17 / 23
第17話 発明令嬢「今度、こそ、違うんだってば」/ギロチン令嬢「まあ、生前なら友達にはなってないタイプだなぁ、とは」
しおりを挟む》
悪役令嬢、ガラル・モルテンは、クラフト要素がある乙女ゲームの悪役令嬢であった。
主人公の工房の乗っ取りを画策したゲーム内ガラルは、しかし違法パーツの取り扱いにより逆に凋落してしまう。その後はラスボスである巨大ロボ、その心臓部の材料にされるなど、かなり酷い扱いを受けつつ退場する。
この流れを知っていた転生ガラルは、まず違法パーツに頼らずとも工房を大きくするため技術を高め、様々な発明により複数の特許を取得した。
だが、それはそれとして違法パーツは扱っていたので摘発を受け、ガラルは12歳にして魔界へと亡命、攻略キャラのひとりである青肌スパダリ魔族と共に魔界統一トーナメントを勝ち抜いていくことになる。
結論だけ言えば悔いのない人生だったと言えるが、「魔界参謀」などという二つ名で歴史に名を刻んでしまったことは、悔いといえば悔いだ。
歴史家はガラルを偉人として扱うが、ガラル自身はまったくそうは思っていない。ガラルの人生は影だ。ガラルの傍にいつもあった、奇人・変人・個性的な人物の存在。その、あまりにも眩い光から生まれた影。
ガラルの人生はいつだって、それらの人物にそそのかされ、騙され、流されながら刻まれてきたものに過ぎないのだ。
ゆえにガラルは、今生こそ自由に生きることを望む。
たとえどのような人物が目の前に現れても、流されたりはしない。
己の人生は、己だけのものなのだから。
》
流されたりはしない。
しないのだ。
しないってば。
》
ガラルは炎に包まれていた。
魔法が盾を貫通し、こちらの体を焼いているのだ。
……そう、か。そういえば、聖女による魔法、は、実験、してなかったな。
ガラルが持つ盾は、あらゆる攻撃を弾いて打ち消す、12歳のガラルの人生を変えた発明だ。その効力は折り紙つき。何せ違法パーツを数多く使っている。
環境を破壊するため使用を禁止された薬品。
絶滅が危惧される植物の油。
扱いを間違えば爆発する回路。
だが、それらを繋ぐために使っている魔力は、悪役令嬢であるガラルに由来するものだ。当然、聖女の加護、神聖力、神聖術理には相性的な不利を抱えている。
……作り直し、か、な。
なんでも防ぐ盾。お湯を注げばもう1回。そんなコンセプトありきで開発したものだが、例外があるのであれば発明としては下の下だ。
ガラルは思った。
……別、に、このまま、魔術から神聖力が尽きるのを、待っても、いいんだけど。
だが、そうのんびりもしていられない理由がある。
この遠征は、レイネの妹を探すためのものなのだ。
レイネ・ドルキアン。ギロチン令嬢。少し怖いと思っていたが、好きなアニメが同じだった。良い人だ。「ナイスGUY」を好きな人に悪い人などいない。決して。
だから、
……少し、力、に、なってあげたいと、思ったんだ。
鉄の街の秘密。行方不明の聖女。突然の襲撃者。聖女と思われる魔法使い。
……この人たち、を、捕まえれば、何かわかるかな?
