俺の隣にいるのはキミがいい

空乃 ひかげ

文字の大きさ
74 / 104
第三章

いつもの仕返し

しおりを挟む
それから少しして、3人で他愛もない話をしながら過ごしていると、日和ちゃんがあくびをした。

「日和、眠いのか?」
「ん~…。
でもまだひなたちゃんとお話ししたい」
「無理すんな、眠たい時は大人しく寝とけ」
「え~…。
…わかった」

悠理に言われて、素直に頷く日和ちゃん。
仲良い兄妹だなぁ。

それからすぐに、ソファでツインテールを乱しながら眠ってしまった日和ちゃんの静かな寝息が聞こえ始めた。
そっと悠理が日和ちゃんにブランケットをかけながら口を開く。

「今日は悪かったな。
こんな役、頼んじまって」
心底申し訳なさそうな声で、困った様に苦笑いする。
いつもの茶化しはどこにもなくて、彼は"兄"としての日和ちゃんへの愛情と、私への感謝と罪悪感がない混ぜになった顔をしていた。
そんな悠理を見て、優しく微笑む。

「大丈夫だよ。
むしろ今日は日和ちゃんと仲良くなれたし、すごく楽しかった。
恋人繋ぎには、ビックリしたけどね」
私が最後に苦笑いしながら頬をかくと、悠理もほっとしたのか肩の力を抜いて隣に座り込んだ。

「最近あぁいう系ばっか聞いてくるか話てくるかで、正直手に負えねぇんだよ」
「ふふ、でも悠理は日和ちゃんのことすごく大切に思ってるんだよね」
「まぁな。
俺の可愛い妹だからな」

彼は優しく日和ちゃんの髪を撫でて、また私の方を向いた。
彼の普段見ることのない優しい瞳に、少しドキッとする。

「まぁ…今日は3人でゲームしたり、遊んだりして悪くない1日だった。
むしろひなたがいてくれたおかげで、日和もいつもより楽しかったろうな」
「それなら良かった」
「…ま、俺もそう思ってる」

いつもより柔らかく微笑む悠理のその言葉に、私は胸の奥がほんのりと温かくなるのを感じた。
返事の代わりに、少し照れくさそうに笑って返す。
悠理ってなんだかんだ言って、やっぱ優しいんだよね。

その時、悠理はいつもの余裕綽々な表情に戻った。
彼はニヤッと口角を上げる。

「なぁ、ひなた。
せっかくだし、このまま本当に俺の彼女になるか?」
一瞬ドキッと心臓が跳ねるものの、冷静に考える。

きっとまた、悠理のお得意の冗談だよね。
いつも私だけ照れてあたふたして…。
何か悔しい。

悠理にやられっぱなしじゃない所も見せなきゃ!
いつものお返しで、私も少しニヤリと意地悪気に笑って悠理を見つめながらテーブルに頬杖をつく。

「ははっ、じゃあそうしようかな。
私が彼女になったら、悠理は嬉しい?」
私の言葉を聞いた瞬間、悠理は一瞬目を見開いて驚いた顔をした。
でもすぐに「はっ」って軽く笑って
「何?
マジで彼女になってくれんの?」
って距離を詰めてくる。

「ゆ、悠理…近いっ…!」
「別に今彼女なんだし、こんだけ近くてもおかしくねぇだろ?」
そう言って距離を取ろうとした私の手首を掴む。

彼女って言っても、彼女役だけどね!?
心の中でツッコミを入れるものの、それは悠理には届かない。
ジッと見つめられて、どんどん悠理の顔が近づいて来て…。
段々と顔に熱が集まってくるのを感じる。
さっきまで仕返ししようと思ってた余裕なんてもう無い。

私は反射的にギュッと目を瞑った。
「……」
「……?」
何も…起こらない?
閉じていた目をそっと開ける。
そこにはさっきより少し顔を離した悠理が、肩を震わせて笑っていた。

「くっ…!
ハハッ、悪ぃ。
冗談だ」
手の甲を口元に添えて愉快そうに笑う悠理に、私は恥ずかしくなり一気に熱が上がる。
「も、もう!
またそうやって面白がって・・・!」
パッと掴んでいた手首を離され、代わりに頭を撫でられた。

「お前ってホント可愛い反応するよな。
ついからかいたくなるっつーか、からかいがいがあるっつーか。
ホント飽きない」
…それは褒められてるんだろうか?
それとも貶されてる?
私はムッとしながらも、悠理に撫でられるままだった。

「ん~…うるさい」
ゴロンとソファの上で寝返りを打ちながら、ボソリと寝言を呟く日和ちゃん。
そんな彼女を見て、私と悠理は目を合わせ静かに笑いあった。

茶化したりからかったりしてくるけど、彼の隣は居心地が良かった。
何か胸の中が暖かくなるというか…。
それは友達としてなのか、お兄ちゃんみたいな存在としてなのか…。
はたまた別の感情なのか。
…私にはまだ、その答えがわからなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...