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魔石と牙

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 私は激しい爆発の音でやっと目を覚ました。


 「ここはどこなの?私は木の下でお昼寝をしていたはずなのに・・・」


 私が周りを見渡すとそこは炎の海に覆われていて、たくさんの炎が生き物ように蠢いていた。


 「もしかして・・・私・・・寝相が悪くて、近くの火山の噴火口にでも落ちてしまったのかしら?」


 燃え盛る炎を見て私は、ここを火山の噴火口だと思ったのである。


 「やってしまったわ。こんなところまでゴロゴロと転がってしまったのね。早くここから出ないとプリンツちゃんが寂しがってしまうわ。私の肉体ちゃん、ここから脱出したいので、力を貸してちょうだいね」


 私は肉体に声を掛けてから、地面を軽く蹴ってジャンプした。するとすぐに太陽がギラギラと照りつける青空が見え、白くふわふわの雲の中まで飛んでいってしまった。


 「肉体ちゃんやりすぎよ。噴火口から出るくらいでよかったのに」


 私は雲の上まで来ると勢いはおさまり、そのまま下に落下していく。


 「これがスカイダビングってやつかしら」


 私の白のワンピースがバタバタと音を立ててはためいていて、私は心地よい風圧を全身で感じなら、落ちていく地面の方に目をやった。そこには火山はなく、クレーターのように大きく窪んだ地面とその周りに蟻のような小さな魔獣の姿を確認することができた。


 「もしかして、あれがオークなのかしら?」


 私がいたのはオークの森なので、蟻のように小さく見える魔獣はオークだと推測した。


 「わかったわ。私が寝ている間に巨大な隕石が落ちてきたのね。だからクレーターのような大きな窪みがあり、火山の噴火口のように炎が溢れていたのね。さて、どうしようかしら?このままあのオークちゃん達を退治して、貴重な牙を頂こうかしら」


 私はヘンドラーの屋敷の一部を寝相の悪さで大破してしまった。しかも、大破した部屋の修理をヘンドラーに丸投げにしてきたのである。なので、何か手土産を持って帰らないといけないと思っていた。

 
 「オークちゃん。悪いけどあなた達の牙を私にちょうだいね」


 私はワンピースをパラグライダーのように上手く操作してクレーターの穴に落ちないようにうまく落下することに成功した。


 「ヨイショ。無事に着地できたわ」


 私の強靭な肉体は500m程の高さから降りてもびくともしないのである。


 「・・・」


 オーク達は私の姿を見て口をポカーンと開けて唖然としている。


 「お前・・・生きていたのか」


 最初に言葉を発したのはオークキングである。


 「・・・」


 私にはオークの言葉はわからない。


 「コイツはとんでもない化け物だ!しかし、俺たちオーク族はどんな強敵にも屈することはしないプライドの高い種族だ!全員で戦えばこの化け物を倒すことができるはずだ!恐怖は捨てろ!命を惜しむな!しかしオークとしてプライドは捨てるな!」


 オークキングは威勢良く大声で叫び全てのオークに勇気を与えた。


 「あれ?このオークちゃん牙生えてないわ?」

 「お前がへし折ったのだろ!」

 両手の骨が砕けているオークキングだが、オークキングとしてのプライドは捨ててはいない。オークキングは自らの肉体を武器にして私にタックルをかましてきた。


 「邪魔よ!」


 私が軽く手で叩くとオークキングは天高く飛んでいき星となった。しかし、一瞬の出来事だったので、オーク達はオークキングが星となって死んだことを理解できていない。


 「みんな!キング様に続け!」


 2000体ものオークが私に突っ込んできた。


 「多すぎですぅ~」


 私は満員電車に押し込まれたようにすし詰め状態になる。その状態でオークたちは必死で私を丸太で殴りつける。


 「ごめんね!牙だけちょうだいね」


 私はオークの口を強引に開き牙を抜き取ると、軽く叩いてオークを群れから弾き飛ばす。それを何度も何度も繰り返した。私はこの流れ作業を30分ほど続けて、全てのオークを消し去った。


 「はぁ~大変だったわ。でも、これだけたくさんのオークの牙があれば部屋の修理費になるかもね」



 私は満足げにニコニコと笑っていた。


 「ハツキお姉ちゃん・・・」


 全てのオークが星となった後ようやく隠れていたプリンツが姿を見せた。


 「プリンツちゃん。やっと到着したのね!」

 「・・・」

 「さて、ヴォルフロードさんのためにオークキングを退治しなくちゃね」

 「もう・・・いい」

 「えっ!でも、ふうつのオークちゃんからは牙はもらったから、本命であるオークキングちゃんの牙ももらわないとね!」

 「もう、いないからいいの」

 「さては、私に恐れをなして逃げたのね!」


 私は最初に退治した大きなオークがオークキングだと知らなかった。


 「残念だわ。オークキングちゃんの牙ならかなりのお金がゲットできたのかもしれないのに」


 私はガックリと肩を落とす。


 「ハツキお姉ちゃん。そこら中に落ちている魔石を拾えばお金になるよ」


 私は辺りを見渡すとたくさんの青い魔石が転がっていた。そして、一つだけ赤く光る魔石があった。


 「本当だわ!なんでこんなにたくさんの魔石があるのかしら」

 「ハツキお姉ちゃん。魔獣を倒すと体から魔石が浮かび上がるのは知っているよね」

 「もちろんよ」

 「魔石は魔獣を退治した人に所有権があるので、魔獣の死体がなければ魔石は所有者の近く落ちてくるんだ」

 「それは便利なことね」

 「そして、その赤い魔石はオークキングの魔石なんだ」

 「えっ!いつの間にオークキングちゃんを倒したのかしら?」

 「最初にぶっ飛ばしたのがオークキング!」


 プリンツは怒ったかのように大声で叫ぶ。


 「そうだったのね。でも牙はなかったわ」

 「どうせ、お姉ちゃんに噛み付いて牙が折れたのだよ」

 

 オークキングの牙はクレーターの中に落ちている。


 「まぁ、いいわ。でもなんで赤い魔石がオークキングだとわかるの?」

 「魔石はね、魔獣の強さによって色が違うんだよ。赤色の魔石は魔獣でも最上位クラスの魔石になるんだ」

 「そういえば、プリンツちゃんのお兄ちゃんたちも赤い魔石だったわね」

 「2人のお兄ちゃんはヴォルフ族でもお父さんの次に強かったからね」

 「ごめんね。悲しいことを思い出させて」

 「気にしてないよ」

 「それならよかったわ。さて、どうやってこの多量の魔石と牙を持って帰ろうかしら」

 
 私は自分の周りの落ちている膨大な魔石と牙を、どうやって持って帰ろうか迷っていた。

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