久遠の花

りずべす

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三章 また、いつか

1  二〇二四 長月―中

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 僕は、焦茶色で重厚な雰囲気を放つドアを開ける。未だ残暑の厳しい街中を歩いてやってきた僕にとっては、その隙間から漏れ出す涼風は心地良かった。
「あれ、灯華さんは?」
 ここは、黄金色に染まり始めた、景色の良い昼下がりの落ち着いた部屋。高級感があってシックで整った、僕らの拠点だ。
 しかし僕の来訪と唐突な質問には、ここの主人でなく別の人が答える。
「出かけた」
 非常にそっけない回答。
 部屋の中を見渡しながら「そうなんだ」と僕は零した。
 気のなさそうな小さな声は、僕の死角であるソファーの後ろ側から聞こえてくる。回り込んでみると、そこにいるのは唯花だった。何やらノートパソコンで作業をしている。
 ただ、見たところソファーの上には誰も腰掛けてはいない。唯花はどうやら、ソファーを背もたれにして、床に座り込んでいるようだった。それも、かなり隅の方で。
 最初の一言以降、彼女は口を開かなかった。膝の上に置かれたパソコンのキーボードから発せられるカタカタという音だけが、淡々と部屋に響いている。
 いったいどうしたんだろう。何だかすごく、卑屈なオーラを感じる……。僕はそう思ったが、しかしそこには絶大な触れにくさを感じたので、露骨に避けておくことにした。
 代わりに、ごく普通の、他愛のない会話を試みようとする。
「床に座ると、服が汚れない?」
「………………」
 それでも、唯花は口を閉ざしたままだった。当然、聞こえてはいるのだろうが、反応を見せる様子はない。伏し目がちに黙々と作業を続ける彼女の顔には、長い睫毛の淡い影がかかり、つまらなそうにも、物憂げにも見えた。
 僕らの間に会話はなくなって、そっと辺りに落ちた沈黙が、少しばかり気まずい空気を強調する。僕としては、もう一度別の話題で話を振ることも考えたけれども、しかし彼女がそれを望んでいないのかもしれないとも感じ、どうするべきか迷っていた。
 窓の下の街並みから、夕方始めの忙しない様々な音がかすかに聞こえる。それを耳にしながら、まるで家具と同化したかのように僕が目を瞑って立っていると、とうとう隣の唯花はキーを叩くのを止め、溜息をついて問うのだった。
「……ねぇ、詞。あれから少しバタバタしたけど……悠斗くんのこと、何か聞いた?」
 彼女の述べた“あれから”というのは、始業式の二日前に行われたお葬式から、という意味だ。それはもちろん、織戸悠那ちゃんのためのもの。急だったせいもあり、ほぼ身内だけの本当に小規模な式が催され、そこでは親族の涙を多く目にした。
 その式に僕らが出向くことを許されたのは、佳佑くんが声をかけてくれたからだった。辛く大変な状況の中、彼は哀しみに堪えつつ、僕らにも気を遣ってくれたというわけである。
「うん。学校には、どうにか行っているみたいだよ。まだやっぱり……ぼーっとしていることや、悲しそうなときは、あるみたいだけど……」
 最近の僕らが気にかけているのは、他でもない悠斗くんのことだった。悠那ちゃんの死後、彼の様子にはのっぴきならないものがあり、ほんのわずかな時間でも目を離すには不安で仕方がないくらいだったのだ。
 あの日、病室で悠那ちゃんを看取ったとき、泣き叫んだまま担当の看護師さんが駆けつけるまで涙を流し続け、然るべき処置をして遺体を運び出す際も、彼は必死で縋りついて離れなかった。現実をまったく受け入れられず、この世の絶望という絶望の総体を眼前に見る表情で、凄絶な理不尽に抗い続けた。そしてその後も状態は逼迫したまま、何をしでかすかわからない危うさを纏いながら、始終泣いて、嘆き尽くした。傍から見ていて、とても痛々しい光景だった。
