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④〈フロン編〉
プロローグ(前章エピローグの続き)
しおりを挟む「――何をおっしゃることやら」
窓辺にたたずむシルエットのドラギィは、怪しげに口角を上げるのでした。
「これから修行生たちの修行を、より本格的なものにするために、
われわれ観測役員を使って、ちょっかいを出していく腹積もりでは?
われらが《マスター》―――古杉志朗様」
そう呼ばれた男性は、座っていたデスクチェアからゆっくりと腰を上げると、
あごに指をそえながら、ふふふっと、悪戯な笑みを浮かべます。
そして、悠然とのばした手の指でパソコンのキーボードを押し、
画面に表示させた一枚の写真に目をやって、
「会いに行くのが楽しみだよ。坂本レン君。
それから、かわいいドラギィの子どもたち」
写真に写っていたのは、
一本杉の前でレンのまわりを飛び回りながらたわむれていた、
フラップ、フリーナ、フレディの姿でした。
「――この写真、僕がキミに持たせたカメラで撮ったんだったね」
「ええ。丘の林から撮影したものですね」
「……やっぱり、この写真はお気に入りだなあ。三匹とも幸せそうだよ。
あわれにも〈下界落とし〉を食らってしまったというのに。
これも、この男の子の懐の深さゆえ、ってやつだよねえ」
「そうですね」
シルエットのドラギィは、小さな翼を広げてしゅっと飛び上がると、
風の流れるような軌道を描きながら、男性の左肩のそばへとやってきました。
「もし、この人間の少年の助けが失われれば、彼らはどうなることやら」
「だよねえ! やっぱりそこだよね!」
突然、男性は声を強めました。それから、思いついたように指をパチンッ。
「まずは、ゆさぶりをかけてみようか。
これも、彼らに眠る力の成長のため。さっそく計画を練ろうかねえ」
「……あなたのお心のままに、マスター」
正体の見えない、謎めいたそのドラギィは、
そう呼んだ男性に深い忠誠心を示すように、空中で静かに首をたれました。
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