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16.英雄
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「オーギスとルナは隙を見つけて一撃離脱だ
フィーも隙があれば攻撃魔法を使ってくれればいい。ただし、効果がないと分かればもしもの時のために体力を温存してくれ。
マサは弓が使えるようだから、エルフ達と一緒に俺の援護だ。俺に当てるなよ?」
「「「「はい!」」」」
「俺が的になる。オーギスとルナはあまり近づかないようにしてくれ。
じゃあ、行ってくる」
エルフ達は鬼を囲むように陣取っている。マサもそれに加わり、俺は鬼へと近づいて行く。
「鬼退治だ」
鬼がこちらを見た瞬間、打ち合わせ通りエルフ達とマサが鬼に向けて骨の矢を射る。
「Gaaa‼︎‼︎」
鬼の体に次々と矢が刺さる。片目が潰れたのは確認した。
再生しないことを祈って一気に鬼の懐まで駆け込んで行く。
「Gi⁉︎」
潰れていない目が俺を捉える。死角となる左に飛んで鬼の視界から逃げる。
こちらを向こうとしながら左腕を上げて俺を捕まえようとするが、さらに飛んで廃後に回り背中を短剣で斬る。
「Gaa‼︎」
斬られた痛みで声をあげる鬼が上げた左腕を振り回してこちらを向く。
地面を蹴って鬼から距離を取る。こちらを見ている鬼と目が合う。まるで、お前は俺が喰うと言われているだ。
「喰えるもんなら喰ってみろ」
「Giaaa!!」
鬼が地面を蹴って駆け寄ってくる。背中がガラ空きなんだよ。
「Ga!?」
オーギスとルナの攻撃が鬼の背中に命中する。
体勢を崩した鬼は地面に転がるが、器用に手を地面に叩きつけて飛び上がり、体制を立て直して地面に着地する。
「Gii」
俺たちが離れていて鬼の動きが止まったところでエルフ達からの援護射撃が、鬼を襲う。
「GAAAA!!」
咆哮で、矢を弾きやがった。
「GA!!」
「速いが、見えないほどじゃない」
幸いにも狙いは俺のようだ。鬼が目前まで近づいてくる。
右、左、蹴り。鬼からの攻撃を避ける。
当たりどころが悪ければ即死だろうな。当たるわけにはいかない。
「鬼人化!」
鬼が伸ばしてくる手を避けて、腕に短剣で斬り傷をつける。
時には腹、太もも、顔。できる限りの攻撃を行う。
鬼の体は傷だらけで血を流している。このまま行けば、やれる!
「GAAAA!!」
額に、目が現れた。額の目と目が合う。体が、動かない。
「GA!!」
これは、死んだか。
「絶対に、殺させない!」
馬鹿! 来るな! 声が、出ない。
俺の目の前で、鬼の手をルナが剣で止めている。
剣が弾き飛ばされる。ルナが鬼に捕まった。
鬼が、ルナを喰おうとしている。
やめろ、やめろ。やめろ!
「ヤメロォ!!」
ルナを捕まえている鬼の腕を掴み、膝を上げると同時に鬼の腕を膝に向けて引きおろす。
ゴキッと骨が折れる音が森に響く。
「GIAAAA!!??」
「ごほ、ごほ」
ルナが生きているのを確認して、腕を抑えて転げ回る鬼に近づいて行く。
「ダレノモノニテェダシテンダ。アァ!?」
転げ回る鬼の足に向けて、足を踏み降ろす。
ボキッと骨が折れる音が森に響く。
「GIAAAA!!??」
鬼が折れていない手で折れた足を抑えている。
「ジゴクデワビロ」
鬼の喉を掴んで力を入れて行く。
「GA.A.A...」
ポキと小枝でも折れたような音とともに、鬼の首が折れて、鬼は動かなくなった。
そして気づく。自分の体の異変に、
「ダレダ、オマエハ」
人の手とは思えない、赤くゴツゴツとして鋭い爪がある。
まるで、鬼のような手が、俺の視界にあった。
「ご主人様!」
ルナの声だ。暖かい。起きたら、叱らないとな。
「ご主人様!? ご主人様!」
目を開けると、知らない天井だった。
「ここは、いっ」
体を起こすことができない。指を動かすだけでも激痛が体のいたるところに走る。
声を出すのも億劫だ。これは鬼人化を使った後に似ている。
ここまで酷いのは最初の時以来だ。
「ご主人様!」
「るな?」
部屋に入って駆け寄ってきたのはルナだった。
「よかった!」
イタタタ! 抱きつかれると激痛が身体中に走る。
「す、すみません!」
俺の表情を見て察してくれたのか、離れてくれる。
何日、寝ていたのだろう?
