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①〈フラップ編〉
11『空は楽しさだけでなく、アクシデントがつきもの』②
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「ああ、嫌だ!」フラップが突然、嘆き声を上げました。
「ぼく、雨が大の苦手なんです!
ちょっとでも体が濡れると、力が出なくなっちゃうんですよう」
「あははは! またまたぁ、冗談言っちゃってぇ。
そんな、どこぞのアニメキャラみたいなこと――」
レンは本気にしようとしませんが、フラップも何一つ切り返さそうとしないので、
レンはようやく、彼が本当のことを言っているのだと悟ったのでした。
「えええ~~!? 聞いてないよ、そんなこと!」
「ごめんなさい。今まで晴れの日が続いたものだから、
つい伝えておくのを忘れてしまって――」
「頼むよ、もう! じゃあ、このまま雨が降り出したら、
ぼくたち墜落しちゃうじゃないか! キミってやつは――」
いや、フラップを非難している場合ではありません。
チヂミガンでふたりとも小さくなり、地上で雨をやり過ごす他ないでしょう。
レンは大急ぎでバッグを開き、チヂミガンを取り出します。
しかし、大あわてでグリップから手を放したのが、間違いでした。
ちょうどその時、雨雲が流れてくる方角から、
ものすごい突風がおそいかかってきたのです!
ビュゥゥゥウウウ―――!!
「うわああぁぁぁぁ……!!」
強い風にあおられ、フラップが大きく体勢をくずした拍子に、
レンが空中に投げ出されてしまったのです!
「まずい! レンくぅーーーん!!」
地が天に、天が地に。
レンは、頭からぐるんぐるんと回転しながら、地上へと落下していきます。
つかめるものが何一つなく、触れるものは、冷たい風の感触だけ――。
恐怖のあまりまぶたをぎゅっと閉じたまま、レンはパニックに陥りました。
(だれか……だれか……!)
助けて! フラップぅーー!!
ぼっふぅんっ!
レンの視界が、白い何かにおおわれました。
何か、ふかふかとした大きな、とてつもなく大きな動物の胸に、
ふんわりと優しく抱き留められたような感覚です。
しかも、背中に感じる、このぷにぷにした大きなものは何でしょう?
冷風にさらされていた体が、天国みたいな毛の海に温められます――。
「――ふう、危ない危ない」
なんと正体は、フラップでした。しかもフラップは今、
これまでに見たことのないほど巨大な姿ではありませんか。
まるで怪獣のような大きさです。信じられません!
背中に感じていたぷにぷには、フラップの手のひらの肉球でした。
「ぼくのモフモフな体は、このためにあるんですよねえ」
映画館の巨大スクリーンほどの大きな顔が、
ママのような優しい目でレンを見下ろしています。
「た……助かった。ありがとう、ありが……あああっ!」
レンは、雷に撃たれたように跳ね起きました。
いやにさみしい自分の胸、背中。何も持っていない両手。
ありません。バッグがどこにもないのです。届け物を入れたバッグが!
「フラップ! 下だぁー!」
レンの異変にすぐ気がついたフラップは、
彼の小さな体を片手ですっぽりと包みこんだ直後、
真下にむかって直角に巨体をひねります。
その目に、落下していく小さなバッグが見えました。
激しく回転しながら成すすべなく落ちていく、レンのバッグが!
「いっそげぇぇぇ!」
フラップは全速力でバッグを追いかけました。
これだけ巨大化した甲斐あって、その差はまたたく間に縮まっていきます。
あと十メートル、あと五メートル……。
しかし、あと少しのところで、超巨大化の反動はんどうがやってきたようです。
フラップの体が、ここにきて徐々に小さくなってきました。
そのせいか、レンのバッグがフラップの手から遠のくように見えます。
いや、まだつかめる! つかまえるんだ!
体がさらに縮む中、フラップはさらに速度を上げ、ぐっと手を伸ばします。
ガシッ!
やった! バッグの紐をつかみ取りました。
フラップは体を水平方向に立て直し、地上すれすれを飛んでいきます。
そして――。
ガッツゥゥゥゥン!!
目の前に現れた固い大きな何かに、頭から激突したのです。
「ぼく、雨が大の苦手なんです!
ちょっとでも体が濡れると、力が出なくなっちゃうんですよう」
「あははは! またまたぁ、冗談言っちゃってぇ。
そんな、どこぞのアニメキャラみたいなこと――」
レンは本気にしようとしませんが、フラップも何一つ切り返さそうとしないので、
レンはようやく、彼が本当のことを言っているのだと悟ったのでした。
「えええ~~!? 聞いてないよ、そんなこと!」
「ごめんなさい。今まで晴れの日が続いたものだから、
つい伝えておくのを忘れてしまって――」
「頼むよ、もう! じゃあ、このまま雨が降り出したら、
ぼくたち墜落しちゃうじゃないか! キミってやつは――」
いや、フラップを非難している場合ではありません。
チヂミガンでふたりとも小さくなり、地上で雨をやり過ごす他ないでしょう。
レンは大急ぎでバッグを開き、チヂミガンを取り出します。
しかし、大あわてでグリップから手を放したのが、間違いでした。
ちょうどその時、雨雲が流れてくる方角から、
ものすごい突風がおそいかかってきたのです!
ビュゥゥゥウウウ―――!!
「うわああぁぁぁぁ……!!」
強い風にあおられ、フラップが大きく体勢をくずした拍子に、
レンが空中に投げ出されてしまったのです!
「まずい! レンくぅーーーん!!」
地が天に、天が地に。
レンは、頭からぐるんぐるんと回転しながら、地上へと落下していきます。
つかめるものが何一つなく、触れるものは、冷たい風の感触だけ――。
恐怖のあまりまぶたをぎゅっと閉じたまま、レンはパニックに陥りました。
(だれか……だれか……!)
助けて! フラップぅーー!!
ぼっふぅんっ!
レンの視界が、白い何かにおおわれました。
何か、ふかふかとした大きな、とてつもなく大きな動物の胸に、
ふんわりと優しく抱き留められたような感覚です。
しかも、背中に感じる、このぷにぷにした大きなものは何でしょう?
冷風にさらされていた体が、天国みたいな毛の海に温められます――。
「――ふう、危ない危ない」
なんと正体は、フラップでした。しかもフラップは今、
これまでに見たことのないほど巨大な姿ではありませんか。
まるで怪獣のような大きさです。信じられません!
背中に感じていたぷにぷには、フラップの手のひらの肉球でした。
「ぼくのモフモフな体は、このためにあるんですよねえ」
映画館の巨大スクリーンほどの大きな顔が、
ママのような優しい目でレンを見下ろしています。
「た……助かった。ありがとう、ありが……あああっ!」
レンは、雷に撃たれたように跳ね起きました。
いやにさみしい自分の胸、背中。何も持っていない両手。
ありません。バッグがどこにもないのです。届け物を入れたバッグが!
「フラップ! 下だぁー!」
レンの異変にすぐ気がついたフラップは、
彼の小さな体を片手ですっぽりと包みこんだ直後、
真下にむかって直角に巨体をひねります。
その目に、落下していく小さなバッグが見えました。
激しく回転しながら成すすべなく落ちていく、レンのバッグが!
「いっそげぇぇぇ!」
フラップは全速力でバッグを追いかけました。
これだけ巨大化した甲斐あって、その差はまたたく間に縮まっていきます。
あと十メートル、あと五メートル……。
しかし、あと少しのところで、超巨大化の反動はんどうがやってきたようです。
フラップの体が、ここにきて徐々に小さくなってきました。
そのせいか、レンのバッグがフラップの手から遠のくように見えます。
いや、まだつかめる! つかまえるんだ!
体がさらに縮む中、フラップはさらに速度を上げ、ぐっと手を伸ばします。
ガシッ!
やった! バッグの紐をつかみ取りました。
フラップは体を水平方向に立て直し、地上すれすれを飛んでいきます。
そして――。
ガッツゥゥゥゥン!!
目の前に現れた固い大きな何かに、頭から激突したのです。
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