 それからしばらく涙の絶えない時間を過ごすと、しかしあるとき、今度はいきなりパタンと大人しくなって、まるで魂を失ってしまったかのように覇気のない目をしながら、彼はふらふらと元の生活に戻ったのだった。
「悠斗くんの様子は、まだとても安定したようには見えない。ころころと態度が変わって……きっと、自分でもどうしたらいいかわからないんだ。受け入れるしかない現実を、どうしても受け入れられないんだ。でも……それでも、悠斗くんが悠那ちゃんの後を追うことは、きっとないよ」
「……どうしてそう思うの?」
「彼は、悠那ちゃんの言うことを違えるような行為は、しない。だからどんなことがあっても、この先、悠斗くんが死のうとすることはないだろうって……そう、桂祐くんは言っていた」
 僕はあの件の直後、悠斗くんの自殺まで視野に入れて、彼を見ていたものだった。唯花もおそらくは、そう考えていたことだろう。常に彼の周りには誰かがいるようにして、見ていたというよりは、ほとんど見張っていたようなものだった。
「……そんなのわからないわよ。悠那ちゃんは、悠斗くんのことを嫌いだって言って死んだ。悠斗くんが一番辛い思いをするように、そういう言葉を残して、死ぬことを選んだ。あれじゃあ、悠斗くんがいつ後を追っても不思議じゃないわ」
 唯花は悠斗くんのことが心配なのか、元気のない低い声でそう言った。安心はできないと、言いたいようだった。確かに彼の現状は、まだ安心にはほど遠い。唯花の考えは至極普通だ。
 でも、僕は桂祐くんの言葉を聞いて、確かに大丈夫だろうと思えるようになっていた。その意見に強く納得し、間違いなく、想定した最も悲惨な事態だけにはならないだろうと信じられた。
 悠斗くんは、死なない。少なくとも 恣意的には。彼は今でも悠那ちゃんが好きで、だからこそ彼女の言葉を無視することは、できないはずだ。
 そう、信じられる。
 ゆえに最近の僕は、悠斗くんのことに関しては経過観察という判断を下し、定期的に桂祐くんからの話を聞くことでまず大きな問題はなさそうだと、落ち着くことができていた。
 こうして、少しだけ余裕のできた脳の容量で僕が次に考えたことは、悠那ちゃんのこと。そこに思考が行きつくのは、必然と言っても過言ではなかった。彼女の死。それについての、真実を探る解釈だ。
「悠斗くんは、大丈夫だよ。まだそうは見えないかもしれないけど、でもきっと大丈夫だ。彼は、悠那ちゃんが最後に残した言葉を、ちゃんと聞いたんだから。それにね、唯花。悠那ちゃんは、自ら死ぬことを選んだわけではなかったよ。あれは彼女の、天命の終わりだったんだ」
「最後の言葉って……『大好きよ』っていうやつ? でもあれは、悠斗くんを苦しめるための、自分を忘れされないための……そのための言葉でしょう。偽りの言葉じゃないの」
 唯花は僕の意見に賛同を示さない。窓の外を見続ける僕には、彼女の表情は見えないけれども、言葉の端々に少し悲しそうな様子が表れていた。悠斗くんへの感情移入が少しでもあるならば、その想いは鋭く胸を刺すことだろう。
 ただ、それでも僕は、視線を動かさずに答えを返す。彼女の望まぬ答えを。
「僕は、そうは思わないよ。彼女が残したあの最後の言葉は、本物だった」
「なら詞は、嫌いだっていう告白の方が、嘘だっていうの? あんなにも躊躇なく、吹っ切れたみたいに並べた、嫌悪と軽蔑の羅列の言葉が?」
 とても信じられないという顔で、唯花は僕を見る。
 僕は続けた。
「いや……きっとそれも、本当だったと思うよ。悠那ちゃんの抱いていた、悠斗くんへの嫉妬と憎悪。とても、演技には見えなかった」
「……言ってることが矛盾してるわ。詞の考えてること、全然わかんない」
「そうだね、矛盾してる。でもさ、相対する気持ちの、そのどちらもが本当だっていう心理も、真実だと思うんだ。そういうことってあるものだと思わない? 悠那ちゃんは、悠斗くんに嫉妬していた。自分はずっとベッドの上で寝ているばかりなのに、一方で双子の悠斗くんは、元気に外で生活している。そしてそれを、自分の目の前でつまらないと呟く。聞いていて、複雑な気持ちだっただろう」
