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廻る時
四十六
しおりを挟む辿り着いた小屋は思っていたよりも綺麗だった。私たちが来るとわかって掃除したかのように磨かれてピカピカだったのだ。
前来た時は蜘蛛の巣が凄かったのに・・・誰が掃除したんだろう?
荷物を片付け各々の部屋で休む。マクロスは令嬢を連れて一室に部屋に入っていった。中で何をしているかなんて聞かない方がいい、彼女のためにも。
王太子もさっさと部屋に入り鍵をかける。そして私たちはと言うと、逃げること叶わず抱き上げられて部屋に連れて行かれてしまいましたとさ。
夜、ふと目を覚ませば彼の胸が目の前にあった。抜け出そうと思い身じろぎすれば、抱きしめられた。
別に苦しかった訳ではない、何だか肌寒くもぞもぞしていれば彼の大事な部分を刺激してしまっていたらしく、無意識の夫に散々身体を弄られたべられた。ただ、寝息は穏やかに聞こえてきていたので、本当に無意識だったことがわかる。
ただ寝言なのか?とも言うべき甘い囁きで思考は早い段階でグズグズに溶かされてしまった。
無意識でもこんなことがしたいと思ってる時点で引く。襲わないと約束したはずなのに。しかも服着て寝ていたはずなのに下着しか身につけていなかったとかどう言うこと?酷すぎて涙しか出ない。そして気を失う。
朝起きてみれば彼がお茶を淹れてくれていたので昨日のことを確認してみた。
そうしたら、
「貴女がよからぬことを考えていそうだったので、先手を打たせてもらっただけですよ」
と笑顔で言われてしまった。何処で考えを読まれたんだろう?
身体を起こしベッドから降りようとすれば、嫌な感じがして直ぐ様座り込んでしまった。
訝しげに私をみた夫が私を抱き上げ自身の膝の上に座らせた。
シーツが汚れるのが分かり降りようとすれば力を込められどうしようもなくなった。
暫くすると彼も違和感を感じたのか私を抱きしめる力を強め優しく頭を撫でてきた。
ゆったりとお茶を飲んだ後順にお風呂に入り朝食兼昼食を取る事になった。
もちろん二人で入りましたよ?駄々こねられましたからね。
王太子が優雅にお茶をしているたので挨拶して準備に取り掛かり、軽く取れるものを手早く作りあげた。
食事の席には一応五人分は用意したが、例の二人は今だに姿を見せない。なので摘める物も後で用意しようと思った。
扉の前にでも置いておいたら食べてもらえるだろう。
食事中に今後の事を話し合った。神殿に向かうのはいいが今回みたいに近道を通れないのであれば前の時と違い時間がかかってしまう。それに獣ではなく人による妨害も考慮に入れなければいけないだろう。
実際来ていない二人が遅れたのは、何処から漏れたのか神殿に行く事を邪魔しようとした者による殺害未遂があったそうだ。
使用する小屋も変更しなければいけなくなったことといい、森に詳しい者が関与している事も視野に入れて今後動いていかなければいけない。
この小屋にも加護が施されている様なので周辺や神殿への道のりの確認をしておこうと話し合い、食後落ち着いてから外に出ることとなった。
とりあえず小屋の周辺を散策。問題なしと判断したら神殿までの道のりを確認する。
前回使用した小屋と違い、今回の小屋は神殿からかけ離れている。
崖を登っていた分やはり近道になっていたようだ。
今回崖などの険しい道のりでは無いにしろ岩肌が目立ち、慣れないものにしたら苦戦を強いられるだろう。
今回の散策では獣や魔獣に遭遇することは無かった。ある意味不気味である。
神殿は見えなかったが、野営する場所を確認し終え私たちは小屋に戻ることにした。
警戒しながらではあったが本当に何物とも遭遇しなかった。
珍しい事もあるものだな
そんな風に思っていたからだろうか、小屋の前に一人の男性が立っていた。
彼はこちらに気づくとおかえりと、笑顔で私たちを迎えてくれた。
ソーシアルが前に出て彼の相手をする。が、彼はそれをスルーして王太子の前で跪いた。
「お会い出来て光栄です。今後とも末長くお付き合いしていただければと思います」
殺意も危害を加える気配も感じなかったので放置していたら彼は王太子の手の甲に口付けた。
流石に王太子も驚いて直ぐに手を振り払おうとしたが、思いの外力強かったらしく中々離してもらえなかった。
慌てる様が面白かったのか彼は笑い出し申し訳無いあまりにも可愛かったのでと、謝罪とも取れない謝罪をしてきた。
王太子は表情を崩さず対応し、彼も小屋に泊まることとなった。
夕食の席で神殿に向かっている旨を話していると、彼も豊穣の女神の神殿にいる男神に用があるのだという。何でも他の神のお使いなのだとか。
取り敢えず部屋を用意してそこで寝てもらう事にした。
あの二人に関しては此処を立つ時に紹介すればいいかと思った。
部屋を案内して浴室やトイレなども一応説明しておく。勝手にするのは構わないが、とばっちりを喰らうのは勘弁願いたい。
ソーシアルもそう思っていたらしく案内中後からずっと付き纏われていた。それを見ていた彼に別れ際、愛され過ぎて困るね、などと宣われた。
余計なお世話だ
今日こそは一人寝したいと決意して先に風呂に入れば、いつの間にか入り込まれており身体を綺麗にされただけではなく散々弄られ、気を失った状態で部屋に連れ込まれてしまった。
変な気を起こしては行けない。奴は常に本気だ
その晩も意識を取り戻してからは酷い目に遭った。
神殿に着くまで従順で行っとこうかな
逆に甘えてみたら離れるかな
激しく抵抗したらやめてくれる?
そんな事を考えながら私の意識は沈んでいった。そんな私の額に口付けながら、
「よからぬ事を考えているともっと愛してあげますよ」
などといっているとも知らず。
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