宝箱を開けたら

riki

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12.護衛

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「今日はよろしくお願いします」

 ドルビド君と合流した。
 大きなカバンを背負っている以外に何も持っていない。

「あぁ。初めての護衛だが安心してくれ。
 失敗しないように気を引き締めているかな」

「はい。安心していますよ」

「しかし俺たちでよかったのか?」

「えぇ。アドさんは信用できる方ですから」

 冒険者の中にもバカはいる。

 商人を殺して金を手に入れようとするものやわざと危険な道に誘い込んで魔物に殺させて商品を持ち逃げるす者。

「そうか。ところで荷物はそれだけか?」

「いえ、外に馬車を用意させています」

「わかった」

 ドルビド君の案内で馬車が用意されている場所に移動する。
 思っていたよりも大きい馬車が視界に入った。
 馬が3匹で引くようだ。

「商品はこのカバンに入っています。
 なので荷台にはアドさんたちに乗ってもらう予定です」

「御者はドルビド君が?」

「はい。その予定です。
 アドさんは馬の扱いに慣れておいでですか?」

「出来ないことはない。
 ドルダガさんに教えてもらったからな」

「では交代で行いというのはどうでしょう?」

「わかった。フィーたちは荷台に乗ってくれ」

「かしこまりました」

 フィーたちが荷台に乗ったのを確認してドルビド君と一緒に乗ってドルビド君が手綱を握る。

 馬がゆっくりと歩き始めた。風が気持ちいい。

「懐かしいですね」

「そうだな。大きくなったな」

「今更な感想、ありがとうございます」

「そうだな」

「どうですか?」

「うまくやっている、と思っている。
 あの子達は奴隷だ。俺には逆らえないからな」

「どちらも美人ですね」

「手は出していないぞ」

「そうですか。そういえばミコトさんからお礼を言われました」

「家の留守番を頼んだからかな?」

「それもあるでしょうが、あんなに生き生きとした奴隷を見たのは初めてだったから、だそうですよ」

「仲間だからな」

「えぇ。身内にはとことん優しいですからね、アドさんは」

「そんなことは、ないと思うが」

「騙されたことも何度かありませんでしたか?」

「忘れた」

「私は忘れていませんよ。大金貨が必要なんだと、父に泣きついたアドさんの姿は」

「忘れてくれ」

「父に詐欺だと説得されて、泣いてしまったアドさんの姿も」

「頼む、忘れてくれ」

「はい、もう言いません」

「楽しそうだな」

「はい。こんな楽しい会話は久しぶりです」

「止まれ!」

 楽しい会話は邪魔な客によって終わりを告げた。

「荷物を全部置いていきな。命までは取らねえよ」

 盗賊か。珍しいことはないが王国からそれほど離れていないこの場所で現れるのはおかしい。

「アドさん、お願いします」

「あぁ」

 目の前にいるのは5人。
 少し離れた場所に潜んでるのが10人ほどか。

 弓を使われるのは面倒だな。

 あの子達は人を殺せるだろうか?