「そうでしょう? だから長い間騙し続けて、殺してやろうと思ってたって、あの子は言ったわよね」
「うん。でも……彼女は最後、そうはしなかったじゃないか」
 僕と唯花の解釈は違う。きっと、考え方が違うからだ。
「それは……その方が悠斗くんが苦しむって、わかったからじゃないの」
 同意が得られないことに対する不満と混乱を、唯花はあまり隠そうとしなかった。当然のように思っていた悠那ちゃんの気持ちの理解。それが僕と異なることを、彼女は許せないようだ。
「いや、きっと悠那ちゃんの胸の中には、悠斗くんを愛する気持ちが大きく存在していたと思うんだ。憎む反面、けれど確かに愛していた。その気持ちが最後の最後に、彼女の結論を変えたんだよ。悠斗くんは生きるべきだ、死ぬにはまだ早い。そういう風に」
「……それは詞の想像でしょう?」
「想像だよ。本当のことは、彼女本人に聞かなければわからない。でも、僕と彼女は近しい思考を持っていたんだ。悠斗くんの死を、その意味を大切に考えた結果が、あんな死に際だったんじゃないかなって、僕は思ってる」
 話していると、自然と背筋がピンと伸びた。静かでも芯のある、凛とした声が紡げていると、自分でもわかった。彼女の想いに、何故だろうか、自信があったから。
 ただ、どんなにもっともらしい主張をしたところで、やはりそう、本当のことはわからないままだ。なぜなら、悠那ちゃんはその胸の内を明かすことなく、逝ってしまったのだから。ここで語る僕の想いは、悠那ちゃんの気持ちは……どこまでいっても決して想像の域を出ない。
 それでも僕の揺るがぬ口調のためだろうか、唯花は理解を示そうとしてくれたようだった。そういう見方もあるのだろうかと、思ってくれたようだった。
「結局は全部想像……か。悠那ちゃんは、本気で悠斗くんを殺すつもりだった。でも、そうしなかった。もし……もしも詞の言う通りなのだとしたら、最後にあの子の意志を変えたのは、詞なのよね……」
 そしてその納得にだって、本当のところ意味はない。わかっているのだ。僕も、唯花も。ここで何を話したところで、彼女が戻ることはないし、哀しみが癒えることはない。
「二人の想いが、悠那ちゃんと詞の想いが……私にはやっぱり、全然わからないわ……」
 唯花は珍しく自分の意見を曲げて、僕に賛同を示した。僕は彼女の同意よりも、その寂しげで消え入りそうな声の方が、よほど印象に残って気にかかってしまったけれど。
 再び静寂が訪れる。二人の間に微妙な距離を思わせつつ、これ以上の言葉は喉から先へ上がってこない。
 唯花はついに、話すでもなく作業をするでもなく、ぼーっとしながら苦い表情で唇をきつく閉ざしていた。そんな彼女の様子は、ドキッとするほどあまりに切なげで、照らす夕陽に溶けてしまいそうな儚さが、強く僕の胸を打つのだった。
 そのとき、入り口の方で扉の軋む音がする。シンとした部屋の中の、時間から切り離されたかのような静止を壊して、滑舌の良いはっきりとした声が聞こえてきた。
「留守番悪かったな、唯花。ただい……ま……?」
 しかし室内に漂う何とも言えない空気に感づいたのか、語尾には疑問と戸惑いが混ざる。
「なんだ二人とも……喧嘩か?」
 振り返るとそこに立っていたのは、ここの主人である灯華さんだった。姿勢良く、張りのある黒いスーツに身を包み、知的そうな眼鏡をかけている。
「……違いますよ。唯花と喧嘩なんて……そんな不毛なことしません」
「っはは。そうかそうか、ならば良かった。仲良くしてくれよ、いいコンビなんだからな」
 この場合、幸いと言うべきなのだろうか。どうなのだろうか。会話の続く見込みが一切なかったさきほどまでの微妙な状況は打破されたが、しかしこれはこれで水を差された感じがしないでもない。
 唯花は、これ見よがしに大きな溜息を一つついて、いかにも機嫌の悪そうな低音を出しながら立ち上がった。
「灯華、遅いわ。どこまでお昼食べに行ってたのよ。もう夕方よ」
「いや、済まないな。色々あって」
 灯華さんに悪びれる様子はない。
「……ふぅん。まあいいわ。はいこれ。報告書と回収物」
「ああ、そうか。今日はこれを渡しにきたのか」
 そこで二人が行ったのは、どうやら業務上のやり取りのようだった。二人がこういった会話をしているのを、僕はまだ数えるほどしか見たことがない。それもあってだろうか。僕はこの珍しげな光景に、ふと口を挟んでみたくなった。
「何ですか? それ」
「これか? これは君と唯花がこの間に解決した仕事の、その事後報告だよ」
 特に隠す様子もなく即座に答えは返ってきたものだったが、その内容から、さらに僕の疑問は増える。
「……解決した仕事?」
「そうだよ。例の、病院の女の子だったか? なぁ、唯花?」
 灯華さんの問いかけに対して、唯花は振り返りもせず、そそくさと元のポジションであるソファー裏に戻って座り直した。途中、ついでのように「そうね」と反応する。
「え……あれって解決だったの? だって、遺失者は悠斗くんの方だって……」
 しかしながら、解決とはいったいどういうことだろう。確かに一段落はしたものの、僕らの本来の目的である仕事については、てっきりまだ続くものだと思っていた。もちろん、悠斗くんのなくしものを、その心を見つけ出すまで。
「悠斗くんの遺失は、解消されたわ。見てなかったの?」
 対して唯花は、僕の予想とはまるで反対の返答を、次々と返してきた。僕の知らない間に、事は解決の瞬間を経ていたと言う。さっぱり、わからない。
「……見て……?」
「あの日、悠那ちゃんが最後、悠斗くんにキスをしたでしょう? あのときよ。あの瞬間に、悠斗くんの遺失は解消されたの」
 僕は唯花の告白に、驚きのあまり口を開きっぱなしにして、硬直してしまっていた。
「悠斗くんの心は、悠那ちゃんの中にあったわ。頭の隅で想像はしていたけれど、さすがにかなり特異なケースだったから、本当にそうだったってわかって私も驚いたけどね」
 唯花は構わず、つらつらと、淡々と、そして抑揚もなく僕の知らなかった顛末を語った。その様子は、解決を喜んでいる風でもなく、はたまたやり切ったという風でもなく、まるで手帳のメモでも読んでいるかのように無感情だった。
 僕は、僕にとっては驚愕の事実である話の内容を咀嚼し、飲み込むために理解を焦らせる。
「悠那ちゃんの、中に……そっか……」
「結末を知った今となっては、それも当然のように思えるわよね。あの二人の様子を振り返るとさ……。まぁ、そういうことよ」
 指摘されたキスの瞬間を思い出しても、解消の兆しあったかどうかまでは、僕にはわからない。それでも、悠斗くんの遺失の解消を、僕は喜ばしいことだと感じた。彼のなくした心が見つかって、良かったと思った。それならば彼の精神は落ち着いて、より危険は少なくなっていくだろう。彼はやはり大丈夫だ。悠那ちゃんへの想いと現実を、ちゃんと受け入れていけるはずだ。
 それなのに、唯花はやはり、あまり嬉しそうな様子ではなかった。僕への説明のあとも、晴れない表情をしながら、小声で呟く。
「まぁ、あれじゃあ、解決なんて言えたものではないけれどね……」
 そんな風に。
 疑問だが、これは聞いてもいいことだろうか。僕は悩んだ。
 しかしさきほどとは違って、沈黙などは訪れなかった。灯華さんがいたからだ。
「何にせよ、二人ともご苦労だったよ。今回もいい仕事だった。ところで、川澄くんはもう学校のはずだろう? 今日はやけに早いじゃないか」
 僕と唯花の会話を見ていて、気を遣ってくれたのだろうか。会話の収束を避けてくれる。ただこれも、意図的なのかそうでないのか、わからないものだが。
「ええ、その、ちょうど試験が終わったもので。今日は、買い物のついでに寄ったんです」
「なるほど。植物肥料とは、また意外な買い物だな」
「そうですね。例の子からもらい受けた鉢植があって。綺麗に咲いているので、真面目に世話をしようかと思いまして」
 不思議なことに、灯華さんはごく自然な世間話がとても絵になる。。僕の提げる荷物になんて、灯華さんが興味を示すとは思えないのに。それでも、まったくもって悪い気はしなかった。
 しかし、だ。
 一向に普段の快活さを取り戻さない唯花がいる。しばらくは触れない方がいいかな、なんて考えが頭に浮かんだが、そこで唐突に、灯華さんの選んだ話題と僕がした返答へ、思いがけず唯花が興味を示した。
「ねぁ……詞、それって……悠那ちゃんの病室に置いてあった、あの赤い花の鉢のことよね? もしかして、今も咲いているの?」
 まさか唯花が、この後に及んで僕と灯華さんのやり取りに入ってくるとは思わなかったものだが。しかも病室にあったこの鉢に、彼女が目聡く気づいていたことにも、ちょっと驚きだ。
「そ、そうだよ。最近できた新しい蕾も開いてきたし、小さいけど、濃い赤が映えていて、結構華やかなんだ」
「……蕾? ……開いてきた? どういうこと……?」
「どういうことって……何を言っているの、唯花。蕾が開くのは、当然のことじゃないか」
 さて、こんな空気は、本日何度目だろうか。またしても、僕らの当然の感覚がすれ違った。蕾は、花が咲く前の段階で、成長すれば開き始める。何と当たり前のことではないか。
 そう思う僕が不思議そうに首をかしげても、唯花は口を閉ざしたままだった。人差し指の腹を唇にあてがい、何かを必死で考えているようにも見える。
 そうしてやがて、彼女は言った。
「……詞、明日時間あるかしら」
 随分と急な問いかけだ。
「え、明日? そうだね、学校が終わってからなら――」
「それでいいわ。空けておいて」
 僕は「う、うん」と戸惑いがちに返す。半分くらいは気圧され流されたように、反射的なものだったけれど。いったい何事だろうか。
 すると唯花はすぐに立ち上がった。
「灯華、今回の件に関しては、もうそれで事後処理は終わりよね」
 早口で述べながら、扉の方へ歩いていく。
「私、今日はもう帰るわ」
 唯花は灯華さんの返答を待たずに勢いよく出ていき、僕らの別れの挨拶が彼女に届くことはなかった。
 遅れて扉がパタンと閉まる。残った僕と灯華さんは、無言で唯花の去ったあとを見つめ続けた。
「……なんか、最近の唯花……おかしくないですか?」
 二人だけになって僕は、ここぞとばかりに引っかかっていた唯花の様子について尋ねる。
 すると、大仰なワーキングチェアの動く音と共に、灯華さんは答えた。
「おかしいとは?」
「元気ないっていうか、妙にイライラしてるっていうか……」
「ふむ……そうだな。いや、まぁ、無理もないだろうが」
「ど、どうしてですか?」
 僕の中での唯花の印象は、快活で華やかな、明るい笑顔。横暴で身勝手で偉そうでも、いつも楽しそうに笑っていた。そんな凛とした、気高いトラブルメーカーだった。だからあんな風に余裕がなく、気が立っていて、落ち込んでいる唯花は初めて見る。たまに真剣な表情で静かになっても、元気がないなんてことはなかったのに……。
 初めて彼女が悠那ちゃんと出会ったときも、妙な様子になってはいたが、今はそれとも違う。本人の前では言いにくいけれど、あれでは当然、心配だ。
「この間の件だよ。結局のところ、病院の女の子は亡くなったそうじゃないか。それを気にしているのさ」
「でもあれは……仕方のないことで……」
「そうらしいな。だが、唯花はあれで、割と完璧主義だからな。今までの仕事でも、失敗らしい失敗はなかったものさ。だから、その子のことを、助けられなかったと思っているのかもしれない。助けられたはずなのに、自分のせいだって……そう、責任を感じているのかもしれない」
 完璧主義。言われて確かに、わからなくはない。あの唯花の性格なら。
 でも、唯花だって、神様ではないのだ。あの場合、悠那ちゃんの死は、誰の非でもなかった。どうにかすることなんて、できなかった。なぜならあれは、彼女が最後まで生きた、その結果だったのだから。
「ほどがありますよ……。そんな……いくら唯花でも、不可能なことは……あります」
「もちろんそうだ。実際のところ本件でも、唯花の働きとしてはあれで申し分なかったと、私は思う。しっかりと遺失は解消されたようだし、その証拠として報酬もここにある」
 灯華さんは、唯花の報告書を読んでいる。だから事後把握とはいえ、僕らと同様に話の顛末を知っているのだ。その上でこの人が唯花の働きを十分だと評価するのなら、たぶんその通りなのだろう。きっと唯花に落ち度はなかった。それなのに、あんなにも落ち込むなんて……。
「おそらく唯花はな、死というものが、とても苦手なんだと思うんだ。あの子はあからさまに、死を忌避している。自分の死だけでなく、周りの者たちの死でさえも、受け入れたくないと思っているんだ。死にゆく人は誰でも、自分の手で助けてやりたいと考えているところがある。元がお節介なのも高じてな」
 なんだかそれは、とても唯花らしいではないか。灯華さんが語る彼女の印象は、僕の抱くそれともよく重なった。今までの付き合いで、灯華さんも同じように感じていたみたいだ。
「あの子は昔、千三百年前だったか……両親の死を、そして兄弟や友人の死を、目の前で見たそうだ。他にもいくつもの死を見たそうだ。今よりも比にならないくらいに生きにくい時代だし、そこでの死はとてもありふれたものだっただろう。それでも当時は、何もできない自分を、そして何よりも死そのものを憎んだという。どこにでもある話だけれども、自分が死をなくしたのは、それがきっかけなのだろうと言っていたよ。もちろん真実は違うかもしれないが、唯花はそれくらい、死というものに嫌悪感を持っていたし、今もその傾向はあるのだろうね」
 灯華さんが語ったのは、唯花がまだ遺失者になる前の話のようだ。僕がまだ聞いたことのない、唯花の過去。遺失のきっかけ。
「そう、なんですか……初耳です」
「そうか、悪いな。本来なら、君もそのうち唯花から直接聞かせてもらえただろうが……君にならしてもいいかと、思ってしまった。それに私は、君には唯花を慰めてやってほしいと思っているんだよ。見たところ、唯花よりは元気のようだしな」
 暗い顔の僕に対し、カラリと笑って灯華さんは言った。
「僕が慰めても、全然駄目ですよ……きっと」
「そうか? 効果覿面だと思うのだが」
 本当にそう考えているのだろうか、灯華さんは。仮に僕が慰めたとして、その結果、唯花が強がることはあっても、素直に元気付けられるとは思えないのに。
「冗談は止めて下さい。またそうやって、僕のことからかって……」
 百歩譲って、叱咤や激励はできるとしても、慰めるなんて無理だろう。唯花の過去を知ってしまったなら、なおさら。
 だって僕は、唯花と同じようには、考えられない。
「いやいや、心外だな。傷付くじゃないか」
 灯華さんが、傷心の様子などまったく見せずに唇を尖らせた。
 それを見て僕は、唯花のように、大きな溜息でもついてやろうかと思った。
 けれども、やめておく。代わりに「それも冗談ですか」と毒づいて踵を返した。コーヒーメーカーの置いてある棚に向かい、カップ二つにアイスコーヒーを満たす。
「私は、そんなに君の信用を欠くほど、嘘をついた覚えはないんだがな……」
 砂糖もミルクも乗せずに僕がそれを届けると、そこには不満そうな、腑に落ちないといった様子の顔があった。
「ここだけの話、君と出会った頃の唯花は、それはもう上機嫌だったんだぞ? 君にはわからないかもしれないが、あの子は随分と浮かれていたんだ」
 灯華さんは、僕が自分の話に耳を貸さないのがお気に召さないらしい。
 確かに、出会った頃の唯花は、いつもパッと花が咲くような笑顔で、口うるさいくらい元気だった。その明るさが、僕にとって眩しかったのも事実だ。でも、浮かれているというほどだったのだろうか。そこまでには見えなかったけれど。
「最初は、助手ができたからかと思っていたんだが……どちらかと言えばむしろ、その助手が君だったことが、理由として大きかったみたいでな」
 言いながら灯華さんは、横に立つ僕を見る。コーヒーを少し口に含み、風味を確かめるようにして飲み込んでから、さらに続けた。
「君は、唯花に気に入られているんだよ」
 思いの外、真面目なトーンの言葉だった。まあ、からかっているかどうかはさておき、嘘でないことは良くわかる。けれども如何せん、嘘でないことがわかってしまうと、僕の心境としても変化が避けられないものだった。
「信じられません……」
 とりあえずはそうやって返答してみたが、しかし赤面は抑えられない。灯華さんに背を向けても、声にまで紅潮の気配が表れているのではないかと心配だった。
「信じてくれよ。いや、そうやって照れているということは、七割くらいは信じたか?」
 そしてやはりというか、ばれた。
 ああ、もう。唯花に気に入られてるなんて言われたら、どうしてもこれくらいの反応は出てしまうのに。
「僕をからかって、楽しいですか……」
「多少はな。だが、本当のことだよ。だから、君があの子を慰めてやれるなら、それが一番だと私は思う」
 振り返ると、机の上のカップはとっくに空になっていて、灯華さんは布を手に、眼鏡のレンズを拭いていた。
 僕を見上げたのちカップに視線を移す行為は、二杯目要求の意思表示だとわかる。
 それを受けて、僕は立ったまま自分の分のコーヒーを飲みほしたが、上がった体温と動揺のせいで、肝心の味はよくわからなかった。
 だが、動揺していたのは単に恥ずかしさのためだけではないと、このときの僕にはわかっていた。もちろん照れてしまっていたのは本当だし、思考のほとんどはそこに割かれていた。けれども心の隅の方では、ほんの少しの小さな不安が、どうしても消えないでいたのだった。
 僕が慰めても、やはり唯花は元気にはならないだろう。それ以前に、僕が上手な慰めの言葉をかけることから難がある。
 唯花の昔話からもわかるように、彼女は悠那ちゃんの死そのものを気にしているのだ。そしてその死については、僕と唯花で見解の相違がある。
 僕が慰めるにあたってその話題を避けることはたぶん無理だし、おそらくは今日最初に唯花と会ったときのように、じめっとした空気を生んでしまうだろう。容易に想像できることだった。
 複雑だ。そう思う。
 返す言葉がなくなって、僕は机上にある空のカップを拾い上げてからコーヒーの二杯目を注ぎにいく。
 再び戻ってから、さきほどまでの話題をまるっきり無視して会話を再開した。
「そういえば灯華さん、さっき報酬って言っていましたよね? 誰から、何をもらったんですか?」
「何だ何だ、あからさまに話をすり替えて」
「そりゃ、すり替えますよ……あんな話」
 あからさまでも何でもいい。率直に「もう別の話をしましょう」と言っても良かったくらいなのだから。
 灯華さんは「まぁいいか」と言って机の引き出しを開いた。
「これだよ。君には、まだ見せていなかったかな」
 現れたのは、手のひらサイズの黒い立方体。唯花が報告書と一緒に渡していたものだ。灯華さんはそれを、パカッと開いて僕に見せる。
「これって……悠那ちゃんと悠斗くんの、指輪じゃないですか」
 目の前には、見覚えのあるシンプルなデザインのリングが、二つあった。まるで新品のように輝いていて、地の銀に窓外からの黄金色の光が差し込み、どちらとも取れない中間色を跳ね返す。記憶に残るくすんだレトロチックな雰囲気は皆無で、収められた箱のせいもあり、とても安物には見えなかった。
 え……これが報酬って、はて、どういうことだろう?
「いつだったか、君とこうして二人で話していたときに、私たちの仕事に関して省いた説明があっただろう。それが、これだよ」
 その言葉を聞いて、ふと思い出す。僕がまだここに顔を出し始めて間もない頃、契約がどうとか、そういう話をされたことがあった。確かにあのときの灯華さんは、この仕事の素姓について一部言及を避けていたものだ。説明が難しいと言って誤魔化された。どうやらあの件に該当するのが、これらしい。
 とは言っても、僕にはただのペアリング以外の何物にも見えはしないのだが……。
「そんな不思議そうな顔をされると、教え甲斐があるものだな。これは、今はもうただの指輪ではないんだ。言うなれば、少々異質なマジックアイテム、といったところだ」
 ……へ……?
「マジック、アイテム……? 何ですか、それ」
「言葉通りの意味だよ。この世ならざる力を持つ、魔法の品さ。唯花によれば、欠損した器が再び満たされたときに、付随的に発現するものらしい」
 何を言っているのだろう、この人は。さすがに今のは聞き流せない。唯花と揃って変な人だということは、前々からわかってはいたけれど。
「また君は、信じていないな? 本当だぞ? 見境なく巷に出回れば、混乱は必至の代物だ」
 僕は疑問いっぱいの表情を浮かべ、怪訝そうに灯華さんを見た。それしかできない。本当本当って、何度も言えば僕が信じると思っているのだろうか。
「信頼性のレベルが違います。無理ですよ、そんなの信じろだなんて。現実的じゃないです」
 しかし灯華さんは、凝りもせず、そして嫌な顔もせずに話を続けた。フッと軽く笑ったあと、意外にも業務的で凛々しい顔つきになったのが、気になって仕方がなかった。
「さて、いつだったか……唯花の言葉を借りれば、君の日常はとっくに壊れてしまったはずだが?」
「うっ……」
「真の現実と、一人間が認識している現実が異なることは、よくあることだよ。君が知らないだけでな。これもそのうちの一つだよ。君や唯花のような遺失者が現れたとき、こうしたものが生まれる可能性があるんだ。だから私たちはそれを見つけ次第、解決し、回収するのさ。さながら失くしものの見つけ主が、拾得物から礼として一部をもらい受けるかのように。な? 面白いだろう?」
「え、はぁ……」
「どうしても信じられないのなら、自分で試すか?」
 僕の態度に変化がないことを察したのか、灯華さんは最後にそう付け加えると、こちらに向かって指輪を放った。
 僕は瞬間、慌ててしまう。大切そうな品を、あまりにもぞんざいに投げつけられたから。
「……この指輪には、どんな力があるんですか」
 僕は指輪を注意深く両手でキャッチし、手元に見る。そして、その指輪の代わりに、一つ質問を投げ返した。
「詳しくはわからん」
 けれども、得られた答えはあまりにあっさりとした、こんなものだった。「何ですか、それ……」と僕は零す。
 うーん……いまいち真剣に信じさせる気があるのかも怪しい。だけれども、相も変わらず、灯華さんの顔に冗談の色はなかった。
 ああ、気味が悪い。本当に。
「知らんものは知らんのだ。だが、これの持ち主たちは、恋する相手に心を差し出し、一方ではそれを奪うほどの強い想いを持っていたようだから……そうだな、意中の人を虜にできる程度の力は、あるかもしれないな」
 ………………。
 返す言葉はなかった。当然、信じてなんていない。気味が悪いだけで、信じてなんていない。それでも、もし、もしもそれが本当だとしたら、現実にそんなものが存在するのだとしたら……いや、うん、恐ろしいものだ。
 僕の日常は壊れた。さきほど灯華さんに、そしていつの日だったか、唯花にも言われた言葉が、脳で響く。それを考えてしまったら、この指輪を手に持っているだけで、じわじわと少しずつ不安になってくる。
 僕が固まっていると、こちらを見て灯華さんはまた、カラリと笑った。
「なに、ただの想像だぞ。想像」
 だだの想像。それでも、あくまで冗談だとは、最後まで言わなかった。
 あれもこれも、不確定な想像ばかり。でもその中の一つは、ときには真実と同義かもしれない。いやに気になる。信じてしまいそうになる。丸め込まれた気分がして、とても癪だ。
「それで、どうする? 使うか? 君になら譲っても構わんが」
 瞬間、不覚にも心臓がドキッと跳ねた。
「……え、遠慮しておきます」
 そんな僕を見て、灯華さんはニヤニヤしながらパソコンの電源を入れる。意地の悪い人だ。きっとこの人の中では、僕は今の話を信じたという結論になったことだろう。表情を見ればよくわかる。
 そしてそれっきり、灯華さんは仕事をし始めたのか、口を開かなくなった。
 僕は、またいつの間にか空になっているカップに三杯目のアイスコーヒーを注ぎつつ、ついでにそっと指輪を返却する。
 僕の日常と非日常。二つの絶妙に混ざり合ったこの部屋の中に、沈黙はゆっくりと溶け込んでいく。差し込むオレンジ色の光はだんだんと弱くなっていて、太陽の消える地平線が視界に映った。夜の入り口が、そこにあった。
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