160 / 191
ループ
159.ドルフとの再会
しおりを挟む
腰を抜かしたまま口をはくはくさせているマッケンジー神父を教会に運び、全てが終わるまで口外しないと言う約束を取り付けてローザリア達はパルフェスの石碑に飛んだ。
パルフェスの山は緑に溢れ遠くから木樵が木を切る音が聞こえてくる。満々と澄んだ水を湛えた池の近くからは小鳥の囀る声も聞こえてくる。
「長閑だな。これだけ大量の水がなくなるとか信じらんねえ」
ナザエル神父の言う通り平和すぎて眠くなりそうな景色に間違って別の場所に来たのかと思うほどだった。
「前世ではどんな様子だったの?」
「池の近くは木や草が生えていたけどもっとまばらだったし、山裾に行くに従って枯れ木ばかりになってた。
木樵は仕事を諦めて山を降りていて鳥や虫達もみんないなくなってた」
「お前ら、どこから来た!? この山は登っちゃいけねえ山だぞ!!」
「そう言うお前も登ってるがな」
小柄だがよく鍛えた身体つきの男が木の陰から現れてナザエル神父と睨み合った。
「ドルフさんだ⋯⋯」
前世であった木樵のドルフは以前より日焼けして白髪も少ない。
「なんでワシの名前を知っとるんだ?」
訝しげに目を眇めたドルフが肩に背負っていた鞄を地面に下ろし腰を少し落として構えた。
「戦闘体制か? やめとけ、あんたの邪魔をする気はねえんだ。俺達は直ぐ帰る」
「山を荒らすやつをタダで返すと思ってんのかよ!」
一触即発のドルフとナザエル神父の横にニールが並ぶと『ふん、卑怯もんが!』と言いながら鼻で笑った。
「あの、あのね⋯⋯山の神様にご挨拶に来ただけだから。驚かせてごめんなさい。ドルフさんはお昼ごはん? それともお昼寝?」
「⋯⋯」
「池にご挨拶をしたら帰るから⋯⋯えーっと、少し離れててもらえると嬉しいです」
引き攣った笑みを浮かべながらドルフを説得するローザリアをジロジロと見たドルフが、地面にどっかりと腰を下ろして鞄の中を漁りはじめた。
「ワシは飯を食う! お前らから目は離さんからな。おかしな事をしたらタダじゃおかん」
ドルフは鞄の近くにある斧をチラリと見て威嚇した。
これからやる事をドルフに見られたくないが梃子でも動きそうにない。胡座をかいてパンを齧りながらローザリア達の一挙手一投足を追いかけている。
「なんとかなるでしょう。ドルフさんは信用できる人だし」
ローザリアの言葉に誉められたはずのドルフが反応した。
「はあ? 嬢ちゃんも会ったのはまちげーなく初めてだ! 信用できるかどうかわかるわけがねえ」
「私が知ってるからいいの。ナザエル神父達も昔はそう思ってたから大丈夫」
唖然とするドルフを無視して池に向き直ったローザリアが杖を取り出した。
「この場合ってどうすればいいのかわからないわ」
【ご挨拶~】
【山の神様ぁ、けんげん!】
《 マニフェスタティオ 》
精霊の言葉のままに呪文を唱えたローザリアの杖から光が溢れ、池の水が渦を巻きはじめた。
「な、な、何しやがる!! 池が!」
パンを放り出して駆け寄ってきたドルフをナザエル神父とニールが羽交締めにした。
「爺さん、黙って見てろ!」
「煩い煩い煩い! 離しやがれ! あの杖ひっぺがしてやる!」
ドルフ達の攻防を余所に池の水は鎮まりローザリアの前に一本の道ができた。
「なんじゃありゃ」
ドルフが呆然としながら呟いた。
ローザリアが石碑の前まで降りて行き膝をついて頭を垂れると、大人の膝くらいの背丈の精霊が石碑の上に現れた。どっかりと石碑に座る姿はずんぐりむっくりのドワーフに似ている。
【精霊王の愛し子が再びこの地に来てくれたなんて⋯⋯今日は最高の日だね】
「地の精霊ノームとお呼びしても?」
【うん、ローザリアと一緒にいる子達との繋がりが益々強くなったね。そう言う僕もね⋯⋯】
嬉しそうに笑うノームはぽんぽこのお腹を揺らして足をパタパタとさせている。
ノームの話ではホルステン伯爵領の火山ではサラマンダーと、ニコシア侯爵領ではウンディーネとの繋がりが強まったらしい。
【今までより強い力が使えるようになったから気をつけて。特にウンディーネはお調子者だから加減知らずなんだ】
【ひど~い、ウンディーネはいい子だもん!】
【たまーに無茶するだけー】
頬を膨らませたウンディーネがサラマンダーを追いかけ尻尾の火に水をかけようとしている。
【あそこには地の加護を持つ仲間も連れて行くと良い。そうすれば僕も手伝いやすいから】
「ジャスパー?」
【そうそう、彼は面白いんだよね~。頑固で思い込みが激しくて、直ぐ突っ走る。ジェイクが喋るようになったら⋯⋯彼はもっと面白いから楽しみなんだ】
「そうか、ジャスパーはまだ赤ちゃんなんだ」
【でも、スコルはローザリアを待ってるよ。自分が最後だって拗ねてるからニールをお土産代わりに貸してあげると良いかな】
