光の有者〜有りし力でゆったりまったり〜

ニコル

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喫茶有者へようこそ!③

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ガダンガタンと荷馬車の車輪が道を行く。周りは森に囲まれ、その中央を辛うじて舗装された馬車道が走っていた。

ウチの店で用意した荷馬車は3台。
ルーチェから護衛の為に用意される人数は6名と、先日私の娘ハルから伺っていたので、私も含めて8名。
二台で事足りるかと考えてはいたが、帰りの収穫物やトラブルのことも考え、慌ててもう一台買いに走った。

いい馬では無かったが、ルーチェのスタッフ、3台目の馬車を操縦するフレイ君の腕前が良いのか、問題なく追従している。あの馬車にはもう一人、ランさんという可愛らしいスタッフも同乗している。

出発前に一通り自己紹介はしたが、娘からの話通り皆若かった。
代表であるエヴァライですら20代半ばにもいかないだろう。
彼らの最近鰻上りになっている評判は信用出来るのか、心配でないかと言えば嘘になるが……


今一番心配なのは我が娘、ハルだ。
最近あの店について調べ出してから様子がおかしいとは思っていたが、自己紹介の時に確信した。

フレイ君に惚れている……


いや、私も父親の端くれ。いつかこんな日も来るだろうとは頭の片隅にはあったが……来てみると、かなりクルものだ。

彼はパッと見て、筋骨隆々の頼れる男でもなければ、知性溢れ出す紳士の様でもない。隣に座るランさんと話す姿を見ればどこにでもいる若者にしか見えなかった。

別に高望みするわけではなかったが、娘には相応しい男性を、と思うのが父親ではないだろうか?


そんな私の微妙に居心地の悪い表情から読み取ったのか、隣に座っていたエヴァライが話しかけてきた。

「トウキさん、心配です?」

「心配?い、いや、別に彼のことはよく知らないから頭ごなしには…」

「? や、何おっしゃります。仕事の話ですよ。けして、フレイにべた惚れであるハルさんの事ではありませんよ」

「べた惚れではない……はずだ」

この男は食えない。飄々としているくせに、今のもわかって言っている。
目が笑ってるんだ、逆に。そんなに面白いだろうか。

「仕事というか、君らに関してはなんとも。噂はかねがねだが、実際に見たわけではないからね。君らは若い、実力はあっても経験は不足しているかもしれない……だが、背に腹は変えられない。私たちの懐では君ら以上の護衛は無理なのだよ、だからこそ信用しているからな」


「ありがとうございます、経験というのは追いつけませんからね。先人達には。そういう点では若さは弱点になり得ますが、安心ください。彼等も、私も軍の一個師団くらいなら打ち破ってみせますよ」


「ほんとかね?」

「本当ですとも」

営業たっぷりに笑みをもらう。
道中何事もない事を祈ろう、娘にも……

……あっ、余所見するなハル!落ちるぞ……まったく
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