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第2章〜クルムテント王立学園〜
第28話〜自己紹介!〜
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頭をかきながら、教卓に上がると僕は一度溜息を吐いたあと、時間も時間なので、生徒に向き直る。
「さて、それではたった七人しかいないが、自己紹介を早速してもらおう。
まぁまずは例として俺達が、紹介を兼ねて自己紹介をしよう。」
僕はそう言うとミディと視線を合わせた。彼女はその視線に微笑みを返し、立ち上がって生徒と顔を合わせる。
「一年A組、副担任ミディです。今年から新任で、学園の教師になりました。元は冒険者で生計を立てています。
私の恩恵は【模写】というもので、見た物をある程度まで再現できる能力です。
この能力が原因でもありますが、近くの人をよく観察することが得意です。
皆さんとは一年間、教師として皆さんのサポートをより良くできればいいなと思います。これからよろしくお願いします!」
僕は彼女がお辞儀をしたすぐに、拍手を促す。僕の生徒もみんな、それに続き、彼女に拍手をした。
顔を上げた彼女と目が合う。次はあなただ。と、彼女の目は語っていた。
正直あんなに上手いスピーチの後にやるのはあまり気が引けるが・・・。
「俺は同じくA組担任となったホワイトだ。ミディと同じように、今年から新任として教師となった。俺の恩恵は【状態回復】というもので、自身や、相手の異常となるものを完治させられる。」
その言葉に何人かが、驚く。
僕としては、ナビの存在を教える訳にはいかなかったからこんな風に言ったけど、彼らにとってはSS級冒険者のホワイトが、回復系の恩恵ということに驚いたのだろう。マリアル達は僕の本当の恩恵を知っているため少しクスッと笑ったが。
「得意なことはあまりない。だが、俺は家族と一緒にいる事が好きだ。俺の唯一の人生の楽しみと言ってもいいだろう。
この一年、俺は俺の生徒の為に、一番適した指導を行う。それは全員に合った指導ではなく、個人個人、それぞれに合った授業、教えだ。この学園には一年ごとに、クラスの判定を決める試験が行われるのは知っていると思うが、俺は自身の生徒は全て、BやCに行かせる気はない。
だから、改めて三年間よろしく頼む。」
確かな自信を持って、僕は彼らに言った。僕の仮面の奥の目で伝わったのか、これまでの数々の動揺が、彼らから抜けたのが分かった。
そして、約二名は、顔を伏せて縮こまっているが、まぁ気にはしない。
「では、君たち一人一人の紹介をしてもらうとしよう。まずは出席番号1番、アークス・ホルネヒド!」
「はい!」
いい返事だな・・・。
「俺の名前はアークス・ホルネヒド。ホルネヒド家の長男です。
俺の恩恵は【特化】。一瞬の間、自分の手や足などの筋肉の一部を活性化させる能力があります。
趣味は筋トレで、得意なのは持久走や、とにかく体を動かすことです。
俺は長男として、この学園で家の誇りをかけてA組で卒業したい。だから一年でも気を抜かず、下のやつらに追い越されないように精一杯努力したいです。
よろしくお願いします!」
彼の能力が特化だということは分かっていたが、一瞬の間の力か。・・・なるほどね。
「出席番号2番、はサボりで、3番、キース・アクーオン!」
「よっしゃ!」
うぉ、元気いっぱいだな。
「キース・アクーオンだ!俺の力は【縦横無尽】。名前はカッコイイように聞こえっけど、ただ、縦と横方向に走る速さが速くなるだけだし、速すぎてあまり実践的じゃねえ。誰もいない廊下とか、道とかの距離の短縮くらいにしか使ってねえ力だ。だけど腕っ節はそこそこなつもりだからそっちは得意だし、めっちゃ好きだ!
親父に言われて、めっちゃ勉強してこの学園に来た。
この一年間は、みんなとはちょっと遅れてる方だと思うからそれを縮められるように頑張りてぇ。これからよろしくな!」
・・・これは誰かさんの香りがする子だな。というか縦横無尽か。もし、縦と横の移動にあれが出来るなら、相当強い能力になりそうだけど。
「出席番号4番、ネラフラス・アンラン。」
「へい。」
今までずっと無口だったから少し気になる子だな。
「ネラフラスっす。アンラン子爵家の次男で恩恵は【増築】。元々あるものに手を加えられる能力っすね。資材とかがあれば可能っす。まぁ想像しだいっすけど。
好きな事は特にないっすね~、まぁ得意なことを言うなら予測っすかね。俺の予測ってかなり当たるんっすよね。一年間まぁ、ホワイト先生が好きなことをしてもいいってんで、遊び呆けたいって思ってるっすね。まぁ、よろざーす。」
彼の父は確か国の宰相をやってるんだっけ。得意なことが予測って言ってたけど、かなりの考えの結果を元に結論を出してるんだろうな。
「ふふっ。」
っと、どうやらミディの方が思いついた事がありそうだし、後で聞いてみるとしますか。
「出席番号6番・・・ワトル・ロージャン。」
「はい。」
はぁ、やらかさないでくれよ・・・。
「ワトル・ロージャンと言います。貴族ですが、王国でも相当辺境の男爵家の五男で、10歳の頃に家族とは別れてこの王都に引っ越してきました。まぁ、家を追い出されたと言っていいでしょうね。恨みで3年後に潰してやりましたけど。社会的に。」
「「「・・・。」」」
もうヤダこの子。
本人すごく明るく話してるけど、周り極寒に変わったよ!
わかってたけど、どうしてそう話したいのかな!?
「ワトル・・・家のことはいいから、次に進んでくれ。」
「へ?あぁはい。ホワイト先生の頼みだったらしょうがないですね。・・・まだ話し足りなかったんだけど。」
それが要らねぇんじゃ!と、僕はホワイトでは言えないので、ワトルに見えるように拳を強く握ると、彼は少し冷や汗をかいて素直に次の話にいった。
「僕の恩恵は【原子】という能力です。まぁこの能力は物質を元の物に戻すだけの能力ですね。」
あからさまに手を広げて、やれやれとするワトルだが、この能力は簡単にチートと言える。
本人もそれは分かっている筈だが、まぁ、ここは口を出さないでおこう。
「僕はこの学園にホワイトさんが教師になるって噂を聞いたので来ました。なので、この学園に来た理由はホワイトさんにまた教えてもらうためだけです。好きな事は、新しいものを発見すること。よろしくねー。」
そう言うと、ワトルは笑顔のまま座ってこちらにニヤリとした。
「し、質問です!ワトルさんとホワイト先生はどのようなご関係なのでしょうか。」
「それはですねぇ、」
「何年か前に家庭教師でワトルを教えたことがあるだけだ。相変わらず、生意気なのは変わっていないようだ。」
ワトルが僕の発言に顔を膨らませるがそんな顔をしたってムダだ。事実を話してるからね!
「・・・お家で詳しく聞かなければなりませんね、コハル。」
「うん、お姉ちゃん。お兄ちゃん何か隠してるよあれ。」
「・・・。」
流石に家族には何か隠してるの分かられちゃうか。
そして僕は、マリアルとコハルの僅かな話し声と、普段は見せない微笑みを見て、背中に嫌な悪寒を感じた。
「さて、次からは女子か。それでは出席番号7番、イマソラ。」
「はい。」
女子は図書館に行った二レイ以外はマリアル達を合わせて全員平民だ。
だけどイマソラは平民っぽさが全くない。恐らく商人か、騎士の子なのかもしれないな。
でもあの立ち振る舞いから騎士の、それも相当な所の人な感じが・・・。
「イマソラです。【ソードマスター】が、私の恩恵です。」
ソードマスターか。マスター系は確か、恩恵の中では元ある才能をかなり伸ばす効果があったはずだ。
と言うより、殆どの恩恵はこのような人間が元々持っている才能を伸ばすモノが多い。
そう考えるとこの組は、特殊な恩恵を持つ者が多いと言っていいだろう。
「趣味はこの腰にある愛刀を磨くこと。愛刀とは幼少期からの付き合いで、主である私と共に成長する魔導具でもあります。」
『青龍の長刀
攻撃2倍、破壊不能武具、所有者権利【イマソラ】
主成長』
なるほど。多分主成長というのが、彼女が共に成長する。と言ったものなんだろうな。
青龍ってことは、A+級討伐魔物のブルードラゴンの爪で作ったんだろう。でも、そんな高価な物を彼女が持っているというのはどういう事なのだろう。
「この学園では今は亡き父、騎士団長モーロフの後を継ぐために、強くなるために来ました。一年間、国の英雄であらせられるホワイト様に教えてもらうという幸運に恵まれて私は嬉しく感じます。この一年、決して下に落ちないように努力する所存です。皆さんよろしくお願いします。」
騎士団長って・・・カグヤが殺した人だったっけ。
この国の騎士団長のモーロフという人は、確かに平民出身という有名なところがあった筈だ。
でも、今はその騎士団長も戦死して、カンロ・アクーオンというキースの兄が、副騎士団長、実質騎士団長になっている。
彼女は自分の父を殺した相手が僕と同じように担任の中にいるって知ったらどうなってしまうんだろう。
後でカグヤには言っておかないと。
「素晴らしいスピーチだったがイマソラ、この学園では俺は様で呼ぶことは無いようにしてくれ。」
「はい。今後はホワイト先生と呼ぶつもりですのでご心配には及びません。」
「そうか。では出席番号8番、コハル。」
「はーい。」
可愛い・・・。
「私は、コハルって言いまーす。私は、ゲームが大好きでーす。」
とても可愛い・・・。
「恩恵はー【神獣契約】って言いまーす。動物さんや魔物さん達と仲良くなれる能力でーす。
え、え~っと・・・一年間頑張りまーす、みんなよろしくねー。」
可愛すぎる・・・!!