うん。
ガラルは、己を包む炎をわっしと掴んだ。
》
レイネは、ガラルの生存を諦めていた。
「ガラルさんのことは忘れませんの……!」
おい、というグーラの言葉が聞こえた気がするが何に対する突っ込みだろうか。わからない。わからないが、わからないなりにレイネは走った。
ガラルの仇を打つ。鍔迫り合いから離脱し、謎の人物と剣を打ち合わせるグーラは置いておく。多分どうにかするだろう。だから今は前だ。
前方、およそ30メートルの位置に、炎を放った誰かとその傍らに佇む誰かが見えている。
グーラに斬りかかった誰かと合わせて、敵は3人。
レイネは戦闘のプロではない。放たれる魔法に対する対抗策など、こうして走り回って的を絞らせないくらいしかできなかった。やたらギロチンが便利なだけで、複数の敵を相手に立ち回れるような自力はレイネには決してないのだ。
だからレイネは信用した。
ギロチンの目標は、魔法を放った誰か1人に絞る。白のローブ。杖。少女。典型的な魔法使いの格好だ。
この悪役令嬢と聖女が蔓延る世界における「典型的」とは何か、とレイネは一瞬疑問に思ったが、まあそんなことはどうでもいい。
レイネはギロチンを3枚、射出した。
着弾までは一瞬だ。敵、ローブ姿の少女が目を見開き、それから杖を正面に掲げた。
防護壁の魔法。
「!」
金属音が響き、それから、
「──」
レイネの眼下。足元。
先ほどまで魔法使いの傍にいたはずの3人目、忍者のような黒い装束を纏った誰かが、まるで影から湧き上がるようにして現れ、そのまま走るレイネの首筋へナイフを、
「!」
突き立てる前に、金色の巨大な手のひらが3人目の体をまるごとわし掴んだ。
レイネは走っていたのでゴーレムの拳に激突した。
》
ずきずきと痛む額を撫でながらレイネは、ルカが呼んだゴーレムが握りこんだ手のひらを開いていくの見る。
この感情にレイネは覚えがあった。やたらでかい蚊を手のひらで潰し、それを確認する瞬間のアレである。
ただし今回、ゴーレムの手のひらの操作権はルカにある。ルカが動かすゴーレムの手は、ゆっくりとその握りをほどき、隙間を増し、もう少しで中身が確認できる、という段になり、
「──」
また閉じた。
「ね、びっくりした? びっくりした?」
などとルカが言っている間に飛来した炎球が、ゴーレムの顔面に直撃した。
》
「きらりちゃん!」
顔面がどろりと溶けたゴーレムにつけたキラキラネームをルカが叫ぶと同時、レイネは先ほど己の首を狙ってきた黒装束が、向こう、魔法使いの傍らにまた現れるのを見た。
幻想。幻覚。分身。色々と候補はあるが、そのあたりの魔法かスキルだろう。
と、
「!」
レイネの左後ろから、バチ、という紫電が弾ける音が響いてきた。グーラが剣に「轟雷」の魔法を付与し、それを見た敵剣士が弾かれたように距離を開けたところだった。
「――」
レイネの右後ろから、ご、という風を巻くような音が聞こえてきた。見ると、ガラルがパーカーの裾をわずかに焦がしながらも、体にまとわり付いていた魔術炎を力づくで爆散させていた。
ガラルが言った。
「……火を、掴むの、は、久しぶり。魔界じゃ、ドラゴン相手に、よくやったんだけど」
……発明家のはずでは?
それ以前に悪役令嬢だ、ということだろうか。
レイネは、正面、グーラから離れて魔法使いたちの傍に戻った剣士を含んだ3人に向かい、言った。
「……あなたたち、何者ですの? どうして突然攻撃を?」
レイネの言葉に、魔法使いの少女が、き、と眉を立てる。
言う。
「……あなたたちこそ、何者です。こんなところで何をしているのです。と、というか、な、なんですあなた! そんなもので私たちが怯えるとでも!? なめないで下さい!」
「言われてるぞレイネ」
「うーん、ギロチンに怯えられるのは慣れてはいますが、こうまで拒絶反応起こされると少しショックですね」
「ま、気ィ落とすなし! あーしは好きだよレイネちんのギロチン!」
そう言ったルカが一歩を前に出て、レイネの肩を叩くと、
「ひ」
魔法使いの少女が喉を鳴らした。
……。
……ん?
少女だけではない。剣士と黒装束の姿もまた、ルカが一歩前に出るのに合わせて頬を引きつらせている。
「……」
レイネはギロチンを5枚ほど出現させて宙に浮かせた。
3人は、警戒するようにしてそれぞれの得物を掲げて身構えを取った。
レイネは続いて、ルカの背を押してその体を皆の前に歩み出させた。
3人が、頬を引きつらせながら一歩を後退した。
「……皆様、ルカさんが怖いんですの?」
「だ、だって!」
魔法使いの少女が言う。ルカの顔、否、それを含めた全身とやたら短いスカートへと視線を走らせ、
「陽キャパリピ女子高生は怖いに決まってるじゃないですか! 何言ってるんですかあなた!」
まあ少しわかる、とレイネは思った。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【読切短編】転生したら辺境伯家の三男でした ~のんびり暮らしたいのに、なぜか領地が発展していく~
Lihito
ファンタジー
過労死したシステムエンジニアは、異世界の辺境伯家に転生した。
三男。継承権は遠い。期待もされない。
——最高じゃないか。
「今度こそ、のんびり生きよう」
兄たちの継承争いに巻き込まれないよう、誰も欲しがらない荒れ地を引き受けた。
静かに暮らすつもりだった。
だが、彼には「構造把握」という能力があった。
物事の問題点が、図解のように見える力。
井戸が枯れた。見て見ぬふりができなかった。
作物が育たない。見て見ぬふりができなかった。
気づけば——領地が勝手に発展していた。
「俺ののんびりライフ、どこ行った……」
これは、静かに暮らしたかった男が、なぜか成り上がっていく物語。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる