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第二章・アイゼンリウト騒乱編
第52話 ドラフト族の繊細な戦士、大切なものを護る
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コウが王座の間で王と戦いを開始した頃、城の入り口では結界をリムンが張り、外からの侵入を防いでいた。何もない時には維持に努める必要はないが、敵が結界を壊さんとして攻撃をして来ているので予想以上に消耗している。
この攻撃は王の余興であり、ふるいである。彼としてはコウ以外のオマケが増えすぎては邪魔だと考え、骸骨兵士や魔族を町の住民を生贄に召喚を行った。
リムンたちの攻防は何れ終わりを告げる。果てが無くはない。王としてはこれを簡単に退けられるなら、自らの元に来る資格があると思っていた。
王の試練を受けているリムンは、まだ一枚目の結界を張っているがビッドと交代しようとは思わなかった。コウと出会い多少社交的になったとは言え、父や母の事を思えばドラフト族。
しかも直接の原因に加わっている叔父であるビッドを、この局面でも受け入れ難かった。その結果リムンは自分の力の限り敵を防ごうと、汗を流しながら耐えていた。
ビッドもビッドで、リムンに対して申し訳ない気持ちが強すぎて、交代を言いだせなかった。姪っ子の頑張りを応援しつつも、戦士としては交代するべきだと解っていた。
コウの中でこの状況は織り込み済みだった。ほんの数日で修復できるほど甘くは無いだろうとは思っている。だがこれを利用して、多少なりとも改善できると考えていた。
ビッドは体や声は大きいが繊細だ。ましてや兄を直接攻撃した負い目は、予想以上に重くビッドを縛っている。それでも変わらざるを得ない、挽回せざるを得ない、したいであろうビッドの気概が現れるのを状コウは信じていた。
リムンは一時的に倒れてしまうかもしれない。意地や怨みとか言った感情が入り混じり耐えるだろう。でもそれは長く続かない。何れ誰かを頼らざるを得ない。そうするとビッドしかいない。
コウはリムンに対して、自分の事を頼りにしてくれていると思っている。だからこそ、倒れて敵の侵入を許して自分を窮地に追い込むよりは、許せないかもしれないがビッドに頼ってくれると信じていた。
「ぐぬぬぬぬ」
やがてリムンに限界が近付く。結界維持の限界に至ったのは初めてだ。それでも他から見れば、結界維持と強度は並の魔術師以上。だからこそ今まで敵の攻めに耐えられたと言っても過言ではない。
ビッドはコウにあれだけ威勢の良い言葉で答えていたにもかかわらず、何も出来ていない自分に対して葛藤していた。償うなどと言いつつも、どうして良いか解っていても怖くて出来ないのだ。
似た者が集まったと言えばそれまでなのかもしれないが、ビッドも外見ほど強くない。
「あっ!?」
ビッドが手をこまねいている間に結界は破られ、魔族たちが侵入してくる。ビッドが庇おうにもタイミングが遅い。殺到する魔族たちに刺されそうになるリムン。
「うおおおおおお!」
雷鳴のような声と共に轟音を鳴らしながら魔族たちは粉みじんになる。そしてリムンの前に立つのは懐かしく、愛おしい背中だった。
「ビッド……貴様は何度同じ過ちを繰り返すつもりだ?」
背中は振り向かずそう叱責した。例え体や技術がどれだけ成長しようとも、中身は変わらないのだなと思っていた。
コウの中で一番ダメな事態になっていた。関係修繕が一番だが、その手前でも良いから少しでも繋がりをと思っていたが、成らなかった。自由にし、魔族たちに欺かれた男は必ず城に来る。そう思っていたが、出来ればリムンとビッドの関係改善後に来てほしい、そう願っていたが叶わない。
「何も言い訳はしない。だがお前がアイツを想うなら、少し寝ていろ。結界を張り続けるにはそれが一番回復が早い」
「う……うん。ありが……と、う」
リムンは気を失う。色々と掛けたい言葉や聞きたい話があったが、
今はただ一刻も早く結界を張る力を溜めたかった。
ビルゴは娘の寝顔を見る。家族で貧しかったが幸せだった頃を思い出すと、目頭が熱くなる。アイツの言う通りだ。悪魔と手を結び、不確かな妻を蘇らせるという行為に没頭する前に、大事にすべき存在があった。
今なら正しくないと解る。挽回するには至らないかもしれない。だがそれでもやらないよりマシだ。娘の頑張りを無駄にしない為にも、娘がアイツに自分の頑張りを誇る為にも、自分が出来る仕事をしよう。
ビルゴはそう思いながら、骸骨兵士や魔族たちを粉砕していく。敵は強くない。娘の寝顔を偶に見ながら駆逐していく。これなら時間を稼げる。ビルゴは力の限り奮闘した。
逆にビッドは自分に絶望する。あれだけ大口と叩いたのに幼い姪の奮闘を見ながら何もできなかった。一族が兄を追い出そうとした時も、体面を気にして言われるままに兄を斬った。そんな情けない自分をどうにかしたくて街に出たのに。
一人では何も出来ないと、一族の中だからこそ偉そうにして居られたのだと思い知った。そして姪を見つけても一人では怖くて今と同じように何も出来なかった。
一人の冒険者に目を付けた。とても頼りなさそうだが、自分と似ている様な気がした。ダメな人間でも数が居れば出来るのではないかと考え、
声をかけるも失敗した。村に居ても街に居ても、結局自らの弱さを受け入れられない。
何がドラフト族の剛戦士だ。
その時ビッドの脳裏にコウと戦った時の言葉が過ぎる。自分より小さく弱そうで、心根は似ていると思った男は足掻いていた。共に行動してから凄いと思った。昔はダメだったらしいが、微塵も感じない。どうしたらそうなれるのか。
「習うより慣れろか」
ビッドは涙が出ていた。弱く情けない自分を認めるには辛すぎる。だが事ここに至っては認めざるを得ない。そして戦わなければ。
敢えて言っていなかったが、多少だが、ホントに多少だが尊敬出来る……ところのあるあの男、コウの姿を真似しよう。アイツのように戦えば良い。護るべきものの為にがむしゃらに。
「うああああっ!」
とても行儀の良い形ではないが、ビッドはビルゴを押しのけ敵陣の中へハンマーを振りまわし粉砕していく。効率も何もない、特攻に近いものだった。だがビッドの心は晴れて行く。
うじうじ悩んだせいで、姪はコウによって救われた。うじうじ悩んだせいで、姪は限界まで頑張らざるを得なかった。剛戦士ではない自分を認める。
だけど剛戦士たらんとし、そうふるまうべきだ。自分で口にしたのだから。尊敬の念を抱く友の為にも、俺は約束を今度こそ護りたい。戦い抜かなければならない。
「ビッド、そろそろ引け」
ビルゴの声が掛かるが、ビッドは止まらない。しかしそれは自己犠牲では無い。自分が戦えば兄もリムンも回復出来る。巧くすれば、親子の会話が持てるかもしれない。その為にも今は戦う時だ。
ダメなときは素早く変わって体力と、自らの情けなさに身を焦がしながら力をためる。そして次に立つ時は今よりもっと長く戦う。だからこそ今を蔑ろには出来ないのだ。
ドラフト族とはドワーフとトロールの混血と言われ、大昔あった神々の大戦の際に神の使途として戦うべく誕生した種族と言われている。
その名に恥じぬ姿を、誇りを今ここで出す時だ。そうビッドは想い己を奮い立たせた。
「お父……」
リムンの声にビルゴは駆けよってしまう。娘を置いて逃げた父として、娘と言葉を交わすまいと誓っていたが、懐かしく愛おしい声に呼ばれたら、そんな誓いは音も無く崩れていた。
「もう少し寝ていて良い」
「ううん、もう大丈夫だのよ」
「万全でなければダメだ。中で戦うアイツの為にも、お前は生きて元気に帰らなければならない」
「勿論だのよ。アタチはおっちゃんと冒険の旅をするのが楽しみだのよ。だから頑張れるだのよ」
「……そうか。だが後少しで良い、俺の弟の為に休んでいてくれないか」
リムンは自分が立っていた場所を見ると、ビッドが奮闘していた。その姿は巨体だが、どこかコウに似ていると思った。
「解っただのよ。後少しだけ……」
そう言いながら、ビルゴに寄りかかりながらリムンは眠りに就く。そして短時間ではあるが、リムンは幸せだった頃の夢を見ながら眠ったのだった。
暫くすると、ビルゴはリムンにここに来るまでに手に入れた、布団の上に寝かせてビッドの元に行く。
「それ以上やれば後が困る。そろそろ交代してもらおうか」
「兄者……」
「お前だけでは無いのだ。アイツに、リムンに良い恰好を見せたいのは」
ビッドからハンマーを奪い取ると、ビルゴは敵陣を粉砕する。ビッドよりも機敏に器用に、そして的確に砕き進行を妨げる。ビッドは兄は凄いと感心しつつも、リムンの近くで休憩を取る。リムンが完全に回復するまで、負い目がある同士せめて奮闘せねば、何も返せない。そう思いながら短い眠りに付いた。
コウが王座の間で王と戦いを開始した頃、城の入り口では結界をリムンが張り、外からの侵入を防いでいた。何もない時には維持に努める必要はないが、敵が結界を壊さんとして攻撃をして来ているので予想以上に消耗している。
この攻撃は王の余興であり、ふるいである。彼としてはコウ以外のオマケが増えすぎては邪魔だと考え、骸骨兵士や魔族を町の住民を生贄に召喚を行った。
リムンたちの攻防は何れ終わりを告げる。果てが無くはない。王としてはこれを簡単に退けられるなら、自らの元に来る資格があると思っていた。
王の試練を受けているリムンは、まだ一枚目の結界を張っているがビッドと交代しようとは思わなかった。コウと出会い多少社交的になったとは言え、父や母の事を思えばドラフト族。
しかも直接の原因に加わっている叔父であるビッドを、この局面でも受け入れ難かった。その結果リムンは自分の力の限り敵を防ごうと、汗を流しながら耐えていた。
ビッドもビッドで、リムンに対して申し訳ない気持ちが強すぎて、交代を言いだせなかった。姪っ子の頑張りを応援しつつも、戦士としては交代するべきだと解っていた。
コウの中でこの状況は織り込み済みだった。ほんの数日で修復できるほど甘くは無いだろうとは思っている。だがこれを利用して、多少なりとも改善できると考えていた。
ビッドは体や声は大きいが繊細だ。ましてや兄を直接攻撃した負い目は、予想以上に重くビッドを縛っている。それでも変わらざるを得ない、挽回せざるを得ない、したいであろうビッドの気概が現れるのを状コウは信じていた。
リムンは一時的に倒れてしまうかもしれない。意地や怨みとか言った感情が入り混じり耐えるだろう。でもそれは長く続かない。何れ誰かを頼らざるを得ない。そうするとビッドしかいない。
コウはリムンに対して、自分の事を頼りにしてくれていると思っている。だからこそ、倒れて敵の侵入を許して自分を窮地に追い込むよりは、許せないかもしれないがビッドに頼ってくれると信じていた。
「ぐぬぬぬぬ」
やがてリムンに限界が近付く。結界維持の限界に至ったのは初めてだ。それでも他から見れば、結界維持と強度は並の魔術師以上。だからこそ今まで敵の攻めに耐えられたと言っても過言ではない。
ビッドはコウにあれだけ威勢の良い言葉で答えていたにもかかわらず、何も出来ていない自分に対して葛藤していた。償うなどと言いつつも、どうして良いか解っていても怖くて出来ないのだ。
似た者が集まったと言えばそれまでなのかもしれないが、ビッドも外見ほど強くない。
「あっ!?」
ビッドが手をこまねいている間に結界は破られ、魔族たちが侵入してくる。ビッドが庇おうにもタイミングが遅い。殺到する魔族たちに刺されそうになるリムン。
「うおおおおおお!」
雷鳴のような声と共に轟音を鳴らしながら魔族たちは粉みじんになる。そしてリムンの前に立つのは懐かしく、愛おしい背中だった。
「ビッド……貴様は何度同じ過ちを繰り返すつもりだ?」
背中は振り向かずそう叱責した。例え体や技術がどれだけ成長しようとも、中身は変わらないのだなと思っていた。
コウの中で一番ダメな事態になっていた。関係修繕が一番だが、その手前でも良いから少しでも繋がりをと思っていたが、成らなかった。自由にし、魔族たちに欺かれた男は必ず城に来る。そう思っていたが、出来ればリムンとビッドの関係改善後に来てほしい、そう願っていたが叶わない。
「何も言い訳はしない。だがお前がアイツを想うなら、少し寝ていろ。結界を張り続けるにはそれが一番回復が早い」
「う……うん。ありが……と、う」
リムンは気を失う。色々と掛けたい言葉や聞きたい話があったが、
今はただ一刻も早く結界を張る力を溜めたかった。
ビルゴは娘の寝顔を見る。家族で貧しかったが幸せだった頃を思い出すと、目頭が熱くなる。アイツの言う通りだ。悪魔と手を結び、不確かな妻を蘇らせるという行為に没頭する前に、大事にすべき存在があった。
今なら正しくないと解る。挽回するには至らないかもしれない。だがそれでもやらないよりマシだ。娘の頑張りを無駄にしない為にも、娘がアイツに自分の頑張りを誇る為にも、自分が出来る仕事をしよう。