「・・・ホワイトさん?」
もうね、家の子やっぱり反則だと思うの。もういちいち言葉伸ばす所とか、あざとい様に見えるけど、もう顔を少し右とか左とかに捻ったり、時々考える仕草したりとかね。もうおかしいくらい可愛いのよこの子。
「ホワイトさん!(小声)」
「はっ!すまない。それでは最後に出席番号10番、マリアル。」
「はい!」
さて、それではしっかり聞いて・・・凛々しい。
「私はマリアル。この学園では、ある人の隣に立てる存在となるために少しでも強くなるのが目標です。」
美しい・・・。
「私の恩恵は【覇王】。まだ、私はこれを自覚したことはありませんが、この能力は言わずとも分かると思います。」
「「・・・ほぅ。」」
きらび・・・おっと、なんかクラス内の武人のキースとイマソラがライバル意識を向けたな。
まぁ、覇王って勇者の力と対を成す能力だからねぇ。勇者よりは珍しく無くても、この能力は一般的に割れてるし、チート認定されてるから分かる人も多いんだろうね。
「好きな事は、・・・家族といることです。長ければ長いほど、それはいい。皆さんよろしくお願いします。」
なるほど、マリアルはそういうのが好きなんだな。
・・・
・・・
・・・なるべく定時で帰ろ。
△▽
全員の発表が終わり、少し生徒に談話させる時間を取らせ、それぞれの間の緊張などを解してやると、そろそろ時間も時間なので、こっちを向くように促した。
「さて、何人か欠けているが、今ここにいる全員は、それぞれの同級生、クラスのメンバーのことをよく知れたと思う。そして、数日でもすれば、友と呼べる存在が、君たちには増えるだろう。
その時、こうして自分のことをまずは率先して開示してやる事で、相手へ安心を与えることが出来るし、話の場も広がるだろう。
俺も、君たちの教師として君たちを一年間しっかり教えるつもりだ。どうか、よろしく頼む。」
「私もよろしくお願いします。」
僕に続けてミディもそうやって頭を下げた。
これで、七人の生徒の大体の話は聞けた。あとは僕がそれを一年間サポートしてあげるだけだ。
「さて、そろそろ1時間目の授業は終わりだな。まぁ切りが良いし少し早めに終わらせるとしよう。・・・そうだな。イマソラ、号令を。」
この中では一番しっかりしている彼女が適任だろう。
彼女は僕に頷いてくれた。
「起立、例!」
△▽
「ホワイトさん、大体集計つきました。それと、1時間目欠席した人にはプリントを渡しておくので大丈夫だと思います。」
「ああ。流石に何も知らずに教えるのは難しいからな。あの子たちもただで休めるとは思ってはいないだろう。」
休み時間の職員室、ミディと僕は1時間目の話をしていた。
「ですが、本当にいいのですか?せめて今回のように欠席したら課題を渡すくらいはした方が・・・。」
「彼らは賢い。そもそも俺達が教える必要が無い者たちばかりだ。」
「ですが、学年末のテストもあります。他の生徒との差がついてしまう可能性が・・・。」
それは分かっている。B組の生徒は当たり前だけど、F組でも、実は殆ど実力や才能の差はない。何時抜かされてもおかしくないのだ。それでも・・・
「ミディ、確かに賭けと言ってもいいだろうが、意外と俺は今、その賭けに確実に勝てると確信した。」
「・・・はぁ、お腹が痛くなりますね。」
「大事なのはムードと団結だ。決して俺たちは焦りなどを見せてはいけない。」
「はぁ痛い、痛い。」
ミディはわざとらしく、お腹を抑えて痛がるのだった。
「さて、それではたった七人しかいないが、自己紹介を早速してもらおう。
まぁまずは例として俺達が、紹介を兼ねて自己紹介をしよう。」
僕はそう言うとミディと視線を合わせた。彼女はその視線に微笑みを返し、立ち上がって生徒と顔を合わせる。
「一年A組、副担任ミディです。今年から新任で、学園の教師になりました。元は冒険者で生計を立てています。
私の恩恵は【模写】というもので、見た物をある程度まで再現できる能力です。
この能力が原因でもありますが、近くの人をよく観察することが得意です。
皆さんとは一年間、教師として皆さんのサポートをより良くできればいいなと思います。これからよろしくお願いします!」
僕は彼女がお辞儀をしたすぐに、拍手を促す。僕の生徒もみんな、それに続き、彼女に拍手をした。
顔を上げた彼女と目が合う。次はあなただ。と、彼女の目は語っていた。
正直あんなに上手いスピーチの後にやるのはあまり気が引けるが・・・。
「俺は同じくA組担任となったホワイトだ。ミディと同じように、今年から新任として教師となった。俺の恩恵は【状態回復】というもので、自身や、相手の異常となるものを完治させられる。」
その言葉に何人かが、驚く。
僕としては、ナビの存在を教える訳にはいかなかったからこんな風に言ったけど、彼らにとってはSS級冒険者のホワイトが、回復系の恩恵ということに驚いたのだろう。マリアル達は僕の本当の恩恵を知っているため少しクスッと笑ったが。
「得意なことはあまりない。だが、俺は家族と一緒にいる事が好きだ。俺の唯一の人生の楽しみと言ってもいいだろう。
この一年、俺は俺の生徒の為に、一番適した指導を行う。それは全員に合った指導ではなく、個人個人、それぞれに合った授業、教えだ。この学園には一年ごとに、クラスの判定を決める試験が行われるのは知っていると思うが、俺は自身の生徒は全て、BやCに行かせる気はない。
だから、改めて三年間よろしく頼む。」
確かな自信を持って、僕は彼らに言った。僕の仮面の奥の目で伝わったのか、これまでの数々の動揺が、彼らから抜けたのが分かった。
そして、約二名は、顔を伏せて縮こまっているが、まぁ気にはしない。
「では、君たち一人一人の紹介をしてもらうとしよう。まずは出席番号1番、アークス・ホルネヒド!」
「はい!」
いい返事だな・・・。
「俺の名前はアークス・ホルネヒド。ホルネヒド家の長男です。
俺の恩恵は【特化】。一瞬の間、自分の手や足などの筋肉の一部を活性化させる能力があります。
趣味は筋トレで、得意なのは持久走や、とにかく体を動かすことです。
俺は長男として、この学園で家の誇りをかけてA組で卒業したい。だから一年でも気を抜かず、下のやつらに追い越されないように精一杯努力したいです。
よろしくお願いします!」
彼の能力が特化だということは分かっていたが、一瞬の間の力か。・・・なるほどね。
「出席番号2番、はサボりで、3番、キース・アクーオン!」
「よっしゃ!」
うぉ、元気いっぱいだな。
「キース・アクーオンだ!俺の力は【縦横無尽】。名前はカッコイイように聞こえっけど、ただ、縦と横方向に走る速さが速くなるだけだし、速すぎてあまり実践的じゃねえ。誰もいない廊下とか、道とかの距離の短縮くらいにしか使ってねえ力だ。だけど腕っ節はそこそこなつもりだからそっちは得意だし、めっちゃ好きだ!
