俺の隣にいるのはキミがいい

空乃 ひかげ

文字の大きさ
97 / 104
第三章

反省した2人

しおりを挟む
【蛍side】

「……行っちゃった」

真っ赤に染まった紅葉の木々の向こう。
ひなたが悠理の腕を引いて早々に消えていった2人の背中を見送って、私は大きなため息をついた。

隣を見れば、そこには石像のように固まったままの男子2人が。

「…………嘘だろ」
瑠夏が今にも魂が抜けそうな声で呟く。

「……あんなに喜んで悠理と行くなんて。
……予想外だよ、本当に」
天音の方は、顔を青くして持っていたパフレットを今にも握りつぶしそうな勢いだ。

さっきまでの威勢はどこへやら。
呆れるのを通り越して、なんだか可哀想にさえなってきたけど……ここで甘やかしたらこの人たちはまた同じことを繰り返す。

私は腰に手を当てて、2人に向き直った。

「ちょっと、2人とも。
いつまでそうやって落ち込んでるの?」
「……蛍」
「うるせぇ……。
今それどころじゃねぇんだよ」

瑠夏が毒づくけど、私は構わずに言葉を続けた。

「いい? 
自分の胸に手を当ててよく考えなさいよ。
ひなた、さっき本気で困ってたでしょ。
あの子は優しいから、2人が喧嘩してると自分がどうにかしなきゃって思ってどんどん追い詰められちゃうんだから」

私の言葉に、二人の肩がビクッと跳ねる。

「どっちが一緒に行くかなんて、ひなたにとっては二の次なの。
あの子が望んでるのは、みんなで楽しく過ごすこと。
それを台無しにして、挙句の果てに逃げ場を無くすようなことして……。
そりゃ、悠理が助け舟出したらそっちに逃げたくもなるわよ」

天音が苦虫を噛み潰したような顔をして視線を逸らす。
瑠夏もバツが悪そうに足元の落ち葉を蹴った。

「……分かってるよ。
余裕がなかったのは、俺の方だ」
「……あいつ、藁にもすがる思いで悠理の手取ってたもんな……。
クソ、俺が怖がらせてどうすんだよ」

ようやく、少しは反省したみたい。
私はわざとらしく、さらに追い打ちをかけるようにニヤリと笑った。

「いい? 
このままだと悠理に全部持っていかれちゃうんだからね。
悠理はあぁ見えて、ひなたの『困ってる』に一番敏感なんだから。
天音と瑠夏が言い争ってる間に、美味しいところを全部持っていかれるわよ」

「……っ、それは絶対に嫌だ」
天音の目が、焦ってるけど逃したくないという鋭さを取り戻す。

「……悠理の野郎、確信犯だろ。
アイツ、絶対内心ニヤニヤしてやがる」
瑠夏も拳を握りしめて、悠理が消えた方向を睨みつけていた。

「反省したなら、ひなたが戻ってきた時に変な空気作らないこと! 
分かった!?」

私が釘を刺すと、2人は顔を見合わせてそれから深く、重いため息をついて頷いた。

「……分かったよ。
次は、ちゃんとひなたを笑顔にさせる」
「……あぁ、もうあんな顔はさせねぇ」

神社の境内に、少しだけ冷たい秋の風が吹き抜ける。
男子2人の顔にはまだ悔しさが滲んでいるけど、さっきまでの身勝手な熱さは消えていた。

さて、悠理とひなたは今ごろどうしてるかな。
あのお守りイベント、よく調べたら確か結構恥ずかしい内容だった気がするけど……。
きっと2人はそんな事知らないよね。

「……ま、それもいい思い出になるでしょ」

私は空を見上げて、もう一度だけ短いため息をついた。
ライバル同士が競い合うのは勝手だけど、一番大切な「ひなたの気持ち」を置き去りにしちゃダメなんだから。

戻ってきた時の2人の反応を楽しみにしつつ、私は反省中の男子たちを引き連れて、参道を歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...