ー情報屋ー絶対中立は虹に染まる

とっくん

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第11話:子供っぽいのが好きな人もいる

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我は誤った。
 長命ゆえに多くを見てきたつもりでいたが、あの男だけは読み違えた。
――奴は、透明だ。
善でも悪でもない。
理を踏み外しているのではなく、そもそも理の外側に立っている。
 善行も暴虐も、必要とあらば迷いなく選ぶ。
一言で言うなら、底が知れぬ。
 だからこそ、危うい。
「では魔王様、従者の方をここに残して広い場所へ行きましょう」

「ま、魔王様......。大丈夫なんスか?」

シャルアが待ったをかけた。当初の目的である毒沼の解決方法を聞き出すことと大きく逸脱しているからだ。

「我が、感情的になり発した言葉だ。責任は我にある」

そう言ってシャルアの頭をなでると、それ以上は進言して来なかった。
情報屋が危険な存在なのは確かだが、行動が読めぬ以上、捨て置くわけにもいかぬ。

「待たせたな情報屋よ。さて、この城の南東に決闘場がある。そこで良いか?」

「はい、問題ありません」

先ほど人質をとった者の態度からこの丁寧さ。やはり、かなり逸脱しておる。




瞬間移動(テレポーション)、指を鳴らす動作で自身や対象の場所を座標に飛ばす魔法。
これを用いて我と情報屋のみを決闘場へと移動させる。

パチン!

そう指を鳴らした瞬間、足元と頭上にスカイブルーの魔法陣が形成される。

「これより転移を始める。情報屋よ、その場から動く出ないぞ」

二つの魔法陣は中央に集約するように我と奴を飲み込み、決闘場へ瞬きのうちに移動させた。

人間はおろか、魔族でも使えるものが少ない希少性のある高度な魔法なのだが、やはり奴は、一向に能面を崩さない。

「ありがとうございます魔王様」

「礼には及ばん。お主と魔王上で戦ったら城が壊れかねんからな」

いまいち掴めぬ...この者の所作はどこか嘘くさい。
声のトーン、表情。長い年月を経て、魔族や人。様々な出会いをした我だ、嘘をつく者の独特な雰囲気は熟知しておる。が、奴はそれには当てはまらぬ。嘘くさいが噓をつく様子もない。はっきり言って異様なのだ。

「それで、これからどうする?まさか、我と戦うのではあるまい?」

情報屋を一瞥して思う。これは好機だ。魔王城でのあのドロドロとしたものを返すのだ!

まさに意趣返し。周囲が歪むほどの殺気を発することで奴を威嚇した。
少し児戯が過ぎるとも思うが、これも我の弱点を見定める要素にはなり得るだろう。

「そうですね、総評は後ほどするつもりですが、その殺気は私が魔王場で発したものと酷似しています。【意趣返し】であるならば、精神面での幼さや、もしくは短慮な部分が見えてきます。部下から【せっかち】とか【鈍感】と言われたことは?」

「・・・・・・」

静寂が風と共に流れ、我の心を抉り抜いていく気がした。この言葉に返答するのを本能までもが拒否するのだ。

「......黙秘する」

気が付けば、静寂とともに殺気も流されていた。そして、すべてを見透かすような奴の目は
今なお能面。頼む、話を切り替えてくれ。

「まぁ、いいです。では調査の方法ですが、私が指示した戦い方で、私と戦ってもらいます。そして、戦闘中には質疑にも答えてもらいます」

「本気なのか?我と戦うなどと......」

我自身、世界で最強だと自負しておるが、サシの勝負を挑まれるとは。不意を突かれたというのは、まさにこの事だな。

「最初は格闘技からお願います」

構えた情報屋に合わせるように構えをとる。正直、格闘技は得意ではないが、人間に後れを取ることはないだろう。

そう思っていた時期が、我にはあった。

「いきます――」

そう言葉を残して間合いを詰める奴に、反射的に右拳を打ちぬこうとしたが、わずか一歩で躱された挙句、懐への侵入を許してしまった。

(殺られる...!)

しかし奴は、右腕を掴んで我の攻撃を利用し投げ飛ばした。
受け身を取れない。いや、受け身を知らない我は、顔から壁に激突。この決闘場の壁は、この地でとれる最硬の石”オリハルコン”でできているため、壊れることはないが、脳が破壊されるかのような痛みにのたうち回りながらも、プルプルした足で立ち上がった。

「ふむ、なかなかやるではないか。お前は名のある武道家でもあるのだろう」

顔面のダメージで足が震える。それを見透かすかのような目で、奴は見てくる。やめろ!そんな目で我を見るな!

「質問ですが、魔王様が大事にされているものは何ですか?」

そう言いながら激しい連打が降り注いでくる。壁に当たったのとは違い、ダメージは低い。これなら耐えられる!」

「我が大事にしているのは、国だ。民を含め、我に準ずる者たちの意思、先祖代々支えてきたこの土地、なによりも、産まれてくる命と支える家族!我が大事にし、守ろうと欲しておるのは、それだけだ」

……一瞬、奴の攻撃が止まった。表情も、どことなく瞳に光があるように見えた。しかし、それも一瞬だった。

変わらずボコボコにされる我は、壁際まで押されていた。
だが急に、情報屋は振り上げた拳を止めて踵を返した。

「......もういいです。次に行きましょう」

奴の表情は、微塵の歪みすらない。それだというのに、さっきの表情は何だったのだ?その光景が目に焼き付いて離れない。
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