「3日間、眠っておられました。1日目は鬼の姿から戻ることがなく、みんなどうなるのかと思っていましたが、2日目には元の姿に戻られたので安心しました
ですが、完全には戻られていません。失礼します」
ルナの手が額に当たる。ん? くすぐったいと感じた。
「小さいですが、角が二本残っています。まだ消えていないようで、消えるのかどうかもわかりません」
角が二本生えた。他におかしなところはないさそうなので、まずは一安心か。
「おやすみなさい、ご主人様」
ルナの声を最後に、眠りについた。
目が覚めてから身体をほぐすように動かし、違和感などもないことを確認して部屋から出ると、エルフ達から歓声を受けた。
俺が起きるまで交代で見張っていたらしい。鬼のような姿だったこともあって、新しい鬼が誕生するかもしれないと思っていたそうだ。
しかし俺の体が元に戻って、起きてきたことで歓声を上げたらしい。
「今日は宴会じゃあ!!」
『『『おう!!』』』
俺が起きたことで宴会が始まった。英雄だと言われてしまった。
鬼のアド。
俺にも通り名ができたことに喜ぶべきか、化け物扱いされて悲しむべきか。
とりあえず、鬼討伐は成功したのだ。
今は宴会を楽しもう!
報酬もたっぷりもらわないとな。
あとは、ルナにお仕置きだな。
~~~~~~~~~~~
ルナちゃんが鬼に捕まった時、殺されると思った。
なんとかしないといけない。
でも間に合わないとわかる。
俺は無意識のうちに駆け出していた。
間に合わせる!
胸が熱くなるのを感じる。
力が、欲しい!
しかし最悪の事態は訪れなかった。
アドさんが鬼となって鬼を討伐したからだ。
胸にあった熱が冷めていく。
新しい力を、手に入れたようだ。
「俺が勇者ね。アドさんの方が勇者っぽかったけど」
鑑定で自分の体を調べて出てきた説明は、勇者の覚醒という言葉だった。
~~~~~~~~~~~
俺は何もできなかった。
父さんの様子がおかしいことに気づいていたのに、体が動かなかった。
鬼の額に現れた目が原因だと、父さんは言っていた。
けどルナさんは動けた。
俺は動けなかった。
悔しい。
父さんや姉さん達を守る力が欲しい。
強くなる。みんなを守るために、強くなってやる!
フィーも隙があれば攻撃魔法を使ってくれればいい。ただし、効果がないと分かればもしもの時のために体力を温存してくれ。
マサは弓が使えるようだから、エルフ達と一緒に俺の援護だ。俺に当てるなよ?」
「「「「はい!」」」」
「俺が的になる。オーギスとルナはあまり近づかないようにしてくれ。
じゃあ、行ってくる」
エルフ達は鬼を囲むように陣取っている。マサもそれに加わり、俺は鬼へと近づいて行く。
「鬼退治だ」
鬼がこちらを見た瞬間、打ち合わせ通りエルフ達とマサが鬼に向けて骨の矢を射る。
「Gaaa‼︎‼︎」
鬼の体に次々と矢が刺さる。片目が潰れたのは確認した。
再生しないことを祈って一気に鬼の懐まで駆け込んで行く。
「Gi⁉︎」
潰れていない目が俺を捉える。死角となる左に飛んで鬼の視界から逃げる。
こちらを向こうとしながら左腕を上げて俺を捕まえようとするが、さらに飛んで廃後に回り背中を短剣で斬る。
「Gaa‼︎」
斬られた痛みで声をあげる鬼が上げた左腕を振り回してこちらを向く。
地面を蹴って鬼から距離を取る。こちらを見ている鬼と目が合う。まるで、お前は俺が喰うと言われているだ。
「喰えるもんなら喰ってみろ」
「Giaaa!!」
鬼が地面を蹴って駆け寄ってくる。背中がガラ空きなんだよ。
「Ga!?」
オーギスとルナの攻撃が鬼の背中に命中する。
体勢を崩した鬼は地面に転がるが、器用に手を地面に叩きつけて飛び上がり、体制を立て直して地面に着地する。
「Gii」
俺たちが離れていて鬼の動きが止まったところでエルフ達からの援護射撃が、鬼を襲う。
「GAAAA!!」
咆哮で、矢を弾きやがった。
「GA!!」
「速いが、見えないほどじゃない」
幸いにも狙いは俺のようだ。鬼が目前まで近づいてくる。
右、左、蹴り。鬼からの攻撃を避ける。
当たりどころが悪ければ即死だろうな。当たるわけにはいかない。
「鬼人化!」
鬼が伸ばしてくる手を避けて、腕に短剣で斬り傷をつける。
時には腹、太もも、顔。できる限りの攻撃を行う。
鬼の体は傷だらけで血を流している。このまま行けば、やれる!
