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第三章
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「検索ワード『Vainer』に、対する文献ヒット数は、ゼロ件、です。申し訳ございません」
目の前のカウンターで深々と頭を下げる受付の女性。理知的な顔立ちに眼鏡をかけ、長髪をバレッタで留めて白いエプロンベースの制服に身を包む女性が、抑揚の乏しい声でそう言った。
身体の前で重ねられた手の甲には、薄い刻印で《Weisheit》とある。つまりはディアだ。このタイプは汎用ではなく、司書としての業務に特化したOSを搭載している。
「別の、検索ワードで、再検索を、致し、ますか?」
その日、俺は早朝から街の図書館を訪れていた。目的は当然、例のOS、ヴェイナーについて調べるためだ。本来ならばわざわざ実際に足を運ばなくても、蔵書の電子版を自宅からネットで検索すれば事足りるはずだったのだけれど、しかしいざやってみたら、それはディア専用のシステムだった。ああ……こんなところでもディア非所持民の弊害が。
ちなみに今日は休日だ。祝日《ディア感謝祭》。なんでも、大昔に最初のディアが誕生した日なのだとか。本当かどうかは眉唾である。
ともあれ、予想通りの芳しくない検索結果に、俺は表情を崩さない。その後もいくつかの検索手法を駆使して、なんとかそれらしい資料を絞り込むことに努める。目の前の司書はそのたびに目を閉じて検索処理を実行し、有線接続したシータに結果を送信してくれた。さすがは司書業務のために作られたディアだ。柔軟な検索ができ、しかもスムーズ。その分、ほとんど無表情で言動が固いのは、そこにスペックを割く余裕と必要がないから――もといご愛敬。
そうして、全六十二階層もあるこの広大な書架の中を、司書の淡泊な案内に従って捜索すること、なんと七時間。俺は今日、朝一番でこの図書館にきたはずだが、気づけば空には赤々とした夕陽が輝いていた。考えてみれば昼飯もろくに食っていない。
だというのに、成果は依然として乏しいまま。ヴェイナーについて調べるどころか、ディアOSそのものについても、わからない部分は多々残った。まあ、この世の全ての知識が公共の図書館にあるわけではないし、ガラテイアの企業秘密もあることだろう。
そもそも、ヴェイナーはガラテイアの作った公式のOSではない。たとえば図書館にある歴代ディア辞典にも、ガラテイアの公式のウェブページにも、それに関するまっとうな記述は存在しないのだ。だからあれは、既存のOSを改造して作られた違法OS。つまりは非公式のOSなのだろう。どうにかして得られた情報からは、そのくらいの憶測が関の山だった。
半ば閉館時間に追われるようにして図書館を出た俺は、荷物片手に茜差す帰路を歩く。佐倉先生やタカヤ先生のことを頭に浮かべて調べていたからか、道行く人々にその面影がちらちら重なることもあった。自宅まで地下鉄に乗って帰るため、都心駅へと向かう。
けれども、駅はなぜか妙に混み合っていた。今日が祝日だという理由もあるにはあるが、しかしさすがに、異常なほどだ。遠巻きに見やれば、連綿と続く人の波が――より正確に言えば人とディアの波が、駅から百貨店へ繋がる道をひたすらに埋め尽くしている。はてさて、まったく、いったい何が。
「あ、今日って……最新のリングデバイスの予約開始日か」
俺は思い当たる節を一つ思い出す。そういえば、少し前に珀に見せてもらった例のアレ。確か、もうじき発売だと言っていた。とすると、この混雑はそれが原因か。
正直、電車はとても乗れたものではない状況だった。げんなりと肩を落とす。恨めしげに周囲を見渡し、何気なく百貨店への入り口が目に入った、そのとき――
俺はふと、ある人の姿を思い浮かべ、頭上の雲の、さらに上の空を見上げた。
「違法OSについて調べてる?」
天空の世界。そこからまばらに見え隠れするオレンジ色の地上を眺めながら彼女が言う。
「まだやっていたのね、探偵ごっこ」
「ごっこの割には、結構深刻な気がしてるんですけどね……」
百貨店がかつてないほどに賑わっているから、その真上に設けられた展望台も、ともすれば……。もしそうだとしたら、そんな混雑の中で色々と奇抜なアイリスさんはどう映るのだろう。俺はそんな面白半分な疑問を抱きながら、人の波に逆らってここまで来た。