ビルゴはそう思いながら、骸骨兵士や魔族たちを粉砕していく。敵は強くない。娘の寝顔を偶に見ながら駆逐していく。これなら時間を稼げる。ビルゴは力の限り奮闘した。
逆にビッドは自分に絶望する。あれだけ大口と叩いたのに幼い姪の奮闘を見ながら何もできなかった。一族が兄を追い出そうとした時も、体面を気にして言われるままに兄を斬った。そんな情けない自分をどうにかしたくて街に出たのに。
一人では何も出来ないと、一族の中だからこそ偉そうにして居られたのだと思い知った。そして姪を見つけても一人では怖くて今と同じように何も出来なかった。
一人の冒険者に目を付けた。とても頼りなさそうだが、自分と似ている様な気がした。ダメな人間でも数が居れば出来るのではないかと考え、
声をかけるも失敗した。村に居ても街に居ても、結局自らの弱さを受け入れられない。
何がドラフト族の剛戦士だ。
その時ビッドの脳裏にコウと戦った時の言葉が過ぎる。自分より小さく弱そうで、心根は似ていると思った男は足掻いていた。共に行動してから凄いと思った。昔はダメだったらしいが、微塵も感じない。どうしたらそうなれるのか。
「習うより慣れろか」
ビッドは涙が出ていた。弱く情けない自分を認めるには辛すぎる。だが事ここに至っては認めざるを得ない。そして戦わなければ。
敢えて言っていなかったが、多少だが、ホントに多少だが尊敬出来る……ところのあるあの男、コウの姿を真似しよう。アイツのように戦えば良い。護るべきものの為にがむしゃらに。
「うああああっ!」
とても行儀の良い形ではないが、ビッドはビルゴを押しのけ敵陣の中へハンマーを振りまわし粉砕していく。効率も何もない、特攻に近いものだった。だがビッドの心は晴れて行く。
うじうじ悩んだせいで、姪はコウによって救われた。うじうじ悩んだせいで、姪は限界まで頑張らざるを得なかった。剛戦士ではない自分を認める。
だけど剛戦士たらんとし、そうふるまうべきだ。自分で口にしたのだから。尊敬の念を抱く友の為にも、俺は約束を今度こそ護りたい。戦い抜かなければならない。
「ビッド、そろそろ引け」
ビルゴの声が掛かるが、ビッドは止まらない。しかしそれは自己犠牲では無い。自分が戦えば兄もリムンも回復出来る。巧くすれば、親子の会話が持てるかもしれない。その為にも今は戦う時だ。
ダメなときは素早く変わって体力と、自らの情けなさに身を焦がしながら力をためる。そして次に立つ時は今よりもっと長く戦う。だからこそ今を蔑ろには出来ないのだ。
ドラフト族とはドワーフとトロールの混血と言われ、大昔あった神々の大戦の際に神の使途として戦うべく誕生した種族と言われている。
その名に恥じぬ姿を、誇りを今ここで出す時だ。そうビッドは想い己を奮い立たせた。
「お父……」
リムンの声にビルゴは駆けよってしまう。娘を置いて逃げた父として、娘と言葉を交わすまいと誓っていたが、懐かしく愛おしい声に呼ばれたら、そんな誓いは音も無く崩れていた。
「もう少し寝ていて良い」
「ううん、もう大丈夫だのよ」
「万全でなければダメだ。中で戦うアイツの為にも、お前は生きて元気に帰らなければならない」
「勿論だのよ。アタチはおっちゃんと冒険の旅をするのが楽しみだのよ。だから頑張れるだのよ」
「……そうか。だが後少しで良い、俺の弟の為に休んでいてくれないか」
リムンは自分が立っていた場所を見ると、ビッドが奮闘していた。その姿は巨体だが、どこかコウに似ていると思った。
「解っただのよ。後少しだけ……」
そう言いながら、ビルゴに寄りかかりながらリムンは眠りに就く。そして短時間ではあるが、リムンは幸せだった頃の夢を見ながら眠ったのだった。
暫くすると、ビルゴはリムンにここに来るまでに手に入れた、布団の上に寝かせてビッドの元に行く。
「それ以上やれば後が困る。そろそろ交代してもらおうか」
「兄者……」
「お前だけでは無いのだ。アイツに、リムンに良い恰好を見せたいのは」
ビッドからハンマーを奪い取ると、ビルゴは敵陣を粉砕する。ビッドよりも機敏に器用に、そして的確に砕き進行を妨げる。ビッドは兄は凄いと感心しつつも、リムンの近くで休憩を取る。リムンが完全に回復するまで、負い目がある同士せめて奮闘せねば、何も返せない。そう思いながら短い眠りに付いた。
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