21 / 41
19.夢
しおりを挟む
精神的に疲れた。
ドルビドの店から自分の家に帰るまでの記憶が曖昧だ。
ドルビドと昼食を食べたことは覚えているが、味は覚えていない。
「「おかえりなさいませ、ご主人様」」
メイド服を着た双子が出迎えてくれる。
双子の笑顔に癒される。
「ただいま。他の皆は?」
「フィーさんとルナさんは買い物に行かれました」
「オーギスとマサ兄は模擬戦するとギルドに行かれました」
昨日はオーギスをさん付けで呼んでいたが、オーギスが双子を「ルタ姉、リタ姉」と呼んだことで、オーギスと呼び捨てになった。
弟ができたみたいだと双子は喜んでいた。
マサは双子に兄呼びさせている。
双子が嫌がっている様子はないので、マサに注意はしていない。
「そうか。ちょっと疲れたから、部屋で眠る」
「「かしこまりました」」
自分の部屋に入ってベッドに倒れこむ。
昨日までの疲れと今日の精神的な疲れで、すぐに眠ることができた。
夢を見た。
何かを食べている夢だ。
うまい。今まで食べて来たどの肉よりもうまい。
骨もお菓子感覚で食べられる。
食べれば食べるほどに力がみなぎる。
もっと。もっとだ。
それと目があった。俺が手に持っているのは、エルフ族の頭。
俺は頭にかぶりつく。脳みそは濃厚で、眼球はプチプチとしていてうまい。
モットオレニクワセロ!
夢を見た。
仲睦まじい男女6人。
男が鬼へと変わる。
愛した女性を喰らい、愛してくれた女性を殺し、親友の男性を殺し、血の繋がった兄妹を喰らう。
鬼は吼える。
もっと食いたいと、涙を流しながら。
夢を、見た。
俺が鬼となって、ルナを喰らい、マサを殺し、フィーとオーギスを喰らい、ルタとリタを殺した。
やめろ。ウマイ。やめろ。タノシイ。やめろ! モットクワセロ!
周りが光に包まれた。眩しくて目を開けていられない。
ヤメロ! コレハオレノカラダ!
鬼が小さくなっていく。
あぁ、そうか。光の正体を理解した。
呪いが鬼を抑えてくれたのか。
夢を叶えさせてくれるだけじゃなく、俺を守ってくれるのか。
呪いに感謝なんておかしいけど、ありがとう。
絶対に、夢を叶えるから。
一番近いところで見ていてくれ。
中身は空っぽじゃなかった。
宝箱を開けたら、祝福が入っていたんだ。
目を覚ますと、誰かに俺の手を両手で包むように握られていた。
「おはようございます。ご主人様」
「ルナ?」
「はい。うなされていたので、手を握っていました」
「そうか。ありがとう」
俺の手を離そうとするルナの手を握って離れないようにする。
「怖い夢でも見られましたか?」
驚きながらも心配そうにこちらを見てくる。
「あぁ。もう少しだけ、このままでいてくれ」
「はい」
俺の手を離そうとしていたルナの両手が俺の手を優しく包み込む。
暖かい。
「ルナ、ずっとそばにいてくれ」
「はい。ずっとそばにいます」
…今すごく恥ずかしいことを言ったな?
ちらりとルナを見る。真っ赤な顔が視界に入った。
ルナに背を向けて手を離す。ルナの手が離れないので、離してもいいと伝える。
「も、もういいぞ」
「は、はい! ゆ、夕飯の支度をして来ます! できましたらお呼びしますので、ゆっくりとお休みください」
ルナが部屋から出ていく。
ゆっくりと体を起こしてルナが握ってくれた手を見る。
視線を感じて扉の方を向けば、ニヤニヤと笑みを浮かべるマサがいた。
「魔眼」
ピクリとも動かなくなったマサに近づいていき、部屋の中に入れる。
誰にも見られないように扉を閉めて、お仕置きの開始だ。
(イダダダダダダダッ! 頭が! 頭が割れる!)