しかしながら、実際は何のことはない。案の定、この展望台はガラガラだった。やはり今時、エレベータで上るだけで十五分近くも費やすこんな場所は流行らないのだ。いつも通り、広大なフロアに少ない人影。黙々とカウンターで待機しているディアの店員。控えめな音量のはずなのに、よく耳に届く背景のピアノクラシック。
「ヴェイナー。空虚なる者、ってところかしら」
アイリスさんが頬杖をつきながらぽつりと零した。
「ええ。もしかしてアイリスさんなら知ってたりしないかな、と思ったり思わなかったり」
「ふふ、本当かしら? 混雑で帰れないから、時間潰しに来たんじゃないの?」
「はは、手厳しいですね。それも、なくはないです。すみません」
「いいえ、いいのよ。私としては、それでもとても嬉しいのだもの」
こちらを向いて淡く微笑む今日の彼女は、もはや恒例のように、真っ黒で大仰なドレスに包まれていた。これまで会ってきて確信したが、彼女は絶対、この奇抜な黒ドレスの類を何着も所持している。あんまり何度も目にしていると、まるでここではそれが当たり前の格好なのではないかとすら思えてくるほどだ。そんなことがあるはずはないのに。
やがて彼女は、少し考えるように視線を落とした。
「でも、そうね。ちょっと、わからないわねえ」
「……まあ、そうですよね」
駄目元とはいえ、外れた期待に、俺の方は肩を落とす。そりゃあそうか。知の宝庫とも言うべき図書館に一日籠もってヒントの欠片すら見つからないことが、そうそうわかるはずもない。
けれども、そんな俺の諦念を覆すようなことを、そこで彼女はさらりと言った。
「あ、そうじゃなくて、ちょっと思い出してみないとわからないって意味よ。待って、今思い出してみるから」
思い出してみないとわからない?
その言葉に不思議を感じる俺の前で、彼女はゆっくりと目を瞑った。背筋を伸ばし、軽く肩を張って、手を腹部に――何だろう、いかにも「今思い出し中です」とでも言いたげな姿勢。あるいはそれは、まるで瞑想のようにも見える姿だ。思い出すって、口では簡単に言うけれど……いやいや、とても無理だろう。仮に本当に知っているのだとして、それでもすぐには出てきまい。だって思い出す必要があるということは、忘れているということだから。そして、人間の脳は都合よく端から端まで検索するみたいに、何かを取り出せるわけじゃあ――
「ああ、知っているわ」
嘘?!
「えっ、あ、あの……本当、ですか?」
「もちろんよ。私、生まれてこの方、嘘をついたことなんて一度もないもの」
「……それって典型的な嘘つきの台詞ですよね?」
「ふふっ。どう、かしらね?」
頬を引きつらせる俺をよそに、彼女は首を傾げ、鈴を転がすようにころころと笑う。
「大丈夫よ。ちゃんと知ってた。ヴェイナー、非正規ディアOS。早い話が改造OSね。確認されたのは、一番古くて今から三百年くらい前かしら」
「三百年前……随分と前ですね」
「そうね。とは言っても、この頃にはもうディア技術は、ほぼ出来上がっていたのだけれどね」
ディアの歴史は、それはもう、実に長い。現在に至るまで絶えず技術は進展しているけれども、OSそのものの基本、構成のベースが確立されたのは、比較的初期の頃だと聞く。
「じゃあこのOSは三百年前に生み出されて、何か犯罪に利用されたんでしょうか?」
「うーん……いいえ、そういう事実はないはずよ。だって、もしそんなことが起こっていたら、このヴェイナーというOSの記録は、そこら中に残っているはずだものね。わざわざ私に聞くまでもなく、蓮君だって、さぞ簡単に知ることができるでしょう」
それは……確かに、その通りだ。
「むしろ事件として取り上げられたのは、元のOSの方じゃないかしら」
「元?」
予期していなかった彼女の発言に、俺はオウム返しで首を傾げた。
「そう。ヴェイナーは改造OS。したがって当然、改造元が存在する。元となったOSは《Avenir》。当時、飛躍的なスペックの向上を謳って発表された正規のOSよ」
アヴェニール。その名前には覚えがあった。何せ数時間前、図書館で見たものだったからだ。
「……そのOS、歴代ディア辞典に載っていた気がします。でも確か、製造、販売ともにものすごく短い期間だったような」
「ええ。アヴェニールは、確かに当時の既存OSと比べて、目に見えてカタログスペックが良かったし、実績も上げた。でも、のちに致命的な欠陥が発見されたの。このOSは、与えられた指示を、全て完璧に実行しようとするのよ」
アイリスさんは『全て完璧に』の部分を強めて言った。おそらくは、わざとだろう。俺はその意図を何となく察し、戸惑いを露わにする。
彼女は頷きつつ、先を語った。
