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〈フロン編〉
9『助け舟のカラーは、優しい白色が一番いい』③
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しろさんの言葉には、たしかな温かみがありました。
それぞれの寂しい気持ちをそっと包みこむ、親のような温かみが。
フラップたちは、またもポロポロと涙をこぼしはじめました――
一番多く涙を流したのは、やっぱりフレディでしたけれどね。
「わしはな、一度でよいからおぬしたちの親代わりになってみたかったのじゃ。
そういうわけじゃからのう、よければ教えてはくれまいか?
レンがああまで変わってしまうきっかけとなった、おぬしらの隠し事を」
「ぼくらのことを、ひ、非難しないのか?」フレディが涙をぬぐいつつ聞きました。
「レンくんが、ぼくらをここへ捨てるように仕向けたのは――
ぼ、ぼくら、なんだぞ……ぐすっ」
「はぁ~、よさぬか。わしは、おぬしらに悪気があったとは思わん。
じゃから、これはおぬしたちを非難するつもりで聞いているわけではない。
最近のおぬしらに、いったい何があったのじゃ?」
「それはっ!」フリーナが口をおさえました。「言っちゃいけない約束ナノ!」
その様子をそばで見ていたフレディが、ふと何かに気づいて言いました。
「待てよ? ぼくらは、『レンくんにしゃべってはいけない』と言われただけで、
『他のだれかにも明かしてはならない』とまで言われたわけじゃない。
だから、フレデリック氏に話すのは、セーフなんじゃないのか?」
「「あ、そうか!」」フラップとフリーナは、ポンと手を打ち鳴らしました。
「そうじゃろう、そうじゃろう」しろさんは好ましそうにうなずきます。
「おぬしはわしのことを『フレデリック』と呼んでくれるから、
可愛がってやりたくなるのう。頭、なでてあげちゃおうかのう~?」
*
その後、研究所の中にある多目的ルームに移動した一行は、
広いテーブルにならべられた温かなチーズ料理を食べながら、
数日前、フロン先生と再会した日のことを話しあいました。
しろさんの仲間のシェフが作ったおいしいチーズ料理が、胃袋に入っていくと、
フラップたちは、次第に明るい心を取り戻していきました。
フラップたちからフロン先生のことを聞いたしろさんは、
事の真相をしんみりと味わうように、両目を閉じていました。
「なるほどのう……スクールから派遣されたドラギィの先生がおるとはのう」
「今は、カンソクヤクをしてるって言ってたから、せんせいじゃないけどサ」
と、フリーナはつけくわえました。
ずっとだれにも伝えられなかったことをようやく話せたので、
フラップたちはすっと胸のつかえが取れたような気分でした。
フレディだって、もう一粒の涙も流していませんでした。
「うむ。レンが安全な人間である証拠が、明日の日曜日までに出なければ、
おぬしらは永遠にレンと会えなくなる。そして、このわしとも……。
そうか、これはわしにとって……あ、いや!
おぬしらにとって、由々しき問題じゃな」
「そうなんですよう。助けてください、しろさぁん」フラップは懇願しました。
「じゃが、おかしくはないか? ずっとおぬしらを見てきた観測役員なんじゃろ?
レンのことを審査するというのなら、
今までだってその機会は十分すぎるほどあったはずじゃろう。
なぜ今になって、審査をするなどと言いだしたんじゃ?」
「そうか!」フレディが小さく叫びました。
「言われてみればその通りだ……どうしてそこに気がつかなかったんだろう?
ぼくとフリーナはさておき、フラップがレンくんと会った日から、
もうずいぶんと月日が経っているんだ。
その時点で審査をしなかったのなら、どうして今になるんだ?」
「そんなの、アタシたちにはぜんぜん分かんないヨゥ~」
「いずれにせよ」しろさんは、イスの腰かけたままうーんと背伸びをしました。
「むこう側に深い事情があるんじゃろ。いま問題なのは、おぬしたちのほうじゃ」
「あの、話は変わるんですけど――」
フラップは、改まったような態度でこうたずねました。
「もぐもぐ、どうしてしろさんは、今まで自分じゃなくて、
レンくんにぼくたちの守りを任せていたんですか?
ここにぼくたちを、もぐもぐ、かくまってたほうが、
ぼくたちのことを研究するのに都合がよさそうじゃないですか」
「あっ、そこはアタシも思ってた。もぐもぐ」
天竺チーズピザをひと欠片ほおばりました。
「おぬしら、わしといっしょに暮したほうがよいと思っておるのか?」
ドラギィたちは、首を横に振りました。
「かくまってもらったばかりで、言いづらいんだが」フレディが言いました。
「このラボは、ぼくらにはその――少々、高さと広さが足りないからな。
レンくんの部屋にいたほうが、居心地がよかったんだ」
「そりゃあ、そうじゃろう。それが当然の答えじゃ。
わしがずっと、おぬしたちをラボに住まわせようとしなかったのは――
レンにゆずっておったからじゃ。おぬしらとの時間をな。
わしは、おぬしたちを研究することでいつも頭がいっぱいじゃが、
レンは違う。あいつは、おぬしたちとの暮らしを心から楽しんでおった。
そこに、わしとの大きな違いがあったのじゃ。分かるかの?」
ドラギィたちは言葉の意味が分からないまま、視線を天井へとやりました。
「ようするに、心構えの違いじゃよ。あいつには、わしにはないものがある。
あいつは今、自分の力不足を深く嘆いておるが、
そのうちきっとまた、おぬしたちのもとに戻ってくるはずじゃ。
ドラギィ同盟を結んだ者としてのカンが、そう言っておる。うむ、ゼッタイじゃ」
そう言いつつ、しろさんは、
小さなカップから食後の苦いドリンクを優雅にすするのでした。
それぞれの寂しい気持ちをそっと包みこむ、親のような温かみが。
フラップたちは、またもポロポロと涙をこぼしはじめました――
一番多く涙を流したのは、やっぱりフレディでしたけれどね。
「わしはな、一度でよいからおぬしたちの親代わりになってみたかったのじゃ。
そういうわけじゃからのう、よければ教えてはくれまいか?
レンがああまで変わってしまうきっかけとなった、おぬしらの隠し事を」
「ぼくらのことを、ひ、非難しないのか?」フレディが涙をぬぐいつつ聞きました。
「レンくんが、ぼくらをここへ捨てるように仕向けたのは――
ぼ、ぼくら、なんだぞ……ぐすっ」
「はぁ~、よさぬか。わしは、おぬしらに悪気があったとは思わん。
じゃから、これはおぬしたちを非難するつもりで聞いているわけではない。
最近のおぬしらに、いったい何があったのじゃ?」
「それはっ!」フリーナが口をおさえました。「言っちゃいけない約束ナノ!」
その様子をそばで見ていたフレディが、ふと何かに気づいて言いました。
「待てよ? ぼくらは、『レンくんにしゃべってはいけない』と言われただけで、
『他のだれかにも明かしてはならない』とまで言われたわけじゃない。
だから、フレデリック氏に話すのは、セーフなんじゃないのか?」
「「あ、そうか!」」フラップとフリーナは、ポンと手を打ち鳴らしました。
「そうじゃろう、そうじゃろう」しろさんは好ましそうにうなずきます。
「おぬしはわしのことを『フレデリック』と呼んでくれるから、
可愛がってやりたくなるのう。頭、なでてあげちゃおうかのう~?」
*
その後、研究所の中にある多目的ルームに移動した一行は、
広いテーブルにならべられた温かなチーズ料理を食べながら、
数日前、フロン先生と再会した日のことを話しあいました。
しろさんの仲間のシェフが作ったおいしいチーズ料理が、胃袋に入っていくと、
フラップたちは、次第に明るい心を取り戻していきました。
フラップたちからフロン先生のことを聞いたしろさんは、
事の真相をしんみりと味わうように、両目を閉じていました。
「なるほどのう……スクールから派遣されたドラギィの先生がおるとはのう」
「今は、カンソクヤクをしてるって言ってたから、せんせいじゃないけどサ」
と、フリーナはつけくわえました。
ずっとだれにも伝えられなかったことをようやく話せたので、
フラップたちはすっと胸のつかえが取れたような気分でした。
フレディだって、もう一粒の涙も流していませんでした。
「うむ。レンが安全な人間である証拠が、明日の日曜日までに出なければ、
おぬしらは永遠にレンと会えなくなる。そして、このわしとも……。
そうか、これはわしにとって……あ、いや!
おぬしらにとって、由々しき問題じゃな」
「そうなんですよう。助けてください、しろさぁん」フラップは懇願しました。
「じゃが、おかしくはないか? ずっとおぬしらを見てきた観測役員なんじゃろ?
レンのことを審査するというのなら、
今までだってその機会は十分すぎるほどあったはずじゃろう。
なぜ今になって、審査をするなどと言いだしたんじゃ?」
「そうか!」フレディが小さく叫びました。
「言われてみればその通りだ……どうしてそこに気がつかなかったんだろう?
ぼくとフリーナはさておき、フラップがレンくんと会った日から、
もうずいぶんと月日が経っているんだ。
その時点で審査をしなかったのなら、どうして今になるんだ?」
「そんなの、アタシたちにはぜんぜん分かんないヨゥ~」
「いずれにせよ」しろさんは、イスの腰かけたままうーんと背伸びをしました。
「むこう側に深い事情があるんじゃろ。いま問題なのは、おぬしたちのほうじゃ」
「あの、話は変わるんですけど――」
フラップは、改まったような態度でこうたずねました。
「もぐもぐ、どうしてしろさんは、今まで自分じゃなくて、
レンくんにぼくたちの守りを任せていたんですか?
ここにぼくたちを、もぐもぐ、かくまってたほうが、
ぼくたちのことを研究するのに都合がよさそうじゃないですか」
「あっ、そこはアタシも思ってた。もぐもぐ」
天竺チーズピザをひと欠片ほおばりました。
「おぬしら、わしといっしょに暮したほうがよいと思っておるのか?」
ドラギィたちは、首を横に振りました。
「かくまってもらったばかりで、言いづらいんだが」フレディが言いました。
「このラボは、ぼくらにはその――少々、高さと広さが足りないからな。
レンくんの部屋にいたほうが、居心地がよかったんだ」
「そりゃあ、そうじゃろう。それが当然の答えじゃ。
わしがずっと、おぬしたちをラボに住まわせようとしなかったのは――
レンにゆずっておったからじゃ。おぬしらとの時間をな。
わしは、おぬしたちを研究することでいつも頭がいっぱいじゃが、
レンは違う。あいつは、おぬしたちとの暮らしを心から楽しんでおった。
そこに、わしとの大きな違いがあったのじゃ。分かるかの?」
ドラギィたちは言葉の意味が分からないまま、視線を天井へとやりました。
「ようするに、心構えの違いじゃよ。あいつには、わしにはないものがある。
あいつは今、自分の力不足を深く嘆いておるが、
そのうちきっとまた、おぬしたちのもとに戻ってくるはずじゃ。
ドラギィ同盟を結んだ者としてのカンが、そう言っておる。うむ、ゼッタイじゃ」
そう言いつつ、しろさんは、
小さなカップから食後の苦いドリンクを優雅にすするのでした。
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