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悪役を演じて見せよ!

舞台裏の先生の受難

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 ソラの担任の先生はいつだって真面目一徹、真摯に生徒と向き合ってきたつもりだ。それがどうしてこんなことになってしまったんだろう。あのうり坊にもう一度会いたい。そして、謝りたい。やっぱり、イエスうり坊ノータッチだったんだ。いやでも、触りたい、何だったらブラッシングとかしてみたい。

 今日も今日とて、連勤生活の4日目がスタートした。残り8連勤残っている。
 課外授業を勝手に学年も巻き込んだものにしようとしたことが、早々に教頭先生にばれてしまい、課外授業の責任を一手に引き受けることになってしまった。クラスごとに日付をづらして、開催されることになり、準備から始まりてんてこ舞いとなってしまった。

 1年生から3年生までは4クラスずつなので、それぞれ組み合わせる。3日×組み合わせた4組分の日程を進めることになった。3年生でいえば藤組、桜組、桃組、梅組の順番だ。1日目は現地民との交流と肝試し、2日目は発表と盆踊り、3日目はレポートの採点と交流という流れは去年の課外授業の内容をそのまま丸パクリで4回活用させてもらうことにした。ワンパターンなのは、時間がないので仕方がない。

 まず、現地の人達に挨拶及び通達、そしてアンデッドを呼び出すことのできるネクロマンサー能力を持つ先生に肝試しの時のアンデッド召喚依頼をした。今回は3日×4回とかなり大変なスケジュールなのだが、現地の人達とネクロマンサー先生に快く快諾してもらえた。

 現地の人達は過疎化が始まっているので、町おこしの一環として頑張ってくださるそうだ。ネクロマンサー先生は呼んでみたい難易度の高いアンデッドがいたそうで、今回召喚補助道具を多めにもらった予算で買えたそうなので、はりきってくれている。『普段なかなかアンデッドを召喚する機会ないから楽しみー! 今年はデュラハンは普通に召喚するとして、最終の時にでっかいのお披露目するから楽しみにしていて!』とのことだった。ソラ達はその大きいアンデッド遭遇は回避した。4回目の生徒たちの幸運を祈るのみだ。

 ちなみにネクロマンサー先生は特定の召喚獣とは契約しておらず、常に色んなアンデッドを呼び出すことができるそうだ。ただし、制約で1度呼び出したアンデッドは2度と呼ぶことができないので、4回も連続でアンデッド召喚をすることもそうそうないようだ。盆踊りで幸せのうちに天へ召されたアンデッドは、きっと来世では幸せになるだろう。キョンシーヤンは親戚の娘シンシンのために、今年を狙って召喚されたそうだ。姿は見えなくなるけど、年1で盆踊り大会にはやってくるからと言っていたので、シンシンは泣きながら見送ったのだ。

 課外授業の合宿が始まってからというもの、右へ左へ、ソラの担任はてんてこ舞いだった。見かねた梅組担任のタンクトップ先生が授業の司会進行や見回りを手伝ってくれなったら、過労で倒れていただろう。
 今回たくさんの人のお世話になってしまった。タンクトップ先生にもいつかお礼がしたい、いつも熱血でうざったいななどと思ってすまない。

 それにしても、合宿の1日目のロープウェイの魔法電気系統操作などよくうまくいったものだ。忙しすぎて、無心で仕事している方が優秀ってちょっと悲しいなと思った担任の先生だった。

 しかし、その事件の犯人が判明して、査問委員会に呼ばれてしまうのは、9日後のこと。
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