「つまりは指示された処理を、文字通り捨て身で実行しようとするということ。OS以外の別のユニットや身体パーツへの負担は完全に度外視。たとえばある処理を実行することで、そのディア本体が破損したり、周囲に著しい悪影響が発生することになるとしても、まるっきりそれを厭わない。言うなればそれは、まさに諸刃の剣。制御と限界を超えた力――バグそのもの」
なんてことだ。通常、ディアは与られた指示に対して、個体への物理的負荷や周囲への社会的道徳を考慮し、その上で動作を選択する。そういうプロトコルを持っているべき存在なのだ。それは、人の隣に立つべきものとして、最低限の資格とさえ言える。けれどもアヴェニールというOSを搭載したディアは、その限りではなかったということか。
「その性質上、アヴェニールは短期間で製造と販売が停止されたにも関わらず、根強く世に――特に、非合法な活動を主とする人たちの間に出回って、改造OSの元として利用されるようになった。たぶん、アヴェニールを元とした改造OSって、調べればたくさん出てくると思うわ。犯罪利用されたものも多いはずだから」
いくら三百年も前とはいえ、そんなOSが正規品としてガラテイアから流通したという事実に戦慄を覚える。リコール程度で済めば御の字の大失態ではないか。
「ただ、ま、今回のヴェイナーに関しては、話が別ね。おそらくこれは、犯罪利用されていない、世間的に表に出ていないOSで、だから公的な記録がなく、作成者も不明とされている」
「犯罪利用が目的じゃない改造OS……だとしたら、じゃあ、いったい何に……」
「あら、蓮君、前に言っていたじゃない。ココロプログラムって。あーゆーのに用いられるのが、割と妥当な筋書きだと思うけれど?」
驚愕で混乱していたのか、そのときの俺の頭では、思考を巡らせどもそんな筋書きは浮かばなかった。しかし、言われてみればその通りだ。
ディア工学は、昨今でこそその利便性、機能面について大きく技術発展が求められ、成し遂げられてきた傾向にあるが、遙か昔から一貫して人の心――ココロを作り出す研究も行われている。それは、時には大々的に、時には細々と、しかし片時も途切れることなく続けられてきた試みだ。そして、こと現在においても、そういう分野を専攻している機関や施設は世界各地に点在している。より革新し、進化を遂げたディアが生まれるたび、人々は繰り返し口にする。「ディアはまるで人間のようだ」と。
そしてまた、往々にして、社会の枠から逸脱してさえも、ココロを求める人たちもいる。そんな連中の生み出したプログラムが、おそらくは現在において噂となっているココロプログラムと呼ばれるものの一つであることは、可能性としてゼロではない。もちろん、大概は名ばかりの、ガラクタのような稚拙なプログラムであったりするのがオチなのだが、ごく稀に――砂漠に落とした一粒の宝石のように本当にごく稀に、極めて精巧な人格を宿したプログラムが見つかることもあるらしい。それが、長くココロプログラムなどという都市伝説が消えない理由。
「アヴェニールに少し手を加えて現在の規格に合った改造OSとし、本来は実行できないような負荷の多いプログラム――ココロプログラムを実行させる……?」
「そういうこと。人の心は、とても複雑よ。人間の脳は毎秒一京回もの処理を、わずか二十ワット程度の電力で行う。それを機械で再現しようと思えば、一千万倍以上の電力と、相応に大掛かりなプログラムが必要になる。感情という無限にも近いパラメータ。そこからくる一挙手一投足の細かな動き。それぞれの個性。論理的な表現が難しい直感。そして何より、日々の生活で積み重なっていく、膨大な記憶。それら全てを複合的に処理し、人間とともに生きるということ……機械にとっては、並大抵のことじゃない」
子供の頃から普通に目にしてきた光景。人間とディアが当たり前のように生活をともにしている、その光景。現代では、ディアは人間の社会に十分に融和し、その営みを助けている。振る舞いは人間と比べて遜色なく、彼らがあえてディアという立場に徹しようとしなければ、さらに人間に近づくとも言われている。でも……それでもまだ、完璧ではない。
「……たとえば、アヴェニールの改造OSを使えば、曲がりなりにもそのプログラムを動かせるわけですよね。実際にやったら……どうなるんでしょう」
その疑問は、単純に俺の興味からくるものだった。ディアは日に日に、人間に近づく。昨日よりも今日、今日よりも明日、それがついに留まることなく、際の際まで極まったら、いよいよディアは、どうなるのだろう? ディアは人間そのものに、なるのだろうか?