マサの声に出せない悲鳴は、誰にも届くことはなかった。
夕食の用意が出来たとルナが呼びに来てくれたので、大部屋に向かう。
顔の形が変わっていないか確認するように顔を撫でるマサがいた。
大丈夫だ。ちゃんと手加減はした。
マサの行動にフィーとオーギスは首を傾けている。
ルタとリタは気にすることなくテーブルに夕飯を並べていく。
基本的に掃除、洗濯、料理は双子の担当だが、フィーは料理が趣味ということもあって双子の手伝いをしている。
ルナは料理に興味を持ったようで、フィーと双子から料理を教わっているようだ。
食べさせたい相手がいるんだろうが、深く聞くことはしない。
「王様から依頼を受けた。明日はその準備をする。わかってると思うが、2の迷宮に入る」
夕食を食べ終えて双子に後片付けを任せて、フィー達に今後の予定を話す。
「ご主人様だけですか?」
ルナが心配そうに聞いてくる。
置いていかれると思っているのだろう。
「ルナ達にもついてきてもらう。俺の持ち物を持って行ったところで、誰からも文句は言われないだろう」
「「「「かしこまりました」」」」
戦力は多い方がいい。
何より、ルナ達には強くなってもらわないと困るからな。
2の迷宮には高ランクの魔物が出るらしいから、上手くいけば全員の強化ができる。
リスクは高い。誰かを失う可能性もある。
いや、絶対に失わない。
全員で俺の夢を叶えてもらわないといけないからな。
「ルタとリタには留守番を頼む。数日は帰ってこないと思っておいてくれ」
片付けを終えた双子が近づいてきたので、留守番を頼む。
「「かしこまりました」」
「明日は自主訓練でもしてくれ。俺は付き合いことができないが、フィーがいれば傷はすぐに治せるだろう。
ただし、無茶だけはするなよ? 明後日は迷宮に入る予定なんだからな」
「「「「はい!」」」」
「いい返事だ。俺はそろそろ寝るが、あまり遅くまで起きているなよ」
『『『おやすみなさいませ。ご主人様』』』
6人の揃った声を聞いてから部屋へ移動する。
昼間に見た夢を思い出し、眠ることができずにいた。
ないとはわかっていても、鬼になってしまうかも知らない。
あの子達を喰らって、殺してしまうかもしれない。
ふと、ルナが握ってくれた手に視線を落とす。
彼女なら、大丈夫と言ってくれるのだろうか?
そうだ。大丈夫だ。
深呼吸してからベッドに横たわる。
俺は、鬼に負けない。
目を閉じると、手に暖かさがよみがえる。
体の中心も、暖かい気がした。
二つの暖かさを感じながら、眠りについた。
ドルビドの店から自分の家に帰るまでの記憶が曖昧だ。
ドルビドと昼食を食べたことは覚えているが、味は覚えていない。
「「おかえりなさいませ、ご主人様」」
メイド服を着た双子が出迎えてくれる。
双子の笑顔に癒される。
「ただいま。他の皆は?」
「フィーさんとルナさんは買い物に行かれました」
「オーギスとマサ兄は模擬戦するとギルドに行かれました」
昨日はオーギスをさん付けで呼んでいたが、オーギスが双子を「ルタ姉、リタ姉」と呼んだことで、オーギスと呼び捨てになった。
弟ができたみたいだと双子は喜んでいた。
マサは双子に兄呼びさせている。
双子が嫌がっている様子はないので、マサに注意はしていない。
「そうか。ちょっと疲れたから、部屋で眠る」
「「かしこまりました」」
自分の部屋に入ってベッドに倒れこむ。
昨日までの疲れと今日の精神的な疲れで、すぐに眠ることができた。
夢を見た。
何かを食べている夢だ。
うまい。今まで食べて来たどの肉よりもうまい。
骨もお菓子感覚で食べられる。
食べれば食べるほどに力がみなぎる。
もっと。もっとだ。
それと目があった。俺が手に持っているのは、エルフ族の頭。
俺は頭にかぶりつく。脳みそは濃厚で、眼球はプチプチとしていてうまい。
モットオレニクワセロ!
夢を見た。
仲睦まじい男女6人。
男が鬼へと変わる。
愛した女性を喰らい、愛してくれた女性を殺し、親友の男性を殺し、血の繋がった兄妹を喰らう。
鬼は吼える。
もっと食いたいと、涙を流しながら。
夢を、見た。
俺が鬼となって、ルナを喰らい、マサを殺し、フィーとオーギスを喰らい、ルタとリタを殺した。
やめろ。ウマイ。やめろ。タノシイ。やめろ! モットクワセロ!
周りが光に包まれた。眩しくて目を開けていられない。
ヤメロ! コレハオレノカラダ!
鬼が小さくなっていく。
あぁ、そうか。光の正体を理解した。
呪いが鬼を抑えてくれたのか。
夢を叶えさせてくれるだけじゃなく、俺を守ってくれるのか。
呪いに感謝なんておかしいけど、ありがとう。
絶対に、夢を叶えるから。
一番近いところで見ていてくれ。
中身は空っぽじゃなかった。
宝箱を開けたら、祝福が入っていたんだ。
目を覚ますと、誰かに俺の手を両手で包むように握られていた。
「おはようございます。ご主人様」
「ルナ?」
「はい。うなされていたので、手を握っていました」
「そうか。ありがとう」
俺の手を離そうとするルナの手を握って離れないようにする。
「怖い夢でも見られましたか?」
驚きながらも心配そうにこちらを見てくる。
「あぁ。もう少しだけ、このままでいてくれ」
「はい」
俺の手を離そうとしていたルナの両手が俺の手を優しく包み込む。
暖かい。
「ルナ、ずっとそばにいてくれ」
「はい。ずっとそばにいます」
…今すごく恥ずかしいことを言ったな?
ちらりとルナを見る。真っ赤な顔が視界に入った。
ルナに背を向けて手を離す。ルナの手が離れないので、離してもいいと伝える。
「も、もういいぞ」
「は、はい! ゆ、夕飯の支度をして来ます! できましたらお呼びしますので、ゆっくりとお休みください」
ルナが部屋から出ていく。
ゆっくりと体を起こしてルナが握ってくれた手を見る。
視線を感じて扉の方を向けば、ニヤニヤと笑みを浮かべるマサがいた。
「魔眼」
ピクリとも動かなくなったマサに近づいていき、部屋の中に入れる。
誰にも見られないように扉を閉めて、お仕置きの開始だ。
(イダダダダダダダッ! 頭が! 頭が割れる!)
マサの声に出せない悲鳴は、誰にも届くことはなかった。
夕食の用意が出来たとルナが呼びに来てくれたので、大部屋に向かう。
顔の形が変わっていないか確認するように顔を撫でるマサがいた。
大丈夫だ。ちゃんと手加減はした。
マサの行動にフィーとオーギスは首を傾けている。
ルタとリタは気にすることなくテーブルに夕飯を並べていく。
基本的に掃除、洗濯、料理は双子の担当だが、フィーは料理が趣味ということもあって双子の手伝いをしている。
ルナは料理に興味を持ったようで、フィーと双子から料理を教わっているようだ。
食べさせたい相手がいるんだろうが、深く聞くことはしない。
「王様から依頼を受けた。明日はその準備をする。わかってると思うが、2の迷宮に入る」
夕食を食べ終えて双子に後片付けを任せて、フィー達に今後の予定を話す。
「ご主人様だけですか?」
ルナが心配そうに聞いてくる。
置いていかれると思っているのだろう。
「ルナ達にもついてきてもらう。俺の持ち物を持って行ったところで、誰からも文句は言われないだろう」
「「「「かしこまりました」」」」
戦力は多い方がいい。
何より、ルナ達には強くなってもらわないと困るからな。
2の迷宮には高ランクの魔物が出るらしいから、上手くいけば全員の強化ができる。
リスクは高い。誰かを失う可能性もある。
いや、絶対に失わない。
全員で俺の夢を叶えてもらわないといけないからな。
「ルタとリタには留守番を頼む。数日は帰ってこないと思っておいてくれ」
片付けを終えた双子が近づいてきたので、留守番を頼む。
「「かしこまりました」」
「明日は自主訓練でもしてくれ。俺は付き合いことができないが、フィーがいれば傷はすぐに治せるだろう。
ただし、無茶だけはするなよ? 明後日は迷宮に入る予定なんだからな」
「「「「はい!」」」」
「いい返事だ。俺はそろそろ寝るが、あまり遅くまで起きているなよ」
『『『おやすみなさいませ。ご主人様』』』
6人の揃った声を聞いてから部屋へ移動する。
昼間に見た夢を思い出し、眠ることができずにいた。
ないとはわかっていても、鬼になってしまうかも知らない。
あの子達を喰らって、殺してしまうかもしれない。
ふと、ルナが握ってくれた手に視線を落とす。
彼女なら、大丈夫と言ってくれるのだろうか?
そうだ。大丈夫だ。
深呼吸してからベッドに横たわる。
俺は、鬼に負けない。
目を閉じると、手に暖かさがよみがえる。
体の中心も、暖かい気がした。
二つの暖かさを感じながら、眠りについた。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる