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2.奴隷購入
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久々に飲みすぎた。
ベッドから起き上がる。
目を覚ますために顔を洗いに部屋を出る。
戻って来た部屋の中でもぞもぞと動くものに視線がいく。
ナーキだ。
「おい起きろ。ギルド長」
流石にアンは帰らせた。
泊まると泣きついて来たがアンのパーティーメンバーに引っ張られていった。
「あ? いつっ。やっぱり歳だな」
「ほら、水だ」
「お。ありがとな」
顔を洗うついでに水をコップに入れて来たのでナーキに渡す。
「ラーナさんが心配してるんじゃないか?」
ラーナさんはナーキの奥さんだ。
幼馴染らしく、なんというか、可愛らしい人だ。
「問題ねぇよ。息子に伝言頼んだからな」
ナーキの息子はアンの仲間だ。
確か名前は、ラーキだったか。
流石というか、25歳でランクAまで上がって来た天才だ。
30までにはランクSになっているだろう。
「そうか。仕事は?」
「今日は特にねぇな。ま、軽く顔出しに行くか」
「軽食は?」
「あ~向こうで食う。ドワーフ族に軽食はねぇだろ」
そういえばナーキはドワーフ族だった。
平均的なドワーフ族よりも身長が高く、スラリとした体型なので忘れがちだ。
確か、歳は70を超えていると噂で聞いたことがある。
本当かどうかは本人に聞かないとわからないが、特に興味はない。
「そうだったな」
「アド、今日はギルドに来るのか?」
「奴隷次第だな。すぐに使えそうなら外に連れ出そうと思ってる」
「そうか。俺は帰って寝てるかもしれねぇが、娘が今日はいるはずだ。驚かせてやれ」
ナーナ。
ナーキとラーナさんの娘で、ラーキの姉。
昔は「冒険者なんて、だいっきらい!」と言っていたのに、いつの間にか受付嬢としてギルドで働いていた。
「あぁ、怒られないようにする」
ナーナがどんな反応をするだろうと想像してみるが、怒られる気がして苦笑いを浮かべる。
優しい娘なのだ。
誰のことでも心配する。
無茶なことをしてしまうと怒られてしまうのだ。
冒険者内でお母さんと呼ばれているのは内緒である。
お母さんにしてはちっちゃいと思っていたりする。
「ま、頑張れ」
ナーキもナーナが怒ると思ったのだろう。
笑みを向けながら肩に手を置いて慰めてくれた。
「あぁ」
部屋から出て行ったナーキを見送って部屋に戻る。
所持金の確認だ。
大金貨25枚、金貨8枚か。十分だな。
最低価格なら10人くらいは買えるはずだ。
「さて、行くか」
軽食を済ませて部屋を出る。
向かう先は奴隷商店だ。
「いらっしゃいませ。ささ、こちらへどうぞ」
知り合いの商人に紹介状を書いてもらっていたので、面倒な手続きなどもなく部屋に案内される。
35年前、ここまで連れて来てくれたドルダガさんは念願の店を手に入れた。
いろいろと世話になった人だ。
知っている相手だということもあって、何かと融通してもらった。
ドルダガさんは5年前に亡くなったが、その息子であるドルビドくんが店を引き継いだ。
ドルダガさんは「ドルビドは天才だ!」とよく言っていた。
その時は親ばかだなと思っていたが、本当に天才だったようで、28という若さで王国でも有名な商会となった。
ドルビドくんは多忙であったが、前々から金の宝箱を売るという約束をしていたので、昨日会った。
会った時は若返った俺を見て驚いていたが、流石は商人だと思った。
「少し待っていてください」と言われて待っていたら、売れる家や奴隷商人への紹介状を用意してくれた。
ドルビドくんに昔言われたことを思い出した。
「俺、一度聞いたことは忘れないんです」と。
彼に自分の話をしたことすら覚えていないが、彼が覚えていたのなら言ったのだろう。
そんなわけで金の宝箱を売って、家を買い、商人の紹介状を手に入れた。
「ご希望の奴隷は戦える奴隷、ですか」
「あぁ。歳は15歳以上20以下で頼む」
「かしこまりました。少々お待ちください」
商人が部屋から出て行く。
どんな子たちがやって来るのだろうか。
「お待たせいたしました。準備が整いましたので、こちらへどうぞ」
戻って来た商人に案内された部屋に入ると、5人の男女が立っていた、
「お客様の希望に合う者達です」
「質問をしても?」
「はい。どうぞご自由に」
「俺は冒険者だ。ランクはC。目標はSだ」
全員が驚いた表情をしている。
それはそうだ。ランクCが奴隷を買うことなどほとんどないことだ。
「魔物との戦いが基本的な仕事だ。
命を落とす可能性は高い。
それでもいいと言う者だけ、手を上げろ」
嘘は好きじゃない。
人の死を間近で見たいとも思わない。
戦う覚悟があるやつを仲間にする。
「私を、買ってください」
真ん中の娘が手を挙げた。
黒髪で目つきの鋭い娘だ。
どこか懐かしい彼女のことを思い出す。
「理由は?」
「私は、戦えます。
死ぬ気も、ありません」
彼女の言葉に笑みを浮かべる。
商人の方を向いて購入することを伝えてから彼女に向き直って問いかける。
「商人、彼女を購入だ。
名前は?」
「フィルド、です。フィーと、お呼びください」
「わかった。他に手をあげる者はいないか?」
「ご主人様。発言の、許可を」
「なんだ?」
「買っていただきたい、人がいます」
「名前と年齢は?」
「名前は、オーギス。私の弟で、12歳です」
姉弟で売られたのか。
12歳なら買ってもいいが、その子は戦えるのだろうか?
「弟は戦えるのか?」
「オーギスの夢は、冒険者でした。
きっと、大丈夫です」
「商人、連れて来てくれるか?」
「か、かしこまりました。他の者は、どうされましょう?」
4人の男女に視線を向ける。
手をあげる様子はなさそうだ。
「下げてくれて構わない。無理に買って死なれては俺が困る」
俺はフィーの手を握って部屋を出て行く。
先ほどまで待っていた部屋で待機だ。
「ありがとう、ございます」
「あぁ。しっかりと働いてくれ」
「はい」
オーギスを連れて来るだけだと言うのに、待たされる時間が長い。
オーギスという子に問題でもあるのか?
「お待たせいたしました。こちらが、オーギスです」
あぁ。そういうことか。
彼は、忌み子であった。
紫の髪。左目が赤、右目が青。
大昔、魔王と呼ばれた存在の特徴と、よく似た者。
「……」
フィーをちらりと見る。
傷だらけの彼の姿を見て、今にも飛び出しそうだ。
姉弟と言うのは本当なのだろうか?
それは後で確認すればいいだけか。
「商人、2人でいくらだ?」
「…は?」
2人とも購入しないだろうと思ったのだろう。
間抜けな声をあげる商人と、じっとこちらを見つめる奴隷の姉弟。
「2人でいくらだ?」
大金貨10枚。いい買い物だった。
俺の後ろを黙々と歩いてついてくる姉弟。
オーギスの体の傷はもうない。
フィーは治癒魔法が使えるそうだ。
「ご主人様」
「なんだ?」
「よかった、のですか?」
「戻りたいのか?」
「い、いえ!」
「俺に恩を感じるならしっかり働いて返してくれ」
「はい!」
オーギスは声を出さない。
じっとこちらを見て来るだけだ。
まだどこか悪いのだろうか?
宿に戻ったら詳しい話をーーー
「おとーさん」
どうやら俺に向けられているらしい。
オーギスがこちらを見ながら手を伸ばして来る。
俺は子供を作った記憶はない。
やったことがないわけではないが、しっかりと避妊はしている。
それに特定の人物とやったことがない。
そういうところでしか経験はないのだ。
手の指で数えられるくらいの経験しか。
少し悲しくなって来たがオーギスと視線を合わせる。
じっとこちらを見つめ続けている。
隣にいるフィーは慌てている。
「ご、ごめんなさい! オーギス! ご主人様は」
「オーギス、おいで」
膝を曲げてオーギスと同じくらいの目線にする。
手を広げて名前を呼ぶと彼は飛びついて来た。
「おとーさん!」
違うのだが、父親としての方が信頼関係を築きやすい。
オーギスを抱き上げてフィーに手を伸ばす。
フィーは戸惑いながらもゆっくりと俺の手を握った。
優しく包み込むようにフィーの手を握り歩き出す。
耳のすぐそこで聞こえてくる泣き声と、隣から聞こえる泣き声とともに、宿へと戻った。
ベッドから起き上がる。
目を覚ますために顔を洗いに部屋を出る。
戻って来た部屋の中でもぞもぞと動くものに視線がいく。
ナーキだ。
「おい起きろ。ギルド長」
流石にアンは帰らせた。
泊まると泣きついて来たがアンのパーティーメンバーに引っ張られていった。
「あ? いつっ。やっぱり歳だな」
「ほら、水だ」
「お。ありがとな」
顔を洗うついでに水をコップに入れて来たのでナーキに渡す。
「ラーナさんが心配してるんじゃないか?」
ラーナさんはナーキの奥さんだ。
幼馴染らしく、なんというか、可愛らしい人だ。
「問題ねぇよ。息子に伝言頼んだからな」
ナーキの息子はアンの仲間だ。
確か名前は、ラーキだったか。
流石というか、25歳でランクAまで上がって来た天才だ。
30までにはランクSになっているだろう。
「そうか。仕事は?」
「今日は特にねぇな。ま、軽く顔出しに行くか」
「軽食は?」
「あ~向こうで食う。ドワーフ族に軽食はねぇだろ」
そういえばナーキはドワーフ族だった。
平均的なドワーフ族よりも身長が高く、スラリとした体型なので忘れがちだ。
確か、歳は70を超えていると噂で聞いたことがある。
本当かどうかは本人に聞かないとわからないが、特に興味はない。
「そうだったな」
「アド、今日はギルドに来るのか?」
「奴隷次第だな。すぐに使えそうなら外に連れ出そうと思ってる」
「そうか。俺は帰って寝てるかもしれねぇが、娘が今日はいるはずだ。驚かせてやれ」
ナーナ。
ナーキとラーナさんの娘で、ラーキの姉。
昔は「冒険者なんて、だいっきらい!」と言っていたのに、いつの間にか受付嬢としてギルドで働いていた。
「あぁ、怒られないようにする」
ナーナがどんな反応をするだろうと想像してみるが、怒られる気がして苦笑いを浮かべる。
優しい娘なのだ。
誰のことでも心配する。
無茶なことをしてしまうと怒られてしまうのだ。
冒険者内でお母さんと呼ばれているのは内緒である。
お母さんにしてはちっちゃいと思っていたりする。
「ま、頑張れ」
ナーキもナーナが怒ると思ったのだろう。
笑みを向けながら肩に手を置いて慰めてくれた。
「あぁ」
部屋から出て行ったナーキを見送って部屋に戻る。
所持金の確認だ。
大金貨25枚、金貨8枚か。十分だな。
最低価格なら10人くらいは買えるはずだ。
「さて、行くか」
軽食を済ませて部屋を出る。
向かう先は奴隷商店だ。
「いらっしゃいませ。ささ、こちらへどうぞ」
知り合いの商人に紹介状を書いてもらっていたので、面倒な手続きなどもなく部屋に案内される。
35年前、ここまで連れて来てくれたドルダガさんは念願の店を手に入れた。
いろいろと世話になった人だ。
知っている相手だということもあって、何かと融通してもらった。
ドルダガさんは5年前に亡くなったが、その息子であるドルビドくんが店を引き継いだ。
ドルダガさんは「ドルビドは天才だ!」とよく言っていた。
その時は親ばかだなと思っていたが、本当に天才だったようで、28という若さで王国でも有名な商会となった。
ドルビドくんは多忙であったが、前々から金の宝箱を売るという約束をしていたので、昨日会った。
会った時は若返った俺を見て驚いていたが、流石は商人だと思った。
「少し待っていてください」と言われて待っていたら、売れる家や奴隷商人への紹介状を用意してくれた。
ドルビドくんに昔言われたことを思い出した。
「俺、一度聞いたことは忘れないんです」と。
彼に自分の話をしたことすら覚えていないが、彼が覚えていたのなら言ったのだろう。
そんなわけで金の宝箱を売って、家を買い、商人の紹介状を手に入れた。
「ご希望の奴隷は戦える奴隷、ですか」
「あぁ。歳は15歳以上20以下で頼む」
「かしこまりました。少々お待ちください」
商人が部屋から出て行く。
どんな子たちがやって来るのだろうか。
「お待たせいたしました。準備が整いましたので、こちらへどうぞ」
戻って来た商人に案内された部屋に入ると、5人の男女が立っていた、
「お客様の希望に合う者達です」
「質問をしても?」
「はい。どうぞご自由に」
「俺は冒険者だ。ランクはC。目標はSだ」
全員が驚いた表情をしている。
それはそうだ。ランクCが奴隷を買うことなどほとんどないことだ。
「魔物との戦いが基本的な仕事だ。
命を落とす可能性は高い。
それでもいいと言う者だけ、手を上げろ」
嘘は好きじゃない。
人の死を間近で見たいとも思わない。
戦う覚悟があるやつを仲間にする。
「私を、買ってください」
真ん中の娘が手を挙げた。
黒髪で目つきの鋭い娘だ。
どこか懐かしい彼女のことを思い出す。
「理由は?」
「私は、戦えます。
死ぬ気も、ありません」
彼女の言葉に笑みを浮かべる。
商人の方を向いて購入することを伝えてから彼女に向き直って問いかける。
「商人、彼女を購入だ。
名前は?」
「フィルド、です。フィーと、お呼びください」
「わかった。他に手をあげる者はいないか?」
「ご主人様。発言の、許可を」
「なんだ?」
「買っていただきたい、人がいます」
「名前と年齢は?」
「名前は、オーギス。私の弟で、12歳です」
姉弟で売られたのか。
12歳なら買ってもいいが、その子は戦えるのだろうか?
「弟は戦えるのか?」
「オーギスの夢は、冒険者でした。
きっと、大丈夫です」
「商人、連れて来てくれるか?」
「か、かしこまりました。他の者は、どうされましょう?」
4人の男女に視線を向ける。
手をあげる様子はなさそうだ。
「下げてくれて構わない。無理に買って死なれては俺が困る」
俺はフィーの手を握って部屋を出て行く。
先ほどまで待っていた部屋で待機だ。
「ありがとう、ございます」
「あぁ。しっかりと働いてくれ」
「はい」
オーギスを連れて来るだけだと言うのに、待たされる時間が長い。
オーギスという子に問題でもあるのか?
「お待たせいたしました。こちらが、オーギスです」
あぁ。そういうことか。
彼は、忌み子であった。
紫の髪。左目が赤、右目が青。
大昔、魔王と呼ばれた存在の特徴と、よく似た者。
「……」
フィーをちらりと見る。
傷だらけの彼の姿を見て、今にも飛び出しそうだ。
姉弟と言うのは本当なのだろうか?
それは後で確認すればいいだけか。
「商人、2人でいくらだ?」
「…は?」
2人とも購入しないだろうと思ったのだろう。
間抜けな声をあげる商人と、じっとこちらを見つめる奴隷の姉弟。
「2人でいくらだ?」
大金貨10枚。いい買い物だった。
俺の後ろを黙々と歩いてついてくる姉弟。
オーギスの体の傷はもうない。
フィーは治癒魔法が使えるそうだ。
「ご主人様」
「なんだ?」
「よかった、のですか?」
「戻りたいのか?」
「い、いえ!」
「俺に恩を感じるならしっかり働いて返してくれ」
「はい!」
オーギスは声を出さない。
じっとこちらを見て来るだけだ。
まだどこか悪いのだろうか?
宿に戻ったら詳しい話をーーー
「おとーさん」
どうやら俺に向けられているらしい。
オーギスがこちらを見ながら手を伸ばして来る。
俺は子供を作った記憶はない。
やったことがないわけではないが、しっかりと避妊はしている。
それに特定の人物とやったことがない。
そういうところでしか経験はないのだ。
手の指で数えられるくらいの経験しか。
少し悲しくなって来たがオーギスと視線を合わせる。
じっとこちらを見つめ続けている。
隣にいるフィーは慌てている。
「ご、ごめんなさい! オーギス! ご主人様は」
「オーギス、おいで」
膝を曲げてオーギスと同じくらいの目線にする。
手を広げて名前を呼ぶと彼は飛びついて来た。
「おとーさん!」
違うのだが、父親としての方が信頼関係を築きやすい。
オーギスを抱き上げてフィーに手を伸ばす。
フィーは戸惑いながらもゆっくりと俺の手を握った。
優しく包み込むようにフィーの手を握り歩き出す。
耳のすぐそこで聞こえてくる泣き声と、隣から聞こえる泣き声とともに、宿へと戻った。
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