しかし、俺のそんな妄想に対し、アイリスさんの答えはひどく現実的なものだった。
「さあ、予想もつかないことだけれど……少なくとも、まともに機能するのは、ほんの僅かな時間でしょうね。無理をしている以上、やがては一つの綻びが生まれ、遠くないうちに二つ、三つ。そして最後には……」
語る彼女に表情はなかった。苦渋も同情も哀切もなく、まるで水が高所から低所へ流れる事実を諭すかのように、平坦な口調でただ述べる。当たり前のことを、当たり前に。
そうなのだ。何もディアに限らず人間だって、無理をすれば異常を来す。それが自然の摂理である。オーバードライブのディアが行き着く先なんてのは、ただ一つの例外なくスクラップ、有り体に言って、つまりは死――
俺がその結論に、たどり着いたか、着かないか。アイリスさんが珍しく先に席を立ったのは、ちょうどそんな頃合いだった。
「さて、気づけばもう、陽が沈んでしまったわね」
彼女につられ、俺もガラス越しの空を眺める。雲の上のこの場所は、地上よりも少しだけ日の入りが遅い。それでももう、すっかり太陽は沈んで、藍色一色。
アイリスさんは俺を見下ろし、にこやかに言った。
「じゃあ、これにて今日のお茶会はお終い。どう? 望みの情報は得られたかしら?」
「……ええ、まあ。とても、参考になりました」
「そう。それは、とてもよかったわ」
そして彼女は歩き出す。カツ、カツと緩慢な足音を響かせ、フロア中央のエレベータへ。
その背をただただ黙って見つめ、しかし俺は、これだけは聞いておこうと思ったことを咄嗟に口から弾き出した。
「あの、最後にもう一つ、質問していいですか?」
「なあに?」
「アイリスさんは、どうして、こんなことを知っているんですか?」
すると彼女は、ゆっくりと振り返って「ふふっ」と笑った。真横に伸び、端の引き上がった唇の前に、一本の人差し指が静かに添えられる。
「ねえ、蓮君。秘密は女性を美しくするものよ。これで私はあなたにとって、また一つ美しくなったわね」
未だ照明のつかないこの空間で、彼女の表情はほとんどが陰に隠れ、よりいっそう、ミステリアスな空気だけが辺りを伝った。
何も別に、現時点から一つや二つ彼女の秘密が増えたところで、そしてその結果、彼女の美しさが一回りや二回り増したところで、俺にとっての彼女の美しさは既に十二分に振り切れているのだから、今回ばかりは教えてくれたってよかろうに。ふとそんな風に思ったけれど、しかし残念ながら、実際にそう口にするほど俺は気障でも無垢でもなく、結局は去りゆく彼女が下界に消えるまで、何も言わずに見つめていた。思えば俺は、彼女のことを、何も知らない。なのに……いや、だからこそだろうか、俺は彼女に魅かれてやまないのだと、はっきり感じた。
闇と言うほどでもない曖昧な暗がりの中、雲の向こうに凛と佇む世界樹が、その花弁が、淡い光を放っていて、ただひたすらに俺の胸を焦がす。
目の前のカウンターで深々と頭を下げる受付の女性。理知的な顔立ちに眼鏡をかけ、長髪をバレッタで留めて白いエプロンベースの制服に身を包む女性が、抑揚の乏しい声でそう言った。
身体の前で重ねられた手の甲には、薄い刻印で《Weisheit》とある。つまりはディアだ。このタイプは汎用ではなく、司書としての業務に特化したOSを搭載している。
「別の、検索ワードで、再検索を、致し、ますか?」
その日、俺は早朝から街の図書館を訪れていた。目的は当然、例のOS、ヴェイナーについて調べるためだ。本来ならばわざわざ実際に足を運ばなくても、蔵書の電子版を自宅からネットで検索すれば事足りるはずだったのだけれど、しかしいざやってみたら、それはディア専用のシステムだった。ああ……こんなところでもディア非所持民の弊害が。
ちなみに今日は休日だ。祝日《ディア感謝祭》。なんでも、大昔に最初のディアが誕生した日なのだとか。本当かどうかは眉唾である。