親父に言われて、めっちゃ勉強してこの学園に来た。
この一年間は、みんなとはちょっと遅れてる方だと思うからそれを縮められるように頑張りてぇ。これからよろしくな!」
・・・これは誰かさんの香りがする子だな。というか縦横無尽か。もし、縦と横の移動にあれが出来るなら、相当強い能力になりそうだけど。
「出席番号4番、ネラフラス・アンラン。」
「へい。」
今までずっと無口だったから少し気になる子だな。
「ネラフラスっす。アンラン子爵家の次男で恩恵は【増築】。元々あるものに手を加えられる能力っすね。資材とかがあれば可能っす。まぁ想像しだいっすけど。
好きな事は特にないっすね~、まぁ得意なことを言うなら予測っすかね。俺の予測ってかなり当たるんっすよね。一年間まぁ、ホワイト先生が好きなことをしてもいいってんで、遊び呆けたいって思ってるっすね。まぁ、よろざーす。」
彼の父は確か国の宰相をやってるんだっけ。得意なことが予測って言ってたけど、かなりの考えの結果を元に結論を出してるんだろうな。
「ふふっ。」
っと、どうやらミディの方が思いついた事がありそうだし、後で聞いてみるとしますか。
「出席番号6番・・・ワトル・ロージャン。」
「はい。」
はぁ、やらかさないでくれよ・・・。
「ワトル・ロージャンと言います。貴族ですが、王国でも相当辺境の男爵家の五男で、10歳の頃に家族とは別れてこの王都に引っ越してきました。まぁ、家を追い出されたと言っていいでしょうね。恨みで3年後に潰してやりましたけど。社会的に。」
「「「・・・。」」」
もうヤダこの子。
本人すごく明るく話してるけど、周り極寒に変わったよ!
わかってたけど、どうしてそう話したいのかな!?
「ワトル・・・家のことはいいから、次に進んでくれ。」
「へ?あぁはい。ホワイト先生の頼みだったらしょうがないですね。・・・まだ話し足りなかったんだけど。」
それが要らねぇんじゃ!と、僕はホワイトでは言えないので、ワトルに見えるように拳を強く握ると、彼は少し冷や汗をかいて素直に次の話にいった。
「僕の恩恵は【原子】という能力です。まぁこの能力は物質を元の物に戻すだけの能力ですね。」
あからさまに手を広げて、やれやれとするワトルだが、この能力は簡単にチートと言える。
本人もそれは分かっている筈だが、まぁ、ここは口を出さないでおこう。
「僕はこの学園にホワイトさんが教師になるって噂を聞いたので来ました。なので、この学園に来た理由はホワイトさんにまた教えてもらうためだけです。好きな事は、新しいものを発見すること。よろしくねー。」
そう言うと、ワトルは笑顔のまま座ってこちらにニヤリとした。
「し、質問です!ワトルさんとホワイト先生はどのようなご関係なのでしょうか。」
「それはですねぇ、」
「何年か前に家庭教師でワトルを教えたことがあるだけだ。相変わらず、生意気なのは変わっていないようだ。」
ワトルが僕の発言に顔を膨らませるがそんな顔をしたってムダだ。事実を話してるからね!
「・・・お家で詳しく聞かなければなりませんね、コハル。」
「うん、お姉ちゃん。お兄ちゃん何か隠してるよあれ。」
「・・・。」
流石に家族には何か隠してるの分かられちゃうか。
そして僕は、マリアルとコハルの僅かな話し声と、普段は見せない微笑みを見て、背中に嫌な悪寒を感じた。
「さて、次からは女子か。それでは出席番号7番、イマソラ。」
「はい。」
女子は図書館に行った二レイ以外はマリアル達を合わせて全員平民だ。
だけどイマソラは平民っぽさが全くない。恐らく商人か、騎士の子なのかもしれないな。
でもあの立ち振る舞いから騎士の、それも相当な所の人な感じが・・・。
「イマソラです。【ソードマスター】が、私の恩恵です。」
ソードマスターか。マスター系は確か、恩恵の中では元ある才能をかなり伸ばす効果があったはずだ。
と言うより、殆どの恩恵はこのような人間が元々持っている才能を伸ばすモノが多い。
そう考えるとこの組は、特殊な恩恵を持つ者が多いと言っていいだろう。
「趣味はこの腰にある愛刀を磨くこと。愛刀とは幼少期からの付き合いで、主である私と共に成長する魔導具でもあります。」
『青龍の長刀
攻撃2倍、破壊不能武具、所有者権利【イマソラ】
主成長』
なるほど。多分主成長というのが、彼女が共に成長する。と言ったものなんだろうな。
青龍ってことは、A+級討伐魔物のブルードラゴンの爪で作ったんだろう。でも、そんな高価な物を彼女が持っているというのはどういう事なのだろう。
「この学園では今は亡き父、騎士団長モーロフの後を継ぐために、強くなるために来ました。一年間、国の英雄であらせられるホワイト様に教えてもらうという幸運に恵まれて私は嬉しく感じます。この一年、決して下に落ちないように努力する所存です。皆さんよろしくお願いします。」
騎士団長って・・・カグヤが殺した人だったっけ。
この国の騎士団長のモーロフという人は、確かに平民出身という有名なところがあった筈だ。
でも、今はその騎士団長も戦死して、カンロ・アクーオンというキースの兄が、副騎士団長、実質騎士団長になっている。
彼女は自分の父を殺した相手が僕と同じように担任の中にいるって知ったらどうなってしまうんだろう。
後でカグヤには言っておかないと。
「素晴らしいスピーチだったがイマソラ、この学園では俺は様で呼ぶことは無いようにしてくれ。」
「はい。今後はホワイト先生と呼ぶつもりですのでご心配には及びません。」
「そうか。では出席番号8番、コハル。」
「はーい。」
可愛い・・・。
「私は、コハルって言いまーす。私は、ゲームが大好きでーす。」
とても可愛い・・・。
「恩恵はー【神獣契約】って言いまーす。動物さんや魔物さん達と仲良くなれる能力でーす。
え、え~っと・・・一年間頑張りまーす、みんなよろしくねー。」
可愛すぎる・・・!!
