DRAGGY!ードラギィ!ー【フレデリック編連載中!】

Sirocos(シロコス)

文字の大きさ
81 / 152
〈フロン編〉

1『ウソか本物か最後まで分からないのが、夢なのです』①

しおりを挟む
 
 さえるような青空の下を、おかしなものが飛んでいました。

 それは――白い球体でした。
ニワトリの生みたて卵のように白い、野球ボールのようなその物体は、
どこか機械じかけにも見えて、UFOのごとく水平に回転しています。
つるつると手触りのよさそうな表面には、まばゆい太陽の光が反射しています。
そして、ぽわわわわ……という、モーター音だかエンジン音だか分からない、
妙な音をもらしながら飛んでいるのです。


 宇宙人がやってきたのでしょうか? それとも、最新鋭さいしんえいのドローンでしょうか?


 正体も、目的も不明瞭ふめいりょうな、夢の中にしか出てきそうにないその物体は、
突然、くるっと方向転換しながら地上へ降下していきます。

 下には、山のてっぺんが見えます。
こんもりとした森のいただきには、そこだけすっきりとはげたように草地が広がり、
飛行物体が着陸するには絶好の平べったさがあったのです。

 少しずつ地面が迫ってくると、白い球体はピタリと回転をやめて、
三つの穴を底に開き、しゅううう~! とホバリングをはじめます。
強い風を受けた草花が、鮮やかな緑の波を放射状になびかせています。


「……来たあ! 本当に来たよ」

 林の中に身を潜めていたレンは、あぜんとしながらつぶやきました。
あの球体、森の小屋一つ分の大きさはあるだろうか?

「あれって何かの卵です? 割ったら、とろっとした黄身が出てきたりして」

 そばにいたフラップが、のんきにつぶやき返しました。

「アタシ、おっきなカステラかプリンにして食べたいなあ。ペロリ」

 フリーナがうっとりとしながら、舌なめずりをしています。

「どう見ても卵じゃないって。あれが今回の調査対象だよ」レンが言います。
「たぶん、いろんな技で抵抗してくるだろうから。みんな気をつけて捕まえてね」

「問題はないよ、レンくん」

 レンの頭の上から、ひょっこりとフレディが出てきて、自信満々に言いました。

「ぼくらは今日という日まで、修行に修行を積んできたんだ。
あんなもの、恐るるに足りないさ」

 白い球体が、下半球の表面から、三つの細長いすき間を開きました。
かと思うと、そこからにょきにょきと折れ曲がったカニのような脚が生えてきて、
最後の着陸態勢に入ったのです。本物のUFOのように!



「よーし、アタシが一番乗りだあ!」

 黄色い羽のフリーナが、ババッと、林の中から飛び出していきました。
レンの合図を待たずに!

「ああっ、まだ早いってば!!」

 弾丸のごとく、あるいは雷のごとく動き出したフリーナは、
むく~っ! と巨大化していきます。
そして、今にも着陸しようとしていた白い球体に、
がっちりとムササビのごとくへばりついたのです!

 あきれ返ったフレディが、フリーナに続いて飛び出しました。

「何をやってるんだ、カノジョは!」

 白い球体は、衝撃で驚いたようにぐらりと体をゆらします。
そのせいで着陸を中止したのか、三本の脚を中にしまいはじめると、
ホバリングの出力を上げて空へ戻りはじめたのです。

「そのまましっかり押さえつけるんだ!」

 フレディは、フリーナと同じくらいまでむぅっと巨大化して、
彼女のもとに駆けつけてゆきます――が、


 ドシュウウウーーーーーッ!!


 フレディの目と鼻の先で、
白い球体がロケットのようにうなりを上げて飛び上がっていったのです。

「うわわわわああ~~~っ!!」

 球体にへばりついたまま、空へと舞い上がるフリーナ。

「スパークするんだーっ!」

 下から聞こえてきたフレディの指示に、フリーナはすぐに従いました。

「う~ん……! ハッピー☆スパーーーク!!」

 おかしなかけ声とともに、フリーナの体からすさまじい電気がほとばしります。
目の錯覚のような、七色の電気の嵐が!

 けれども、白い球体はびくともしません。効果がまったく現れなかったのです。

 やがて風圧におされて、フリーナはつるりんっ、と球体からはがれ落ちました。

「あわっ、とっととっと……!」

 バサバサッ! と羽ばたいて態勢を立て直したフリーナの頭上で、
邪魔者をどかした白い球体が、くるくると水平回転を取り戻します。
さらに、なんのつもりなのかゆっくりと降下してきて、
フリーナの目の前に立ちはだかったのです。

「あれれ? アタシとお友達になりたいノ?」

 見ると白い球体は、しゅっ、しゅっ、しゅしゅっと、
上下左右を問わずに宙を滑り出したのです。
まるで、捕まえられるなら捕まえてみろと言わんばかりに。

「あ、もしかして的当てゲーム? ちょうどよかったあ!
アタシね、フレディのおかげですんごく頭がよくなったんだヨ~。
だからね、こーんな感じに両手の指を立てて構えると――」

 フリーナは、両手を銃のような形にして突き出しました。すると――


 バシュッ! バシュッ!


 指の先から電気の弾が飛び出したのです!

「電気を操る修行を重ねた成果なんだぞう! それっ、それっ!」

 次々に撃ち出される電気弾でんきだまが、動き回る球体をかすめます。

 ダンッ! バリバリバリ! ついに、一発が命中しました。
球体は小さくよろめきはしましたが、傷一つついていません。

「何やってるんだ、捕まえるんだろう?」

 地上からようやくフレディが追いついてきました。

 すると、白い球体が今度は、プシューッ!
てっぺんからも下半球からもスモークを噴き出して、ガタガタ震えだしました。
それから少しずつ、真っ白だった表面が少しずつ鮮やかな赤に変色したのです。

「まさかフリーナ。あいつを怒らせたのか?」

 赤くなった球体の表面に、何かが浮かび上がりました。

 顔です。それも、つり上がった黒い両目に、ギザギザの鋭い口を持った、
気味の悪い化け物のような顔の模様が!


 ガガガッ、ガァーーーーーッ!!


 怒りに震えた球体は、フリーナとフレディのほうへその顔を近づけ、
まるで二匹を威嚇いかくしているようでした。もう、なかなかの迫力!

「………」

 今までなら、このような顔で脅かされればすぐに泣いていたフレディが、
毛ほどもおびえの表情を見せません。平気そのものだったのです。

「フム。ぼくの泣き顔が見たかったのなら、残念だったな。
もう泣き虫は卒業したのさ。ぼくがそのカッカした顔を冷やしてあげよう!」

 フレディは、両手のひらを前に突き出して、そこから大量の水を噴射しました。
ものすごい勢いです。まるで消防隊による放水のよう!

 赤い球体は水をかぶり、その顔が水の冷たさでひきつっています。


「ねえ、フレディ。そっちのほうがよっぽど相手を怒らせちゃうと思うヨ」

「あ」


 フリーナの言う通りでした。
びしょ濡れになった赤い球体が、猛烈な怒りの顔の模様をあらわにして、
先ほどよりももっと上下に激しく動きました。
その表面が、ぐらぐらと燃え上がる炎のようなオレンジ色になり、
灼熱のパワーを引き出した暖色のグラデーションを見せつけるまで。

「気をつけろ、やばいものが来るぞ!」

「フレディのせいでしょ! セキニン取ってヨ~!」

 二匹が身構えるなか、球体のギザギザな口模様のところから、
銀色の大砲のような砲口がせり出してきました。
そして、肩をならべて空に浮かぶ二匹に狙いを定めたのです。

 ピピピピピ……エネルギーが充填されていくような音。
砲口の奥のほうが、ギラギラと高熱の光で輝いているのが見えます。

「これは――」「まずいカモ!」

 二匹は思わず両手で顔をおおってしまいました。


                      今回はさらにお話が続きます!→
 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

神ちゃま

吉高雅己
絵本
☆神ちゃま☆は どんな願いも 叶えることができる 神の力を失っていた

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

ゼロになるレイナ

崎田毅駿
児童書・童話
お向かいの空き家に母娘二人が越してきた。僕・ジョエルはその女の子に一目惚れした。彼女の名はレイナといって、同じ小学校に転校してきて、同じクラスになった。近所のよしみもあって男子と女子の割には親しい友達になれた。けれども約一年後、レイナは消えてしまう。僕はそのとき、彼女の家にいたというのに。

処理中です...