鏡館の殺人

きむたそ

文字の大きさ
1 / 5

一章

しおりを挟む
鏡館の殺人」

第一章 招待状

 十一月の冷たい雨が、街灯を滲ませていた。
 古書店で働く私、木崎悠真のもとに、一通の手紙が届いたのはそんな夜だった。封筒は厚手の黒い紙で、裏には銀色の蝋が封印されている。差出人の名は書かれていない。

 震える指で封を切ると、流麗な筆致でこう記されていた。

「あなたを《鏡館》へご招待します。
今宵、特別な夜会が開かれるのです。
招待客は七名。どうぞお越しください」

 鏡館――。
 その名には聞き覚えがあった。郊外の森にひっそりと建つ大邸宅で、内部のほとんどの壁が鏡張りになっているという奇怪な建物だ。所有者は資産家の氷室静馬。しかし十年前に忽然と姿を消して以来、館は無人のまま放置されているはずだった。

 なぜ私に? 思い当たる節はない。
 だが、奇妙な好奇心に抗えず、翌日、私は指定された夜八時に館へと向かった。



 森の奥に佇む鏡館は、噂どおり異様だった。黒曜石のように光る外壁。玄関前に並ぶ巨大な鏡。まるで訪問者を映し出して飲み込もうとするかのよう。

 重い扉を押すと、中にはすでに六人の招待客が集まっていた。
 眼鏡をかけた大学教授風の男、華やかなドレスの女優、無口そうな青年、記者らしい女性、老紳士、そして品のある中年の女性――。

 誰もが不安げに互いを見回しながらも、共通していたのは「なぜ自分がここへ招かれたのか分からない」ということだった。

 やがて、壁に仕込まれたスピーカーから声が響いた。

「今宵はよくぞお集まりください。
私はこの館の主人、氷室静馬。
七名の招待客には、それぞれ招かれる理由がある。
ただし……夜が明けるまでに一人、必ず命を落とすでしょう」

 場が凍りついた。
 誰もが冗談だと信じようとしたが、館の外は嵐で、すでに出口は重く閉ざされていた。
 こうして《鏡館の一夜》が幕を開けたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...