シスコンの最強冒険者とブラコンの美少女姉妹は幸せにいきたいのです

kashizaki

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第2章〜クルムテント王立学園〜

第20話〜開校前夜〜

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「ホワイト、本当にこの依頼受けるのか・・・。」

「もう既に他の教師とは話をつけている。それに、この依頼は絶対に受けさせてもらうぞ。」

今日はギルドに三年間冒険者を休暇する申請を出しに来ていた。だけど、当然の事ながら、僕がこの冒険者ギルドに居てもらわないと、あちら側も困る訳で、長い長い交渉をさせられていた。

ギルド長は、何度目か分からないほど、この話を繰り返している。
「お前が辞めるとギルドに大きな損害が出る。」

「三年と言っているだろう?そのくらいなら俺がいなくても大丈夫な筈だ。」

「だが、貴族共がな。お前は強さ以外にも様々な人気が出る要因がある。それを他の冒険者らに任せる程、あれらは頭ができちゃいない。」

僕はこの5年間に色々な人から指名依頼を受けていた。その中には大商人やら貴族もいる。
商人達には護衛依頼や、魔物の討伐。貴族にも護衛依頼やそれらはあった。だけど、もう一つ貴族には他には滅多にない依頼がある。

それは、自身の子の教育。

強い冒険者への貴族の指名依頼には、家庭教師、剣の稽古、実践訓練の依頼が舞い込むことが、結構ある。

報酬は冒険者側が決め、貴族はその報酬を支払う制度になっており、冒険者側としてはかなり実入りの良い依頼で人気だ。

でも、この依頼はただ強ければくるようは依頼ではない。

依頼の頻度は、その冒険者の信用が一番関係してくる。法外な報酬をする冒険者もいれば、自身の子を危険な目にするような冒険者も中にはいるからだ。

そんな者に金を払うほど、貴族の金遣いは荒くない。
それに最近では、ミレイナの件をきっかけに、この国の悪徳領主や、貴族は厳罰が下っているため、国内は安定している。

ーーーだけどそれでも、

「お前の評価は高過ぎる。お前の授業、教育を受けた子供は必ず目に見える成長を遂げるからだ。
一体どんなことをしているのか・・・。」

まぁ、ナビが依頼された子に合うようなやり方を教えてくれるからね。そりゃ育つよ。

『当然です。育成やサポートは私の専門分野ですので。』

そういう訳で、僕への指名依頼は実は魔物討伐や護衛より、教育面の依頼の方が多い。
この傾向は、本当は引退寸前の上級冒険者に多いんだけど、僕の場合実績が多いからこのような事態になっていた。

それが今回こうやって止められている原因でもあってかなり複雑な気分。でも他にもギルド長の顔を見ると理由があるんだろうな。多分・・・でも、それなんだったら。

「ギルド長、心配はいらないと思うぞ。俺が突然依頼を受けなくなって、貴族共に年を押されているのは予想ができるが、もうすぐそれは方がつく。」

「・・・分かっていたか。」

当たりみたい。まぁ、そりゃ面倒事を嫌う我らがギルド長がここまで迫ってくるから、鈍い僕でも分かるよ。

「だが、実力行使は・・・」
「問題ない。恐らくあちら側から黙るだろうからな。」

『マスターが教師になるのは殆どの人間は知りませんし、それが知れれば逆に貴族側としては好都合でしょうしね。』
ナビが言う通り、学園は実力が全てだが、それでも貴族が大半を占める。そして、今まで自分で言うのは恥ずかしいけど、飛び抜けて人気だった、冒険者ホワイトの教養を何時でも聞けるのだ。
あちら側が喜びこそすれ、物申すことは無いだろう。

言うとしたら、学園に入っていない貴族くらいだろうけど、それをしたら、あちら側は今回の件が好都合だった同じ貴族に、敵意の眼差しを向けられるだろうから、相当バカじゃなければ大丈夫なはずだ。

