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悪役を演じて見せよ!

閑話 ぽんちゃんとウリボーの変身談義

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 とまと伯爵拠点のお城の縁側では、今日もポンタが日向ぼっこをしている。近くではせっせとソラがヨモギの葉っぱをザルへと集めている。これでガラムにヨモギ饅頭作ってもらえる。

「ぽんちゃん」
「なあに、ウリボー」
 ふと手を止めて、ソラがポンタに話しかけた。

「ぽんちゃんはさ、何にでも変身できてすごいよねー、僕、うり坊だけだからなぁ。よくある2段変形とかできないし、あっ、うり坊の最終形態はいのししか。なら、しばらくいいや。最終形態がパンダとかだったら大人になってもかわいいのに…世の中世知辛い…。でも、最近、いかつい、いのしし神様がかわいく見えてきたんだよなぁ…やっぱり仕草なのかな…神様だし皆に愛されているよな…、見習おう…」
 何気にソラはかわいいことにこだわり始めている。うり坊の時にちやほやされすぎて、元には戻れなくなってきているようだ。ボヤキが止まらなくなってきた。

 ポンタはポヤポヤしながら聞いている。
「んー、葉っぱが合わないと変身できないよ」
 葉っぱ? たぬきのポンタは葉っぱがないと変身ができないらしい。しかも、変身対象の気質に葉っぱが合わないとうまくいかないらしい。例えば、タマキに変身するときはどこにでもある丸い葉っぱであれば、変身できる。

「へーじゃあ、ヨモギの葉っぱだと誰に変身できるの?」
 そっと、集めているヨモギの葉っぱを渡してみる。
「んー、わかんなーい、もぐもぐ」
 ポンタ、渡されたヨモギを食べてしまった。
 どうやら、ポンタの変身はフィーリングで行っているようだ。ちなみにジュリアン室井に変身するときは、ねばねばする『モロヘイヤ』、匂いが独特の『ドクダミ』のどちらでもできたらしい、形だけじゃないなコレ。

「じゃさじゃさ、着ている服はどうなるの? 僕の場合は裸になっちゃうんだ。だから、大体変身する時は部屋でかな」
「んー、服ー、気合で変身している」
「ええっ! それ危ないじゃん、服も体の一部ってことなの? もし、服が破けたりしたら、ぽんちゃんも傷つくってことでしょ」
「んー? ディティールの表現がなかなか面白いのー」
 ボケっとしながら答えているが、危ない。今度から変身するときは服を別で用意させたいなとソラは思った。ただ、こだわりがあるらしく、結局、この後もポンタは服も一緒に変身させて変身している。

「そういえば、変身ってどのくらいの時間続けられるの? 僕は、気合で1日のうち半日くらいいける気がする、寝ている時のいのしし神様との修行時間も入れると、案外もっといけるかも!」
「んーとね、葉っぱが枯れるまで。葉っぱによる」
 ポンタの変身は葉っぱだよりである、曖昧だ。ソラはヨモギ採取を再開させた。

「ふーん、変身にも色々あるんだね、今までで一番難しかった変身ってなあに?」
「ぶんぶく茶釜の茶釜…、あれ泣ける…、ポンタもいつかあんないい古道具屋さんに拾われて、素敵な和尚さんに飼われてみたい…」

 その日のヨモギ饅頭はとってもおいしかったとさ。
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