シスコンの最強冒険者とブラコンの美少女姉妹は幸せにいきたいのです

kashizaki

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第1章〜兄と妹と〜

第18話〜王〜

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これは、僕たちと帝国の戦争が終わってすぐの話だ。

帝国の王の自殺から3日。僕は今日、ラットプント王から指名依頼が来ているとギルドから受け、そのためにクロホォルさんと対面していた。

「来てくれて感謝する。冒険者ホワイト・・・いや、この国の、ホワイトよ。」

彼がそう言うと、僕はその場で膝をつき頭を垂れる。
ここは公の場であり、様々な貴族や国の重要人物が多数在籍している。
普段通りに接すると色々と問題なのだ。

今日の依頼というのは、この表彰のようなものに出席してほしいという依頼だった。

「まずはこの者や今回の苛烈した帝国戦争の全ての者の業績、英断を、我が娘。
そして今回の次なる英雄であるミレイナに語ってもらおう。」
そう国王が言うと、ミレイナが前に出る。その姿は妖精のような姿をしているが、ここにいる誰も、その姿に驚く者はいない。

既にミレイナがこの姿になってしまったのは、ここ3日で、王国中の全員が知っている。
それに、ミレイナの姿は以前よりも更に美しさが増したと言っても良いため、逆にこの姿になってミレイナにファンが急増し、妖精女王というあだ名まで付けられている。

そして、彼女は笑顔で僕のことを見て話した。

「この者、冒険者ホワイトは、誰もが倒せなかった難敵である勇者を無力化することに成功するというその圧倒的な力量。
そして、この王国を全て吹き飛ばすほどの爆弾の処理に自身を犠牲とする行動にでる自己犠牲の精神と王への忠誠を見せ、
更に、ゴーレムを使った帝国戦争で最も苛烈化した前線の維持。
この破格の3つの業績を今回の帝国戦争で彼は果たしました。並びに我が国を代表するもう1人のSS級冒険者、《魔帝》ミディ、そしてS級冒険者の皆さんも、この戦争で大いに活躍いたしました。」
そこから色々な人たちのここが凄かった!ってことをミレイナが永遠と話していった。

ミレイナの話が終わるまで、僕は凄くボロを出さないように苦労した。一つ一つにここにいる全員がそれぞれ感嘆したり、驚いたり。すごい反応を示すので、それをした僕にとっては、とてもじゃないけど公開処刑モノだった。

くそ、クロホォルさん今回の報酬は二割増に要求してやる!

的に、二割増にはできませんよ?』
そんなの分かってるよ!

と、考えていると、ミレイナが全ての人の話を言い終える。

「ありがとうミレイナ。そして、お主もそのような姿となってまで、儂の命を守るために、そして第一に国民を守るためにその身を言葉の通り削りながら働いてくれた。儂は、お前が娘で誇りに思う。」
「あ、ありがとうございます!!」

ミレイナが深々と、自身の父でありこの国の国王に礼をした。
微かに見えた彼女の顔はこれまでの苦労が流れ出たのかとても見せられない顔になっていたが。

「泣き虫め。」
『マスター、素直になった方がよろしいかと。』
うるさいわい!・・・そんなのわかってるって。

「少しいいだろうか国王よ。」
「ん?何かあるか、ホワイトよ。」
「あぁ。国王は少し忘れている所がありそうなのでな。まずは聞いて欲しい。」
「儂にか!?」
「そうだ。忘れているというのはミレイナの事だ。
俺は最初、この依頼をミレイナからギルドで受けた時、真っ先に唯一この依頼を断った。」

そう言うと、その事情を知らなかった貴族達が、先程よりも数段驚いた。

「そ、それは知っておるが・・・。」
「だが、彼女はそれにめげる所か、ここから遠く離れている俺の家まで特定し、押し入ってくるほどのストーカー女だった。」
それを聞いて国王が苦笑い。そして、先程まで頭を下げていたミレイナが別の意味で赤くなり、そして冒険者達が破顔する。
周りは少し笑いに包まれた。

「お、おう。そうか。それは儂の娘が迷惑をかけたな。それが儂の忘れている事か、それはすまなかっ」

「違う、最後まで聞いてくれ。俺はそこまでしても、依頼を断った。・・・身内に結局説得されてしまったが。
ーーー王よ。もし、俺がそのままこの国を見捨てていたら、どうなっていたと思う?」

その質問は全ての者の予想外。誰もホワイトが言おうとしている事が理解不能だった。

「この国は恐らく帝国に飲み込まれ、儂は死んでいたであろうな。そうなっていないのは一心にミレイナが・・・お主の勧誘を諦めなかったおかげであろう。」

「では次の質問だ。もし、そんな状況で貴方がミレイナだったら、どうしていた?」


「・・・・・・国民を見捨てることはできん。ホワイトよ、それは儂へ失敬に値するぞ。」
突然クロホォルさんから、覇気のようなものが発せられる。
その覇気は先程まで少しうるさかったこの場を静まり返らせるほどだった。


ーーーだけど、僕はその答えについ大笑いしてしまった。


「何がおかしい。」
「やはり貴方達は家族だ。しっかり血が繋がっている。そんな尊敬に値する我が王に最後の質問をさせていただこう。ミレイナは、俺が断ったら何と言った?」

その答えを国王は勿論と言おうとして黙った。

「答えられないだろう?何故か。貴方は国王であり、国を背負う男だ。たった一人の女なんて流暢に見ていられない。・・・国王よ。貴方は父親ができているか?」
貴族の誰かが俺に物申そうとしたのを目線で黙らせる。
国王は少し思うところがあるのか、考えるような顔になる。

「答えを言おう。彼女は言った。「私は、王家の血筋である前に、王国の一人の民であり、冒険者だ。
冒険者なら、困っている人達を助けるのは当たり前だと思わないか?」と。」

そう聞いた途端、国王は目を見開く。

「貴方達は本当に似ている。そんな、答えを知った国王に言おう。俺は英雄じゃない、冒険者だ。金の為に自身の欲望の為に依頼を受ける冒険者だ。
さて、そんなものなどなく、なんの見返りも無い。逆に失う物しかなかったのに、それでも国民という大事な宝のために全てを賭ける。
・・・そんな、本当の英雄は誰だ?」
「・・・ミレイナか。」
「ホワイトさん・・・。おと・・・国王様!私は英雄ではありません!私もまた貴方様の依頼を受けただけ。それに私も冒険」
「ミレイナ。」

異議を言おうとしたミレイナをクロホォルさんは見る。彼女はその顔を見て、黙るしかなかった。
その顔は、弱々しい爺さんでも、国王の顔でもなんでもない。彼女が初めて見る、だった。


クロホォルさんは僕に振り返り、本当にいいんだな?と目線で問いた。

僕はそれに答えず、後ろを向いて、そしてこの場を後にした。ミディもまた僕の後ろをついてくる。



「本当によかったんですか、ホワイトさん?もし、あのままいっていたら。」
「いや、俺はあんなになる気はない。彼女が一番良いだろう。」
「ふふっ。そういう所がまた・・・。」
「何か言ったか?」
「なんでもないでーす。」


僕はそのまま王城を出た。やがて、僕らが出た場所からは、歓声が上がっていた。

「流石にあれは荷が重いよね~。」

この日、ラットプント王国は、名を改めて、ラットプント女王国となった。
誰が国王になったかなんて言わなくても分かるだろう。
誰が王なのかは聞くまでもないだろう。
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