シスコンの最強冒険者とブラコンの美少女姉妹は幸せにいきたいのです

kashizaki

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第2章〜クルムテント王立学園〜

第29話〜僕の仕事〜

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結局あれから3人がまともに授業を受けに来ることはなかった。

最初の一週間は午前授業だから、2時間目からは交流ゲームなど、前世の遊びを全員でして一日を終えた。

やっぱりまだみんな子供だから、そこら辺は凄く好評だったが、遊びは遊びだ。
確かに二レイが言っていたことは的を射ているだろう。
まぁ、今回の授業は全部、クラス内の雰囲気作りとかだから別にいいけど、明日からも授業に参加するかは微妙なところだ。

3人とも、成績を見る限りしっかり上位の実績はあるから、ただ授業をずっと出席しないことは無いだろう。少し癖があるだけだ。

ただ3人以外。

妹たちや、今回の振る舞いからワトルは、休むことは無いだろうけど、その他の生徒が、この空気に毒される可能性はある。

「それが僕が最も重要なポイントなんだけどね。
・・・僕の生徒は期待通りの行動に出てくれるか。」


その期待を胸に、今日の初めての教師としての仕事は終わった。

そして、放課後になって、僕は家に帰って来ていた。だけど、マリアル達はまだ帰ってきていない。

恐らく王都の店とかを歩き回っているのだろう。妹たちにとっては初めてがいっぱいだろうし、コハルは僕と同じ転移魔法を使えたはずだしね。

「ナビ、明日から本格的に指導を始める訳だけど、僕はそもそも実践訓練教師として来たから、ムロさん達、他の担任とは違って、他の組の指導もする。」

だからこそ、ミディが副担任として、その間のA組の授業を担当する訳だけど。

「今日から7日後。来週初めの3、4時間。
組対抗で早速人口ダンジョンに潜ることになる。
学園のダンジョンだから安全性はしっかりしてるだろうけど実践訓練教師として、実践であるダンジョンの知識を何も教えないわけには行かない。
だから、まずはその為に、この一週間はその為だけの授業をしようと思うけど、どうかな?」

『確かにとても良い考えですが、その間、土日は除いて4日間、学園がある中でマスターの実践訓練の授業は、全ての組に2時間分の割り振りがありますが、2時間であの人口ダンジョンの全てを教えることができるでしょうか?』

ナビが言っていることは最もだ。

そもそもダンジョンとは、平均して10階層ある魔物が無限で湧く場所だ。
その難易度はピンからキリまであり、未だに天然のダンジョンで攻略されていない物だってある。

でも殆どは、魔術師たちが作った人口のダンジョンであり、学園が運営するダンジョンは、ダンジョンの制覇ランクで言うと、A級くらい。中の上くらいだ。

それでも卒業するまでに一番奥である10階層をクリアしたら、相当もてはやされる。


そんな様々な魔物がうじゃうじゃいるダンジョンの説明や中での行動を、僕はたった2時間分の授業時間で教えなければならない。だけど、あくまで今回は訓練程度だ。

「別に全て教えなくてもいいんだ。
一年生が今回の組対抗のダンジョン探索で潜ることを許されるのは3階層まで。
それなら基礎知識程度で良いはず。
一応事前に僕も明日の朝、潜って全て余さず見ていこうと思うけどね。だから大丈夫だよナビ。
それに生徒も、この学園を合格している時点で、並大抵の努力はしていない子ばかりだ。教えれば教えるだけ吸収してくれる。僕が教えるのは1時間程度で充分間に合う。問題は2時間目に行うことが無さすぎて困る。そうだろ?」

『・・・そうですね。確かに私はダンジョンを攻略するつもりで考えていましたし、彼らの能力を計算に入れていませんでした。それではお任せ下さい。
授業の構成は私が明日までに考えておくので、マスターは妹さん方のお昼ご飯でも作ってあげててください。』

「分かった。・・・ふふっ、でも随分と人間臭くなったねナビ。『考えておく』って。普通言わなくない?」

『・・・マスターの授業構成を作成します。数時間後には完了する予定です。』

「急に機械口調になったね・・・。まぁいいさ。
さて、マリアル達も初めての授業で疲れただろうから、お兄ちゃんが美味しいご飯を作ってあげますか!」


△▽


3時間後・・・。部屋には既に冷めた3人分の料理と、体育座りをしたユマと、途中から来たスライムがいた。

「ねぇ、来ないんだけど。」

「プル?プルプール!(きっとコハルちゃんたちお買い物してるんだよ!)」

「え?僕に愛想がつきたから他の男と遊んでいるって?そうかスライム君。君さえ、僕の敵なのかい?」

今にも泣きそうになって顔を埋めるユマに、思わずピンク色のクインズスライム(魔王級)は、慌てだした。

「プルー!プルプルプルン!(違うよ!コハルはお兄ちゃん大好きだって!)」

それを聞くと、ユマは顔を上げてスライムのことを見る。

「ん?違うって?」

「プルン!(そう!)」

「あ、なるほど。マリアルとコハルは自分から他の男に行ったんじゃなくて、その男どもに誑かされてるんだ。・・・殺しにいくか。」

そして殺意の塊がユマから発せられ、目の前にいたスライムはその殺意を前に一瞬で塵となる。

「待っててね~お兄ちゃんが今すぐそのゲス共の息の根を止めに行きますからね~。」

そして、今、王都に向かおうとユマが魔法を使おうとした瞬間、その時だった。

「【ワーブゥ!!?」

ピンク色の物体が顔にへばりついた。
それは、先程塵となった筈のスライムで。

「ふごはぁ、はふごほへぇ!(スライム君、僕は行かなきゃいけないんだ、離せ!)」

「プルプルプル!!(コハルちゃんたちの邪魔はさせないよ!!)」

「がふぅ、ほへ、はふ・・・ほぃ・・・ぁ・・・。」

そして、口を塞がれ、ついでに鼻も塞がれ息が出来なくなったユマは窒息し、意識がなくなった。

「プルン、プルプル。(やれやれだぜ。キラン☆)」

ここに、か弱き乙女を影から救う一匹のスライムが誕生したのだった。


その頃マリアル達は・・・。

「あれ?今、兄さんが私たちのこととっても心配しているような気配が・・・。」

「あ、それ私もしたー。まったく、お兄ちゃんは甘えん坊さん何だからぁ!」

「そうね。コハル、そろそろ帰りましょう?兄さんが待ってるわ。」

「うん!」

そして、コハルは転移の魔法を使おうとするが。

「ま・・・まぢやがれぇ。」

「おでだぢはまだあぎらめねぇぞぉ。」

そこには数十人ほどのボロボロになったチンピラ集団が倒れ伏していた。彼らはマリアル達の容姿に釣られてナンパをしてきた男たちだった。

ある意味、ユマの予想は当たっていた。

「兄さんに言われたけど、手加減というものは難しいですね。諦めの悪い人間がこうしてどんなにやっても倒れてくれない。」

「うん。でもだからこそお兄ちゃんは私たちに怒ったもんね。」

「あの時は兄さんの視線で思わず下が濡れそうになっちゃった。」

「私も。お兄ちゃんのあのキリッとした普段見せない表情が、かっこよくて・・・濡れちゃった。」

そうして体をくねるコハルに、マリアルは少し呆れた表情をした。

「コハル、その濡れるじゃなくて・・・。」

「でもお姉ちゃんも少しはなったでしょ?そっちの意味で。」

「・・・うん。」

「ほ、本当だったんだ。お姉ちゃんへんたーい。」

「え!?え、いや、その。こ、コハルだって一緒じゃない!」

男どもを無視して話を続けていたマリアル達は、お互いに少し頬を赤らめてそう話を続けると、近くから集団の足音が聞こえてきていた。

「あ、また面倒な人達がやってきそう。コハル、行くよ!」

「うん!」

そして、二人はその場から転移した。

彼女らがいなくなったあと、そこに足音の原因であった存在が現れる。それは、男は男でも、男の騎士たちだった。

「や、やべぇ、王国兵がこんなに!」
「ちげぇ、あれは王国騎士だ!なんでこんな所に!」

3の申し出で急いで来たが、なるほど。どいつもこいつも賞金首や犯罪歴がある者ばかりだ。お前たち!」

「「「はっ!」」」

「畜生が!!」

そして、マリアル達を襲った男ども全員捕まった。
その一部始終を見ていたもう一人のフードを被っていた男は、その着ていたフードを顔で隠し、思わず震えていた。

「マリアルさん。あんなに顔を赤くして可愛い所もあるんだね。あぁ、また私はあなたのことを好きになってしまった。」

そしてそのフードの男はその場から霧のように消えた。
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