俺の隣にいるのはキミがいい

空乃 ひかげ

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第三章

男たちの葛藤

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【瑠夏side】

「オラァッ、次!!」

視界に入る白組のハチマキを片っ端から毟り取っていく。
土台の奴らが俺の殺気に当てられてビビってるのが伝わってくるが、知ったことか。
今の俺は、腹の底から煮えくり返るような熱い塊をどこかにぶつけねぇと、自分自身が焼き切れそうなんだ。

雑魚を散らしながら、一直線に向かう。
その先にいるのは、涼しい顔をして騎馬の上に鎮座する天音だ。

「おい、天音……!」
「やっぱり来たね、瑠夏」

天音の騎馬と正面からぶつかり合う。
衝撃で体が揺れるが、俺は迷わずアイツの胸ぐらに近い位置まで手を伸ばした。
周りから見りゃ、ただの激しい攻防戦だろう。
だが、俺の狙いはハチマキじゃねぇ。

「……お前、よくもあんな場所でぬけぬけと言いやがったな」
低い声で、天音にだけ聞こえるように吐き捨てる。

天音は俺の腕を器用にいなしながら、ふっと口角を上げた。
「何のこと?
……あぁ、告白のこと? 
隠しておく必要なんてないだろ。
俺は本気なんだから」
「本気なら時と場所を考えろっつってんだよ。
ひなたが困ってんのが分かんねぇのか!?」
「困らせるつもりはないよ。
でも、先に動いたのは瑠夏…君だろ? 
焦らせたのはどっちかな」

コイツ……!
どこまでも冷静なその面に、拳を叩き込みてぇ衝動を抑える。
「俺はあいつとの時間を大事にしたんだ。
お前みたいに、体育祭のどさくさに紛れて告るような軽い真似はしてねぇ!」
「軽い…?」

不敵に笑っていた天音の表情が、静かに眉間に皺を寄せて睨むように、口角を下げる。
「心外だな。
俺は、誰に邪魔されても揺るがないってことを示しただけだよ。
……例えば、君とかね」

天音の指先が俺のハチマキに掠める。
火花が散る。
天音の目はいつもの穏やかさとは正反対の、獲物を狙う男の目になっていた。

だが、そこに余計な影が割り込んできやがった。

「おーおー、熱いねぇ2人とも。
ひなたへの愛を叫び合ってんのか?」
余裕ぶった声。
……悠理だ。

「悠理……!
テメェ、紅組だろうが!
こいつは俺が仕留める、どいてろ!」
俺が怒鳴るが、悠理の騎馬はわざとらしく俺たちの間に割り込み、天音に揺さぶりをかける。

「そうもいかねぇんだよ」
悠理が天音の肩あたりの服を掴み、自分側に天音を引き寄せる。
コイツ、顔はいつもの余裕ぶった微笑みしてんのに、目が笑ってねぇ…。

「俺はさ、まだ自分の気持ちとかよく分かんねぇけど…。
……これだけは分かるんだわ。
お前らがひなたを『特別な女の子』扱いして、アイツの逃げ場を無くすような真似すんのは見てて面白くねぇんだよ」
「悠理……」
天音は悠理の言葉を聞いて、少し驚いた顔をしつつもすぐ余裕がないくせに額から汗流しながらふっと笑って、ハチマキを守る事に専念していた。

俺はというと、悠理の言葉にイラついて声を上げた。

「はぁ!? 
お前、どの口が……!」
一番ひなたのパーソナルスペースを荒らしてる奴が何を言ってやがる!
安全地帯から石投げてんじゃねぇよ!!

「瑠夏、この話は天音のハチマキ取ってからにしようぜ。
今は白組を潰すのが先だろ?」
悠理がニヤリと笑う。
ふざけんな。
共闘するつもりもねぇし、お前の「自覚なしの独占欲」にもムカついてんだよ!

「天音!!
 逃がさねぇぞ!」
「……ははっ、二人掛かりか。
いいよ、受けて立つ。
ひなたが見てる前で、無様な姿は見せられないからね」

天音は必死に俺と悠理の手を払いのけながら、騎馬を安定させて耐え抜く。
俺の怒りと、悠理の無自覚な嫉妬。
その二つの猛攻を、天音はハチマキを死守しながら受け止めていやがった。

「おーい!
ひなたーー!
見てるかーー!?」
悠理が競技中に大声で手を振る。
「……っ、このバカッ!
悠理動くな、落ちるぞ!」
大きい動作をして、下の土台の男子が悠理に向かって叫ぶ。

カオスだ。
競技も、俺の感情も。
結局、笛が鳴るまで俺たちは互いのハチマキを奪うこともできず、ただドロドロとした感情をぶつけ合うだけで終わっちまった。

「……チッ」
地面に降りた瞬間、激しい疲労が襲う。
けど一番疲れてるのは、間違いなく俺たちの集中砲火を浴びた天音だろう。

テントに戻りながら、ひなたの笑顔を探す。
アイツの「カッコよかった」って言葉がなきゃ、やってらんねぇ。

俺だけを見てろ。
頼むから…他の奴らの事なんて視界に入れんなよ……。
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