パルフェスの山は緑に溢れ遠くから木樵が木を切る音が聞こえてくる。満々と澄んだ水を湛えた池の近くからは小鳥の囀る声も聞こえてくる。
「長閑だな。これだけ大量の水がなくなるとか信じらんねえ」
ナザエル神父の言う通り平和すぎて眠くなりそうな景色に間違って別の場所に来たのかと思うほどだった。
「前世ではどんな様子だったの?」
「池の近くは木や草が生えていたけどもっとまばらだったし、山裾に行くに従って枯れ木ばかりになってた。
木樵は仕事を諦めて山を降りていて鳥や虫達もみんないなくなってた」
「お前ら、どこから来た!? この山は登っちゃいけねえ山だぞ!!」
「そう言うお前も登ってるがな」
小柄だがよく鍛えた身体つきの男が木の陰から現れてナザエル神父と睨み合った。
「ドルフさんだ⋯⋯」
前世であった木樵のドルフは以前より日焼けして白髪も少ない。
「なんでワシの名前を知っとるんだ?」
訝しげに目を眇めたドルフが肩に背負っていた鞄を地面に下ろし腰を少し落として構えた。
「戦闘体制か? やめとけ、あんたの邪魔をする気はねえんだ。俺達は直ぐ帰る」
「山を荒らすやつをタダで返すと思ってんのかよ!」
一触即発のドルフとナザエル神父の横にニールが並ぶと『ふん、卑怯もんが!』と言いながら鼻で笑った。
「あの、あのね⋯⋯山の神様にご挨拶に来ただけだから。驚かせてごめんなさい。ドルフさんはお昼ごはん? それともお昼寝?」
「⋯⋯」
「池にご挨拶をしたら帰るから⋯⋯えーっと、少し離れててもらえると嬉しいです」
引き攣った笑みを浮かべながらドルフを説得するローザリアをジロジロと見たドルフが、地面にどっかりと腰を下ろして鞄の中を漁りはじめた。
「ワシは飯を食う! お前らから目は離さんからな。おかしな事をしたらタダじゃおかん」
ドルフは鞄の近くにある斧をチラリと見て威嚇した。
これからやる事をドルフに見られたくないが梃子でも動きそうにない。胡座をかいてパンを齧りながらローザリア達の一挙手一投足を追いかけている。
「なんとかなるでしょう。ドルフさんは信用できる人だし」
ローザリアの言葉に誉められたはずのドルフが反応した。
「はあ? 嬢ちゃんも会ったのはまちげーなく初めてだ! 信用できるかどうかわかるわけがねえ」
「私が知ってるからいいの。ナザエル神父達も昔はそう思ってたから大丈夫」
唖然とするドルフを無視して池に向き直ったローザリアが杖を取り出した。
「この場合ってどうすればいいのかわからないわ」
【ご挨拶~】
【山の神様ぁ、けんげん!】
《 マニフェスタティオ 》
精霊の言葉のままに呪文を唱えたローザリアの杖から光が溢れ、池の水が渦を巻きはじめた。
「な、な、何しやがる!! 池が!」
パンを放り出して駆け寄ってきたドルフをナザエル神父とニールが羽交締めにした。
「爺さん、黙って見てろ!」
「煩い煩い煩い! 離しやがれ! あの杖ひっぺがしてやる!」
ドルフ達の攻防を余所に池の水は鎮まりローザリアの前に一本の道ができた。
「なんじゃありゃ」
ドルフが呆然としながら呟いた。
ローザリアが石碑の前まで降りて行き膝をついて頭を垂れると、大人の膝くらいの背丈の精霊が石碑の上に現れた。どっかりと石碑に座る姿はずんぐりむっくりのドワーフに似ている。
【精霊王の愛し子が再びこの地に来てくれたなんて⋯⋯今日は最高の日だね】
「地の精霊ノームとお呼びしても?」
【うん、ローザリアと一緒にいる子達との繋がりが益々強くなったね。そう言う僕もね⋯⋯】
嬉しそうに笑うノームはぽんぽこのお腹を揺らして足をパタパタとさせている。
ノームの話ではホルステン伯爵領の火山ではサラマンダーと、ニコシア侯爵領ではウンディーネとの繋がりが強まったらしい。
【今までより強い力が使えるようになったから気をつけて。特にウンディーネはお調子者だから加減知らずなんだ】
【ひど~い、ウンディーネはいい子だもん!】
【たまーに無茶するだけー】
頬を膨らませたウンディーネがサラマンダーを追いかけ尻尾の火に水をかけようとしている。
【あそこには地の加護を持つ仲間も連れて行くと良い。そうすれば僕も手伝いやすいから】
「ジャスパー?」
【そうそう、彼は面白いんだよね~。頑固で思い込みが激しくて、直ぐ突っ走る。ジェイクが喋るようになったら⋯⋯彼はもっと面白いから楽しみなんだ】
「そうか、ジャスパーはまだ赤ちゃんなんだ」
【でも、スコルはローザリアを待ってるよ。自分が最後だって拗ねてるからニールをお土産代わりに貸してあげると良いかな】
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
594
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる