無職のおっさんはRPG世界で生きて行けるか!?Refine

田島久護

文字の大きさ
54 / 75
第二章・アイゼンリウト騒乱編

第51話 冒険者、王の元へ

しおりを挟む
 俺とイーリス、そしてアリスの三人は姫の部屋を通り抜け、王座の間を覗ける塔のに辿り着く。王の間、と書かれた踊り場に出た時に脇に階段があり、俺は直感でそっちへ走った。

するとそこは、丁度王の間が覗けるように建てられた、少し離れたところにある見張りの為の塔だった。

「奇襲するの?」

 アリスは窓の脇に立って待機した俺に尋ねる。答えはイエスだ。正攻法で仕掛けて行こうと、奇襲をしようとあまり変わりは無いかもしれないが、何もしないよりはマシだ。

「小細工をするより、仕掛けてこっちのペースにするわけね」
「そうだ。今までの少ない経験から考えて、乱戦というのが一番面倒だった。ごちゃごちゃしているとレベルが高くても、見て考え動きと対処が少し遅れる。その隙を出来れば突きたい」

 これはネトゲで学んだ知識だが、お行儀よくよーいドンで始めれば強い敵が弱い味方を駆逐していき、立て直しが利かない。それよりも奇襲で攻めれば、慌てた相手に対して優位に戦える。慌てなくても、さっき言ったように対応の遅れという隙が生まれ、こちらにチャンスが生まれる可能性がある。

「二人とも、良いか?」

 俺が二人の顔を見る。黙って頷くイーリスとアリス。準備は万端らしい。
ならば!

「いくぞ!」

 俺は窓を開けて外へ飛び出し眼下を確認する。
天井はガラス張りになっていて、その下には予想通り王が王座に座っていた。

こちらにまだ気付いていない……今がチャンス!

俺は鞘から出ていた黒隕剣を手に取ると、黒隕剣はレイピアモードから光の刃を形成し、ロングソードモードへと形態を変化させてくれた。

「づぁ!」

 黒隕剣が反応したのを感じて振り下ろすと、何か結界のようなもので防がれる。早々都合よく気付いてないなんて無いか。だが今更だ!

「はぁっ!」
「でやあ!」

 イーリスとアリスも続けて攻撃を加え、なんとか結界を壊しそのままガラスを破壊して王へと突撃する。

「何?」

 王がこちらを見て驚いたので俺も驚いてしまう。流石に気付いただろうと思っていたが物思いに耽っていたのか? 何にしてもこれを見逃す手は無い。俺は深紅の髪の青年の頭上目掛けて相棒を振り下ろす。

それを皮切りにイーリスとアリスと連携し、息を吐く暇すら与えずに攻め続けた。

「おのれっ!」

 王は堪らず手で俺達を払いのけようとするが、俺はしゃがみイーリスとアリスは距離を取る。標的がバラけ王は混乱した。俺はそれを見逃さずにしゃがんだ状態から勢いを付けて、立ちあがりながら薙ぐ。

「ぐぉっ……!?」

 王は短い悲鳴を上げながら胸に出来た傷を見て驚く。その傷跡から流れていたのは、赤ではなく青のような紫色のような血だった。

それを見て人では無くなったと思うと同時に、絶対者ではなくダメージが通るのが分かり、恐怖心が無くなった。更に勢いを付けるべく咆哮しながら斬撃を加える。

「我が血を糧とし敵を締めあげん! 魔姫結界!」
悪魔の藻デビルエルジィ

 アリスとイーリスの魔術により、王は身動きを封じられた。俺はそれを逃さない。

「うぉああああっ!」

 全ての力を込めた一撃を放つべく振りかぶり、王に叩きつける。

「ぐあああっ!?」

 王は一刀両断され、左右に分かれて倒れる。俺は肩で粗く息をしつつも、何かおかしいと感じ始めていた。ここまで全て都合が良すぎる。あの圧倒的な王がこんなにあっさりやられる訳が無い。

「王……いつまでふざけているつもりだ?」

 息を整えながら構え、王に問いかける。勘が正しければ、こちらの腕試しのつもりでやられた振りをしているだけだ。

「流石は我と同格と認めた男だ……素晴らしい! 完璧に近いと言える。適材適所の配置に奇襲、そして絶え間ない攻撃。どれも一級品以上の価値がある!」

 適材適所に配置した訳じゃなく皆が自分から残ってくれたのだから、俺は仲間に恵まれただけだ。俺は反論はせずに息を整える。

王は分かれながらも口を動かしそう言った。そして煙になると、一カ所に集まり元の状態に戻る。

「欺かれたか」
「いや、ダメージは与えていたぞ? 流石に我も無敵では無い。外で雑魚と戯れていた時とは比べ物にならないほどのダメージを受けた。そしてこの方法は、イーリス、お前が逃げた時の方法をヒントにして得たものだ」

 王は、ダメージを受けたと言うが平然としている。天井に手を掲げると、大きく無骨な黒い剣が出現し手に取った。

「通常の悪役ならば、勇者の奇襲をなじるものかもしれんが、我はせん。元々差があったのだ。奇襲をせずに堂々と正面から来れば、称賛はしようが退屈極まりない相手だと思っただろう」
「お眼鏡にかなったようで光栄だ」

「そうだ。喜ぶが良い。やはりお前は我の見立て通り、一番強い。我を倒しうるのはお前だと確信した。だからこそ、我も本気で戦う事にしよう」

 王は言い終わると、一瞬姿が消えた。しかし俺の眼はそれを捉えた。低い体勢から俺の胴を斬り裂かんと薙いで来た。あっさりと間合いを詰められ、今度はこちらが防戦一方だ。ビッドの背丈くらい長く幅の広い黒い禍々しい剣を、軽々と振るい俺に斬撃を与えてくる。

まともに受ければ腕を持っていかれると思い、インパクトの瞬間に巧く流した。と言ってもそう都合良く行く訳が無い。最初はモロに衝撃を受けてしまい、腕がしびれた。だが徐々にその太刀筋が見切れて捌けてくる。しびれていたのが良かったのか、余計な力を入れようも無く自然な流れで捌けた。

「ふはははははっ! 流石勇者! この我がお前を斬ろうと思っても斬れぬぞ! これは良い!」

 余裕ありすぎるだろコイツ。流石この国のボスって感じだ。上半身と右腕だけを動かし高速で斬り付けながら、息すら切らさないなんてチートも良いところだ。

勇者ならこんな物すら余裕で返してしまえるだろう。仲間を置いてここにはこないだろう。こんな無様な戦い方で敵の大将と戦いはしないだろう。

俺はそんな立派なもんじゃない……。

「俺は」
「ん?」

「俺は、勇者なんて御大層なもんじゃねぇ!」

 隙を突いて思い切り斬り返すと、王は防御したが王座まで押し返した。

「……ならなんだ」

 目を見開いて驚いた後、剣を振りそう問われた。俺は一瞬考える。そうだな。御大層な名前は必要ない。

「無職で引きこもりだったおっさんだ!」

 俺はそう言いながら笑顔で大声を上げ王に告げる。嘘偽りのない俺の元々の状態だ。勇者などとはかけ離れている。これまでの道筋を思えば、他の言い方もあるかもしれない。だけどこんな大一番だからこそ、どうしようもない自分をさらけ出し、体裁も何も捨てて挑む為に、そう名乗った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...