「GAAAA!!」
額に、目が現れた。額の目と目が合う。体が、動かない。
「GA!!」
これは、死んだか。
「絶対に、殺させない!」
馬鹿! 来るな! 声が、出ない。
俺の目の前で、鬼の手をルナが剣で止めている。
剣が弾き飛ばされる。ルナが鬼に捕まった。
鬼が、ルナを喰おうとしている。
やめろ、やめろ。やめろ!
「ヤメロォ!!」
ルナを捕まえている鬼の腕を掴み、膝を上げると同時に鬼の腕を膝に向けて引きおろす。
ゴキッと骨が折れる音が森に響く。
「GIAAAA!!??」
「ごほ、ごほ」
ルナが生きているのを確認して、腕を抑えて転げ回る鬼に近づいて行く。
「ダレノモノニテェダシテンダ。アァ!?」
転げ回る鬼の足に向けて、足を踏み降ろす。
ボキッと骨が折れる音が森に響く。
「GIAAAA!!??」
鬼が折れていない手で折れた足を抑えている。
「ジゴクデワビロ」
鬼の喉を掴んで力を入れて行く。
「GA.A.A...」
ポキと小枝でも折れたような音とともに、鬼の首が折れて、鬼は動かなくなった。
そして気づく。自分の体の異変に、
「ダレダ、オマエハ」
人の手とは思えない、赤くゴツゴツとして鋭い爪がある。
まるで、鬼のような手が、俺の視界にあった。
「ご主人様!」
ルナの声だ。暖かい。起きたら、叱らないとな。
「ご主人様!? ご主人様!」
目を開けると、知らない天井だった。
「ここは、いっ」
体を起こすことができない。指を動かすだけでも激痛が体のいたるところに走る。
声を出すのも億劫だ。これは鬼人化を使った後に似ている。
ここまで酷いのは最初の時以来だ。
「ご主人様!」
「るな?」
部屋に入って駆け寄ってきたのはルナだった。
「よかった!」
イタタタ! 抱きつかれると激痛が身体中に走る。
「す、すみません!」
俺の表情を見て察してくれたのか、離れてくれる。
何日、寝ていたのだろう?
「3日間、眠っておられました。1日目は鬼の姿から戻ることがなく、みんなどうなるのかと思っていましたが、2日目には元の姿に戻られたので安心しました
ですが、完全には戻られていません。失礼します」
ルナの手が額に当たる。ん? くすぐったいと感じた。
「小さいですが、角が二本残っています。まだ消えていないようで、消えるのかどうかもわかりません」
角が二本生えた。他におかしなところはないさそうなので、まずは一安心か。
「おやすみなさい、ご主人様」
ルナの声を最後に、眠りについた。
目が覚めてから身体をほぐすように動かし、違和感などもないことを確認して部屋から出ると、エルフ達から歓声を受けた。
俺が起きるまで交代で見張っていたらしい。鬼のような姿だったこともあって、新しい鬼が誕生するかもしれないと思っていたそうだ。
しかし俺の体が元に戻って、起きてきたことで歓声を上げたらしい。
「今日は宴会じゃあ!!」
『『『おう!!』』』
俺が起きたことで宴会が始まった。英雄だと言われてしまった。
鬼のアド。
俺にも通り名ができたことに喜ぶべきか、化け物扱いされて悲しむべきか。
とりあえず、鬼討伐は成功したのだ。
今は宴会を楽しもう!
報酬もたっぷりもらわないとな。
あとは、ルナにお仕置きだな。
~~~~~~~~~~~
ルナちゃんが鬼に捕まった時、殺されると思った。
なんとかしないといけない。
でも間に合わないとわかる。
俺は無意識のうちに駆け出していた。
間に合わせる!
胸が熱くなるのを感じる。
力が、欲しい!
しかし最悪の事態は訪れなかった。
アドさんが鬼となって鬼を討伐したからだ。
胸にあった熱が冷めていく。
新しい力を、手に入れたようだ。
「俺が勇者ね。アドさんの方が勇者っぽかったけど」
鑑定で自分の体を調べて出てきた説明は、勇者の覚醒という言葉だった。
~~~~~~~~~~~
俺は何もできなかった。
父さんの様子がおかしいことに気づいていたのに、体が動かなかった。
鬼の額に現れた目が原因だと、父さんは言っていた。
けどルナさんは動けた。
俺は動けなかった。
悔しい。
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