DRAGGY!ードラギィ!ー【フレデリック編連載中!】

Sirocos(シロコス)

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〈フレドリクサス編〉

7『探偵も調査隊も、尾行は基本中の基本』②

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『はぁ!?  ドラギィ!?  小野寺が!?』

電話のむこうで、レンがひどく驚いていました。

「おお、聞き間違いじゃねーぞ。たしかにあいつ、みんなに聞いてたんだ。
ドラギィって生き物を知ってるかって。なんか堂々とした声でさ」

ジュンは、自分のスマホにむかって小声でしゃべっていました。
レンたちのために、周囲に聞こえないように気をつけていたのです。
彼のそばではタクが、
曲がり角の陰から、道路を挟んだむこうの本屋をこっそり見ています。

『な、なんで小野寺がドラギィのことを知ってるの?
まさか、こないだのオレたちの会話、聞かれてた?』

「うーん、そりゃまだわかんねーけど。
幸い、相手の子たちからあんま相手にされてなかったよ。
小野寺もらしくないよな。よく知りもしねー生き物のことを話題に出すなんて」

『でも、調べてみなくちゃ分かんないよ。
もしかしたらあいつ、本当にオレたちの会話、聞いてたかもしれないし』

「まあ、あいつがおれたちの会話で聞いただけの生き物の名前を、
他のやつに言いふらすとは思えないけどな。
ちょうど今、おれとタクで小野寺を尾行しててさ。そんで――」

「ジュン、小野寺君が出てきた!」タクが急いで手招きしてきました。

見ると、あの気障な顔つきをしたヨシが、
ちょうど本屋の自動ドアから外に出てきたところでした。
相変わらずの全身真っ黒コーデです。何冊か買いこんだのでしょう。
黒い手さげバッグが、厚い本でいっぱいに見えます。

「そんじゃあ、レンはこの事をすぐに、フラップたちやしろさんに伝えてくれ!
おれたち、このまま小野寺をつけてくよ。
もしかしたら、あれだ……もしかすっかもしんないから!」


『待ってよ!  もしかするかもってどういう――』

プッ――ジュンは電話を切ってしまいました。



「さてと、しろさんのフシギレーダーの出番だぞっと」

二人でヨシの後をこっそりつけている途中、
タクが自分のスマホを取り出し、例のアプリを起動させました。
すると、あのCGのしろさんが、飽き足らずに画面左下に出てきて、

『よくぞ起動した!  わしがしっかりナビゲーションしてやろう。
ふーむ……ここから半径百メートル以内に、
不思議生物や異界穴の反応はないのう』

「見りゃわかるし。というか、もっと広い範囲を探知できないのかよ」

と、ジュンが小声でぼやいた時でした。


   ゴロゴロゴロ……!


上空で、深く重たい雷の音が鳴り響きます。湿っぽい風も吹いてきました。
夕立が来るのでしょう。

「あれ?  レーダーの感度が落ちてるみたいだね」

『すまん。このアプリは、本物のわしが使っているのと違って、簡易版じゃから、
天候に左右されやすくてな……今は機能が低下して、狭い範囲でしか探知できん』

「「つーかーえーなー……!」」

ジュンとタクは、あっさりと幻滅させられました。期待をよせていたのに!


さて、高級住宅が立ち並ぶ住宅街を、一人で静かに歩いていくヨシ。
ジュンとタクは、電柱の裏や曲がり角の陰に身をひそめながら、
着かず離れずの距離をうまく保って、尾行を続けました。
二人は、まるで探偵気分です。なんでも調査隊を名乗るのなら、
これぐらいできておかなくては恥をかくというものでしょう。

ヨシは、ずっと考え事でもしているのか、二人の気配には気がつきません。

「ヒソヒソ……(小野寺君の家って、すごく金持ちだから、
かなりの豪邸に住んでるってみんな言ってるよ)」

「ヒソヒソ……(へー納得。日頃のエラソーな態度が、ますます気に食わねぇな)」

空模様は、ますます暗く不穏になり、今にも雨が降り出しそうでした――。


さて、尾行の果てに、あの小野寺家の豪邸へと着きました。

ジュンとタクは、小野寺家のそばの曲がり角の陰から、
ヨシが門扉を開けて庭に入っていくのを見ました。

「ヒソヒソ……(すごい。ガレージにあるの、ボルシェ917だ。
ぼくんちよりも立派な家じゃないかな、あそこ)」

『それは知らん』と、CGしろさんがそっけない返事をした時でした。

庭から二階にある自分の部屋の窓を見たヨシが、
まるで血相を変えたように玄関を開け放って入っていくのが分かりました。

よく見れば、なんとヨシの部屋の窓が、派手に割られていたのです!

「おいおいおい、いったい何があったんだ?」

「うーん、謎だあ」タクは、レーダーアプリを確認しながら答えました。

(アテが外れたかな……ドラギィの反応がないよ)


思わぬ展開に直面していた二人も、この時は気づかなかったでしょう。
その二人の隠れていた塀の上で、片方の目のそばに傷をつけたあの黒猫――
くろさま、ゴマが座っていたことを。
彼が、割られた部屋の窓を遠巻きに見て、ニヤッと不気味な笑みを浮かべたのを。


    *

自分の部屋に戻ったヨシは、衝撃的な光景を目の当たりにしました。
手に持っていた手さげバッグが、ゴトン、と鈍重な音を立てて床に落ちます。

(なんだ、これは!!)

ベッドのシーツが、バリバリに破り捨てられています。
本棚の本が、小説も図鑑も何やかやもめちゃくちゃにぶちまけられ、
窓の金具から無理やり外されたカーテンが、机におおいかぶさっています。

空き巣に入られたのではありません。
だって、窓が部屋の外にむかって、粉々に割られているのですから。
このめちゃくちゃにされた部屋の惨状も、まるで何か大きな生き物が、
太いしっぽを鞭のようにふるった跡のように見えます。

何よりも、納戸の扉が開いていたのです。

そして、その中にあった鳥かごの扉が、開けられていたのです!
中に閉じこめていたはずのフレドリクサスも、跡形もなく姿を消していました。

あれ以来、鍵はずっと閉めていたはずなのに。
だれだ。いったいだれがこんな――。

「ああ、ああああ、あああ………!」

ヨシは頭を抱えました。
絶望感が、冷水のように肺を満たして、胸まで張り裂けそう。
家に両親がいないのが、救いでした。もっとも、皮肉この上ない救いですが。

(探し出さなければ。他のだれにも見つからないうちに)

ヨシは、無残に荒らされた自室に背をむけると、
壁に激突を繰り返しながら大急ぎで螺旋階段を下り、暗いリビングをぬけ、
玄関から外へと飛び出してゆくのでした――。

    *

「あ!  小野寺君、出てきた!」
「隠れろ!」

ジュンとタクは、電柱の陰に身をひそめました。
目の前を、ヨシが血の気の失せた顔で走り去っていきます。
その手に何も持たず、靴すらも履かずに。

空き巣に入られたというのに、一体どこに行くのでしょう。
もう警察に連絡したのでしょうか?  あるいは、よっぽど錯乱しているのか?

「……小野寺は、血相変えてどっかに行ったし――」

「ドラギィがいるのかどうかも分からないし――」

ジュンとタクは、電柱の陰から出てきて、おたがいの顔を見ました。

「「とりあえず、レンたちに報告!」」
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