2 / 10
地下の狂宴
再会
しおりを挟む
彼に教えた電話番号は、仕事用ではあるが、会社支給のものではない。なんならエロい店に予約する用の端末としても運用していた俺は、危ない店を利用してしまった可能性に思い当たり、近頃の夜遊び事情を振り返った。
しかしながら、大手グループの有名店しか利用した記憶はなく、そのメッセージは不気味に映った。
ブロック設定をする操作の途中で、追撃のメッセージが来た。
「あ、遊佐です。薗田さんにご迷惑はかけないので」
マッハで退職したことが既にたいそうご迷惑なのだが、見知らぬ業者よりはマシだった。
そして点と点は繋がる。正味送別会となったあの歓迎会の、深夜の会話。彼は会社の歴史に異常なほど詳しかった。おそらく僕よりも。とりわけ黎明期のとある事業についてだ。
面接でも一切そんなアピールはしなかったというのに、彼はその、我が社が黎明期に運営していた、いわゆる「アングラ掲示板」の往時の盛り上がりについて、熱く語ってみせた。
「紫屍鬼部 さんがもう関わってないことがわかったんで、もう居る意味ないなって」
今でこそ閉鎖され、ネットどころか社内からもその痕跡を抹消されたアングラ掲示板「幻時」。彼はかつてそのヘビーユーザーであり、そこでの活動に端を発したある事業を今も行なっているという話だった。
そこまで思い出せばあとは想像がついた。彼は元々アングラ世界の住人だったのだ。そして我が社にその残り香を追い求め、門を叩いた。きっとアクセス権限を得た際に、深いところまでデータをサルベージしたのだろう。彼の実力は僕以上ある可能性もあり、つまりそれは僕が知り得ない情報まで行き着いた可能性も示唆していたが、その点については気づかないふりをしたい。責任問題になったら困るからだ。
彼が僕の何に興味を持ったのかわからないが、僕は朝まで「幻時」のトークに付き合わされた。ポルノ作品や乱交パーティーの開催、違法薬物や人身の売買まで。今で言うディープ・ウェブで行われる闇取引が、暗号付きの掲示板内部で盛んに行われていたらしい。
人並みに性欲があり、どちらかと言うと好奇心旺盛な俺は、表社会で繋がったという一点を拠り所として、彼の招待を受けることにした。
しかしながら、大手グループの有名店しか利用した記憶はなく、そのメッセージは不気味に映った。
ブロック設定をする操作の途中で、追撃のメッセージが来た。
「あ、遊佐です。薗田さんにご迷惑はかけないので」
マッハで退職したことが既にたいそうご迷惑なのだが、見知らぬ業者よりはマシだった。
そして点と点は繋がる。正味送別会となったあの歓迎会の、深夜の会話。彼は会社の歴史に異常なほど詳しかった。おそらく僕よりも。とりわけ黎明期のとある事業についてだ。
面接でも一切そんなアピールはしなかったというのに、彼はその、我が社が黎明期に運営していた、いわゆる「アングラ掲示板」の往時の盛り上がりについて、熱く語ってみせた。
「紫屍鬼部 さんがもう関わってないことがわかったんで、もう居る意味ないなって」
今でこそ閉鎖され、ネットどころか社内からもその痕跡を抹消されたアングラ掲示板「幻時」。彼はかつてそのヘビーユーザーであり、そこでの活動に端を発したある事業を今も行なっているという話だった。
そこまで思い出せばあとは想像がついた。彼は元々アングラ世界の住人だったのだ。そして我が社にその残り香を追い求め、門を叩いた。きっとアクセス権限を得た際に、深いところまでデータをサルベージしたのだろう。彼の実力は僕以上ある可能性もあり、つまりそれは僕が知り得ない情報まで行き着いた可能性も示唆していたが、その点については気づかないふりをしたい。責任問題になったら困るからだ。
彼が僕の何に興味を持ったのかわからないが、僕は朝まで「幻時」のトークに付き合わされた。ポルノ作品や乱交パーティーの開催、違法薬物や人身の売買まで。今で言うディープ・ウェブで行われる闇取引が、暗号付きの掲示板内部で盛んに行われていたらしい。
人並みに性欲があり、どちらかと言うと好奇心旺盛な俺は、表社会で繋がったという一点を拠り所として、彼の招待を受けることにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる