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第三章
反省した2人
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【蛍side】
「……行っちゃった」
真っ赤に染まった紅葉の木々の向こう。
ひなたが悠理の腕を引いて早々に消えていった2人の背中を見送って、私は大きなため息をついた。
隣を見れば、そこには石像のように固まったままの男子2人が。
「…………嘘だろ」
瑠夏が今にも魂が抜けそうな声で呟く。
「……あんなに喜んで悠理と行くなんて。
……予想外だよ、本当に」
天音の方は、顔を青くして持っていたパフレットを今にも握りつぶしそうな勢いだ。
さっきまでの威勢はどこへやら。
呆れるのを通り越して、なんだか可哀想にさえなってきたけど……ここで甘やかしたらこの人たちはまた同じことを繰り返す。
私は腰に手を当てて、2人に向き直った。
「ちょっと、2人とも。
いつまでそうやって落ち込んでるの?」
「……蛍」
「うるせぇ……。
今それどころじゃねぇんだよ」
瑠夏が毒づくけど、私は構わずに言葉を続けた。
「いい?
自分の胸に手を当ててよく考えなさいよ。
ひなた、さっき本気で困ってたでしょ。
あの子は優しいから、2人が喧嘩してると自分がどうにかしなきゃって思ってどんどん追い詰められちゃうんだから」
私の言葉に、二人の肩がビクッと跳ねる。
「どっちが一緒に行くかなんて、ひなたにとっては二の次なの。
あの子が望んでるのは、みんなで楽しく過ごすこと。
それを台無しにして、挙句の果てに逃げ場を無くすようなことして……。
そりゃ、悠理が助け舟出したらそっちに逃げたくもなるわよ」
天音が苦虫を噛み潰したような顔をして視線を逸らす。
瑠夏もバツが悪そうに足元の落ち葉を蹴った。
「……分かってるよ。
余裕がなかったのは、俺の方だ」
「……あいつ、藁にもすがる思いで悠理の手取ってたもんな……。
クソ、俺が怖がらせてどうすんだよ」
ようやく、少しは反省したみたい。
私はわざとらしく、さらに追い打ちをかけるようにニヤリと笑った。
「いい?
このままだと悠理に全部持っていかれちゃうんだからね。
悠理はあぁ見えて、ひなたの『困ってる』に一番敏感なんだから。
天音と瑠夏が言い争ってる間に、美味しいところを全部持っていかれるわよ」
「……っ、それは絶対に嫌だ」
天音の目が、焦ってるけど逃したくないという鋭さを取り戻す。
「……悠理の野郎、確信犯だろ。
アイツ、絶対内心ニヤニヤしてやがる」
瑠夏も拳を握りしめて、悠理が消えた方向を睨みつけていた。
「反省したなら、ひなたが戻ってきた時に変な空気作らないこと!
分かった!?」
私が釘を刺すと、2人は顔を見合わせてそれから深く、重いため息をついて頷いた。
「……分かったよ。
次は、ちゃんとひなたを笑顔にさせる」
「……あぁ、もうあんな顔はさせねぇ」
神社の境内に、少しだけ冷たい秋の風が吹き抜ける。
男子2人の顔にはまだ悔しさが滲んでいるけど、さっきまでの身勝手な熱さは消えていた。
さて、悠理とひなたは今ごろどうしてるかな。
あのお守りイベント、よく調べたら確か結構恥ずかしい内容だった気がするけど……。
きっと2人はそんな事知らないよね。
「……ま、それもいい思い出になるでしょ」
私は空を見上げて、もう一度だけ短いため息をついた。
ライバル同士が競い合うのは勝手だけど、一番大切な「ひなたの気持ち」を置き去りにしちゃダメなんだから。
戻ってきた時の2人の反応を楽しみにしつつ、私は反省中の男子たちを引き連れて、参道を歩き出した。
「……行っちゃった」
真っ赤に染まった紅葉の木々の向こう。
ひなたが悠理の腕を引いて早々に消えていった2人の背中を見送って、私は大きなため息をついた。
隣を見れば、そこには石像のように固まったままの男子2人が。
「…………嘘だろ」
瑠夏が今にも魂が抜けそうな声で呟く。
「……あんなに喜んで悠理と行くなんて。
……予想外だよ、本当に」
天音の方は、顔を青くして持っていたパフレットを今にも握りつぶしそうな勢いだ。
さっきまでの威勢はどこへやら。
呆れるのを通り越して、なんだか可哀想にさえなってきたけど……ここで甘やかしたらこの人たちはまた同じことを繰り返す。
私は腰に手を当てて、2人に向き直った。
「ちょっと、2人とも。
いつまでそうやって落ち込んでるの?」
「……蛍」
「うるせぇ……。
今それどころじゃねぇんだよ」
瑠夏が毒づくけど、私は構わずに言葉を続けた。
「いい?
自分の胸に手を当ててよく考えなさいよ。
ひなた、さっき本気で困ってたでしょ。
あの子は優しいから、2人が喧嘩してると自分がどうにかしなきゃって思ってどんどん追い詰められちゃうんだから」
私の言葉に、二人の肩がビクッと跳ねる。
「どっちが一緒に行くかなんて、ひなたにとっては二の次なの。
あの子が望んでるのは、みんなで楽しく過ごすこと。
それを台無しにして、挙句の果てに逃げ場を無くすようなことして……。
そりゃ、悠理が助け舟出したらそっちに逃げたくもなるわよ」
天音が苦虫を噛み潰したような顔をして視線を逸らす。
瑠夏もバツが悪そうに足元の落ち葉を蹴った。
「……分かってるよ。
余裕がなかったのは、俺の方だ」
「……あいつ、藁にもすがる思いで悠理の手取ってたもんな……。
クソ、俺が怖がらせてどうすんだよ」
ようやく、少しは反省したみたい。
私はわざとらしく、さらに追い打ちをかけるようにニヤリと笑った。
「いい?
このままだと悠理に全部持っていかれちゃうんだからね。
悠理はあぁ見えて、ひなたの『困ってる』に一番敏感なんだから。
天音と瑠夏が言い争ってる間に、美味しいところを全部持っていかれるわよ」
「……っ、それは絶対に嫌だ」
天音の目が、焦ってるけど逃したくないという鋭さを取り戻す。
「……悠理の野郎、確信犯だろ。
アイツ、絶対内心ニヤニヤしてやがる」
瑠夏も拳を握りしめて、悠理が消えた方向を睨みつけていた。
「反省したなら、ひなたが戻ってきた時に変な空気作らないこと!
分かった!?」
私が釘を刺すと、2人は顔を見合わせてそれから深く、重いため息をついて頷いた。
「……分かったよ。
次は、ちゃんとひなたを笑顔にさせる」
「……あぁ、もうあんな顔はさせねぇ」
神社の境内に、少しだけ冷たい秋の風が吹き抜ける。
男子2人の顔にはまだ悔しさが滲んでいるけど、さっきまでの身勝手な熱さは消えていた。
さて、悠理とひなたは今ごろどうしてるかな。
あのお守りイベント、よく調べたら確か結構恥ずかしい内容だった気がするけど……。
きっと2人はそんな事知らないよね。
「……ま、それもいい思い出になるでしょ」
私は空を見上げて、もう一度だけ短いため息をついた。
ライバル同士が競い合うのは勝手だけど、一番大切な「ひなたの気持ち」を置き去りにしちゃダメなんだから。
戻ってきた時の2人の反応を楽しみにしつつ、私は反省中の男子たちを引き連れて、参道を歩き出した。
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