だけど、それでもギルド長が落胆しているのは、
「何故、ミディさえも、お前と共に休暇をとるのだ。」
ということだ。まあ確かにその辛さはよく分かる。

時間限定な依頼しか受けない僕に対し、ミディは常に依頼を受けられるからね。
数より質って言うけれど、ギルド的にはひとつの依頼より二つの依頼だろうから。

「諦めろ。俺もミディが受けるのは予想外だったのでな。」
そう言うと、ギルド長は机に頭を落とし、その下に僕達の休暇申請資料がヒラヒラと舞う。

そこにはしっかりギルド長の判子がされており、
「すまないな。」
なんやかんや優しいギルド長に感謝しつつ、僕はその部屋から去った。きっと彼と会うのは早くても3年後だろう。


ギルド長はその日、王国のとある店で酔いつぶれているのが発見され、受付嬢の一人に引き摺られて行ったのが目撃されたらしい。
本当に申し訳ないと思った僕だった。


△▽


僕が申請が終わったあと、とくに依頼がある訳でもないので、家に帰ってきていた。
「「お兄ちゃん(兄さん)おかえり~。」」
そう聞こえると、玄関へドタバタと僕の天使が走ってくる。

「ただいま。マリアル、コハル。そろそろ学園が始まるけど、用意はできた?」

「うん!明日が入学式だからね。私たちさっきまでその準備してたんだよ!」
「それに兄さんも早く帰ってくるって言うからご飯作っておいたの。」

「おー!流石我が妹だ。お兄ちゃんはとっても二人の成長が嬉しい。」
「お兄ちゃんホワイトの口調と混ざってなんか変だよ?」

あ、確かに。あまりのマリアル達の良い子ぶりと可愛さに、人格が軽く崩壊してた。

「あははっ。ごめんごめん。どうしても最近ホワイトになりきる間が多かったからどうしてもね・・・。」
「兄さんあまり仕事し過ぎてはダメですよ?」

マリアルにそう言ってもらえて僕は嬉しいよ~。
ーーーとは、僕は口には出さない。

これから二人も学園に入る。その時に僕よりもカッコイイ人達に言い寄られることも多くあるだろう。

僕は鈍いけど、二人が僕に頼ったっきりに少しなってしまってるのは何となく分かる。
兄としてもそれは嬉しい事だけど、それは二人の成長を妨げているに過ぎない。でも、

「あうっ。お兄ちゃん・・・。」
「えへへ。」

言葉の変わりに僕は二人の頭を撫でた。
この世界では、20歳には大体の女性は結婚する。
二人は遅くてもあと8年経ったら僕から離れるんだ。


だから、このくらいだったら許してほしいな。


学園に行くという新たなステップに、二人の成長を感じられる嬉しさと、その二人といれる時間が、どんどん目に見えて無くなってきている強い心の痛みを感じた。

『マスターにしては懸命な判断です。確かに妹様方はマスター離れを出来ていません。』

そうかい?まぁ僕も妹離れする時が遂に来てしまったのかな?

『妹様方が学園に行かれると同時に、自分自身もその教師になろうとしている時点でマスターは重度のブラコンです。心配しなくてもまだまだマスターは無理ですよ。』

手厳しいな~。

ナビからそんな鋭い言葉をもらった訳だけど、その言葉に、何故か安心を得る。
僕はまだまだ妹離れが出来ていないことを感じられたからだ。

「やっぱり僕は二人からは離れられないかもな。」

独り言を呟いたことで、二人が上を向く。そんな僕の天使達に笑顔を向けて、
「ご飯食べよっか!」
「「うん!!」」

こうして、今日も今日とて一日が過ぎる。僕たちは、明日からの生活や予定なんて忘れて、この時間は家族の時間を過ごした。


今日の夜更け、辺りは寝静まり、マリアルとコハルも寝ている頃、ユマが内緒にしている屋根裏部屋では、ある作業が行われていた。
その作業はユマがこの何ヶ月か、ずっとしていた事であり、この時だけは彼は色々と崩壊する。


「ぐふっ、ぐふっ、ぐふふふふふふふふふ!!!!遂に完成した!!僕の最高傑作。ヌグヒャヒャッ!!」


『これは・・・・・・やはり、重度では済まされませんね。』


「マイ・スイート・シィスタァァァーー!!!!!」

高らかにユマの声は森の奥まで響き渡ったという。
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