無職のおっさんはRPG世界で生きて行けるか!?Refine

田島久護

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第二章・アイゼンリウト騒乱編

第49話 冒険者、魔王城への挑戦権を得る

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 俺達は骸骨兵士達や魔族達を退ながら、城へ向かう。何もない時はあれだけ近くに感じた城が遠い。

「これじゃあキリが無いわ」

 アリスは俺に背を合わせそう告げる。その通りだ。後から後から湧いてくるような気がしてならない。

確実にこのままじゃジリ貧だ。一気に吹き飛ばし一旦綺麗にして、本当に湧いてきているのかを確認しないと。

「アリス、少し背中を任せる」
「……私に任せていいの?」

 意地悪そうに俺に問うが、声のトーンは少し前とは違う。何処か楽しんでいるような楽しみなようなそんな感じがした。

俺はそてに対して小さく微笑み

「ああ、任せる。頼むよ」

 後ろを向いたままそう言うと、手を前にかざし

神の吐息ゴッドブレス

 と告げる。突き出した掌から現れた渦巻く風は、骸骨兵士や魔族を巻き込み粉々にして吹き飛ばし、城の入口まで道が開く。

だがそれは一瞬だろうなと察した。やはりあの上空の黒い雲は、ただの雨雲なんかじゃなく陽を隠すだけの為に呼ばれたものではない。

「皆、城の入口へ!」

 俺の声に反応し、皆は俺が開いた道を駆け抜ける。その背中を見送るも、背中にある人物は動かずにいた。

「アリスも」
「アンタが残るのに私が行く訳ないでしょ。こんな雑魚達にやらせはしないわ。私に与えた屈辱は私の手で晴らすのが信条なのよ」

「良い事を言うわアリス。私達魔族はお前に借りは作らない」

 素直じゃないアリスに続きイーリスも俺に背を合わせてくる。何とまぁ義理堅い二人だ。一瞬空いた城への道も、リムンがギリギリ間に合った時には既に道は塞がれていた。

やはりコイツらは無限に湧いて出てくる仕様になっている。ただそれも城までで、そこから先は更に強いのが居るから湧いてないんだろうな。

「どうするの? それを乱発する?」
「いや、出来れば温存したい。イーリスにアリス、いけるか?」

「誰に言ってるのかしら?」
「ホントよ。私達上位魔族を甘く見ないで頂戴!」

 そう言い終えると、イーリスが手に呼びだした銀色の剣を振るい、二列ほど吹き飛ばすと、その後にアリスが前へ出て回転し骸骨兵士と魔族を切り刻んだ。

 そして俺はその後へと続き、手にしていた黒隕剣で走りながら斬りつけて進む。神の吐息ゴッドブレスの影響か先ほどよりも復活の速度が緩やかになった気がする。

俺たちは交互に高速で攻撃を五度繰り返し、何とか城の入口へと辿り着きリムンは入口にすぐ結界を張って遮る。すると骸骨兵士たちはリムンの作った結界を壊そうともせずにガラガラと崩れ去り、魔族は地面へスゥっと消えて行く。

どうやら王の試験にパスし、何とか城への挑戦権を手に入れたってとこだろうな。だが城の中には骸骨兵士たちよりも強いのが居るのは間違いない。

「流石だな二人とも」

 俺は微笑みながら肘を曲げ腕を立てると掌を向ける。挑戦権を手に入れるのに多大な貢献をしてくれた二人に感謝しなくちゃ。

「フン!」

 アリスは俺の手のひらを殴り、

「序の口よ」

 イーリスは俺の手のひらに指を絡めて、俺を引き寄せ耳打ちする。

「どうするの。あれは序の口小手調べ。ここからが本番よ? 纏まって動くか分けるか決断が必要になる」

 全員で倒しに行くのでは遅く、チャンスタイムの終わる夜までには辿り着けないだろうとイーリスは見たのだろう。そこから先は前回戦ったあの凄まじい形態の王と戦う羽目になる。

勝機を確実に掴む為には一刻も早く王の元へ行かなければならない。

「この先に気配は?」
「抜かりない無いようよ。恐らく三、四体」

 あの骸骨たちが必要ないくらい強大な魔族がこの先三、四体も居るのか。流石魔王の居城と言ったところだな。

「離れろ!」

 イーリスと思案していると、突然ファニーが俺とイーリスを強引に引き離す。

「あらあらごめんなさいね。お子様には早かったかしら」

 挑発するように、妖艶に微笑むイーリスにファニーは牙を剥く。それを笑って見ていると、急にさっき消えた骸骨兵士たちが再度湧いてリムンの結界を破ろうとし始めた。

イーリスとファニーはそれを見て争うのをやめてそっぽを向く。いやまぁ二人の所為じゃないと思うんだけどね、多分。

となるとやはり神の吐息ゴッドブレスの影響を全体で受けてその回復の為に一旦潜っただけか。

「リムン、あの結界はどれだけ持つ?」
「アタチ? うーん……一か所だけなら十枚は張れば長い時間持つと思う……」

「そうか……」

 十枚の耐久性がどれだけあるのかリムンも解らないようだ。なので過度な期待は禁物だろう。リムンは残すとして、そのサポートを誰にさせるか。

時間が無いが今も入口付近では、リムンの合図で結界を開け閉めしダンディスさんとリードルシュさん、それにビッドが交互で出て骸骨兵士たちを潰して防いでいる。姫は当然行きたいだろうから連れて行かざるを得ない。イーリスとアリスも同様。そしてファニーは俺の腕にしがみ付いているから、残れと言っても無駄だろう。
 
「コウ、ここは俺が護る」

 野太い声がそう言った。人選で言えば当然か……しかしビッドのパワーはこの先の敵にも必要だろう。そしてこの場所を護るのに、結界を破られては張りを繰り返せば、リムンは疲弊する。リムンが結界を張り破られそうになったら飛び出て時間を稼ぎ、休憩を取らせる為に雑魚を潰しつつ持ちこたなければならない。

正直どちらも辛いが、同じ繰り返しを要求されるこちらもかなり辛いと思う。それをビッドとリムンの関係性で耐えきれるのか。

「コウ、頼む。必ずここを死守する」

 ビッドは俺の目を見て訴える。その目からは命を賭けてでもリムンを護ると言う決意が見えた。その意気に賭けるしかない。ドラフト族の怪力と体力ならこの中の誰より持つだろうし、リムンを護る為に闘志も燃えている。使命感を持って臨むなら適任だろう。

「コウ、私もそれで良いと思うわ。ドラフト族の怪力と体力は、魔族の私達をも凌駕する」
「そうね。獣族と迷っているんでしょうけど、彼に任せた方が良いと私も思う」

 イーリスとアリスはそう後押ししてくれた。彼女たちも是が非でも王のところまでいかなければならない。だからこそしっかりと考え提案してくれたのだろう。俺は微笑むと

「ビッド、リムン、二人に俺達の命を預ける! 持ちこたえてくれ! 必ずあの王を倒して迎えに来るから」

 そう二人に檄を飛ばした。

「ああ、ああ、有難うコウ。俺は必ず死守して見せる! お前が帰ってくるまで待っているぞ!」
「うぅ……ドラフトのおっちゃん怖いけど、おっちゃんの為にアタチ頑張る」

「ありがとうリムン」

 俺はリムンの頭を撫でる。照れくさそうにするリムンに向けて

「リムンの結界は強い。俺の剣でもあの結界は壊せないと思う。俺は必ず帰ってくるから、そしたら一杯冒険しような」
「うん! 絶対だのよ!」

 ぴょんぴょんとび跳ねながらリムンは喜んだ。こういう言葉があれば、辛い時に励みになるだろう。どうかリムンの踏ん張りを支えてくれと祈りながら頭を撫でる。

「コウ、急ぎましょう」
「時間は有って無いようなものよ」

「ああ、二人とも任せた! 姫、リードルシュさん、ダンディスさん! 行きましょう!」

 後ろ髪を引かれる思いだが、それも俺が王を倒せば良いだけだ。腕にしがみつくファニーの頭を撫でて、振り返らずに城の中へと突入する。

 この先にどんな敵が待ち受けているのか。そして決断を迫られる。身を切られる思いというのを初めて知った。
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