夢か現か

黒梟

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廻る時

四十五

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 サロンでは彼の両親と私の養父母、そして爺様が話をしていた。
 私たちが入ってくるなり微笑ましそうな顔になっていたので、恥ずかしくて彼の胸に顔を埋めたのは言わずのがな。
 他に顔を隠す方法を知らなかったともいう。

 そんな私の行動を嬉しく思ったのか、夫となった彼は嬉しそうにソファーに腰を下ろすとそのまま私を膝の上に乗せた。
 勿論身を捩って降りようと努力したけど力では男の彼の方が上。降りる事は叶いませんでした。

 そんな中での話はやはりまだ国内に残っているかもしれない不穏分子。
 私が狙われたのは、女神の力を欲したからなのだと捉えられた者が口をわったそうだ。
 当然女神の今の状況が分からないのでどうにかすることができない。そこで女神の神殿に向かう事になった。

 同行者は私、夫のソーシアル、王太子。そして王太子付きの近衛隊長に、辺境伯の令嬢。計5人で向かう。
 動ける人間が厳選された上に、変な気を起こさないと保証できるからだそうだ。
 私としては道中夫に襲われなければそれで良いのだが。

 国は前侯爵と現宰相が頑張ってくれるそうだ。国王は役に立たないんだって。というか役立たずらしい。
 実際混乱が起き始め異教徒達の騒動を収めることが出来なかっただけでなく、国内を混乱の渦に落としそうになったのだとか。

 ・・・・大丈夫かこの国

 爺様達の活躍で現在国内は平穏なんだとか。本当に大丈夫?人任せで。

 
 女神の神殿に確認しに行くことは二つ。

 女神の力が乗っ取られていないか
 私に掛けられている加護が消えていないか

 この二点の確認になる。
 女神が乗っ取られていたのなら、この地の豊穣は無くなったも同然になる。そのため今後の事を考えなければいけない。
 次に私に掛けられている加護は、女神の力そのものだ。今まで私がいる所全てが潤っていたのはその為いとも言える。消えているのならもう一度かけ直してもらいたいのだ。国から私を逃さないためにも。

 と、そんな裏事情は知らず付き添う羽目になった。

 その後何かと用意することがあるらしく皆が動き回っている中、私はというと夫の膝の上からおろしてもらうことが出来ないでいた。

 ほんと勘弁してほしい




 神殿に向かう日は誰にも知らされず各々で食事処があった筈の処で落ち合う手筈になっていた。

 実際私と夫には何の障害もなかった。晴れ渡る晴天に私の心は曇り空だった。
 王太子も難なく到着することが出来た。護衛は爺様の部下がしている。道中何も問題はなかったとのこと。
 彼らは無事に王太子を送り届けるとそのまま爺様への報告に去って行った。
 だが、いつまで待っても近衛隊長と土地勘と実力に定評のある辺境伯令嬢の騎士の二人が来ない。

 しーかたがなーいので、保存食を作る事にした。材料は森に入れば直ぐに獣に襲われたので難なく手に入れることが出来た。

 何処で調理するのかって?

 元々食事処にしようと思っていたところには台所のある小屋があったのだ。その台所を借りて調理をする。燻製や防腐処理を施して数日はもう持つようにまとめる。
 なんだかんだと作り始めれば楽しくなり、三人でこんなに必要ないだろう?という分量を作り上げた。
 折角なので晩御飯も作り上げ二人を待つのだが、いかんせん連絡のしようが無いのでいつ辿り着くのかも分からない。
 取り敢えず今日は三人で小屋に泊まろうと食事を終え寝る準備をすれば勢い良くドアが開かれた。

 三人で振り返れば女性を抱えた男が立っていた。

 誰と思う間もなくソーシアルが声をかけた。

「ここまで来るのに貴方が手間取るとは思いませんでした。何があったのですか?」

「すまない、彼女が襲われかけた。その対処に時間がかかってしまった。
 身体の方は問題ないと思うのだがあのまま宿舎に置いておくことも出来ないので連れてきた」

「ご飯は食べれますか?それが終われば即此処から神殿に向かいましょう。
 その娘狙いなら追ってくるでしょうし、これ以上の厄介ごとは避けたいですしね」

「すまない感謝する」

 彼女は目を覚さないけど取り敢えず水だけ飲ませてもらう。気温はそんなに高くはないが彼女の顔が赤い。
 そんな風に気にかけてれば夫に、貴女も媚薬を飲んでみますか?と囁かれた。
 すかさず奴と距離を取り奴の顔に生肉を投げつける。これ以上身体を好き勝手弄られてはたまったものではない。

 
 荷物は近衛のマクロスが持ってくれる事となった。令嬢を抱えてだが問題は無いらしい。
 二人を囲む形で護りながら戦い崖の下まで行き着く。
 此処を登り切れば休憩出来る小屋(と呼べるかどうかは謎)がある。そこに行けば暫くは、令嬢が回復するまでは安全に待つことが出来るだろう。

 そう思い崖を登ろうとすれば、身体中に悪寒が走った。ゾワゾワする嫌な感じ。今まで感じたことがない。

 辺りを見渡しても何も無い、獣の気配もない。何にそんなに身体が反応しているのか分からなかった。
 いつまで経っても動かない私を不審に思ったソーシアルが心配して声をかけてきた。

「リー何かありましたか?」

「えっ・・・・・あっ・・・何でもないと・・思う」

 だがいざ崖を登ろうとすれば身体がまともに動かない。

 これは崖の上の小屋は危険という事?

 そう解釈した私は別の小屋の位置を頭の中で検索し始めた。この道は近道なだけで他にも小屋のある道はいくつか存在する。
 まあ道といっても慣れているものがそういっているだけで、他の者なら道なんかじゃ無いと激怒するだろうが。
 この場所から一番近くて部屋数のあるところ・・・・あった、此処から少し離れてはいるが普段本当に人が使わない小屋が一軒。

 崖の下にこれ以上止まるわけには行かないから、何とか説明しないとと考えていれば、私の考えを読んだ様にソーシアルが話し始めた。

「どうやら崖の上の小屋は危険の様です。ですので違う小屋に行きましょう。
 ・・・・リー?良いですか?聞こえてますか?」

「・・てんえっ?ああ、うんわかったじゃあ私が知ってるとこ案内するね。あそこなら本当に人が来ないから大丈夫だと思う」

「ええ、お願いしますね?」

 何だか言わされた感満載だけど自分で説明しなくて良いぶん助かった。

 こうして、対して獣に出会う訳でもなく次の小屋にたどり着くことが出来た。

 皆んなが休んだ後に崖の上の小屋に行ってみようと思ったのは勿論内緒だ。

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