宝箱を開けたら

 冒険者を始めて35年。

 アリドバ 通称アド 45歳 独身。

 30歳の時、迷宮で金の宝箱を発見。

 すぐに開けて中身を確かめたい気持ちを抑え、引退後の楽しみにしようと、マジックバッグに入れていた。

 45歳、冒険者の活動するにも限界がきた?

 引退を決意。借りている宿の一室で、マジックバッグから金の宝箱を取り出す。

 罠がないことは確認済みだ。

 あとは宝箱を開けて中身を確認して売りに出せばいい。

 そんな軽い気持ちで宝箱を開けた瞬間ーーー

 宝箱から出てくる煙を浴びて意識を失った。

 目を覚ませば、空の宝箱が視界に入った。

 何も、入っていなかった。

「ハハ…」と、乾いた笑いが口から溢れる。

 金の宝箱だ。期待しないわけがなかった。

 すぐに気持ちを切り替えることができず、ベッドに倒れこみ、眠りについた。

 目が覚めて、体に違和感を覚える。

 腰の痛み、膝の痛みが無くなっている。

 動きが軽くなった体を起こし、空の宝箱をマジックバッグに入れる。

 昨日は重たいと感じていた宝箱を軽々と持ち上げている自分に、何かがおかしいと思いながらも、何がおかしいのかがわからない。

 いつものように、顔を洗うため部屋を出る。

 外の井戸で水を組み上げて、桶に入った水面に映る自分を見て驚愕した。

「誰だ、お前」

 どうやら俺は、若返ったらしい。
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