ともあれ、予想通りの芳しくない検索結果に、俺は表情を崩さない。その後もいくつかの検索手法を駆使して、なんとかそれらしい資料を絞り込むことに努める。目の前の司書はそのたびに目を閉じて検索処理を実行し、有線接続したシータに結果を送信してくれた。さすがは司書業務のために作られたディアだ。柔軟な検索ができ、しかもスムーズ。その分、ほとんど無表情で言動が固いのは、そこにスペックを割く余裕と必要がないから――もといご愛敬。
そうして、全六十二階層もあるこの広大な書架の中を、司書の淡泊な案内に従って捜索すること、なんと七時間。俺は今日、朝一番でこの図書館にきたはずだが、気づけば空には赤々とした夕陽が輝いていた。考えてみれば昼飯もろくに食っていない。
だというのに、成果は依然として乏しいまま。ヴェイナーについて調べるどころか、ディアOSそのものについても、わからない部分は多々残った。まあ、この世の全ての知識が公共の図書館にあるわけではないし、ガラテイアの企業秘密もあることだろう。
そもそも、ヴェイナーはガラテイアの作った公式のOSではない。たとえば図書館にある歴代ディア辞典にも、ガラテイアの公式のウェブページにも、それに関するまっとうな記述は存在しないのだ。だからあれは、既存のOSを改造して作られた違法OS。つまりは非公式のOSなのだろう。どうにかして得られた情報からは、そのくらいの憶測が関の山だった。
半ば閉館時間に追われるようにして図書館を出た俺は、荷物片手に茜差す帰路を歩く。佐倉先生やタカヤ先生のことを頭に浮かべて調べていたからか、道行く人々にその面影がちらちら重なることもあった。自宅まで地下鉄に乗って帰るため、都心駅へと向かう。
けれども、駅はなぜか妙に混み合っていた。今日が祝日だという理由もあるにはあるが、しかしさすがに、異常なほどだ。遠巻きに見やれば、連綿と続く人の波が――より正確に言えば人とディアの波が、駅から百貨店へ繋がる道をひたすらに埋め尽くしている。はてさて、まったく、いったい何が。
「あ、今日って……最新のリングデバイスの予約開始日か」
俺は思い当たる節を一つ思い出す。そういえば、少し前に珀に見せてもらった例のアレ。確か、もうじき発売だと言っていた。とすると、この混雑はそれが原因か。
正直、電車はとても乗れたものではない状況だった。げんなりと肩を落とす。恨めしげに周囲を見渡し、何気なく百貨店への入り口が目に入った、そのとき――
俺はふと、ある人の姿を思い浮かべ、頭上の雲の、さらに上の空を見上げた。
「違法OSについて調べてる?」
天空の世界。そこからまばらに見え隠れするオレンジ色の地上を眺めながら彼女が言う。
「まだやっていたのね、探偵ごっこ」
「ごっこの割には、結構深刻な気がしてるんですけどね……」
百貨店がかつてないほどに賑わっているから、その真上に設けられた展望台も、ともすれば……。もしそうだとしたら、そんな混雑の中で色々と奇抜なアイリスさんはどう映るのだろう。俺はそんな面白半分な疑問を抱きながら、人の波に逆らってここまで来た。
しかしながら、実際は何のことはない。案の定、この展望台はガラガラだった。やはり今時、エレベータで上るだけで十五分近くも費やすこんな場所は流行らないのだ。いつも通り、広大なフロアに少ない人影。黙々とカウンターで待機しているディアの店員。控えめな音量のはずなのに、よく耳に届く背景のピアノクラシック。
「ヴェイナー。空虚なる者、ってところかしら」
アイリスさんが頬杖をつきながらぽつりと零した。
「ええ。もしかしてアイリスさんなら知ってたりしないかな、と思ったり思わなかったり」
「ふふ、本当かしら? 混雑で帰れないから、時間潰しに来たんじゃないの?」
「はは、手厳しいですね。それも、なくはないです。すみません」
「いいえ、いいのよ。私としては、それでもとても嬉しいのだもの」
こちらを向いて淡く微笑む今日の彼女は、もはや恒例のように、真っ黒で大仰なドレスに包まれていた。これまで会ってきて確信したが、彼女は絶対、この奇抜な黒ドレスの類を何着も所持している。あんまり何度も目にしていると、まるでここではそれが当たり前の格好なのではないかとすら思えてくるほどだ。そんなことがあるはずはないのに。
