探偵(役の庶民)の男と、助手(役の上流階級)の青年と、事務所のメイド(に変装してる男)の話

八億児

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【序】

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「──そう。この燃え残った手紙は、助手である西條基さんが見つけてくれたものだ」
 スタンドカラーのシャツにベストを身に着けた男は、朗々とした美声で断じる。
「つまりこの盗難事件は、哀しい誤解から生まれた偽りの犯罪だったんです!」
 洋館の豪奢なピアノホールには、事件の関係者である六、七名ほどが集められていた。いかにも裕福で上品そうな人々の中にあっても、スクエア・ピアノの横に立つベストの男は気圧される様子もない。
 堂々とした男の言葉を、ホールに居並ぶ人々は固唾を呑んで聞いていた。
「犯人は郁恵さんではない。この屋敷の中で肩身の狭い思いをしていた郁恵さんを助けようとした、茂之さん──あなたですね」
 そう言って男は、犯行の理由が如何に郁恵という優しい叔母を思ってのことだったかをまるで見てきたかのように語る。
 盗品の首飾りは間もなく犯人の自室から発見され、盗難事件もそもそも叔母を庇うための茶番であったということになり、穏便な形で事は収まった。
 こうして名探偵・小野原陣一郎によって、また一つ事件が解決したのであった。

 ──そのはずだった。
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