無職のおっさんはRPG世界で生きて行けるか!?Refine

田島久護

文字の大きさ
65 / 75
第二章・アイゼンリウト騒乱編

第62話 冒険者、手玉に取られる

しおりを挟む
「存外持たなかったなぁ王よ」

 その声に聞きおぼえがある。あの時はまさかそんな分かり易くはないだろうと思った。だが今このタイミングで現れたのを考えれば、相手の思うように誘導されてたのは間違いないだろう。

都合よくダンディスさんとリードルシュさんがアイルに現れ共に行動し、生贄を調べに行くと現れた魔族などの大群。魔剣を持ったビルゴとアリスとの戦い。首都アイルの惨劇とボスだと言う割には自由に歩き回る王。

行く先々でタイミング良く現れる敵や状況は、この男が成したい結末への必要な手順であり掌で踊らされていたのはもう疑いようもない。

こちらの戦力を分断し王と均衡を保ちつつ戦わせ、準備が整うと俺の仲間がここへ来て王を追い詰める。止めを刺そうとした今この時を、ずっと息を潜めて待ち構えていたのかと思うと悔しさで体が震えた。

「礼を言おう冒険者よ。これで私の剣は完成する」

 それは俺たちが崩した天井からゆっくりと下りて来た。禍々しい気を纏い、今度こそ間違いなく悪役として素晴らしい笑顔を携えて降り立つ。

「ぐああああ!?」

 王の叫びが聞こえ視線を向けると、紫色の炎に焼かれ王の体は灰になり一振りの剣がそこに残されていた。紫を基調とし金色で細かい装飾が施された大剣。美しい剣だが、王の無念や怨念が満ち満ちているように剣から黒い煙が溢れ出て漂わせていた。

「さぁ来い、我が愛剣キャロルよ!」

 その声に反応し、剣は声の主の元へ飛んでいく。黄金色の剣と共に。

「これぞ覇王よ、これぞ魔王よ。見るが良い愚か者どもよ! 全て私の策略通りだ!」

 二剣を右と左に握った宰相は高笑いをする。その間に徐々に若返っていき、笑いが収まる頃には金髪の血色の良い若者になっていた。全くなんで覇王とかになると都合よく若返るのか。俺もどうにかすれば若返るのか、などと埒も無い考えが頭を過ぎり首を振る。

全て嵌められ思い通りに動いた自分に対する呆れと怒りで冷めきってしまったんだろうなと冷静に分析する。だが落胆し手ばかりもいられない。この後コイツが俺たちをこのままにしておくほど能天気では無いだろう。

頭を切り替え体勢を立て直し少しでも回復しないと駄目だ。黒隕剣もそう思ったのか魔力吸収を遮断し形態をレイピアモードに移行する。それに合わせて膝を着き、俺は肩を落として地面に手を突く。

勿論諦めたのではなく諦めたふりをして全力で体力を回復する為だ。最後の最後まで思い通りにさせてなるものか!

「アグニス宰相殿……何故貴方が!?」
「アグニス? ……ああ、そう名乗っていたな確か」

 アグニスはニヤリと嫌らしい笑顔を浮かべて答える。演技なんて上手くは無いだろうが、あの愉悦に浸っている表情からして見抜かれないだろうと考え思い切り悔しそうな顔をして見る。

「そうか……糞ッ! ファニーが逃げ出したのをいち早く知り、ダンディスさんとリードルシュさんに情報を流せたのは変だと思ってたんだ……!」
「流石察しが良いなその通りだ。ただの老いぼれが、竜の千里眼も無しにそんなものを分かる筈がなかろう?」

「ずっと騙していたのかっ!」
「そうだ。隔世遺伝の時を待ち、材料が揃うのをジッと待っていたのだ。この剣を作るには色々と条件が必要でな。前王では絶望が足らず、それまでの王では能力的に足りなかった。私は姿を変えてずっとずっとずぅーーっとこの時を待っていたのだよ」

 アグニスだったものは両剣を素早く左右薙ぐと、それにより発生した斬撃の衝撃波によって王座の間の壁に穴が開いた。それを見て俺は俯き拳で床を叩いて見せる。するとアグニスだったものは声を上げて笑う。

中々俺も魅せる演技が出来るもんだと勘違いしそうになり、自分の体の調子を確認して逸らす。呼吸は整えられたが腕や足は痛い。切り傷は熱を持った状態から氷を素手で掴んだ感じの痛さになっている。

こういう時に超回復とかあると良いなと思わざるを得ない。あの若返り機能はそう言ったものなんじゃなかろうか。便利だな。

「ついに手に入れた……完璧なる力。神も、魔も、そして人も、全て私の中にある!貴様らにとっては残念な話だが、私は夜も昼も関係ない。力が左右される事も無い上に情も何もない! 全力で貴様らに褒美をやらんとな!」

 金髪の青年は半狂乱して笑い始めた。耳障りな声だがチャンスはチャンスだ。今のうちに少しでも回復しておく。あの薄気味悪い野郎を確実にぶっ潰す為に堪える。

少し間を置いてから後ろを見ると、姫は絶望に慄きこの世の終わりのような顔をしていた。これは演技では無いだろう。そう考えると俺が少し変なのかもしれない。まだ一ミリもあの野郎をぶっ倒すのを諦めていないのだから。

「姫、無事か?」
「な、何とか……」

 だが身震いが止まらないようだ。それはそうだろう。父が死んだのもそうだが、
宰相の遠大な策略に乗せられていた。更に国を思い尊敬までしていた宰相が自分の欲望を満たす為に欺いていたのだから。

そして恐らくあの感じからして魔族だろうから、姫は自分の血からも恐怖せざるを得ないのだろう。

「竜を倒そうってか?」

 俺が時間稼ぎでそう問うと、鼻で笑った後

「竜を倒す? ああ、邪魔だったし生贄を手に入れる為に、封印を施し利用していただけだ。別にあの時でも倒そうと思えば倒せたのでな。だが完全となった私にはどうでもいいことだ」

 そう上機嫌で答えてくれた。凄いに違いないし強いのも間違いないのだから、全盛期とやらに戻れば倒せるのだろう。……いや待てよ? 封印を施しってそもそもコイツがファニーを封印したのか!?

アイゼンリウトと言う国自体が俺やファニーを追い回すなら、その根っこどうにかしたくて姫に協力しその褒美で放置の確約を得ようと思ったが、まさかファニーの自由を奪い生贄システムを生み出した張本人と会えるとは。

こうなればファニーの為にもコイツを必ずぶっ倒すしかない。これまでの相棒の借りを返させてもらう!

「そうかい。アンタが勝つとは決まってないだろ?」
「何を言っているのだ。勝てる訳が無かろうにお前達が」

「なら始めようか」

 俺はファニーに視線を送り頷いた後、姫の方に手を置いて前へ出る。体の調子は完全じゃないが、ここまで何度も皆に回復の機会を与えて貰ってかなりいい感じだ。今度こそと思い気合を入れて最後の戦いに挑む。
 
 




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...