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第二章
一口ちょうだい
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まだセミが鳴き止む気配がまるでない。
ジリジリと焼けた空気の中、日陰のベンチに座っててもじんわりと汗が滲んだ。
「はぁ~……やっぱ夏はこれだねぇ!」
蛍がラムネの瓶を掲げて笑う。
中のビー玉がカラン、と涼しい音を立てる。
「駄菓子、最高ー!」
「だな。
あそこのおばちゃん、昔から変わんなかったな」
瑠夏がどこか誇らしげに笑って、袋の中からチョコ棒を取り出す。
……チョコ棒も最近はスーパーとかで普通に売ってるけど、わざんざ買おうとはならないんだよねぇ。
こうやって駄菓子買いに来た時くらいにしか…。
「ねぇ、瑠夏。
それ一口ちょうだい」
「…は?」
思わず首を傾げた瑠夏が、ピタリと動きを止める。
昔だったら、普通に「ほらよ」って渡してくれてたのに。
今はなんか、顔を少し赤くしてわざと視線を逸らしてる。
「……ほら。
落とすなよ」
「やった、ありがとっ!」
受け取ったチョコ棒をかじる。
チョコの甘味がふわっと口の中に広がった。
久しぶりに食べると結構美味しいかも。
口の中、水分なくなるけど。
「めっちゃ青春っぽいやり取りじゃん」
この光景を見ていたのか、悠理がニヤニヤしながら肘で瑠夏を突いていた。
「ち、違ぇよ!
別にこんなん普通だろ!」
「はいはい、照れんなって~」
「照れてねぇし!」
悠理の軽口に瑠夏がムキになって、2人ともベンチから離れて小さな追いかけっこが始まる。
それを気にも留めてないかのように隣では、蛍が天音に「ほら、これ半分こ!」って駄菓子のポテトフライを差し出していた。
天音は一瞬だけ、躊躇ったように視線を落として小さく笑って素直に受け取っていた。
「ありがとう、蛍」
「ははっ、そんなに構えるほどのもんじゃないって!」
蛍が笑って天音の背中を軽く叩く。
それを見てまた私は少し笑った。
向こうでは瑠夏と悠理が追いかけっこをやめて、2人で駄菓子は何がいいかなんて言い合ってた。
風が吹いて、木の葉がざわめく。
笑い声と、駄菓子の包みを開ける音が混ざり合って、
この瞬間だけは、時間が止まったみたいに感じた。
チョコ棒をもう一口かじって、風を全身で感じる。
賑やかだけど、みんなでこうやってワイワイできるのが何よりも楽しい。
これからもみんなとずっとこうして過ごせると良いな…。
戻ってきた2人と蛍、天音にも聞こえるように笑って呟く。
「……来年もさ、こうやってみんなで夏に駄菓子食べに来ようね」
「もちろん!」
「ひなたが行くなら行ってもいいけど…」
「おう、約束な」
「また全員で、だな」
誰からともなくそれぞれそう言って、
気づけばみんな自然に笑ってた。
「…あれ、ひなた。
そういや、俺のチョコ棒は?」
「え!?
…ごめん、気づかない間に全部食べちゃった」
「はぁ!?」
瑠夏が残念そうに肩を落としているのを見て、私は苦笑いしながら慌てて残っていたうまい棒を渡した。
ジリジリと焼けた空気の中、日陰のベンチに座っててもじんわりと汗が滲んだ。
「はぁ~……やっぱ夏はこれだねぇ!」
蛍がラムネの瓶を掲げて笑う。
中のビー玉がカラン、と涼しい音を立てる。
「駄菓子、最高ー!」
「だな。
あそこのおばちゃん、昔から変わんなかったな」
瑠夏がどこか誇らしげに笑って、袋の中からチョコ棒を取り出す。
……チョコ棒も最近はスーパーとかで普通に売ってるけど、わざんざ買おうとはならないんだよねぇ。
こうやって駄菓子買いに来た時くらいにしか…。
「ねぇ、瑠夏。
それ一口ちょうだい」
「…は?」
思わず首を傾げた瑠夏が、ピタリと動きを止める。
昔だったら、普通に「ほらよ」って渡してくれてたのに。
今はなんか、顔を少し赤くしてわざと視線を逸らしてる。
「……ほら。
落とすなよ」
「やった、ありがとっ!」
受け取ったチョコ棒をかじる。
チョコの甘味がふわっと口の中に広がった。
久しぶりに食べると結構美味しいかも。
口の中、水分なくなるけど。
「めっちゃ青春っぽいやり取りじゃん」
この光景を見ていたのか、悠理がニヤニヤしながら肘で瑠夏を突いていた。
「ち、違ぇよ!
別にこんなん普通だろ!」
「はいはい、照れんなって~」
「照れてねぇし!」
悠理の軽口に瑠夏がムキになって、2人ともベンチから離れて小さな追いかけっこが始まる。
それを気にも留めてないかのように隣では、蛍が天音に「ほら、これ半分こ!」って駄菓子のポテトフライを差し出していた。
天音は一瞬だけ、躊躇ったように視線を落として小さく笑って素直に受け取っていた。
「ありがとう、蛍」
「ははっ、そんなに構えるほどのもんじゃないって!」
蛍が笑って天音の背中を軽く叩く。
それを見てまた私は少し笑った。
向こうでは瑠夏と悠理が追いかけっこをやめて、2人で駄菓子は何がいいかなんて言い合ってた。
風が吹いて、木の葉がざわめく。
笑い声と、駄菓子の包みを開ける音が混ざり合って、
この瞬間だけは、時間が止まったみたいに感じた。
チョコ棒をもう一口かじって、風を全身で感じる。
賑やかだけど、みんなでこうやってワイワイできるのが何よりも楽しい。
これからもみんなとずっとこうして過ごせると良いな…。
戻ってきた2人と蛍、天音にも聞こえるように笑って呟く。
「……来年もさ、こうやってみんなで夏に駄菓子食べに来ようね」
「もちろん!」
「ひなたが行くなら行ってもいいけど…」
「おう、約束な」
「また全員で、だな」
誰からともなくそれぞれそう言って、
気づけばみんな自然に笑ってた。
「…あれ、ひなた。
そういや、俺のチョコ棒は?」
「え!?
…ごめん、気づかない間に全部食べちゃった」
「はぁ!?」
瑠夏が残念そうに肩を落としているのを見て、私は苦笑いしながら慌てて残っていたうまい棒を渡した。
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