異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin

文字の大きさ
93 / 116

黒天使

しおりを挟む

 「ええーーーーー」


 ブランシュの悲鳴が部屋の中をこだまする。


 「ほ・・・本当なの?」


 ブランシュは腰を抜かして床に倒れ込んでいた。


 「本当よ!白銀狐ちゃんと和平を結んできたの。これが和平の証の品よ」


 私は白銀狐の毛皮と10体分の雪狐の毛皮をブランシュに渡した。


 「ごめんね、ブランシュちゃん。お母様の仇を討つことができなくて・・・」

 「いえ、そんな事はないわよ。白銀狐を討伐するなんて不可能だし、それに、悪いのは白銀狐ではなく、雪狐を勝手に討伐したアードラー達だとわかっているわ。白銀狐は仲間を殺された復讐でオランジェザフト帝国を雪の大地に変えてしまったけど、それをまた復讐でやり返したら、結局は復讐の連鎖が続くだけだわ。和平を結ぶのが1番平和的な解決だと思うわ。でも、雪の大地に変わってしまった土地が元に戻らないと白銀狐とオランジェザフト帝国の戦いは解決しないかもしれないわ」

 「雪の大地は私が雪だるまちゃんを作って緑の大地に戻したわよ」

 「えっ???雪だるまちゃん?」

 「え~と、その~・・・白銀狐ちゃんが雪の像を作って雪の大地を緑の大地に戻してくれたのよ」

 「雪の像を作って緑の大地に戻してくれたの?そんなことができるのかしら?」

 「できちゃったのよ!見に行けば納得すると思うわ」

 
 『ドンドン・ドンドン』


 部屋の扉をノックする音がした。


 「ブランシュ、私だ。0の少女が来ていると聞いたが、私からもお礼を言わせてもらっていいかな」

 「ハツキちゃん、お父様が会いたいと言ってるけど部屋に入れてもいいかしら」

 「いいわよ」


 ブランシュは扉を開けてメルクーア大公を中へ入れた。

 ※メルクーア大公 身長181cm  肩まで伸びた栗色の髪のイケメン。瞳はブルーで涼しげな目をしている。性格はクールであまり感情を表に出さないが、亡くなった婚約者であるモンブランを今でも愛している一途な男性である。


 「初めまして、0の少女のハツキさん。あなたのことは娘やシェーネさん達から聞いていたので、一度お礼を言いたいと思っていました。あなたの存在が娘に勇気を与えてくれた結果、娘は呪いを解除することができました。本当にありがとう」


 メルクーア大公は平民の私に深々と頭を下げた。


 「頭をお上げになってください。私は何もしていません。呪いが解除できたのは、皆さんがブランシュちゃんの心の支えになってくれたおかげです」

 「あなたは本当に娘の話通りの方ですね。決して自分のした事を誇らずに相手を尊重する素晴らしい人物です」


 メルクーア大公は笑みを浮かべる。


 「あら、お父様が笑うなんて珍しいわね」

 「そうか、俺はいつもと何も変わらないぞ」


 2人が仲睦まじく話す姿を見て私は心が癒される。


 「それよりもブランシュ、テーブルの上に散乱している素材は、もしかして雪狐の毛皮じゃないのか?」


 メルクーア大公の笑みが消えた。


 「これは・・・あの・・・その・・・冒険者『黒天使』さんのお友達のハツキちゃんが持ってきてくれたのです」

 「冒険者『黒天使』・・・もしかして、お前に火炎竜王の鱗を譲ってくれた冒険者のことか?」

 「はい、お父様。実は『黒天使』さんは私の呪いを解除するだけでなく、白銀狐と和平を結ぶために単独で動いてくれていたのです。そして、和平を結ぶことに成功して、その証として白銀狐の毛皮と雪狐の毛皮を持ち帰ってくれたのです」

 「本当なのか?白銀狐は雪狐を討伐して復讐に来ないのか?」

 「大丈夫です・・・よねハツキちゃん?」


 ブランシュは作り話に限界を感じて私にパスをした。


 「え・・・ええ。そうです。『黒天使』さんは白銀狐と和平を結んだ証拠として、雪狐の毛皮を入手したので問題ありません。それに、雪の大地を緑の大地に戻して、オランジェザフト帝国に土地を返す約束も交わしたそうです」

 「そうなのよ、お父様。白銀狐は雪の像を作って雪の大地を緑の大地に戻してくれたのよ」

 「それが本当の話なら陛下に至急連絡する必要がある。それと、冒険者『黒天使』のことを詳しく教えてもらえないか」

 
 ブランシュは私の方をチラッと見る。私は大きく頭を横に振った。


 「申し訳ありません、お父様。これ以上『黒天使』さんのことを教えることはできないの。それが『黒天使』さんとの約束です」

 「申し訳ありません。私も『黒天使』さんのことは何もお答えすることはできません」

 「わかった。これ以上のことは何も聞くことはしない。しかし、その毛皮は私が陛下の元へ持って行っても構わないか」

 「どうぞ!お譲りします」


 メルクーア大公は収納ボックスに毛皮を入れて、部屋を急いで出て行った。


 「ハツキちゃん、ごめんなさい!」

 「いいのよ。私のことは何も話していませんからね。それに『黒天使』ってカッコいいわ」

 「そうでしょう。実はずっと考えていたのよ。ハツキちゃんの天使のような優しさと、この国では珍しい綺麗な黒い髪、それとプリンツちゃんの毛並みも真っ黒だから、それを合体させた名前が『黒天使』だったのよ。私も気に入っていたのよ」

 「すでに考えていたのね」

 「そうよ。ずっと秘密の冒険者というわけにはいかないと思っていたので、冒険者名を考えていたのよ」


 ブランシュが名付けた謎の冒険者『黒天使』の名前は、次の日、国王から国民に公表され、一躍ヴァイセスハール王国中に名が広まるのである。それは、冒険者『黒天使』のランクが王者ランクと認定されたからであった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

『定年聖女ジェシカの第二の人生 〜冒険者はじめました〜』

夢窓(ゆめまど)
ファンタジー
「聖女の定年は25歳です」 ――え、定年!? まだ働けるのに!? 神殿を離れた聖女ジェシカが出会ったのは、 落ちこぼれ魔術師、ならず者の戦士、訳あり美少年、気難しい錬金術師。 クセ者ぞろいの仲間と共に送る第二の人生は、冒険・事件・ドタバタの連続で!? 「定年だからって、まだまだ頑張れます!」 笑って泣けてちょっぴり恋もある、 元聖女の“家族”と“冒険”の物語。

社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル 14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり 奥さんも少女もいなくなっていた 若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました いや~自炊をしていてよかったです

処理中です...