やがて彼女は、少し考えるように視線を落とした。
「でも、そうね。ちょっと、わからないわねえ」
「……まあ、そうですよね」
駄目元とはいえ、外れた期待に、俺の方は肩を落とす。そりゃあそうか。知の宝庫とも言うべき図書館に一日籠もってヒントの欠片すら見つからないことが、そうそうわかるはずもない。
けれども、そんな俺の諦念を覆すようなことを、そこで彼女はさらりと言った。
「あ、そうじゃなくて、ちょっと思い出してみないとわからないって意味よ。待って、今思い出してみるから」
思い出してみないとわからない?
その言葉に不思議を感じる俺の前で、彼女はゆっくりと目を瞑った。背筋を伸ばし、軽く肩を張って、手を腹部に――何だろう、いかにも「今思い出し中です」とでも言いたげな姿勢。あるいはそれは、まるで瞑想のようにも見える姿だ。思い出すって、口では簡単に言うけれど……いやいや、とても無理だろう。仮に本当に知っているのだとして、それでもすぐには出てきまい。だって思い出す必要があるということは、忘れているということだから。そして、人間の脳は都合よく端から端まで検索するみたいに、何かを取り出せるわけじゃあ――
「ああ、知っているわ」
嘘?!
「えっ、あ、あの……本当、ですか?」
「もちろんよ。私、生まれてこの方、嘘をついたことなんて一度もないもの」
「……それって典型的な嘘つきの台詞ですよね?」
「ふふっ。どう、かしらね?」
頬を引きつらせる俺をよそに、彼女は首を傾げ、鈴を転がすようにころころと笑う。
「大丈夫よ。ちゃんと知ってた。ヴェイナー、非正規ディアOS。早い話が改造OSね。確認されたのは、一番古くて今から三百年くらい前かしら」
「三百年前……随分と前ですね」
「そうね。とは言っても、この頃にはもうディア技術は、ほぼ出来上がっていたのだけれどね」
ディアの歴史は、それはもう、実に長い。現在に至るまで絶えず技術は進展しているけれども、OSそのものの基本、構成のベースが確立されたのは、比較的初期の頃だと聞く。
「じゃあこのOSは三百年前に生み出されて、何か犯罪に利用されたんでしょうか?」
「うーん……いいえ、そういう事実はないはずよ。だって、もしそんなことが起こっていたら、このヴェイナーというOSの記録は、そこら中に残っているはずだものね。わざわざ私に聞くまでもなく、蓮君だって、さぞ簡単に知ることができるでしょう」
それは……確かに、その通りだ。
「むしろ事件として取り上げられたのは、元のOSの方じゃないかしら」
「元?」
予期していなかった彼女の発言に、俺はオウム返しで首を傾げた。
「そう。ヴェイナーは改造OS。したがって当然、改造元が存在する。元となったOSは《Avenir》。当時、飛躍的なスペックの向上を謳って発表された正規のOSよ」
アヴェニール。その名前には覚えがあった。何せ数時間前、図書館で見たものだったからだ。
「……そのOS、歴代ディア辞典に載っていた気がします。でも確か、製造、販売ともにものすごく短い期間だったような」
「ええ。アヴェニールは、確かに当時の既存OSと比べて、目に見えてカタログスペックが良かったし、実績も上げた。でも、のちに致命的な欠陥が発見されたの。このOSは、与えられた指示を、全て完璧に実行しようとするのよ」
アイリスさんは『全て完璧に』の部分を強めて言った。おそらくは、わざとだろう。俺はその意図を何となく察し、戸惑いを露わにする。
彼女は頷きつつ、先を語った。
「つまりは指示された処理を、文字通り捨て身で実行しようとするということ。OS以外の別のユニットや身体パーツへの負担は完全に度外視。たとえばある処理を実行することで、そのディア本体が破損したり、周囲に著しい悪影響が発生することになるとしても、まるっきりそれを厭わない。言うなればそれは、まさに諸刃の剣。制御と限界を超えた力――バグそのもの」
なんてことだ。通常、ディアは与られた指示に対して、個体への物理的負荷や周囲への社会的道徳を考慮し、その上で動作を選択する。そういうプロトコルを持っているべき存在なのだ。それは、人の隣に立つべきものとして、最低限の資格とさえ言える。けれどもアヴェニールというOSを搭載したディアは、その限りではなかったということか。
「その性質上、アヴェニールは短期間で製造と販売が停止されたにも関わらず、根強く世に――特に、非合法な活動を主とする人たちの間に出回って、改造OSの元として利用されるようになった。たぶん、アヴェニールを元とした改造OSって、調べればたくさん出てくると思うわ。犯罪利用されたものも多いはずだから」
いくら三百年も前とはいえ、そんなOSが正規品としてガラテイアから流通したという事実に戦慄を覚える。リコール程度で済めば御の字の大失態ではないか。
「ただ、ま、今回のヴェイナーに関しては、話が別ね。おそらくこれは、犯罪利用されていない、世間的に表に出ていないOSで、だから公的な記録がなく、作成者も不明とされている」
「犯罪利用が目的じゃない改造OS……だとしたら、じゃあ、いったい何に……」
「あら、蓮君、前に言っていたじゃない。ココロプログラムって。あーゆーのに用いられるのが、割と妥当な筋書きだと思うけれど?」
驚愕で混乱していたのか、そのときの俺の頭では、思考を巡らせどもそんな筋書きは浮かばなかった。しかし、言われてみればその通りだ。
ディア工学は、昨今でこそその利便性、機能面について大きく技術発展が求められ、成し遂げられてきた傾向にあるが、遙か昔から一貫して人の心――ココロを作り出す研究も行われている。それは、時には大々的に、時には細々と、しかし片時も途切れることなく続けられてきた試みだ。そして、こと現在においても、そういう分野を専攻している機関や施設は世界各地に点在している。より革新し、進化を遂げたディアが生まれるたび、人々は繰り返し口にする。「ディアはまるで人間のようだ」と。
そしてまた、往々にして、社会の枠から逸脱してさえも、ココロを求める人たちもいる。そんな連中の生み出したプログラムが、おそらくは現在において噂となっているココロプログラムと呼ばれるものの一つであることは、可能性としてゼロではない。もちろん、大概は名ばかりの、ガラクタのような稚拙なプログラムであったりするのがオチなのだが、ごく稀に――砂漠に落とした一粒の宝石のように本当にごく稀に、極めて精巧な人格を宿したプログラムが見つかることもあるらしい。それが、長くココロプログラムなどという都市伝説が消えない理由。
「アヴェニールに少し手を加えて現在の規格に合った改造OSとし、本来は実行できないような負荷の多いプログラム――ココロプログラムを実行させる……?」
「そういうこと。人の心は、とても複雑よ。人間の脳は毎秒一京回もの処理を、わずか二十ワット程度の電力で行う。それを機械で再現しようと思えば、一千万倍以上の電力と、相応に大掛かりなプログラムが必要になる。感情という無限にも近いパラメータ。そこからくる一挙手一投足の細かな動き。それぞれの個性。論理的な表現が難しい直感。そして何より、日々の生活で積み重なっていく、膨大な記憶。それら全てを複合的に処理し、人間とともに生きるということ……機械にとっては、並大抵のことじゃない」
子供の頃から普通に目にしてきた光景。人間とディアが当たり前のように生活をともにしている、その光景。現代では、ディアは人間の社会に十分に融和し、その営みを助けている。振る舞いは人間と比べて遜色なく、彼らがあえてディアという立場に徹しようとしなければ、さらに人間に近づくとも言われている。でも……それでもまだ、完璧ではない。
「……たとえば、アヴェニールの改造OSを使えば、曲がりなりにもそのプログラムを動かせるわけですよね。実際にやったら……どうなるんでしょう」
その疑問は、単純に俺の興味からくるものだった。ディアは日に日に、人間に近づく。昨日よりも今日、今日よりも明日、それがついに留まることなく、際の際まで極まったら、いよいよディアは、どうなるのだろう? ディアは人間そのものに、なるのだろうか?
