光の有者〜有りし力でゆったりまったり〜

ニコル

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喫茶有者へようこそ!④

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ガタガタと馬車は揺れる。彼此半日は揺られていた。出発前は朝靄が出ていたが、今は燦々と輝く太陽から暖かい日差しが降り注いでいる。

舗装された道なので特に運転が難しいわけでもなく、この辺りはまだ開けていて明るく見通しが良い。賊やモンスターの心配も必要最低限でいい。

私達の一団は和気藹々と進んで行く。
初めは緊張していた私と父も、彼等の緩やかなスタンスに次第にリラックスしていた。

最も……別の種類の緊張なら……

私の乗っている馬車には他にフレイさんとランさんも一緒に乗っている。
この辺りは比較的魔物も盗賊等の輩も少ないが、いなくはない。
万が一のときに私を守る為だ。
今回のルーチェへの護衛任務は父、荷馬車、そして私だ。

今は手綱を握るフレイさんを中心に、私が左側、ランさんが右側に並び少しずつお互いの話をしながら打ち解けつつあった。

「それでねぇ、フーちゃんはね、虫が苦手でねぇ、いつも私が捕まえてきたビートルを見て泣いてたんだよー」

「止めろって、フーちゃんも、その話も」

二人は幼馴染のようで、とても仲が良い。フレイさんも嫌がるというより、照れ隠しのようなものみたいだ。

「二人共、とっても仲良しなんですね。羨ましいなぁ、私は兄妹達の世話があるから、あまり同年代の友達がいなくて……」

しまった……。
あんまりにも二人が自然で暖かいもので、思わず漏れてしまった。

私には兄妹が7人いる。上の兄姉は3人、私が間に入り、下が4人だ。
上の兄姉は自立して、違う国にいたり、嫁いだり、余り家には帰らない。
下の子達もまだ小さい子もいて、決して苦痛ではなかったが、私も友達とこうやって騒いでみたいと思っていたのだ。

「やー、ハルちゃん兄妹いっぱいなの?」

ランさんが小首を傾げる。ブロンドの髪がサラサラ靡いてとても綺麗で、少し慣れてきたとはいえ見惚れてしまう。

「はい、まだ下に4人。小さい弟がやんちゃで……私が学校にも送り迎えしてるんですよ」

「弟かー、可愛い?」

可愛い、か……余り考えなかったけれど、下の弟妹達は皆私に懐いてくれていて、ハル姉ちゃんと呼んでくれている。

「……そうですね、可愛い、です」

なんだか、ちょっと照れくさくなり、私は下を向く。
フレイさんとランさんが良かったと頷いてくれて、私は少し前に会ったばかりの人に気を遣わせてしまったと反省した。
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