりますか?」
「⋯⋯マシって言われてもなあ。この街はクソが集まりすぎてて話にならん」
「ですよねぇ」
がっくりと肩を落としたネイサンが座り込んだ。
「こいつ平民学校行ったからさ、俺より学があんだよね。なあ、コイツだけでも雇ってくんねえかな?」
ハリーはろくでなしだが友達思いではあるらしい。
「そしたらこんな街出てって前みたいにのんびり暮らすよ。その方がめっちゃ気楽だし」
「ハリー! お前、俺がいなかったら生きてけねえだろうが! 名前も真面に書けねえし、足し算だって」
「足し算くらいできるわ!」
「だったら58足す41はいくつだ!?」
「数字がデカすぎんだろうが!」
幼稚な喧嘩を見ながらローザリアは一生懸命頭の中で足し算していた。
(えっと、ん? いくら?)
「交換条件ってわかるか?」
「まあいいだろう。ほら、やってみろ。執事に負けてるぞ」
相変わらず首根っこを掴んだままのナザエル枢機卿がハリーを揺さぶった。
「ぐえっ! とっ、当主のハリー・ノールケルト子爵と申します。本日はようこそおいで下さいました!!」
ヤケクソで名前を名乗ったハリーは涙目でナザエル枢機卿を睨んでいるが、ハリーを掴んだままのナザエル枢機卿はご機嫌で挨拶を返した。
「よし、俺は精霊教会枢機卿のナザエル、後ろにいるのはローザリア様。ナスタリア神父と護衛のニール達だ」
「あっ、紹介略した~!」
目を眇めたナザエル枢機卿が片膝をついてハリーをうつ伏せに抱え込んだ。
パン、パン、パン、パン、パン、パン、⋯⋯
「痛え、やめろ! 何するんだよ!!」
「お仕置きにケツを叩いてる。まだ10回もやってないがな。来客に真面な対応もできん奴はお子ちゃまと一緒だろ? 子爵が聞いて呆れる」
ナザエル枢機卿の手から逃げ出し部屋の隅で小さくなって睨むハリーと途方に暮れるネイサン。胡座をかいて座り込んだナザエル枢機卿はパンっとひとつ手を叩いて話しはじめた。
「さて、ようやく話が進めそうだ。何がどうなってるか話を聞きたい。まずは⋯⋯この部屋には何故何もないんだ?」
ハリーとネイサンが顔を見合わせた。
「かっ、金がないから売った」
「酒と女を買う金はあるのにか? まあいいだろう。で、ハリーは何歳でいつ子爵になった?」
ハリー・ノールケルト子爵19歳。前子爵と娼婦の間にできた一人息子で、半年前に父親が亡くなり子爵位を継ぐまでは別の街で暮らしていた。
小銭を稼いでは遊び呆け気楽な日々を送っていた。ネイサンは幼馴染でいつも一緒につるんでいた。
「母ちゃんはとっくに別の男と逃げてるし、領地持ちの貴族なら贅沢できると思ってきたんだ。まあ、ちょうど俺もネイサンもちょっとヤバくてさあ、ねぐらを変えたかったし。
そしたら屋敷はボロボロで借金まみれ。街はあんなだろ? ふざけんなって」
「つまりお前達はヘマをやって逃げ出し、金目当てにここへ転がり込んだ。だが、現状を知って当てが外れ遊び呆けてた」
「え~、そんなふうに言うとさぁなんか俺達悪い奴っぽいじゃん。ネイサンも俺も健気~に生きてきたのにさぁ。
俺達親に逃げられて、こーんなちっこい頃から頑張ってきたんだよ。なぁ、ネイサン」
こーんなと言いながら親指と人差し指を4インチくらい離して見せつける。
領主としての必要な知識がないどころか恐らくは文字も読めず計算もできないのではないだろうか。
「金はねえし街はゴロツキだらけ⋯⋯俺らにどうしろって言うんだよ」
「知ったこっちゃない⋯⋯と言いたいところだが、領地経営する気がないんなら爵位を返上すりゃあいい。お前達は真面目に働き俺達は水不足を何とかして次の目的地に移動する」
簡単な話だと言わんばかりに肩をすくめるナザエル枢機卿。
「簡単に言うよなー。アンタみたいに偉そーに護衛引き連れてロリコン遊びしてる奴に言われてもねえ。
どーせ教会の金で優雅に暮らしてんだろ? よくわかんねえけど枢機卿とかってすっげえ偉そうじゃん」
「ツッコミどころ満載だな。ったく」
はぁ~と気の抜けたような溜め息をついたナザエル枢機卿は頭をガシガシ掻いた。
「あの、ナザエル枢機卿はこの街の水不足解消に来られたんですよね。それやったら少しはマシになりますか?」
「⋯⋯マシって言われてもなあ。この街はクソが集まりすぎてて話にならん」
「ですよねぇ」
がっくりと肩を落としたネイサンが座り込んだ。
「こいつ平民学校行ったからさ、俺より学があんだよね。なあ、コイツだけでも雇ってくんねえかな?」
ハリーはろくでなしだが友達思いではあるらしい。
「そしたらこんな街出てって前みたいにのんびり暮らすよ。その方がめっちゃ気楽だし」
「ハリー! お前、俺がいなかったら生きてけねえだろうが! 名前も真面に書けねえし、足し算だって」
「足し算くらいできるわ!」
「だったら58足す41はいくつだ!?」
「数字がデカすぎんだろうが!」
幼稚な喧嘩を見ながらローザリアは一生懸命頭の中で足し算していた。
(えっと、ん? いくら?)
「交換条件ってわかるか?」
18
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
二周目聖女は恋愛小説家! ~探されてますが、前世で断罪されたのでもう名乗り出ません~
今川幸乃
恋愛
下級貴族令嬢のイリスは聖女として国のために祈りを捧げていたが、陰謀により婚約者でもあった王子アレクセイに偽聖女であると断罪されて死んだ。
こんなことなら聖女に名乗り出なければ良かった、と思ったイリスは突如、聖女に名乗り出る直前に巻き戻ってしまう。
「絶対に名乗り出ない」と思うイリスは部屋に籠り、怪しまれないよう恋愛小説を書いているという嘘をついてしまう。
が、嘘をごまかすために仕方なく書き始めた恋愛小説はなぜかどんどん人気になっていく。
「恥ずかしいからむしろ誰にも読まれないで欲しいんだけど……」
一方そのころ、本物の聖女が現れないため王子アレクセイらは必死で聖女を探していた。
※序盤の断罪以外はギャグ寄り。だいぶ前に書いたもののリメイク版です
ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜
嘉神かろ
恋愛
魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。
妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。
これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。
運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。
ぽんぽこ狸
恋愛
気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。
その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。
だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。
しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。
五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる