20 / 20
エピローグ いってらっしゃい:さくら色に向かって
エピローグ いってらっしゃい:さくら色に向かって
しおりを挟む
「ちょっと動かないでよ。直しにくいじゃない」
「だから直さなくていいって。ちゃんと結べてただろ」
「結べてなかったわよ。あんなんじゃ横着バレバレでみっともないわ」
玄関前が騒がしいと思って覗いたら、声の主は白坂と沢だった。なんと二人ともスーツ姿だ。
わずかに灰がかったジャケットとタイトスカートを美しく着こなす白坂。髪を肩横で緩くまとめ、やや高めのヒールを履いている。
一方、沢は黒のシングルスーツにネイビーのネクタイ。ワンポイントにシルバーのタイピン……といきたいところだが、今、そのタイピンは白坂のポケットに一時避難させられている。
なぜかと言えば、白坂が沢のネクタイを結び直しているからだ。普段からスーツに慣れていない沢は「スマホで動画を見ながらやった」と言っていたが、その出来があまりよろしくなかったらしい。沢の首元でせっせと両手を動かす白坂はあれこれ文句を言っている。
こんな風に二人が正装しているのは、今日が彼らの卒業論文の発表日――学位審査会の当日だからだ。年末年始をほぼ丸々費やして書き上げた分厚い卒業論文を、二人はその期日である一月十三日に、事務局へ提出した。しかし、卒論を冊子として提出したら、それで晴れてめでたし卒業、というわけではない。後日、その内容を何枚かのスライドにまとめ、各分野の教授たちの前で発表しなければならない決まり。学位の審査としては、むしろこっちが本番と言える。このために一日貸し切られた学内の講堂、その広い会場の正面でマイクとポインタを持って臆さず分かりやすく、自分の研究の成 果を見せるのだ。この記念すべき日は一月二十四日。二人の最後の戦いの日――いや、二人の努力が身を結ぶ日だ。
そこに通りかかる一人の姿があった。
「やあ、いよいよだね」
沢のネクタイと格闘していた白坂が、その声を聞いて振り返る。
「あれ、蓮川先生!? 審査会は、もう朝から始まってるはずでは……?」
「最初の方は、私の専門とはあまり関係のない分野だから、いなくてもいいんだよ」
現在の時刻は午前十一時。沢と白坂の発表は、十一時三十分と四十分から十分間ずつ行われるが、審査会そのものは八時半から始まっている。別の研究室の生徒が既に何人も発表を行っているはずだ。蓮川だってこの学部の教授の一人。内容が専門と離れているからといって、審査する側として聞いていなくてよいのだろうか。
僕がそんなことを考えていると、白坂もちょうど訝しげな顔をしていた。僕に顔があったならば、まさにあんな表情をしていたはずだ。
「それより、君たちに面白い話があってね」
しかし蓮川は、そんなことを気に留める様子もなく話を始めた。
「なんて言ったかな、君たちの実験会を邪魔した企業があっただろう? 一昨日、そこから謝罪の電話があったんだ」
「謝罪?」
沢と白坂は揃って蓮川の方を見た。それは、二人としては気になる話題だったからだ。
「うむ。本来なら、君たちに直接謝ってもらうべきだと思ったんだが、それでまた君たちの貴重な時間を奪うのもナンセンスだろう。勝手ですまないが、私の方で話をつけさせてもらった」
一昨日といえば、沢も白坂も発表の準備でキリキリしていた頃だろう。謝罪と時間なら、迷わず後者を選択したに違いない。
「俺は、もう気にしてないです」
「ははは、沢くんは心が広いね」
この場合、世辞ではなく本当に気にしていないのが、沢の美点なのだろう。
一方、白坂についてはなかなか口を開かない。
「それでも一応、あんなことになった事情くらいは把握できたから、話しておこうかな」
蓮川がそう切り出すと、おずおずと視線を落としながら白坂が言った。
「あ、それは……たぶん、私の家の人が……」
「ああ、そのあたりはもう知っているんだね。では、沢くんもかな」
蓮川が穏やかな視線を向けると、沢は軽く頷き、白坂が続けた。
「逆に、私の方こそ、すみません。身内の事情なのに……」
「いいや、君が謝るようなことではないよ。それに、結果的に良いこともあった。今回の件が収まって、これまでずっと我々とは折り合いの悪かった研究室相手に、貸しを作ることが出来た。これからはそうそう、表立って我々を目の敵にすることもなくなるだろう。そして、これらの話をまとめたのは、君の両親だ」
「……え?」
蓮川の口から出た言葉に、白坂は思わず目を丸くする。
「知らなかっただろう? 伝えなくてよいと釘を刺されたが、伝えてはいけないとは、言われてないものでね」
「でも、私の父と母は……」
「普段、あまり話し合うことはないそうだね。いかんよ、家族のコミュニケーションは大事だ」
冗談めかして言う蓮川の様子に、しかし白坂の理解は追いついていないようだ。固まったまま沈黙している。
「ただね。少なくとも、君のお父さんとお母さんは、君が自分で決めた道を応援している。二人は、君が思っているよりは、君のことを見ているようだよ」
蓮川は白坂に向かってはっきりとそう告げると、とても爽やかな笑顔を見せた。
「ま、色々あったが、雨降って地固まるというやつかな。今日の発表は、君の両親も見にくるらしい。一般からの聴講名簿の中に名前があったよ」
まるで自分のことのように嬉しそうな蓮川。やがて彼はその両手で、丁寧に白坂の手を掬い上げた。包み込むようにしっかりと握り、次に、沢にも同じように握手をする。
「じゃあ、良い晴れ舞台となるように、精一杯頑張りたまえ。沢くんはスーツが似合っていないと減点されるかもしれないから、白坂くんにしっかりチェックしてもらいなさい」
そうしてやはり嬉しそうに「はっはっは」と高く笑いながら玄関を出て去っていった。
沢と白坂は、しばらくそのまま動けずにいた。漂うしんとした空気に、僕も移動のタイミングを失う。窓の外から飛び立つ小鳥の鳴く声と、風に舞う落ち葉の音が聞こえる。
白坂は無言でまた沢のネクタイに手を伸ばし、結び直しの続きを始めた。
すると沢は抵抗することなく、大人しくやや上を向いて首元を広くする。そして言った。
「……よかった、よな?」
白坂は静かに答えた。これ以上にない、安堵を湛えた表情で。
「……うん。よかった。すごく」
そしてまた少しの無言の時間を経て
「はい。できたわ」
キュッという音を最後に結び直された沢のネクタイ。沢はその感触を確かめるように二、三、首を動かすと「おう。サンキュ!」と明るく笑った。
うん。二人とも、良い表情だね。さて、そろそろ行く時間なんじゃないのかい?
すると沢は、まるでその問いかけに答えるかのように僕に気づき、こちらへ歩み寄ってくる。
「お、シータ。お前もあとで誰かに連れてきてもらえよー。俺の完璧な発表を見せてやるぜ!」
うんまあ、たぶんみんな冷やかしに行くだろうし、そりゃ僕も見るけどさ。くれぐれも調子に乗ってヘマをしないようにね。
自信満々の足取りで玄関に向かっていく沢。先に行ってしまう彼に続くように白坂も駆け出し、それでもちゃんと、僕の前で一度しゃがんでくれる。
「じゃあ、行ってくるね。シータ」
うん。行ってらっしゃい。
白坂は扉を開こうとする沢に追いつき、やがて二人は、並んでその先へと歩いていった。
了
作中、次の書籍を引用させて頂きました。
『The Door into Summer』(Robert A. Heinlein著、Del Ray Books、一九八六年発行)
『夏への扉[新訳版]』(ロバート・A・ハインライン著、小尾芙佐訳、株式会社早川書房、二〇〇九年発行)
「だから直さなくていいって。ちゃんと結べてただろ」
「結べてなかったわよ。あんなんじゃ横着バレバレでみっともないわ」
玄関前が騒がしいと思って覗いたら、声の主は白坂と沢だった。なんと二人ともスーツ姿だ。
わずかに灰がかったジャケットとタイトスカートを美しく着こなす白坂。髪を肩横で緩くまとめ、やや高めのヒールを履いている。
一方、沢は黒のシングルスーツにネイビーのネクタイ。ワンポイントにシルバーのタイピン……といきたいところだが、今、そのタイピンは白坂のポケットに一時避難させられている。
なぜかと言えば、白坂が沢のネクタイを結び直しているからだ。普段からスーツに慣れていない沢は「スマホで動画を見ながらやった」と言っていたが、その出来があまりよろしくなかったらしい。沢の首元でせっせと両手を動かす白坂はあれこれ文句を言っている。
こんな風に二人が正装しているのは、今日が彼らの卒業論文の発表日――学位審査会の当日だからだ。年末年始をほぼ丸々費やして書き上げた分厚い卒業論文を、二人はその期日である一月十三日に、事務局へ提出した。しかし、卒論を冊子として提出したら、それで晴れてめでたし卒業、というわけではない。後日、その内容を何枚かのスライドにまとめ、各分野の教授たちの前で発表しなければならない決まり。学位の審査としては、むしろこっちが本番と言える。このために一日貸し切られた学内の講堂、その広い会場の正面でマイクとポインタを持って臆さず分かりやすく、自分の研究の成 果を見せるのだ。この記念すべき日は一月二十四日。二人の最後の戦いの日――いや、二人の努力が身を結ぶ日だ。
そこに通りかかる一人の姿があった。
「やあ、いよいよだね」
沢のネクタイと格闘していた白坂が、その声を聞いて振り返る。
「あれ、蓮川先生!? 審査会は、もう朝から始まってるはずでは……?」
「最初の方は、私の専門とはあまり関係のない分野だから、いなくてもいいんだよ」
現在の時刻は午前十一時。沢と白坂の発表は、十一時三十分と四十分から十分間ずつ行われるが、審査会そのものは八時半から始まっている。別の研究室の生徒が既に何人も発表を行っているはずだ。蓮川だってこの学部の教授の一人。内容が専門と離れているからといって、審査する側として聞いていなくてよいのだろうか。
僕がそんなことを考えていると、白坂もちょうど訝しげな顔をしていた。僕に顔があったならば、まさにあんな表情をしていたはずだ。
「それより、君たちに面白い話があってね」
しかし蓮川は、そんなことを気に留める様子もなく話を始めた。
「なんて言ったかな、君たちの実験会を邪魔した企業があっただろう? 一昨日、そこから謝罪の電話があったんだ」
「謝罪?」
沢と白坂は揃って蓮川の方を見た。それは、二人としては気になる話題だったからだ。
「うむ。本来なら、君たちに直接謝ってもらうべきだと思ったんだが、それでまた君たちの貴重な時間を奪うのもナンセンスだろう。勝手ですまないが、私の方で話をつけさせてもらった」
一昨日といえば、沢も白坂も発表の準備でキリキリしていた頃だろう。謝罪と時間なら、迷わず後者を選択したに違いない。
「俺は、もう気にしてないです」
「ははは、沢くんは心が広いね」
この場合、世辞ではなく本当に気にしていないのが、沢の美点なのだろう。
一方、白坂についてはなかなか口を開かない。
「それでも一応、あんなことになった事情くらいは把握できたから、話しておこうかな」
蓮川がそう切り出すと、おずおずと視線を落としながら白坂が言った。
「あ、それは……たぶん、私の家の人が……」
「ああ、そのあたりはもう知っているんだね。では、沢くんもかな」
蓮川が穏やかな視線を向けると、沢は軽く頷き、白坂が続けた。
「逆に、私の方こそ、すみません。身内の事情なのに……」
「いいや、君が謝るようなことではないよ。それに、結果的に良いこともあった。今回の件が収まって、これまでずっと我々とは折り合いの悪かった研究室相手に、貸しを作ることが出来た。これからはそうそう、表立って我々を目の敵にすることもなくなるだろう。そして、これらの話をまとめたのは、君の両親だ」
「……え?」
蓮川の口から出た言葉に、白坂は思わず目を丸くする。
「知らなかっただろう? 伝えなくてよいと釘を刺されたが、伝えてはいけないとは、言われてないものでね」
「でも、私の父と母は……」
「普段、あまり話し合うことはないそうだね。いかんよ、家族のコミュニケーションは大事だ」
冗談めかして言う蓮川の様子に、しかし白坂の理解は追いついていないようだ。固まったまま沈黙している。
「ただね。少なくとも、君のお父さんとお母さんは、君が自分で決めた道を応援している。二人は、君が思っているよりは、君のことを見ているようだよ」
蓮川は白坂に向かってはっきりとそう告げると、とても爽やかな笑顔を見せた。
「ま、色々あったが、雨降って地固まるというやつかな。今日の発表は、君の両親も見にくるらしい。一般からの聴講名簿の中に名前があったよ」
まるで自分のことのように嬉しそうな蓮川。やがて彼はその両手で、丁寧に白坂の手を掬い上げた。包み込むようにしっかりと握り、次に、沢にも同じように握手をする。
「じゃあ、良い晴れ舞台となるように、精一杯頑張りたまえ。沢くんはスーツが似合っていないと減点されるかもしれないから、白坂くんにしっかりチェックしてもらいなさい」
そうしてやはり嬉しそうに「はっはっは」と高く笑いながら玄関を出て去っていった。
沢と白坂は、しばらくそのまま動けずにいた。漂うしんとした空気に、僕も移動のタイミングを失う。窓の外から飛び立つ小鳥の鳴く声と、風に舞う落ち葉の音が聞こえる。
白坂は無言でまた沢のネクタイに手を伸ばし、結び直しの続きを始めた。
すると沢は抵抗することなく、大人しくやや上を向いて首元を広くする。そして言った。
「……よかった、よな?」
白坂は静かに答えた。これ以上にない、安堵を湛えた表情で。
「……うん。よかった。すごく」
そしてまた少しの無言の時間を経て
「はい。できたわ」
キュッという音を最後に結び直された沢のネクタイ。沢はその感触を確かめるように二、三、首を動かすと「おう。サンキュ!」と明るく笑った。
うん。二人とも、良い表情だね。さて、そろそろ行く時間なんじゃないのかい?
すると沢は、まるでその問いかけに答えるかのように僕に気づき、こちらへ歩み寄ってくる。
「お、シータ。お前もあとで誰かに連れてきてもらえよー。俺の完璧な発表を見せてやるぜ!」
うんまあ、たぶんみんな冷やかしに行くだろうし、そりゃ僕も見るけどさ。くれぐれも調子に乗ってヘマをしないようにね。
自信満々の足取りで玄関に向かっていく沢。先に行ってしまう彼に続くように白坂も駆け出し、それでもちゃんと、僕の前で一度しゃがんでくれる。
「じゃあ、行ってくるね。シータ」
うん。行ってらっしゃい。
白坂は扉を開こうとする沢に追いつき、やがて二人は、並んでその先へと歩いていった。
了
作中、次の書籍を引用させて頂きました。
『The Door into Summer』(Robert A. Heinlein著、Del Ray Books、一九八六年発行)
『夏への扉[新訳版]』(ロバート・A・ハインライン著、小尾芙佐訳、株式会社早川書房、二〇〇九年発行)
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!
小林汐希
ライト文芸
2年5組の生徒:松本花菜(17歳 高校2年生)
2年5組の担任:長谷川啓太(23歳 教師歴1年目)
幼い頃から、様々な悩みを抱えながら過ごしてきた花菜。
それは幼い頃に父との離別を経験した家庭環境だったり、小学校の最後に作ってしまった体の古傷であったり。
学校外の時間を一人で過ごすことになった彼女の唯一、かつ絶対的な味方でいてくれたのが、近所に住む啓太お兄ちゃんだった。
しかし年の離れた二人の関係では仕方ないとはいえ、啓太の大学進学や環境変化とともに、その時間は終わりを迎えてしまう。
ふさぎ込む花菜を前に、啓太は最後に「必ず迎えに来る」という言葉を残して街を離れた。
言葉を受け取った花菜は、自分を泣かせないための慰めだったという諦めも入りつつ、一方で微かな希望として心の中で温め続けていた。
数年の時を経て二人が再び顔を合わせたものの、もはや運命の意地悪とでもいうべき「担任教師と生徒」という関係。
最初は様子伺いだったけれど、往時の気持ちが変わっていないことを再確認してからは、「一人じゃない」と嬉しいこと・辛いことも乗り越えていく二人には少しずつ背中を押してくれる味方も増えていく。
再会した当初は「おとなしい終末的運命キャラ」になっていた花菜も次第に自信を取り戻し、新米教師の啓太も花菜のサポートを裏で受けつつ堂々と教壇に立ち続けた。
そんな互いを支えあった二人の前に開けた世界は……。
たった一つだけの約束を胸に、嬉しいときは一緒に喜び、悲しいときは支えあって走り抜けた二人の物語です。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
偽夫婦お家騒動始末記
紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】
故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。
紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。
隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。
江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。
そして、拾った陰間、紫音の正体は。
活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる