シスコンの最強冒険者とブラコンの美少女姉妹は幸せにいきたいのです

kashizaki

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第2章〜クルムテント王立学園〜

第27話〜君たち次第だ〜

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「す、すみませんホワイト先生。ちょっと急用で・・・。」

「別に大丈夫だ。時間は間に合っている。それより顔色が優れないようだから1時間目は休んでいるか?」

「だ、大丈夫です。それよりそろそろチャイムがなりますので、早速始めましょう。」
遅れてやって来たミディの顔を見ると、走ってきた理由から少量の汗が額に滲んではいるが、その表情はあまり優れていない。恐らく今日はミディの女の子の日と言うやつだろう。

「そんなことを言うな。取り敢えず、これに座ってろ。(コソッ)妹達で大体分かる。辛いだろう?」

そう言うと、彼女は少し頬を赤らめて、ドアの前の椅子に座った。

「さて、我が生徒の諸君おはよう!そして、初めましてだ。俺は入学式でも挨拶したが、A組の担任となった、ホワイトだ。」

「同じくA組の副担任となったミディです。初めまして皆さん。」

そう言うと拍手が起こる。こういう時は相手への敬意で拍手をするというのは基本だ。それをよく分かっている。

「ありがとう。では今日の1時間目の授業はこのように自己紹介だ。クラス内での友好を深める事もあるが、それだけではつまらないだろう。よって、ここに挨拶の条件を出すことにする。」

そして、僕は用意していたプリントを黒板に貼った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1時間目、自己紹介の条件について

1、名前と挨拶
2、自身の恩恵について
3、どんな事が好きか、または得意なこと
4、一年間、この学園で何を学びたいか
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

全員が、これを見て少し顔を捻る。
そんな中、ワトルが立ち上がって僕に質問した。

「先生、最初と最後は分かりますが、2と3を言う理由が分かりません。」

「2の恩恵についてだが、これは俺やミディが、生徒に合う訓練や教えを考えるために必要なデータだ。だからこそ言ってもらいたい。」

「そして3つ目ですが、これは私達が、ただ皆さんに興味があるからです。それに友好を深めると言うのには、この質問はピッタリなんです。
好きな事とか嫌いな事、誰しも当たり前のようにあります。それを開示してくれることで、生徒の皆さん達自身も、これから役に立つことがあると思いますよ。」

僕に続いてミディがそう言うと、ワトルはその答えに納得したのか、席に座った。

だけど、新たに難儀な言葉が一人の生徒から上がった。

「貴族は分かりますが、平民の趣味なんて興味ありませんわ。そもそもこの授業自体、私には必要が無いことです。」

そう言うのは、女子生徒の二レイ。彼女は女子の中で唯一の貴族で、レントアンダス家の長女な筈だ。

レントアンダス家は、代々伯爵の座についている。
ある意味、貴族的思考が色濃く残っている家である為、そういう所はとても我儘なのだろう。

「それなら、二レイ。君はこれからどうする?」

「無駄な時間ですので学園の図書館にでも行っていますわ。幸いここは一年A組。3階の図書館には近い所です。」

確かに、この学園の図書館は歴史書を始め、様々な本が残っている。言うならば、あそここそが、国の最高機密が眠る場所だろう。

そして、一年生は、3階の教室を使っており、A組は同じく3階の図書館に更に近い。
彼女の言っていることは、正直周りの同年代の子には失礼だし、僕という先生に対しても相当失礼だ。

だけど、

「なるほどな、分かった。それなら行っていいぞ。
今日はこういう事しかない授業ばかりだ。退屈なら図書館でも何でも好きにするがいい。俺が許可する。」

「あら、さすが英雄様ですこと。お解りが早いようで何よりですわ。それでは皆さんご機嫌よう。」

そして、ドアは閉められる。ミディは彼女に何か言おうとしていたが僕はそれを制した。

「他にも俺の授業が気に入らない者がいるなら、二レイと同じように出て行ってもらって構わん。それはこれからの授業でもだ。出席日数は気にしなくていい。最初の時間さえその場にいれば、後は授業中に退席しても、食事をとっても、個人で行動してもいい。全て、君たち次第だ。」

そう言うと、全員がポカン。とした。
確かにこのやり方を他の人に言ったら、それこそやる気がないと言われそうだが、僕はその方がが良いし、授業というものが疲れるものだと理解している。

「ほ、ホワイト先生。本当にそれで授業が成り立つのでしょうか?」

「アークス、成り立つも何も、そんなのは関係ないだろう。君たちが、勝手に授業を壊しているのだし、壊さなかったらそれはそれで俺はしっかり授業をする。というか、この場の全員がいなくなっても、授業は行う。」

「あ、あのそれはその・・・」

あまりにもの情報量と思いがけない出来事に、さすがのA組生徒も一部を除いて困惑していた。

「時間はたっぷりある。元々自己紹介をする為に、自由時間を用意するつもりだった。俺は少し職員室で忘れ物を取りに行くから、その間にどうするか決めるがいい。」

そう言って、僕は教室を出る。出る時一瞬妹達と目が合ったが、どうやら察しているようで、笑顔で手を振っていた。

「ど、どど、どういう事ですかホワイトさん!?こんなの担任のする事じゃありませんよ!!?」

ドアを出てしばらくした瞬間、慌ててついてきていたミディがそう叫んだ。

「心配ない。彼らは仮にもA組というクラスに選ばれた者たちだ。このくらいのことは解決できるだろう。」

「これくらいのこと・・・ですか?何か考えがあるんですね。」

「まぁな。それに俺の見立てでは、あの中からあと二人は消えるだろうな。」

いや、3人かなぁ?

「やっぱりそうですか。さすがホワイトさんんん?消えるってどういう事ですか!!?」

「ミディ、これが俺の方法なんだよ。最初から強くなれる、良く学べる。そんなの今までと同じ、やり慣れた方法だ。
それでは、いつか成長は止まり、やる気も失せる。」

「そんな・・・。」

「人はやる気になってこそ初めて多くのことを吸収しようとするし、良い結果に満足ができるんだ。」

ミディの表情を見て、続けて僕は言った。
「4ヶ月後、8月だな。この学園には何がある?」

「・・・4ヶ月後って、ま、まさか!?ホワイトさんそれ最早賭けに近くないですか!?」

ミディも僕が言おうとしていることに気がついたらしい。

「言っただろう?全て君たち次第だ、と。あの俺の生徒は確かに頭の良い者や、力が強い者たちが集まっているのは分かる。だが、彼らに決定的に足りないものがある。それは二レイの時に確信した。」

ミディは、僕の仮面で隠れた声色で思わず苦笑いした。

「ホワイトさんも人が悪いですね!そう言うことなら、お手伝いします!」

言い方とは裏腹に、その声はあまりにも楽しそうな声をしていた。


△▽


「さて、10分経ったが・・・ミッドフィーとオマはどうした?」

僕が帰って来ると、二人の姿が消えていた。
アークスが、その問いに、僕の方を向いて答える。

「彼らなら出て行きましたよ。何でも自主学習するそうです。」

「・・・サボりか。」

「はい・・・。」

まぁ、予想通りだ。だけど、いなくなると思っていたもう一人はしっかりこちらを向いて笑顔になっていた。

「ワトル、お前は行かなくてよかったのか?」

「ご冗談を。誰が教育者の神とも言える方の授業を受けないと言うのですか?
本当に出て行ったあの者らは実に愚かとしか言えませんね。」

またこの子は・・・!

「そうか。いや、だが何よりだ。」

呆れて何も言えないと言った表情になるワトルに、僕は少し背中がムカッとする。

だって、ワトルは僕がやる事を知っているはずだから。恐らくその先も。何故こんなことを態々してる理由さえも。

にこりと僕に微笑みを浮かべるこの子は、僕がかつてやってしまったことにより、僕を神聖視してしまった人間だ。

ワトル・ロージャン。

ロージャン男爵家の五男にして、クルムテント王立学園入試試験、首席合格。
その容姿は女性からしたら母性本能くすぐられるような顔と身長をしており、目立つ存在だが・・・。


何よりもこの子は、僕が初めて教えた生徒だった。
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