「・・・ホワイトさん?」
もうね、家の子やっぱり反則だと思うの。もういちいち言葉伸ばす所とか、あざとい様に見えるけど、もう顔を少し右とか左とかに捻ったり、時々考える仕草したりとかね。もうおかしいくらい可愛いのよこの子。
「ホワイトさん!(小声)」
「はっ!すまない。それでは最後に出席番号10番、マリアル。」
「はい!」
さて、それではしっかり聞いて・・・凛々しい。
「私はマリアル。この学園では、ある人の隣に立てる存在となるために少しでも強くなるのが目標です。」
美しい・・・。
「私の恩恵は【覇王】。まだ、私はこれを自覚したことはありませんが、この能力は言わずとも分かると思います。」
「「・・・ほぅ。」」
きらび・・・おっと、なんかクラス内の武人のキースとイマソラがライバル意識を向けたな。
まぁ、覇王って勇者の力と対を成す能力だからねぇ。勇者よりは珍しく無くても、この能力は一般的に割れてるし、チート認定されてるから分かる人も多いんだろうね。
「好きな事は、・・・家族といることです。長ければ長いほど、それはいい。皆さんよろしくお願いします。」
なるほど、マリアルはそういうのが好きなんだな。
・・・
・・・
・・・なるべく定時で帰ろ。
△▽
全員の発表が終わり、少し生徒に談話させる時間を取らせ、それぞれの間の緊張などを解してやると、そろそろ時間も時間なので、こっちを向くように促した。
「さて、何人か欠けているが、今ここにいる全員は、それぞれの同級生、クラスのメンバーのことをよく知れたと思う。そして、数日でもすれば、友と呼べる存在が、君たちには増えるだろう。
その時、こうして自分のことをまずは率先して開示してやる事で、相手へ安心を与えることが出来るし、話の場も広がるだろう。
俺も、君たちの教師として君たちを一年間しっかり教えるつもりだ。どうか、よろしく頼む。」
「私もよろしくお願いします。」
僕に続けてミディもそうやって頭を下げた。
これで、七人の生徒の大体の話は聞けた。あとは僕がそれを一年間サポートしてあげるだけだ。
「さて、そろそろ1時間目の授業は終わりだな。まぁ切りが良いし少し早めに終わらせるとしよう。・・・そうだな。イマソラ、号令を。」
この中では一番しっかりしている彼女が適任だろう。
彼女は僕に頷いてくれた。
「起立、例!」
△▽
「ホワイトさん、大体集計つきました。それと、1時間目欠席した人にはプリントを渡しておくので大丈夫だと思います。」
「ああ。流石に何も知らずに教えるのは難しいからな。あの子たちもただで休めるとは思ってはいないだろう。」
休み時間の職員室、ミディと僕は1時間目の話をしていた。
「ですが、本当にいいのですか?せめて今回のように欠席したら課題を渡すくらいはした方が・・・。」
「彼らは賢い。そもそも俺達が教える必要が無い者たちばかりだ。」
「ですが、学年末のテストもあります。他の生徒との差がついてしまう可能性が・・・。」
それは分かっている。B組の生徒は当たり前だけど、F組でも、実は殆ど実力や才能の差はない。何時抜かされてもおかしくないのだ。それでも・・・
「ミディ、確かに賭けと言ってもいいだろうが、意外と俺は今、その賭けに確実に勝てると確信した。」
「・・・はぁ、お腹が痛くなりますね。」
「大事なのはムードと団結だ。決して俺たちは焦りなどを見せてはいけない。」
「はぁ痛い、痛い。」
ミディはわざとらしく、お腹を抑えて痛がるのだった。
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