「少しでも近づけば殺す。おい! 聞いて」

 喋っている盗賊の男の首に短剣が突き刺さる。
 口から血を流して地面へ倒れるのが合図となって隠れていた盗賊たちが姿を現した。

「殺せ!」

 あいつがリーダーのようだ。
 先に頭を潰すか。

 10人ほどから放たれる矢が馬車を襲うが、

「ウォーターカーテン! フリーズ!」

 フィーの魔法によって馬車を囲むように水が空高く吹き上がり、一瞬で凍りついて氷の壁が出来上がった。

 矢が氷にあたり地面に落ちていく。
 馬車を足場にして氷の壁からオーギス、ルナ、マサが飛び出てきた。

「いけ」

 リーダーと思われる男に近づきながら3人に命じる。

「はい!」

「かしこまりました」

「うへ。あんまり血は得意じゃないんだけど」

 オーギスとルナは別れて離れた場所にいる盗賊に駆けていく。
 マサは俺の援護に入るようだ。

「殺さなくてもいいぞ。無力化しろ」

 剣を振り下ろしてくる盗賊を避けながら、首に短剣を突き刺して次の盗賊に向かう。

 マサは襲いかかってくる盗賊の剣を受け流して、盗賊を蹴ったり剣の柄で突いたりして気絶させている。

「頑張ります!」

「お前がリーダーでいいのか?」

 離れた場所から聞こえてくる悲鳴がオーギスとルナが戦っていることを証明している。

 近くにいた盗賊は無力化済みだ。
 離れた場所で指揮をしていた男に近づいて問いかける。

「なかなかやるじゃねえか。
 ランクCとは聞いていたから楽な仕事だと思ったんだがな」

 狙いはドルビド君か。
 商売敵の商人にでも雇われたか?

「雇い主について話す気はないか?」

「俺が降参すると思ってんのか?
 俺に勝てたら教えてやるよ!」

 男が斬りかかってくるのを合図に近くにいる盗賊たちも襲いかかってくる。

 1人では使えなかった力がある。
 今ならあの子達がいる。
 使っても問題ないだろう。

「鬼人化」

 鬼の討伐をし続けて、ふとカードで能力の確認した。
 あれは40くらいだったか。

 鬼人化なんていう能力を手に入れていた。

 人はいくつかのスキルとも呼ばれるものを持っている。
 生まれつき持っている能力もあれば、後から手に入れる能力もある。

 鬼人化は後から手に入れた能力だ。
 手に入れた頃に安全な場所で使ってみた。

 効果は素晴らしいの一言だった。
 力は強まり、素早く動くことができる。

 しかし10分ほどで効果はなくなった。
 その後に来る激痛。

 その場から30分は動くことができなかったと思う。

 迷宮では使えない。仲間のいない俺には。

「今はあの子達がいる」

「お、鬼?」

 地面を蹴って男の懐に入る。
 死なないように加減をしながら腹を殴った。

「がっ!」

「ひ、ひぃぃい!」

 吹き飛んでいく男を見た盗賊達は悲鳴をあげながら逃げていった。

 吹き飛ばした男は気絶したようだ。
 首を掴んで馬車の近くまで運んでいく。

 一瞬で終わってしまったが、途中で解けるのだろうか?

 体から力が抜けていく。
 鬼人化は解くことができるようだ。

 主に足と腕が痛い。
 筋肉痛のような感じだ。

「アドさんすげぇ!」

「オーギスとルナは?」

「あ、そろそろ戻って来ると思う。
 戦闘音も聞こえないし」

「そうか。縛るものはあるか?」

「ドルビドさんに確認して来る!」

 マサが気絶させた盗賊たちとリーダーと思われる男を集める。

 マサがドルビド君からもらってきたという縄で縛った。

「父さん、何人か逃しちゃった」

「申し訳ございません」

「2人とも、怪我はないか?」

「うん、大丈夫。あいつら、兄さんより弱かった」

「そうですね。マサより弱かったので」

「なんで俺が基準なんだよ」

「「兄さん/マサが一番弱いから」」

「ひでえ! なんとか言ってやってよアドさん!」

「頑張れ。今は弱くても、一番才能があるのはお前だからな」

「お、おう! 頑張ります!」

 照れたように笑うマサは輝いて見えた。

「尋問を始めるか」

「うわぁ、こえぇ顔。
 俺たちはどうしたらいいですか?」

「3人は馬車で休んでいてくれ。逃げた奴らが援軍を連れて来るかもしれないからな」

「了解です! 2人とも、馬車に戻ろうぜ」

「うん」

「あんたが仕切るな」

 3人が馬車に戻っていくのを確認して気絶している男を起こす。

「雇い主は?」

「いねぇよ。そんなの」

「どうやって俺の情報を知った?」

「言ったら見逃してくれんのか?」

「要求できる立場にいると思ってるのか?」

「違いねぇ。俺たちに情報を渡してきた奴がいる。
 名前はしらねぇ。姿は黒いローブで顔を隠してやがった」

 黒いローブ。誰かに恨まれるようなことはしていないはずだが。

「答えたんだ。逃してくれるよな?」

「そうだな。この世から逃がしてやるよ」

 男の首を短剣で斬る。
 わかっていたのか、騒ぐことなく男は首から血を流して死んだ。

 マサが気絶させた盗賊たちも殺す。
 血の匂いで魔物が近づいて来るだろうが、王国の騎士がなんとかしてくれるだろう。

 鬼人化を使って盗賊たちの死体を放り投げる。
 馬車が通れる道が出来れば鬼人化を解いて馬車に戻る。

「ご主人様。クリーン」

 フィーが近づいてきて、魔法を使う。手についた血や汚れた装備などが綺麗になる。魔法は本当に便利だな

「ありがとう。助かった」

「いえ、当然のことをしただけです」

 フィーは一礼してから荷台に戻っていった。
 人を殺した姿を見たはずだが、俺を怖がったりはしなかった。

 少し、安心する。

 あの子達には嫌われたくないのだと思う。

「では出発します」

 特に何事もなく王国と帝国のちょうど真ん中にある街のナダガルに到着した。

 ここまで来るのに3日。
 ベッドで寝たいと何度もつぶやいていたマサが街に到着して一番喜んだ。

「やっとベッドで寝れる!」

「今日は休んで明日に仕入れを行う予定ですので、アドさんたちは2日の休息になります。
 明後日の朝に広場で集合でよろしいですか?」

「仕入れ中の護衛は大丈夫か?」

「えぇ。ここにも私の店はありますから。
 そこの従業員と行動しますので大丈夫です」

「そうか。気をつけてな」

「はい。ゆっくり休んでください」

「あぁ。じゃあ明後日に広場で」

「はい。よろしくお願いします」

 ドルビド君と別れてフィーたちに向き直る。
 疲れているのが見て取れる。

「今日と明日は休みだ。自由にしてくれ」

「ご主人様。宿はどうされますか?」

「ドルビド君からお勧めされた場所がある。
 宿の名前は、小鳥の止まり木だそうだ」

「可愛らしい名前ですね」

「場所はこっちだが、先に宿へ向かうか?」

「お願いします!」

 マサが声をあげる。野宿や夜の見張りは相当疲れたようだ

「わかった。こっちだな」

 小鳥の止まり木と看板に書かれている店を見つける。
 家を買う前にずっと泊まっていた宿を思い出す

「ここだな」

「いらっしゃいませ。お泊まりですか?」

「あぁ。二泊で三部屋頼む」

「はい! 食事はどうされますか?」

「頼む」

「はい! ありがとうございます!
 うちのご飯は美味しいですから、楽しみにしてくださいね!」

「そうか。楽しみにしている。
 部屋は二階か?」

 女性から三つの鍵を受け取る

「はい! 1人部屋が手前の方で、2人部屋奥の方になります!」

「ありがとう」

 宿代と食事代を女性に渡す。
 チップとして銀貨を一枚多めに渡しておく。

「わ! ありがとうございます!」

「元気な子が好きでね。頑張って」

「はい!」

 女性がチップに気がつきお礼を言って来る。
 笑みを返して頑張ってと伝える。女性の元気な返事を聞いてから二階に上がっていく

「フィーとルナは奥の部屋。
 その隣にオーギスとマサで、俺はここだ」

「わかりました。ご主人様のご予定は?」

「少し街を歩くつもりだ。
 皆も自由に行動してくれ」

「かしこまりました」

 部屋の扉を開けて中に入る。
 フィーとルナが一礼してマサとオーギスは2人に頭を抑えられながら一礼しているのを見てから扉を閉めた。

「何年振りかな。この街に来るのは」

 窓を開けて街を見下ろす。
 懐かしいと感じる。

 ほとんどを王国で過ごしていたが、ずっと王国にいたわけではない。

「初めて来たのはドルダガさんに連れられて、だったな。
 あっちの広場でドルビド君と追いかけっこをしたっけ」

 懐かしいと呟く。

 ここから見るだけでなく、部屋を出て街を歩くことにした。
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