しかし、俺のそんな妄想に対し、アイリスさんの答えはひどく現実的なものだった。
「さあ、予想もつかないことだけれど……少なくとも、まともに機能するのは、ほんの僅かな時間でしょうね。無理をしている以上、やがては一つの綻びが生まれ、遠くないうちに二つ、三つ。そして最後には……」
語る彼女に表情はなかった。苦渋も同情も哀切もなく、まるで水が高所から低所へ流れる事実を諭すかのように、平坦な口調でただ述べる。当たり前のことを、当たり前に。
そうなのだ。何もディアに限らず人間だって、無理をすれば異常を来す。それが自然の摂理である。オーバードライブのディアが行き着く先なんてのは、ただ一つの例外なくスクラップ、有り体に言って、つまりは死――
俺がその結論に、たどり着いたか、着かないか。アイリスさんが珍しく先に席を立ったのは、ちょうどそんな頃合いだった。
「さて、気づけばもう、陽が沈んでしまったわね」
彼女につられ、俺もガラス越しの空を眺める。雲の上のこの場所は、地上よりも少しだけ日の入りが遅い。それでももう、すっかり太陽は沈んで、藍色一色。
アイリスさんは俺を見下ろし、にこやかに言った。
「じゃあ、これにて今日のお茶会はお終い。どう? 望みの情報は得られたかしら?」
「……ええ、まあ。とても、参考になりました」
「そう。それは、とてもよかったわ」
そして彼女は歩き出す。カツ、カツと緩慢な足音を響かせ、フロア中央のエレベータへ。
その背をただただ黙って見つめ、しかし俺は、これだけは聞いておこうと思ったことを咄嗟に口から弾き出した。
「あの、最後にもう一つ、質問していいですか?」
「なあに?」
「アイリスさんは、どうして、こんなことを知っているんですか?」
すると彼女は、ゆっくりと振り返って「ふふっ」と笑った。真横に伸び、端の引き上がった唇の前に、一本の人差し指が静かに添えられる。
「ねえ、蓮君。秘密は女性を美しくするものよ。これで私はあなたにとって、また一つ美しくなったわね」
未だ照明のつかないこの空間で、彼女の表情はほとんどが陰に隠れ、よりいっそう、ミステリアスな空気だけが辺りを伝った。
何も別に、現時点から一つや二つ彼女の秘密が増えたところで、そしてその結果、彼女の美しさが一回りや二回り増したところで、俺にとっての彼女の美しさは既に十二分に振り切れているのだから、今回ばかりは教えてくれたってよかろうに。ふとそんな風に思ったけれど、しかし残念ながら、実際にそう口にするほど俺は気障でも無垢でもなく、結局は去りゆく彼女が下界に消えるまで、何も言わずに見つめていた。思えば俺は、彼女のことを、何も知らない。なのに……いや、だからこそだろうか、俺は彼女に魅かれてやまないのだと、はっきり感じた。
闇と言うほどでもない曖昧な暗がりの中、雲の向こうに凛と佇む世界樹が、その花弁が、淡い光を放っていて、ただひたすらに俺の胸を焦がす。
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「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
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