俺の隣にいるのはキミがいい

空乃 ひかげ

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第三章

変わって行く感情

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【蛍 side】

「あ、戻ってきた」
参道の石段の向こうから、ひなたと悠理が歩いてくるのが見えた。
二人は何だか少し顔を赤くして、でもさっきまでのどんよりした空気はどこへやら、楽しそうに笑い合っている。

……ふーん。
これは、何かあったな?
私がそう思うより早く、隣でずっとソワソワしていた2人の「反省中男子」が弾かれたように駆け出した。

「ひなた!!」
「ひなた、ごめん……!」

瑠夏と天音が、戻ってきたひなたに詰め寄る。
急に走り寄られて驚くひなたに、2人は今日1番の真剣な顔で頭を下げた。

「わりぃ、俺たちがガキだった。
お前を困らせるつもりはなかったんだ……。
もう喧嘩しねぇから、一緒に回ってくれ」
「俺も、ひなたの気持ちを置いてけぼりにしてごめん。
……だから3人で紅葉、見に行かない?」

必死すぎる2人の謝罪に、ひなたは一瞬きょとんとしてから、いつものふわっとした優しい笑顔を見せた。

「ううん、大丈夫だよ。
私も急に走っていっちゃってごめんね。
行こう! 
3人で!」
ひなたが2人の腕を軽く引くようにして歩き出す。

「おう!」
「ありがとう、ひなた」
なんて言いながら、あっという間にひなたを左右からガードして歩き出す2人。
……ゲンキンなものね。
でも、あれが本来の3人の形なんだろう。

私はその様子を眺めながら、一歩後ろでやれやれとため息をついている悠理の隣に並んだ。

「……よかったね。
最悪の空気は免れたみたい」
「……あぁ、そうだな」

悠理は小さく笑って、ひなたたちの背中を見守っている。
その眼差しは、いつもの「傍観者」の冷めたものじゃない。
どこか温かくて、でもさっきまで2人きりだった余韻を噛み締めているような……。
私はニヤリと笑って、悠理の顔を覗き込んだ。

「で? 
どうだったの、カップルイベント」
「……っ!」

悠理の肩がビクッと跳ねる。
「何のことだか」なんてとぼけようとしてるけど、耳の先が真っ赤だ。

「巫女さんにお似合いとか言われちゃった? 
それとも、ひなたに愛の告白でもされた?」
「……うっせぇ。
お前、想像力豊かすぎだろ」

悠理は顔を背けたけど、その瞳は泳いでいる。
完全に動揺した時の反応だ。
私は面白くなって、さらに追い打ちをかけた。

「ひなた、すっごく嬉しそうな顔して戻ってきたね。
悠理にとっても、いい思い出になった?」
悠理はしばらく黙って、遠くで瑠夏たちに振り回されながら笑っているひなたを見つめていた。
そして、小さく吐き出すように……でもどこか晴れ晴れとした顔でふっと笑った。

「……まぁ、な」
短く答えたその声には、もう自分を騙そうとする迷いはなかった。

「……あいつに、あんな風に言われたら……反則だわ」
ぼそりと独り言のように呟いた悠理の横顔は、紅葉よりもずっと熱を帯びた目をしているように見えた。

「よーし、じゃあ私も混ぜてもらいに行こっと! 
悠理、置いてくよ!」
「あぁ、今行く」
私たちは前を歩く3人の賑やかな声に導かれるように、鮮やかな赤に染まった参道を歩き出した。
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