19 / 49
第1章〜兄と妹と〜
第17話〜意外な人物〜
しおりを挟む「それではこれからよろしくお願いする。」
「よろしくお願いします!」
僕たちは今日、クルムテント王立学園の1年新人教師歓迎会に参加していた。
この歓迎会は毎年行われるそうで、僕たちは新人教師として、この会に出席した。
学園が始まるまで、あと数週間。それをある意味一番感じられる。
これから3年間は、このクルムテント王立学園の1年A組担任として、教師として、生活しなければならない。
この学園の教師は様々いて、それぞれの分野の教師を始め、僕らのような普段のクラス担任をやる人までいる。
本来僕も担任はやらないはずだったが、誰かさんの指名(国王)で、それに推薦されてしまった。
担任ともなれば、狭き門と言うこともあり、また曲者揃いで、僕らみたいな冒険者出な人もいたり、高名な魔導師や戦士だったりする人もいる。
誰かさんいわく、ご先祖さまが建てた由緒正しき学び舎でもあるから、そこらは絶対に欠かせないそうだ。
「しかし、急にA組の担任を変更されて驚いて誰が変わるんだと思っていたが、まさか、かの有名な《白王の仮面》ホワイトだったとはな!」
そう言って僕に話しかけるのは、この会で一番のベテラン教師であるムロ・ロットグルフさんだ。
彼は僕と同じく、冒険者であり、また二つ名が付いているとてつもない有名人だったりする。
「《鬼の鉄槌》と呼ばれたムロさんに俺の名前を覚えていただいてとても嬉しいです。」
「ガハハハ!俺を知ってるか!まさか、王国の救世主様にまで俺を知ってくれてるなんてな。だがあまり、敬語は好かん。俺も元冒険者、お前と同じなんだ。だから対等に行こうぜ!改めてよろしくな、ホワイト!」
彼の二つ名は、彼が現役の頃S級討伐魔物のグランドタートルを一撃でその人外とも呼ばれる力で葬った伝説から付けられている。また、彼は冒険者である前に、ロットグルフ公爵家と言う名門貴族の長男で、カリスマ性もピカイチだ。
次男は確か王国騎士だったっけ?
そして、僕が無理に敬語を使っていることに気がついたムロさんは、僕にそんなことを言ってくれた。
「こちらこそ、お互い1年担任ということで、よろしく頼む。」
「おう!そっちの方が合ってるぜ、ホワイト!」
僕らは手を握り合う。
彼と手を握り感じた。この人の手はとてもゴツゴツしていて、厚い。いわば、男の手だった。僕もこんな男になれたらなと思う。
『マスターに筋肉は似合わないと思います。』
な、ナビ・・・。そこは応援してよ。
「はいはいはーい!お二人さんそこまでで、次は私の番だよ!
私はC組担任をすることになったレイロア・コーレイドスちゃんだよ。私はムロさんと同じ貴族の育ちだけど、あんまり堅苦しい話は好きじゃないから、ムロさんと同じように、私にも敬語はいらないよ!これからよろしくね!」
僕たちの握手を割るようにしてそう言ったのは、この場では僕たちを除いたら最年少のレイロアだった。
彼女はコーレイドス子爵家の二女らしく、その天真爛漫な性格と異常な才能で、この学園の1年担任に抜擢された。
そして、若くして担任となった理由はその彼女の恩恵と扱うセンスを評価されたからだ。
彼女の才能の原点は恩恵である【スイッチ】。自身の中にある様々なスイッチを無理やり切り替えることができる能力だ。
その中でも彼女のこの能力の一つで破格なのが、
記憶スイッチと呼ばれるもの。
誰しも忘れたい記憶、忘れたくない記憶。様々な記憶があるが、彼女はそれを、自身で物理的に操作することができる。覚えたいことは覚えて、どうでも良いことは忘れる。彼女の一見普通そうな恩恵は、それを可能にする。情報収集のエキスパートとも言っていいだろう。
そして、彼女は僅か恩恵発症してから3ヶ月で、このどんな本にも載っていない前代未聞の恩恵を使いこなしたとされている。
「よろしく頼む、レイロア。」
「よろしくね~ホワイトさん!」
「それじゃあ次は俺かな。俺はバラカ。今回はD組の担任になった。俺は平民の出で、こんな豪華メンバーとは釣りに合わないだろうが、よろしく頼む。」
バラカはそんなことを言うが、彼もまた有名な人物だ。彼は王国では相当有名な絵師として名を馳せており、貴族や金持ちは彼の絵を金貨や白金貨何枚何十枚もかけて購入する。
確かにこの中では地味な感じはあるが、僕は彼からは不思議なオーラを感じる。
恐らく彼の恩恵か何かなのだろうか。
「E組担任、オーレン・オーロッドラックだ。私自身は趣味は特にないが、この学園には今の仕事を辞めてきた。つまりホワイトさんのような数年契約ではなく普通に教師としてきた。ムロさんのような人とは、これから数十年の付き合いになるだろうから同僚として、よろしく頼む。」
オーレン・オーロッドラック。彼はこの中では分かりやすい部類だろう。
彼の耳を見ると、少し人間ぽさ、がない短く尖った耳で、全体的にふくよかで小さな外見をしている。
その事から彼がドワーフなのだと見受けられる。
恐らく以前の仕事は鍛冶師なのだろう。だが、オーロッドラック、聞いたことの無い家名だな。
『オーロッドラック家は、ラットプント王国から数千キロ離れたみミンラン王国の伯爵家です。オーレンさんは、その家では四男に値し、跡継ぎ争いが嫌で旅をして、この国に行きついたそうです。』
ミンラン王国?ドワーフが貴族ってどういうこと?
『ミンラン王国は異種族国家であり、エルフ、ドワーフを始め、様々な種族の人類が暮らす国です。
確かS級冒険者のネルファさんもそこの出だったはずです。
なので、オーレンさんのように、国の貴族の上には、人間以外にも沢山います。』
そんな国があったんだ。なんか行ってみたいかも。
『今のマスターなら数時間で到着致しますよ。』
ーーーそれじゃあ気が向いた時に。
「えっと私ですね。私はミディって言います。ホワイトさんとパーティーを組ませていただいてます。私はホワイトさんと同じA組で、副担任として努めます。皆さんよろしくお願いします。」
これでミディの挨拶も終わり、残りはあと一人となった。
だが、最後の一人はオドオドしてこちらに視線を向けてくる。僕はその視線を見て、無言で首を振って立つように促した。
その行動に彼は思わず顔を固まらせ、俯いてしまった。
「最後はF組担任の先生か。今年の担任は何だか若いな!なぁ、オーレン先生よぅ?」
「私は初めてなのだが・・・まぁそうだな。それとは別で私は歳なんて気にしないが、これを飲めるやつが、少なくて少し不愉快だな。」
そうやってオーレンさんは、自身の目の前にあったジョッキを一気に飲み干す。まあ、ここにいるのは殆ど10代20代だもんね。
全くその通りだと、ムロさんもジョッキを持とうとした所で、彼は立ち上がった。
その彼に全員の視線が向かう。彼は意を決したように自己紹介をした。
「1年F組担任・・・・・・名はカグヤ・サトウです。」
0
あなたにおすすめの小説
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
※タイトルはそのうち変更するかもしれません※
※お気に入り登録お願いします!※
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる